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迷宮への誘い  9
「パラレスシリーズ」続きです。娘が隣でハイキュー!! にハマッテ悶え狂っております。感化された私は今にも大人買いしそうです。困った・・・・。団体もの・・・好きなんです。ああ、昔ハマッタ漫画を思い出す。文庫本をアOゾンで注文しそうだ。


では、どうぞ












くるりと一回りして裾をはためかせた侍女はケラケラ笑いながらテーブル上のおかずを一つ摘んで口へと放り込む。 ポカンとしている私に、にぱっと笑う顔は見慣れた人だった。

「そっくりさん、合格ぅ! お疲れさんですねぇ」
「・・・浩大っ! ああ、・・・・驚いた。 後宮内にまで入り込まれているのかと思った」
「前は侍女に扮して入り込んだ女刺客もいたけど、今は厳しく見ているからね。 それにしても動きが滑らかだね。 まあ、いざって時が来ないように側にいるけど」
「・・・・その為に侍女服?」
「そう! 妖艶とまではいかないけどさ、この美しさ。 オレが適役だろう?」
「うん、似合う! ・・・って言ってもいいのかな」

同じくらいの身長だから、侍女の衣装を着ていても違和感が無い。 あるとするなら髪型だけど、今はカツラを被っているからぱっと見は侍女にしか見えないだろう。 変装までするなんてすごいなと感心してしまう。 本当に違和感が無い。 目が大きいから可愛いって感じがして、聞いた齢より若く見える。 アメリカの浩大が女装しても背が高いから無理がある。 モデルだといっても体格が問題だ。 でも顔が同じだから不思議な感じがして背がぞわぞわする。

「お昼用意したから、食べたら庭園に行くよん」
「はい。 あ、一緒に食べる? 誰もここには来ないでしょう?」
「もちろん! 毒見も兼ねてやるよ」
「・・・・・毒見」

なんか聞けば聞くほど後宮って怖い。 よく夕鈴さん頑張っていられるな。 
やっぱり国王陛下への愛なのかな。 
美味しそうな昼餉が、途端に色合いをなくしてしまう。 冷めた料理が続くのもそのせいなのかしら。 毒見で冷めてしまうって本で読んだことがあるけれど。

「さて、食べ終わったら食休みで四阿に行って、食後のおやつを食べたら散策だよん」
「食後のおやつって、どれだけ食べるのよ。 ・・・・本当に似てるわね」
「あー、あっちも食いしん坊? で、酒飲みか?」

酒好きまで同じなんだと判り笑うと、どうしても気が抜けてしまう。 
にかっと笑うよく見知った顔に、懐かしい面々が思い浮かんで来て、皆に会いたいと、早く戻りたいと願ってしまう気持ちが急に膨らみ、そして痛い疼きを伴い胸が熱くなる。 
黎翔に逢いたい。 
逢って大丈夫だと抱き締めて貰いたい。 
長い夢を見ていたようなもののだと、ちゃんと側にいるから大丈夫だと感じさせて欲しい。 
だけど今は遠い、遥か遠くの場所にいる自分だ。 どんなに望んでも、容易には手が届かない場所に居る。 これは本当のことなのだろうか。 本当に夢ではないのかと何度も疑ってしまう。
あっちの世界はどうなっているのだろうか。
私一人が居なくてもいつも通りの日常が繰り返されているのかな。 逢いたいと切に願う人は、同じように想ってくれているだろうか。
何か熱を感じたいと、甘えたい気持ちが溢れそうになり、浩大の顔を見上げた。

「浩大・・・・。 ハグしていい?」
「? はぐ? って何?」
「・・・・ん、こういうこと」

両手を伸ばして浩大の脇の下から背に腕を回す。 肩に額を押し付けてゆっくり深く息を吐くと、泣きそうな気持ちが落ち着いてきた。 背をぽんぽんっと軽快に叩いた後、優しく撫でてくれるから瞼を閉じると、そのまま寝そうになる。 

「まあ、いろいろ心配は尽きないよな。 いくら旦那さんが似ていたって陛下に抱きつく訳にはいかないし、お妃ちゃんも居るしなぁ。 だけどオレも一応男なんですけど?」
「・・・・今は侍女でしょ?」
「まあ、今だけな。 だけど今だけ。 そっくり過ぎて、オレ殺されちゃう」

いい齢して誰かに甘えるなんて変だな。 昨日泣いたから何処か気が緩んでいるのかも。 
浩大から身体を離して、私はテーブル上のお茶を一気に飲み込み気持ちを落ち着けようとした。 抱き締めたせいで浩大が少しずれてしまったカツラを直すから、私は襟元を直していると小さく笑いながら浩大が問い掛けてくる。

「あっちの浩大にも同じことするの? あっちの陛下は何も言わない?」
「・・・・・そんなことしたら黎翔はすごっく怒ると思う。 でも、あっちの浩大にハグしたことなんてないよ。 養父母や義理兄、会社の仲間にはするけど、黎翔の目の前ですると後ですごく束縛されるから、目の前ではしないようにしてる。 でも何故かばれて・・・・・ひどい目に遭う」

決算期が過ぎ無事に報告会が終って万歳!と皆とハグする時は普通にある。 ウォルターを含めた同僚達、男女問わずにハグするのは普通のことだ。 友人同士でスポーツ観戦に行って贔屓のチームが勝つと、それこそ見知らぬ人たちともする。 
それが後で何故か知られていて、睨まれるは、拗ねられるは、果ては翌日ベッドから起き上がるのに時間を要するほど翻弄されてしまう。 ひどい時は午後から出勤させて下さいと電話をしたことも一度や二度じゃない。 自分だって私以外としたことがある癖にと、怒って文句を言ったら今度は嬉しそうにベッドに縫い付けられた。 

・・・・あら、何を思い出しているのかな。 
じわりと熱を持った頬を押さえると、浩大が軽く咳払いをしてくるから余計に恥ずかしくなって俯いてしまう。 何で今こんなことを思い出すの、私は!

「あー・・・・、狭量なのは一緒みたいだね」

困った顔で笑う浩大が 「じゃあ、行くよん」 と促してきた。 
さあ、上手く誘き寄せることが出来るかな。 いや、出来るかなではなく、しなくてはいけないのだ! 早く捕まえて、今度は自分が戻れる可能性を誘き寄せなきゃ。



最初はガゼボで侍女役の浩大を横に立たせて顔を団扇で半分隠して食後休み。 
秋らしい高い空を眺めながら、小声で散策ルートを話し合う。 慣れない場所だけに避難場所がある方向や、ひと気のない場所を教えて貰い、いざという時は警護兵に直ぐ連絡が出来るよう他のボディガードへ報告するというから、大変だと気を引き締める。

「まあ、今日直ぐに襲って来るとは限らないけど、この間そっくりさんにやられたから攻撃が増す可能性もある。 今から気負っていたら疲れちゃうよん」
「夕鈴さんは・・・・・何処に?」
「陛下が傍にいるから大丈夫だよ。 王宮側にいる予定だけど?」

傍にいるから、か。 悪い奴らから愛しい人を守ろうと、陛下自らが妃を警護する。 
・・・・・カッコウいい・・・・。 中世の騎士みたいだ。 王様だけど。

「何考えているか判らないけど、今回のことを言い訳に仕事からサボっている可能性が大きいから大変。 側近様が怒って、お妃ちゃんにとばっちりが行かないか心配になるよん。 ああ、もちろんお妃ちゃんは仕事をしろって怒るけどね、陛下は・・・・・まあ・・・・」
「仕事・・・・・サボるんだ。 へええええっ!」

私が現れた時のすごっく怒った顔を見ただけに、怖い王様という印象が残っていて、仕事をサボるという、ましてや李順さんから逃げているなんて想像出来ない。 それに。

「・・・李順さんって、こっちの方が厳しいような気がするけど」
「そっちの陛下はサボったりしないのか? そっくりサンを連れて何処かに遊びに行ったり」
「しないわよ。 私も、他の会社で働いているし、会社のトップってすごっく忙しいし、早朝会議や時差会議で遅くまで会社に居て、泊り込むこともあるくらいなのに」

時々無茶ぶりを発揮して一週間くらい休みを自主的に取るけど、それだって微調整が出来ているからだ。 COOの周さんと話し合いをして無理な休みは取らない。 その分、休みの時は私の会社送迎から昼食時間まで束縛し、休みが合う時は・・・・・・その日の天気さえ判らずに過ごしてしまうことが毎回。 最近は私の休みを前もってウォルターに聞いているようで、休みが合うことが多く、そうなると必然的に休み中はベッドから一時も離れずに・・・・・。

「そっくりさん、顔が赤いけど大丈夫か? さっきから突然挙動不審だけど~?」
「・・・っ! どぉわいじょうぶっ! さあ、散歩しようか!」
「ちょっとは演技してね。 お妃らしく、まあ大人しくゆっくりと歩いてちょうだい」
「う、うん・・・・」

もう、いやっ! さっきから何を思い出しているの、私は! 今はそれどころじゃないのに! 
これもあれも全部黎翔が悪いっ! いつもいつも執拗にするから、思い出すのがあんな破廉恥なことばかりになって! 私も私だ。 黎翔の仕事が忙しい分、逢えない分、いっぱい抱き締めて貰えるのは嬉しいけど、これから悪い奴と対峙するっていう時に何を思い出しているかな! 
さあ、新規業務を任されたと思って慎重に、そして仕事用の笑顔で行わなければ。

侍女を伴い庭園を歩き始めた真っ赤な顔の妃を、影から二組の双眸が見つめていた。





***





その頃、夕鈴は陛下に囚われ後宮立ち入り禁止区域に連れ込まれていた。

「陛下っ! 李順さんが怒るから、せめて執務室か政務室に行きましょうよ! 私が王宮側でユーリが後宮側で囮をするのでしょう? なんでこっちに」
「だって僕が仕事していると、夕鈴はユーリの心配ばかりするでしょう? そんなの厭だ」

政務室に顔を出した途端に攫うように連れて来て、口を尖らせて拗ね始めた小犬陛下に突っ込むのを諦めた夕鈴は、それでも膝上抱っこ拘束は無いだろうと腕を叩いた。 それに何処に居たって李順さんには見つかる気がするし、やはり陛下の仕事が滞るのは困る。

「陛下がきちんとお仕事されるのでしたら、ユーリのことは浩大たちに任せて私も真面目に妃演技をしますから。 ですからお仕事をしましょうよ。 お願いですから、陛下」
「・・・・ずるいよね。 そうやって下から見上げてお願いするなんて」
「身長差がありますから仕方がありませんよね? はい、お仕事に行きましょう」

腹に回っていた手を解き、その手を引いて部屋から出ようとすると背後から覆うように抱き締められて夕鈴は叫びそうになった。 仕事が嫌いな訳じゃないのは知っているけど、どうして人を翻弄したがるのだろうか。 あとで李順さんに叱られると判っている癖に。

「陛下っ!」
「うん、仕事はちゃんとするよ。 あとでちゃんと」
「睡眠時間を削ってまでするくらいなら、昼間の内にした方がいいですって!」
「ゆーりん、さっきユーリとくるって回っていたのは何?」

少し緩んだ腕の囲いから後ろを振り向くと、眉尻を下げた寂しそうな表情を見せる人が居た。 
全く仕方が無い人だ。 どうして誰も居ない場所でそんなにも切ない瞳を向けてくるのだろう。 
だから毎回胸が苦しくなるんだ。 

ユーリは黎翔様と結婚出来た。 仮定の話だけど、私の子孫かも知れないと言っていた。 
いつかは私も結婚出来るんだと知り、嬉しいと思ったけど、相手は目の前の人じゃない。
この人の相手は・・・・いつか来る正式な妃は高貴な身分を持ち、国のためと陛下のための強固な後ろ楯を持つ、教養と美を兼ね備えた貴族子女だ。
 
早く陛下の敵が減ったらいい。 私はそのために存在する臨時花嫁であり、囮なのだから。
好きになった陛下の御世がいつまでも万全に続くよう、そのために私はここに居る。 好きな気持ちが伝わらないように、気付かれないように、甘い傷を負い続けることにも慣れて来た。 
時々余りにも近い陛下からの声と熱に戸惑うけど、今だけの幻だと自分を律することにも慣れてきたはずだ。

「あちらの界で教わったダンスっていうんです。 陛下、手をこう持って、私の腰を持って・・・・そしてゆっくりと楽曲に合わせて踊るんです。 一、二、三、一、二、三・・・・って」
「くるってしていたのは」
「私の手を持ち上げて・・・・そう。 そうしたらくるりっと」

ふわりと広がったドレスが脳裏に浮かぶ。 もう脳裏から消えていたはずのダンスが思い出され、異世界での数ヶ月間が蘇る。 何度も帰りたいと泣いたけれど、この世界に戻れたのだ。 好きな人の住む場所に、バイトとしてなら側にいることを許される場所に。 
大丈夫、わかっている。 この人は手の届かない人だと。 ただ好きだと想い続けるだけだ。
この国のために毎日頑張っている人を助けるために、自分も出来ることをするだけ。
少しでも役に立てているなら、それでいい。

「こんな踊りを誰としたの? 結構密着するよ?」
「いやいや、密着はしませんよ? 腰に手を掛けても回る時に補助するくらいで。 踊ったのは黎翔様とだけですけど、一刻も持ちませんでした。 慣れない靴で足を痛めてしまって。 ああ、その時に方淵に似た人がいたんだ」
「ゆーりん、方淵には抱きついてない?」
「抱きついていません! 似ているだけに怖くて近寄りもしませんでしたよ!」

方淵に抱き着いたかと問われ、目を瞠った。 有り得ないだろうと思うけど、そうか、あっちの浩大には抱きついたのだと思い出し、向こうも驚いていただろうなと今更ながらに恥ずかしくなった。 

「・・・・赤くなるのはどうして? 黎翔には・・・・抱きついた?」
「抱き・・・っ! ・・・・あ」
「あるんだね! 僕の奥さんなのにどうして他の男に抱きつくかな!」
「何度も言っているように私はバイトですって! それよりも仕事をして下さいっ! 陛下が仕事をしないと李順さんから冷たい視線が私にまで向けられるんですよ? 一生懸命バイトしている私までが、陛下がサボるせいで叱責を受けるのは不条理です!」

過去の、それも異世界でのことを今更穿り返しても仕方が無いだろう。 それよりも今は後宮庭園にまで忍び込んだ刺客を一刻も早く捕らえることだ。 そのためにユーリが囮になってくれているというのに、仕事をサボっている陛下と予定外の場所に居る訳にはいかない。

「ちゃんと、ちゃんと仕事を・・・・ユーリが頑張ってくれているのに・・・・・」
「なっ、泣かないでっ! ごめんっ、ちゃんと仕事するから!」
「いつも・・・・いっつも人を翻弄して、いっぱい仕事があるっていうのに・・・・」
「本当に直ぐに仕事に行きます! だから側にいてね。 ちょっとだけ四阿でお茶しようね」
「今サボった分、きっと李順さんが駄目って言います」
「・・・・頑張るから」

最後の言葉にぐっと涙を堪えると、困った顔を見せる陛下が手を差し出した。 鼻を啜って手を重ねると、柔らかく包むように握ってくれる。 その温かさが嬉しいと、夕鈴は素直に微笑んだ。

あの世界に行ってから、何度名前を呼んだだろう。 何度心の支えになってくれただろう。
もしもあの芝で陛下の声が聞こえなかったら、今、ここに私は居ない。
黎翔様とユーリが出会うこともなく、桂香さんがよく話してくれていたパラレルワールドなるものが捻じ曲がっていたかも知れない。 私は陛下のお蔭でここに戻れた。 
だから陛下のために、どんなことも頑張れる。
元々そのつもりだ。 私の淡いこの気持ちが伝わらなければいい。 上手く隠し通せるように演技し、陛下のそばで期限が来るまで精一杯頑張るだけだ。

「では、早速お仕事に行きましょうね!」

もう一度鼻を啜った夕鈴は、陛下の手を少し力を入れて握り返した。








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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 00:55:09 | トラックバック(0) | コメント(6)
コメント
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2013-10-21 月 01:49:04 | | [編集]
Re: タイトルなし
鈴様、早速のコメントをありがとう御座います。予想通り浩大でした。明るい隠密、だけど実は結構熱いところもある浩大がお気に入りでして、今回叱責覚悟でハグさせちゃいました。妄想ですので、ご勘弁を。まあ、桐とのハグはないでしょうね。刺されます、確実に。あと、あっちの世界は後ほど出す予定ですので、お待ち頂けると嬉しいです。忘れてはいませんので大丈夫です(笑)
2013-10-21 月 06:24:12 | URL | あお [編集]
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2013-10-21 月 06:33:43 | | [編集]
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2013-10-21 月 20:14:22 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。何度か過去の設定を・・・・じゃなくて過去の話を思い出すユーリですが、夕鈴もバイト妃として頑張ってますが気持ちと仕事でこんがらがって悩んでいます。それを書くのが超楽しいです。あちらの黎翔は、エロゐ方でしょうか?アメリカの黎翔でしょうか?(笑)
2013-10-22 火 21:50:20 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。どちらの話を妄想するもの楽しいです。浩大は隠密として何にでも化けてくれそうな気がして今回私希望の侍女に。桐を・・・・と思ったのですが、身長的に浩大の方が可愛いなって。その内してくれないかな、本誌で(笑)
2013-10-22 火 22:08:39 | URL | あお [編集]
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