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迷宮への誘い  11
「パラレルシリーズ」続きです。のんびりユーリと夕鈴を楽しく書かせて貰っています。娘がパンプキンチーズケーキを作ってくれるので、超楽しみ。たまにしか作ってくれないけど(費用が掛かるから)、マジに美味いから楽しみです。(全力で褒めないと殺されるけど)

では、どうぞ













後宮庭園の奥、ひと気のない小さなガゼボ周囲の少し開けた場所。 低木と花壇、池がある場所に誘き寄せられた刺客が一人現れた。 
団扇で顔を隠したまま、周囲に気を配る。 背後に気配は感じられないがまだ仲間がいるはずだ。 侍女役の浩大が背に手を回して動くなと伝えて来るから、動かずに息を潜める。

「後宮庭園に無断で足を踏み入れるとは躾がなってないねぇ」
「・・・・その妃に用がある」
「狼陛下唯一のお妃に用があるなら、先に狼にお伺いを立てなきゃ駄目じゃんか」
「その唯一を返上して貰いに来たのだ。 狼には主から後に伺いがあるだろう」

話を聞いて無性に腹が立った。 唯一でいいじゃないか。 心から好きだと思える相手と添えて何が問題なんだ。 唯一を返上? 何を莫迦なことを言っている。 それは他人が口出しすることじゃないだろうが。 それも影からコソコソと命を狙うなんて姑息な真似をするなど言語道断。 用があるって、つまりは人を殺しに来たんでしょう?
ああ、駄目だ。 こんなに興奮していては、いざという時思うように動けなくなる。

「・・・・ふぅ・・・」

呼吸法を思い出して深く息を吐き出す。 今自分がするべきことは囮だ。 妃の囮として怯えた風を装いつつ、防御に徹する。 浩大も桐もいるのだから無謀な真似をしてはいけない。 相手の出方を見て上手く避けるべきだ。 
頭の芯がどうにか落ち着いて来たのを感じると同時に背後から音がした。

「そっ・・・お妃ちゃん、防御っ!」

腰を落として背後を振り返る。 突き出された槍の先のようなものがぐにゃりと曲がる。 これは九節鞭だ。 直ぐに引かれた武器に身構えると、浩大側で金属音が聞こえて来た。 やはり刺客は複数か。 浩大が一人に対峙している以上、こいつの相手は私となる。 
狭い場所では防御も反撃も出来ないと思い、ゆっくりとガゼボから出ると相手も移動を始めた。

「我らの願いを叶えては貰えませんかねぇ? 貴女がいなくなることで私の懐も潤うのですが」
「知ったことではないわ。 あの人の傍から離れる気もありませんし」

口角を持ち上げて妃らしく微笑を浮かべると、相手の目が細くなり腰が落ちる。 
距離を取る武器を持ち出されると組み手が通じない。 一方的な攻撃を避けるしかないだろうが、あの武器はどう動くか不明な点が多い。 昨日の夜泣いて朝が遅くなった分、桐から教わる時間が限られてしまった。 先に付けられた刃物に舌を這わせる男が嬉しそうに笑みを零すのが視界に入り、全身に鳥肌が立つ。

「・・・・嬲られるのが御趣味でしょうかね」
「そんな趣味などないわ。 女相手にそんな武器を持ち出す男と趣味を話し合う気もないし」
「狼陛下の唯一は気が強そうだ。 それも何時まで持つことやら」
「何時までも」

相手から目を離さずに邪魔な裾を持ち上げる。 腰帯に押し込みながら脱力の呼吸法を繰り返す。 幾つもの節を持つ武器が真っ直ぐに飛んで来た。 刃を突き刺そうというのか。 距離を取り避けたつもりが袖を引き裂かれた。 手首の微妙な動きで先を自在に動かせるようだ。 この袖も邪魔だが脱いでいる暇は無い。 幾ら捲り上げてもずり落ちてくるだろう。

あの武器を捕まえることは出来ないかな。 いや、無謀か? 

じりっと足を進めると、その足元に九節鞭が振り下ろされる。 地面に突き刺さったものに向かい、無意識に足が動き踏み下ろしていた。 直ぐに引こうとしたのだろうが、体重を掛けて抜かれる動きを封じる。 足裏に突き刺さる痛みに返しがついていたのだと気付くが、退ける気は無い。 
そのまま手を伸ばし、鉄の棒を掴む。 

しかし直ぐに抵抗が消え、相手が武器を放棄したのだとわかる。 
次の攻撃が来るかと身構えると今度は長刀だった。 これも面倒だなと息を吐く。 
木刀でしか稽古をしたことの無い私にとって、刃はきつい。 もちろん刃引きなどしていない、本当に切れるものなのだろう。 
捕まえることも困難だし、足裏を傷めた今、逃げるのも容易ではない。 
もちろん背を向けた瞬間に何が起こるかは想像に易い。

「さっきからか弱い女性に向かって武器を持ち出すなんて卑怯よね!」
「結果が大事ですからね。 しかし甚振り甲斐のある妃だ」
「希望はしてないわ」

場を離れたのか、さっきまで聞こえていた背後の音が聞こえない。 
項にちりっとした痛みにも似た緊張が奔る。
相手が強いのは承知だ。 だけど退く訳にはいかないと強がりの笑みを浮かべた。 駄目もとで簪を抜いて相手に投げ付ける。 僅かに身体を動かしただけでそれを避け、動揺することも無く動く気配も無い。 これでは小刀も簡単に避けられて終わりだろうと思い、次の動きを待つことにした。 夕鈴さんに刺客の目が向かなかったことが幸いだと思うことにしよう。 

ふと刺客が眉を顰めた。 

「・・・・人相書きと酷似しているが、本物か? 狼陛下の妃といえど落ち着き過ぎて」
「ほぉおんもの、ですっ! こんな顔が幾つもありますかぁ?」
「・・・・目が」
「ひっ、貧血気味で時々血の気が引いて、こんな目の色になるんですっ! 黎翔は綺麗だって褒めてくれます! とても美しいと褒めてくれますが、それが何か!?」

ぐんっと胸を張ってユーリが堂々と言い切ると刺客は動きを止めた。 目の色が違うことを指摘されては逃げようが無いが、そこは虚勢で言い負かす。 
それに言っていることは本当だ。 黒い瞳の黎翔は私の蒼い瞳を綺麗だと言ってくれる。 
何か文句がありますかと顎を持ち上げ冷笑を浮かべると、刺客の眉間の皺が深まったのが見えた。 上手く挑発出来たようで刀の構えが変わる。 少し苛立ちを醸しながら隙の無い動きでにじり寄って来るから、ユーリの背筋に厭な汗が流れ出した。 
挑発が過ぎたかも知れないと思うが、今更だ。 ちらっと頭の片隅にTVで一度だけ見たことのある 『真剣白刃取り』 が浮かんだが、実践は止めておこうと考え直す。

それよりも浩大側はどうなったのだろうか。 そして警護に就いているはずの桐はどこにいるのか。 警護兵も直ぐに来る手筈になっていると聞いていたが、ちっとも姿が見えない。 もしかして刺客は二人ではなく、他にも現れてこちらまで手が回らないのか。

相手の獲物は長刀だ。 横に払われ急ぎ後退したが、足の痛みが響き膝から崩れ落ちそうになる。 立て直したが、続いて上から振り下ろされる刀に逃げる隙を与えられず、急ぎ両手を交差して刃を防いだ。 硬い音が響き、鉄環手にぶつかったのが判った。 刀を折るまではいかなかったが、刀刃が欠けたようだ。 

刺客が舌打ちをしながら次は環になった武器を取り出してくる。 次から次へと、どれだけ武器を所持しているんだ、こいつは! 今度は日月風火圏という奴だ。 
あれ、早く投げてくれないかな。 上手く避けられたら相手の武器が減るのに。 
だけど布が巻かれた部分をしっかりと持ち、投げる様子は見られない。 外側は鋭利な刃になっているのが判る。 あれを両手で振り回されて近付かれると太刀打ちは難しい。 今度は長刀のように鉄環手だけでは防ぎきれないだろう。 両手の武器から目を離さずに、このまま距離を保つしかない。 
体力には自信がある方だと自負していたが、鉄環手のせいで腕は重いし、足は痛いし、助けは来ないし・・・・・。 落ち着いて対峙しなくてはいけないのに、苛立ってしまう。

「武器の名前はわかるか?」
「日月風火圏って奴でしょ・・・・・って、桐?」

目の前の刺客の背後に桐が居て、目を瞠る。 
刺客が振り向く前に刀首を振り下ろして、声を出す間も与えずに昏倒させた。 物言わずに崩れ落ちる刺客に縄を打ち、猿轡までしている桐が顔を上げると深い嘆息を零す。 まるで不甲斐無い弟子に呆れているといった様子で苛立つが、とりあえず捕獲出来たのだとユーリは安堵の溜め息を吐いた。 

「短時間でよく武器の名を覚えたな。 しかし衣装が残念なことになっている」
「え? ・・・・あ、これは・・・・申し訳ないです」

九節鞭の先槍部分で袖を裂き、手首を交差させて長刀の刀身を受けたから袖も切れている。 九節鞭の鉄棒部分を掴んだ時に何処か挟んだのだろうか、指から血も出ていた。 沓も薄い布製だから槍の返しに裂けたのか血が滲んでいるのがわかり、目にすると痛みがぶり返して来た。 そういえば刺客に向かって投げ付けた簪は何処に行った?

ふと気が抜けたのかも知れない。 桐が来て、対峙していた刺客を捕らえることが出来て。

突然、降るように落ちて来た镖に急ぎ場を離れようとして、だけど四方から降り注ぐ刃に対して、どの方向に逃げたらいいのかと躊躇した。 強く腕を引かれ亭に押し込まれる。 
蹈鞴を踏んで振り返ると、桐の背が見えた。 まだ刺客が居たのかと眉間に皺を寄せた瞬間、桐の 「出るな」 の声と伸ばした手から滴り落ちる血に肌が一気にざわつく。
自分の一瞬の躊躇が味方を傷付けたのだと知り、ユーリが目を瞠った。

「き・・・桐、利き手ではないよね」
「大丈夫だ。 それより足は無事か。 動けるなら一人任せるが?」
「動けるけど、問題は武器よ。 接近戦が出来ない」

ここで動けないなんて考えは無い。 何処から镖を投げ寄越したかなど考える暇も無い。 ただ問題は相手の取り出す武器だ。 あれがあると甚振られるばかりで体力が削ぎ取られる。 取りあえず、今は呼吸を整えて強張りそうな身体から余分な力を抜くことにする。
申し訳ないけど邪魔な袖を引っ張って破った。 ノースリーブの方が動き易い。 駄目になった衣装はやはりブローチで勘弁して貰おう。 簪だって探すのも大変だ。

桐の前には黒衣の男が二人。 それを見据えながら破った袖で桐の腕をきつく縛る。

「足元には邪魔な障害があるから気を付けろ。 ああ、腰帯剣を出して来た。 あれは見せていなかったが、まあ長くてよく撓る刀だ。 見れば解かるな」

桐の言う通り、腰からひどく撓る刀を抜き出した男がじりっと近付いて来た。 長刀より少し短いが捕らえるのが難しいことには変わりない。 自分は何も持っていないのだから防御するにも限界がある。

「あれを取り除くから間を詰めて畳み込め」
「難しいことを・・・・」
「出来なければ、そこにしゃがみ込んで怯えていろ。 だが囮を買って出たのはモドキの方だ」
「だから攻撃は・・・・っ! ぐうぅっ! 了解ですっ!」

鼻で笑われたような気がして、脱力する。 直ぐに桐が腰から皮鞭のような武器を取り出して、刺客へと向けた。 一人の腰帯剣が宙を舞った瞬間、私は相手へと飛び出す。

相手が懐から小刀を出すのが見え、反射的に身体を反転させて後ろ足で刺客の身体を薙ぎ払った。 呻き声を上げて体勢を崩した刺客の脇腹に膝蹴りをし、膝が折れた処に畳み掛けるよう腰へ体重をかけて掌底を喰らわす。 踏ん張った足に痛みが走ったが、軸として留めながら止めに頚部に踵落としをした。
しかし体重が軽いのか、渾身の踵落としを受けんたはずの相手は気を失ってはくれなかった。
項を押さえながら刺客は立ち上がろうとするから直ぐに手首を掴み、四方投げを仕掛けた。 これだって決定的でないと承知だ。 次の手合いを考えながら急ぎ間を取って型を構えると、投げ飛ばした刺客から大仰な呻き声が上がった。

倒れた先の地面には镖があり、それが刺客の背や項に突き刺さったようだ。 立ち上がろうと鋭い視線で私を睨み付けながら刺客が地面の镖を一本抜こうとするのが見える。 
それはヤバイと焦った瞬間、桐から怒声が響く。

「もどきっ、昏倒させろ!」
「こ・・・昏倒っ! ごめんなさいっ!」

手首に嵌めた鉄環手で思い切り側頭部を殴りつけると、刺客はそのまま気を失ってくれた。









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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 23:40:55 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2013-10-25 金 01:04:33 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。喜んで貰えて超うれしいー!
2013-10-25 金 01:23:23 | URL | あお [編集]
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2013-10-25 金 20:30:14 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。携帯復活、おめでとう御座います!大変お困りだったことでしょう。無いと困るからね~、いまや生活必需品。仕事場に携帯を忘れると、すごっくモゾモゾするもの。自分自身にショックを受けるし。基本、サイトはPCなので書いたりするのは困らないけど、予定とかメールは携帯の方に重きを置いているから困る困る。また足を運んで頂けるよう私も精進しますね。 あ、娘のケーキはめちゃ美味しかったです。
2013-10-25 金 21:38:49 | URL | あお [編集]
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2013-10-25 金 22:30:00 | | [編集]
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2013-10-25 金 22:51:40 | | [編集]
Re: タイトルなし
おりざ様、コメントをありがとう御座います。「もどき」以外に上手い言い方が思いつかなくて(笑)人使い荒いの桐らしいと思うのだけど、人使い荒すぎましたかね?でも、まあ桐だから(爆)
2013-10-26 土 21:27:06 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。あ、強いって感じが伝わりましたか?嬉しいです。通っていた道場は対抗試合をしない方針で、マーシャルアーツというより防御専門が基本の道場だと思って下さったら嬉しいです。従姉妹があちらで通っているので参照にさせて貰いました。 ユーリが出てくると一度は出したい場面だったので今回は沢山出せて楽しかった! 問題は桐のパラレル登場か・・・・。うぬぬ。
2013-10-26 土 21:31:28 | URL | あお [編集]
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