スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
迷宮への誘い  12
「パラレルシリーズ」続きです。娘のパンプキンチーズケーキめちゃ美味しかった。そんな娘は本日ハロウィンパーティに仮装してお出掛けです。
のんびりunder更新してます。お時間ある方はどうぞ覗いて下さい。

では、どうぞ













立ち上がって振り返ると、桐も刺客を捕らえ終えていたようで、何処から出したのか縄で縛り上げると最後の締めとばかりに刀首で昏倒させていた。 あれは痛そうだとユーリが眉を顰めていると、明るい声が聞こえて顔を上げる。

「そっくりさん、お疲れ! 今警護兵が来るから、引渡しが済んだら戻ろうね」
「こ、浩大の方も・・・・終った?」
「終った、終った。 ちょいと癖があるのが二人も来たから手間取って悪かったね」

二人とも何処も負傷はしていないようで、さらに浩大は侍女服を全く汚すことなく刺客を制圧したとわかり、ユーリは自分の衣装を見下ろして溜め息を吐く。
妃用の衣装なのだからきっと高いはずだ。 簪だってあの輝きは銀だろう。
ブローチで事足りるのかしらと思い、あとでスーツのポケットを全て探しまくろうと考えた。

「まずはそっくりさんの治療だね。 歩けるかい?」
「あ、大丈夫。 あの、それより後でいいから簪を探してくれないかな。 夢中で敵に投げつけたのだけど、何処に行ったのか判らなくなって。 ・・・・弁償出来ないわ」
「大丈夫だよ。 それはたぶんお妃ちゃんのしゃっ・・・・。 まあ、心配も問題もないから、そっくりさんはまずは自分の治療を先にしよう?」

ぐいっと手を引かれて場を離れるが、耳にした言葉が引っ掛かる。 
しゃっ・・・きん?かな。 まさかね、お妃様なのに、それはないよね。 それでも申し訳ないという気持ちは拭えない。 だけど浩大がにっこりと笑うから、ユーリは何も言えなくなった。 

「そんな衣装の妃は困るからさ、老師の所に行って急いで着替えて治療して。 お妃ちゃんが心配して来た時、そんな姿を見たら大騒ぎになるよん! オレ、怒られちゃう」
「た、確かに!」

腕を引かれ走りながら見下ろすと袖は無いわ、裾は泥だらけだわ、沓も血が滲んでいるわ、確かにひどい状況だ。 これでは浩大らが夕鈴さんに睨まれてしまうだろう。 囮をすると言ったのは自分なのだから他に迷惑が掛かるのは望んでいない。

老師の許で急ぎ浩大の侍女衣装へと着替え、足の治療をして貰う。 返し部分に毒が塗布されていないと言われ、そこで恐怖が湧き上がった。 刺客として来たからには任務遂行が重要。 刺客の任務は妃の暗殺だ。 毒を仕掛けていたとしても当たり前の世界。 あの返しに毒が付着していなかったのは不幸中の幸いだと老師に安堵された。
そんな奴らが夕鈴さんに接触することを防げたのは本当に幸いだと思う。
大きな怪我もなく、囮としても一仕事終えることが出来たのだから、良しとしよう。

「さて、これで安心出来たし、明日からは私が戻るためにいろいろ作戦を実行しようと思っているの。 で、ちょとだけ手伝いを頼みたいのだけど、いいかな?」
「そっくりさん、化膿させないように暫くは大人しくしてようね」
「・・・・でも歩く分には問題は無いから。 あ、夕鈴さんには内緒にして下さい」

隠密衣装に戻った浩大が困った顔で笑うから、必死に頼み込んだ。 

「内緒って怪我のこと? 衣装のこと? それとも簪?」
「うっ。 い・・・衣装と簪はちゃんと言います。 だけど怪我のことは言わないで下さい。 きっと余計な心配を掛けちゃうと思うから」
「衣装と簪だけで余計な心配を掛けると思うがな。 怪我も後で知るより先の方がいいだろう」
「そうだよん。 歩き方でわかっちゃうだろうしさ」

浩大と桐に言われ、ユーリはうぐりと詰まる。 自分が逆の立場ならきっと心配するだろうし、あれだけボロボロになった衣装と沓を見れば、囮役をして何があったか一目瞭然だろう。 変に隠し立てせずに正直に伝えて潔く治療した方がいいのかも知れない。

「・・・・正直に話す、ことにします」
「うん、その方がいいよ。 化膿しないように薬湯を持って来るから待っててね」

にぱっと笑った浩大が部屋から出て行った。 結局迷惑を掛けてしまうのかとユーリが項垂れると、ガシガシと頭を掻き回され、むっとして顔を上げると桐が冷めた視線で見下ろして来る。 その手を払いながら髪を整えていると、今度は手を差し出された。

「・・・・・何?」
「貸した物を返して貰おうか」
「・・・・まずは口で伝えましょうね。 えっと小刀と鉄環手・・・・あ、手がすごく軽い」

この鉄環手で長刀を防いだんだと手で確かめると、傷が付いているのが判り、上手く交差させて防御出来て良かったと今頃になって背筋に寒気が走る。
小刀も使わずに済んだと思い、相手を疵付けるのはどんな形でも厭なことだと小刀を見ていると、桐に鼻で笑われた。

「小刀を持たせたが使うことは無かったようだな」
「取り出す暇なんか無かったし、あんな長い刀とか鉄鞭とかに対抗なんか出来ませんって。 防御だけしか出来ないと最初に言ってますよね、私は!」
「・・・・使えん」
「老師っ! この人、独身でしょっ! 絶対にそうだ! モテル要素が皆無!」
「・・・・煩い」

きぃ~~~っと騒ぐユーリを呆れた顔で見下ろした桐は、武器を返して貰えば用はないと部屋から出て行った。 交代で浩大が薬湯を持って姿を現し、首を傾げてくる。

「何かあったの? そっくりさんの顔、超おっかねぇ」
「使えなくて煩いって言われたのっ! 私は防御しか出来ないと何度も言ったのに!」
「いや~、あれだけ動けたら充分だよ。 で、あっちの陛下と喧嘩する時なんかに使っちゃったりするのか? 女たらしーって足払いとか?」
「・・・うぐ・・・」

初めてキスされそうになった時に膝蹴りと掌底を喰らわせたなと思い出し、ユーリは思わず視線を逸らした。 浩大が 「・・・・すげぇ」 と呟くから羞恥で顔が上げられない。
そこへ走り寄る足音が聞こえ、顔を上げると部屋に現れたのは夕鈴さんだと判る。

「ユーリ、大丈夫!? 怪我をしたって桐から聞いてっ!」
「だっ、だあいじょうぶです! だ、だけど、あのっ!」

ユーリは抱き付いて来た夕鈴を押し留めて、背後の卓上の衣装をそっと指差した。 夕鈴が目を瞠ってボロボロになった布の残骸を見る。 ゆっくりと唇が開いていく様をユーリは眉を顰めて息を詰めながら見つめ、夕鈴の肩を掴んだ。

「べ、弁償しますっ! お借りした簪も敵に投げて紛失してますが弁償しますから!」
「・・・っ!」

息を吸い込む音が聞こえ、ユーリは肩を竦め申し訳なさに項垂れるしかない。 妃が使用する衣装や宝飾なのだから高い品に決まっている。 それを破る、汚す、紛失する、だ。
申し訳なくて続けて何を言えばいいのか判らない。 

「・・・・いえ、ユーリの方が大事。 怪我は何処なの?」
「あ、足、です。 夕鈴さん、本当にごめんなさい!」

勢いよくしゃがみ込んだ夕鈴が裾を払い、ユーリの足に巻かれた包帯を凝視する。 見る見る眉間に皺が寄り蒼褪めていくから、ユーリの方が慌ててしまう。 痛みなんか時間の経過と共に消えていくけど、衣装や簪は元に戻らない品だ。 そっちの方が気になってオロオロしてしまうのに、足を掴んだまま夕鈴が動かないからユーリも動けない。

「でも刺客は退治出来たし、これでお世話になっている恩返しが出来たような気がします!」
「恩返しは私の方がしなくちゃいけないの! 沢山お世話になっていたのに誰にも何も言わずに消えようとしたのよ? 逃げるように邸を抜け出して・・・・。 この界に戻りたくて、ただそれだけを考えて! 最後に会った黎翔様にだって・・・・」

怒ったような顔を上げた夕鈴が強く言い放つとボロリと涙を零した。
ぎょっとしたユーリが慌てて袖で夕鈴の頬を拭うと、次から次へと涙が溢れ始め、そのまま手を伸ばして抱き着いて来る。 

「・・・・黎翔様に・・・・戻ったら、ありがとうと・・・・ちゃんと私は戻れたと伝えて」
「ええ、ちゃんと伝える。 だから泣かないでいいですから」
「邸の皆にも・・・・桂香さんにも李順さんにも浩大にも・・・・ありがとうって」
「幸せに国王陛下のお妃様をしてますって伝えます。 その幸せの手伝いが出来て、私も嬉しいです。 皆にその話をするのが楽しみですよ、夕鈴さん」

ただ、どうやったら戻れるのか未だ判らないけど、夕鈴さんも戻れたのだ。 
自分も絶対に戻れる。 先人が居るのだから、諦めて腐ることは無い。 もちろん諦めるつもりも無い。 まずはスーツを着ていろいろ試すのがいいだろう。 そのためには早く足を治さなきゃ。

「そっくりさーん、薬湯を飲んでねぇ。 お妃ちゃーん、陛下が来たよん」
「もう来たの!? 宰相に呼ばれていたはずなのに」
「だって夕鈴が急に部屋から居なくなるから心配してっ! どうして泣いているのだ」
「なっ、泣いて・・・・これはユーリが無事で安心して」

浩大から薬湯を受け取ると、彼はすぐに部屋から出て行った。 
老師を見ると、にやにやしながら首を振っている。 見慣れたとはいえ、突然現れた国王陛下が夕鈴さんを攫うようにぎゅうぎゅう抱き締めてるのを目の当たりにするのは面映ゆいような、恥ずかしい気になる。 人前では会長モードの黎翔を思い出し、脳裏に浮かんだ凛々しい夫の姿に惚けていると、国王陛下と目が合った。

「ユーリ、怪我を・・・・したのか。 大事はないか?」
「あ、大丈夫です! 軽症ですので。 だけど、あの・・・・衣装がボロボロになってしまい、どう弁償したらいいのかと。 出来ましたらブローチをやはり受け取って貰いたいと」
「弁償とか大丈夫だから! それよりユーリは怪我を治すことだけに専念して?」

陛下の胸を押し出しながら真っ赤な顔を向けて来る夕鈴さんに頷いて、顔を背ける。 妃を抱き上げる国王陛下が何故かすごっく嬉しそうな顔を夕鈴さんに摺り寄せているから、正直見ていられない。 人のいちゃいちゃって、何だか妙に恥ずかしい。 

ユーリが頬を染めて俯いてしまうから、余計に恥ずかしくて陛下の胸を押し出すのだが更に腕の力が増すばかりだ。 おまけにユーリの前でいちゃいちゃ演技をしようと囁いてくるから目を瞠ってしまう。 必要ないでしょうと言いたいが、目を輝かせる陛下に逆らえる気がしない。
人が恥ずかしいと思う演技をさせようとするなんて、本当にこの陛下は意地悪だ。
それに妃衣装や簪は私の借金に加算されるだろう。 今回は危険手当が出ないから、そのままマルッと借金加算されることだろう。 ユーリが悪い訳じゃないのだけど、怪我までさせてしまい、最初から自分が囮になれば良かったと思わず唇を噛んでしまう。 

「妃の言う通りだ。 まずはその身を労わり、怪我を治すように。 その後で戻れる方法を全力で模索致そう。 薬湯を飲み、まずは部屋で休むように」
「ユーリ、私が看病するね! 後で部屋に行くから少し休んでて」
「は、はいっ!」
「悪いがユーリ、その怪我のことは内密に頼む。 妃が狙われたと口外せぬように」
「わ、わかりました!」

夕鈴さんの耳元で何か囁きながら抱き合っている二人を前に顔を上げることが出来ない。 取り合えず薬湯を飲み干し、苦さに身悶えしながら部屋へと急ぐことにした。 
老師が 「走るでない!」 と叫ぶが、もう見ていることが出来ないと早足になってしまう。

部屋に飛び込み卓上の干菓子を口いっぱいに頬張りながら茶器の水を飲み干した。 

「にっ・・・・苦いっ!」
「薬湯は苦いよな~、でも化膿しないで済むから勘弁な~」

窓からひょいと顔を出した浩大が懐から柿を取り出して放り投げて来る。 まだ口の中に苦味が充満している私は直ぐに柿に齧り付いた。 

「今日は疲れただろうからさ、よく眠ってね。 戻る手伝いをするよう言われているから、足が治ったら何でも言ってちょうだいな」
「ありがとう。 浩大も疲れたでしょう。 で、どのくらいで治るかな、足」
「深くは無いから・・・・。 三、四日ってところかな?」
「さ・・・・、浩大・・・・気持ち悪い・・・・」

急に目の前がぐらりと回る。 
動悸が激しくなり吐き気が込み上げて来た。 口元を押さえる手が痺れた感じに目を瞠る。 
手にした柿が床を転がるのを目で追いながら視界が暗くなるのを感じ、ユーリは猛烈な吐き気と共に意識を失った。

「そっくりちゃ・・・・っ!」







→ 次へ

スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 15:05:12 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-10-27 日 16:32:29 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-10-27 日 16:52:09 | | [編集]
Re: タイトルなし
おりざ様、コメントをありがとう御座います。はい、やっとリターンに漕ぎ着けた。思ったよりも動き部分に力を入れちゃって長くなってしまってます。あ、バースディイラスト、マジにありがとう御座います。感動です。
2013-10-27 日 17:17:28 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。そうそう次から次へと(笑)やっと後半突入です。パラレルは長くなりがちかな?underの陛下も絶好調です。ええ、本能のままに書かせて貰っていますから(その割には手が遅いのですが)引き続きよろしくお付き合いお願い致します。
2013-10-27 日 17:19:46 | URL | あお [編集]
えっユーリに毒?いつ?あれ?と読み返してしまいました
もう話の展開が面白くて面白くて
読んでても脳内劇場で陛下や夕鈴、浩大 達が動きます
惜しいかな桐さんだけ顔が思い浮かべません…残念…
次もゆるゆる待ってます
2013-10-27 日 22:11:08 | URL | 名無しの読み手 [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-10-27 日 23:03:23 | | [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。説明は次回になります。桐の顔ね・・・・。目が二つで真ん中に鼻があって、口がひとつです。結構色は白いけど病的ではない。(元刺客で闇の商売人だから)そんな感じでお願いします(笑)
2013-10-28 月 02:43:04 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。横浜まで友達と行ってハロウィン参加。まあ、生物と社会のテストが良かったから文句も言えない。仮装は赤頭巾ちゃんです。ただし血まみれの。前日までミシンで衣装作っていたから、天気が良くてよかったわ~。 あんだーは次でまとめたいと思っています。じゃないと倒れますもの、絶対。あ、もう倒れているのか(爆) SNS更新してますので、宜しければご覧下さいませ。あっちの陛下は更に壊れていますが。
2013-10-28 月 02:47:12 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。