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迷宮への誘い  13
「パラレルシリーズ」続きです。よっしゃ、もう少しっ! 急に寒くなって来たので自転車に乗る時、風が冷たくて辛い。これで雨だったら・・・・・・。考えるだけで出社拒否。気分は水月さんです。まあ、無理ですけど(涙)


では、どうぞ













浩大が舌打ちをしながら膝を立てた上にユーリをうつ伏せ、咥内に指を突っ込み急ぎ嘔吐させる。 意識を失ったユーリからの吐瀉物に、浩大は眉を顰めて口笛を吹いた。 
姿を見せた隠密に急ぎ解毒剤を用意するよう伝え、卓上の茶器の水を調べるように重ねる。 
伝え終えると携帯している水の入った竹筒を仰向けにしたユーリの口中へ流し入れ、飲み込んだのを確認して吐かせる作業を繰り返す。
されるがままのユーリの顔色が一層蒼褪め、指先が痙攣を始めたのを視界の端に浩大は声を掛け続けながら水を注ぎ込んだ。 あとで多少咽喉が傷もうが、吸収されるよりはいいと嘔吐させていると、ようやく解毒剤が届けられる。

「あとで怒るなよ!」

浩大がユーリの襟元を掴み、勢いよく頬を強打する。 
痛みに顰められた顔に浩大が強く言い放った。

「いいか、寝てる場合じゃねぇ! かなり苦いけど我慢しろ!」
「・・・・ぅう?」

解毒剤を運んできた隠密がユーリの背後に回わり顎を持ち上げ、無理やり開けた口に棒を噛ませる。 その状態で浩大が解毒剤を指に挟み咽喉奥へと突っ込み、水を注ぎ込む。 強烈な苦味を伴う解毒剤には毒の吸着のため炭が使われており、少しずつ流される水を反射的に吐き出そうとすると、顎を持ち上げられ無理やり嚥下させられた。

「・・・が、い・・・、こうだ・・・」
「もう少し我慢!」

余りの苦味と苦しさにユーリが抗うも、背後から手を拘束され、何度も少量ずつ水が流し込まれ嚥下するしかない。 朦朧とした意識のまま、もうこれ以上飲むのは無理だと首を振ろうにも、顎が固定され、されるがままの状態が続いた。

「これで最後だから、そっくりちゃん!」
「も・・・・くるし・・・・・ぐぅ・・・っ」
「はい、終りだよ。 あとはこのまま深く眠っていいから。 お疲れさん!」

暖かく濡れたもので顔を拭かれる感覚を最後にユーリは意識を手放した。





目が覚めたユーリは見慣れない天井と薄暗さに、暫くの間呆けていたが、ようやく意識が明瞭となり起き上がろうとして四肢の痺れに戸惑ってしまう。 
更に咽喉が焼け付くように痛いと思い、重い手でどうにか天蓋を払うと侍女がいた。

「あ、起きた? ちょい待ってな、甘い飲み物用意するから」
「・・・・・こ」

侍女が浩大と判るが、声を出そうとして激しく噎せ込み咽喉の痛みに身悶える。 
頭痛と咽喉の激しい痛み、四肢の痺れと共に記憶が徐々に鮮明になってきた。 急な吐き気と胸苦しさに昏倒した自分を思い出し、差し出された茶杯から漂う甘い香りに眉を寄せる。

「薬湯を飲む前に、まずは咽喉を労わろう? 説明するから、まずは飲んでね」
「・・・・・・・」

寝台に腰掛けた体勢で、浩大に茶杯を支えられながら痛む咽喉に流し込む。 柔らかい甘さに口から安堵の溜め息が漏れ、そしてゆっくりと浩大を見た。

「たぶん、お妃ちゃん狙いで部屋の茶器に毒が盛られていたんだと思う。 あっちは全て毒見済みを用意しているけど、こっちの部屋は盲点だった。 マジにごめんな」

眉根を下げる浩大にユーリは首をふるりと振った。 ただ事情が飲み込めた今、後宮という特殊な空間に、どれだけの悪意が渦巻いているのだろうと沸々と怒りが湧く。 
ふと、再び侍女姿になっている浩大に口角が上がる。 この姿でずっと警護してくれていたんだと思うと、身体から力が抜けていくようだ。
笑みが浮かんだと同時に左頬が傷み、手を宛がうと浩大から謝罪された。 
一度意識を失った私に薬を飲ませるため、強く頬を叩いたのだと言う。 それなら仕方がないと笑うと咥内に痛みが走り、口の中も切れていると気付かされる。 憶えていないけど、かなり強く叩いたのだろう。 現れた刺客を一人で二人も倒した浩大だもの、容赦なさそうだ。 

「今度は薬湯。 苦いけど、口直しがあるから」

薬湯を飲み口直しの菓子を口にしている間、浩大は足の傷の処置をしてくれた。 気付けば一晩経過していると判り、窓に視線を向けると陽はとうに高く昇っている。 

「毒・・・・・を仕掛けていた人物は特定出来たの?」
「それは桐が動いている。 まあ、そっくりちゃんを妃と間違えたってことは、お妃ちゃん付きの侍女じゃないってこと。 それでいて後宮に足を運び、だけど妃の部屋を間違えた。 まぬけだよね~。 そうなると自ずと範囲は狭まるから捕まえるのも時間の問題だよ」
「いつも・・・・こんなのが、日常?」

思っていたことを口にすると胸が苦しくなる。 こんな現状が日常だなんて、どれだけ警護されても不安は消えないだろう。 あれだけ国王陛下が妃の許を訪れるのも解かる気がした。 
仕事をサボっている訳ではなく、妃が心配だから仕事の合間を縫って顔を見に来るんだ。

「優秀なオレがいるのに、こんなのが日常だなんて思われるのは心外~。 昨日の刺客らは誘き寄せて、裏を取りたかっただけ。 いつもならその前に叩き出してるよ」

そうなのか。 そうだったらいい。 危ない危険な目にばかり遭うのはおかしいもの。
夕鈴さんは国王陛下の傍にいたいと、戻りたいと願ってこの界に戻れたんだ。
幸せになってなきゃ困る。 王様の唯一として、ただ一人の愛しい人として、心から願われ傍にいることを許された人なのだから。 それでなくては悲しすぎる。  
夕鈴さんは幸せだと黎翔に伝えることが出来ない。 ここまで来て、辛いことや怖いことばかりが夕鈴さんの周りに犇いているなんて思いたくない。

「今回、が・・・・特別?」
「そうだよ。 有能な隠密がいるし、陛下もいる。 囮をしてくれたそっくりちゃんのお蔭で早々に捕まえることが出来た。 あとはそっくりちゃんが元いた界に戻れたら万々歳ってことだよな。 何をしたらいいのか、胃と足を治しながら考えててね~」

気付けば卓上の菓子は殆どが浩大の口へと消え、咽喉の痛みを消すための甘い蜜湯を飲みながらユーリは今のところ考えていた案を、早速いくつか話してみることにした。
 
現れた場所である寝台で寝てみる案。 駄目なら夕鈴さんが消えたきっかけの池に落ちてみる案。 鏡を見て自己催眠をかけてみる案。 思い切り殴られてみる案。

「最後のは駄目だろう? それに誰がそっくりさんを殴るのさ! 無理無理」
「・・・・痛いのは却下か。 じゃあ夕鈴さんの寝台で寝てみて、駄目なら池に落ちるのが一番かな。 スーツのままで移動出来るしね。 出来れば天気が良い日がいいな」

秋も深まり水温も低いだろう。 落ちて戻れるならいいが、濡れただけで失敗でしたじゃ、考えただけで寒気がする。 思わず腕を擦っていると、浩大が額に触れて口を尖らせた。 

「熱あがってる。 ほら寝て、寝て。 このまま熱が上がったら更に苦い薬湯になるよん」
「それは厭だ。 ・・・・じゃあ、体調が戻ったら協力してね」

横になった途端、ぐらりと揺れる感じに身を投じて瞼を閉じた。 
こんな場所でも、国王陛下の傍にいたいという夕鈴さんの強さが羨ましいと少し思う。 
どんな世界でも愛しい人がいるなら、見方が変わるのだろう。 自分を唯一と言ってくれる、大好きな人が手を取れる距離にいるというのは、なんて幸せなのだろうか。 

早く、黎翔に逢いたい。
逢って確かめたい。 彼の熱を、声を、腕の強さを。

私を幸せにしたいと言ってくれた、自分を幸せにして欲しいと言った人。
平凡な私の何処がいいのか判らないけど、振り回されるのが楽しいと笑う人。

私の大好きな人。
逢いたい。 触れたい。 黎翔の声が、聴きたい・・・・・。




「・・・・ユーリ、痛みはどうだ?」

聞こえて来た黎翔の声に蕩けた頭がゆっくり目覚める。 
あれ? なんだろう、長い夢を見ていたような気がしてきた。 
逢いたいだなんて、どうして思ったのだろうか。 いつでも傍にいてくれる人なのに。 
傍にいて欲しいと望んでくれた、私の愛しい人の声に目を開けられないまま声を出した。 

「れ・・・・黎翔。 ・・・手・・・・握って・・・」 

布団から手を出して甘えてみた。 どうしたのかな、咽喉が痛くて頭がぼうっとする。
そろりと触れてくる手に泣きたくなるのは如何してなんだろうか。 
引き寄せて頬に合わせると冷たい感触に力が抜けていく。 
ああ、やっぱり夢だったんだ。 なんて厭な夢を見たんだろう。 黎翔が傍からいなくなるなんて、今の私には耐えられない。 そんなのは夢でも厭。

「冷たくて・・・・気持ち、いい」
「そうか。 まだ熱があるようだな。 ゆっくり休むように」
「ん・・・・。 れ、いしょ・・・・も、早く・・・・寝てね」

夢で良かった。 黎翔が傍にいる。 
そう思うだけで安心出来る自分は、以前より弱くなったのかな。
甘えていいと腕を広げてくれる場所が出来て、私はよく泣くようになった。 我慢することはないと言ってくれる腕の中で、何度頬を摺り寄せて縋ったことだろう。 あの大きな腕の中は気持ちがいい。 私だけがいいと言ってくれる甘い檻。 

それなのに何故悲しいのだろう。
触れた熱が離れたからなのか。
まだ夢から覚めていないような気がして、胸が重く感じる。 重くて、苦しくて。
もう一度名前を紡ごうとして、眠りに落ちていく。
落ちたくないと願いながら、それでも深く、身体も思考も落ちていく気がした。





「・・・・・・」

目を閉じているから夕鈴そのものにしか見えない。 声も同じで、その声が黎翔と名を紡ぐ。
眠気のために甘えたような声音が妙な感じで、同じような言が夕鈴からもいつか聞かせて貰えるのだろうかと頬が緩んでしまう。 振り向くと心配げな顔で僕を見上げる夕鈴がいて、小さく頷くと安堵の表情を浮かべた。

「浩大、後はお願いするね。 何かあったら直ぐに侍医を呼んでね」
「了解だよ。 お妃ちゃん」

侍女姿の浩大が裾を捲くって椅子に腰掛けながら菓子を口に運んでいる。 念のために一晩浩大を配することにして、夕鈴を伴い部屋を出た。
昨夜倒れたユーリは丸一日経過して、体調に問題はないと侍医から報告が来ている。 毒による後遺症もないだろうと、初期の処置が功を奏したと話していた。
直前に飲んだ薬湯が、後から飲んだ毒を薄める結果となったらしいが、それを万が一夕鈴が口にしていたとしたら・・・・。 考えるだけでもおぞましい。

「・・・・ユーリ、陛下のことを黎翔様と思っていましたね」

隣を歩く夕鈴が涙目で呟く。 少し俯き加減で歩く君を見つめながら、夕鈴もあの界で、僕の知らない場所で、さっきのユーリのように黎翔に向かい、手を差し出したことがあったのだろうかと考え、思わず眉が寄った。 あちらの界の僕も同じ顔だと夕鈴もユーリも揃って言うが、実際にはそれが真実なのか解からない。

ただ、夕鈴は確かに後宮から姿を消し、そして突然部屋へ戻って来た。 
有り得ないことだと思うが、それを証明するように今度は青い瞳の夕鈴に似た女性が僕の名を紡ぎながら、僕の知り得ない界の話を君とする。 懐かしいと涙する君に苛立ちに似た焦燥感を持つが、その気持ちは君に伝わらない。 

手を伸ばして夕鈴の手を握ると、悲しげな笑みを浮かべた君が僕を見上げてくる。

「早く・・・・・戻れるといいのに・・・・」

夕鈴もあっちの黎翔と手を握った? 僕でない僕の前で、そんな顔をして涙を零した?
夕鈴と同じ顔の女性と結婚したという黎翔は、何を思って君と過ごしたのだろう。
手の届かない異世界にまで悋気を馳せる僕を、君は何と思うだろうか。 








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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 02:22:13 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2013-10-29 火 02:49:43 | | [編集]
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2013-10-29 火 09:05:58 | | [編集]
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2013-10-29 火 16:59:28 | | [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメントをありがとう御座います。キュンキュン、頂きましたー!(笑)自分に会ったら、というか、二組が出会ったら楽しいだろうなと妄想しながら、そうなったら浩大も出したくなるなと一人笑い。今回、夕鈴は痛い目に遭わすつもりはないのですが、次に考えている話では心身ともにすごっく痛くなります(爆)
2013-10-29 火 21:38:29 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。口移しも正直考えたのですが、浩大にそれは無理と止めました。浩大にそれをやらせると、私の中の大ちゃんが・・・・・穢れてしまう!(爆)炭はエジプト時代から使われていた毒消しです。当時は牛乳も使われていたそうですが、夕鈴たちのいる時代、国で口にするのかわからなかったので(調べてないだけ~)却下しました。 熱に浮かされたユーリの呟きまでやっと来れたと、わたしゃ安堵です。あとは戻るだけ! もう少しお付き合い下さいませ。 気温が下がって泣きそうですが、どうにか帰りは降られませんでした。でも寒い。
2013-10-29 火 21:47:06 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。茶器でしたー。いや、余り捻っていません。(笑)侍女姿の浩大可愛い? わーい! 目が大きいから絶対に可愛いですよね。もしかすると夕鈴より・・・?
2013-10-29 火 22:12:52 | URL | あお [編集]
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