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迷宮への誘い  14
「パラレルシリーズ」続きです。
久し振りに歯科受診。やっぱり担当の歯科医はイケメン。マスクを外して話すから、思わず歯並びを見てしまうが、流石綺麗な歯並び。何度見ても尻も小さい。って言うか、腰の位置が高い。その後息子を見てがっかりするけど、間違いなく私が生んだ子だ。それを思うと余計に・・・・。


では、どうぞ












目が覚めると木製の天井が目に映り、横を向くと見慣れぬ天蓋が下がっている。
視界に映る光景にユーリは鼻の奥が熱くなった。
掛け布を握って天蓋に背を向けて丸くなる。 昨日懐かしい冷たさに心を震わせたような覚えがあるだけに、今は一人、異界の地だと思い知らされた。 低く掠れた声に甘えた覚えがあったが、全ては夢の世界だったのかと一層切なさが込み上げてくる。 
強く目を瞑ると瞼の裏に黎翔が浮かび、そしてゆっくりと闇に消えていく気がした。

それでも諦めた訳じゃない。 いい夢を見たのだと気持ちを切り替えればいい。
戻れないと決まった訳じゃないし、幸先のいい夢を見たのだと思い込むことにする。
今はそう思うしかないのだとしても。 
掛け布の中で丸まった身体を伸ばし、思い切り背伸びをして深呼吸したユーリは勢いよく起き上がり、天蓋を払って寝台から飛び出した。

「おはよう、浩大!」
「おっと、そっくりちゃん! ちょ・・・ちょっと、やばい!」
「え・・・・何がやばい?」

寝台から出ると昨日と同じ侍女姿の浩大がいて、そうかここは後宮だと思い出す。 男性の名前を呼ぶのは不味いのかしらと口を押さえると、背を向けた浩大が乾いた笑いを零した。

「熱とか痛みとかで、のた打ち回っていたのは知ってるけど、すごい恰好だよ」
「・・・・・うわっ!」

ここに来て数日、多少慣れてきたはずの夜着が驚くほどに乱れていて、羞恥に慌てて背を向ける。 一旦離れた浩大が、湯の入った桶と布を用意し、汗を拭ってねと部屋から出て行った。 
夜の間に随分と寝汗を掻いたようで、少し熱めの濡れ布巾で身体を拭うとさっぱりする。 夜着を着替えて上着を羽織り、終わりましたと隣室の浩大に声を掛けると、今度は包帯などの処置道具を持って来た。 

浩大が足の治療をしながら、満足そうな笑みを見せてくれる。 足の傷は化膿することなく、大方痛みも消えていた。 念のために薬湯を飲むよう言われたが、歩くだけなら問題はないと浩大に告げられ、ユーリは早速戻るための試しをしたいと話しを持ち掛けてみる。 
だけど浩大に、それは無理だと止められてしまう。

「茶器に毒を仕込んだ奴がまだ捕まってないから駄目。 そんな時にさ、お妃ちゃんのそっくりちゃんが後宮の庭園に飛び込んだら大変だよ? 妃がいなくなったと噂があっという間に駆け巡り、妃推挙の話が押し寄せてくるだろうから許可は出来ないね」
「だって私は夕鈴さんの従姉妹って設定でしょ?」
「それでも奇怪しいだろう。 従姉妹だからって池に飛び込んじゃ」
「・・・・・じゃあ、いつ飛び込むのよ」

ユーリが眉間に皺を寄せて見下ろすと、治療を終えた浩大が立ち上がり困った顔を見せた。

「まずは足の怪我が完全に治ってから。 でも飛び込むの決定? 超冷たいよ、水」
「だって夕鈴さんは池に落ちて異界に行ったのでしょう?」
「う~ん、そうだけどさぁ。 ・・・・難しいことを希望するなぁ・・・・」
「可能性があるなら、何でもしてみたいの」

その前に夕鈴さんの寝台で一度寝るという案も実行したい。 出来れば黎翔の夢を見た今日の夜にでも直ぐに試してみたいが、足を治すのが先と言われるとユーリは我慢するしかなく、悔しそうに包帯が巻かれた足元を見つめた。 足指も動かせるし怪我も軽いものなのだが、心配して貰っている以上は無碍に出来ない。
 
そこへ声が掛かり、浩大が入り口へ向かった。 どう見ても侍女らしい、いや女らしい所作ではない動きに、そんな調子で大丈夫かと眉を寄せていると、夕鈴さんが部屋に入って来て私を見るなり泣きそうな顔を見せる。 先日の庭園散策時と違って女らしい所作をしなかったのは、夕鈴さんだと判ってのことだったのだろうか。 だとするなら、隠密ってすごい。
そして泣きそうな顔で近付いて来た夕鈴さんは侍女姿の浩大を気にすることなく真っ直ぐに私の前に来て、少し蒼褪めて見える顔を更に顰めてきた。

「ユーリッ! もう気持ち悪くない? 足の痛みはどう? 咽喉の痛みは? 何か食べたいものはある? 熱は下がった? 眩暈はしない? 何か飲む?」
「だっ、大丈夫です!」

夕鈴さんからの矢継ぎ早の質問に簡潔に答えると、彼女は持っていた沢山の果物を卓に置き、私の額に手を宛がった。 潤んだ瞳で小さく安堵の表情を浮かべる夕鈴さんに笑みを向けると、今度は深々と頭を下げられる。

「・・・・後宮のことで、ユーリにいろいろ迷惑を掛けてごめんなさい」
「自分から望んだことです。 夕鈴さんが御気にされることではありませんから!」

頭を下げた夕鈴さんの肩を掴み、急ぎ顔を覗き込む。 申し訳ないと涙目の彼女に笑みを浮かべて、お願いを持ち掛けた。

「それより足が治ったら、一度夕鈴さんの寝台で一晩寝かせて貰ってもいいでしょうか。 目が覚めたら夕鈴さんの寝台だったから、もう一度同じ場所で寝てみようかと思って」
「もちろん! でも治ったらね。 そのままで戻ったら黎翔様が酷く心配するから」

妃からの了承を得てほっとしたユーリは早く足が治るようにと後は願うばかりとなった。 残る心配は茶器に毒を仕掛けた、まだ捕まっていないという敵のこと。 
その話になると、夕鈴さんはあっさりと答えてくれた。

「大丈夫よ。 直ぐに捕まえてユーリの分もばっちり仕置きして貰うから!」
「そうそう、昨日も言っただろう? オレを含めて有能な隠密がいるって」
「う、うん。 それならいいんだけど、夕鈴さんも気を付けてね。 あ、だけど陛下がいつも一緒だから大丈夫か。 すごっく心配性なのね。 今日もそろそろ見えるかな?」

ぽっと頬を染める夕鈴さんが可愛らしい。 と、同時に懸念していた人物が顔を出す。

「夕鈴っ! やはりこっちか」
「陛下!? 御政務はどうされましたか! 朝議は終ったのですか?」

大股で部屋に現れた人物は浩大にも私にも一瞥をくれず、真っ直ぐに夕鈴さんの前に向かい、その手を攫って自分の胸へと引き寄せる。 妃しか見えていない、その潔さにユーリは思わず見惚れ、浩大に振り向くと彼はニヤニヤと笑いながら肩を竦ませた。 ああ、いつものことなのねと納得するとユーリも口角が上がってしまう。

「ちょっ、陛下! ここはユーリの部屋ですよ! 女性の部屋に断りも無く足を踏み入れるとは何事ですか。 ユーリに一言謝って下さいっ!」

真っ赤な顔で抗う夕鈴さんが国王陛下の胸を押し出し、睨み上げるのさえ微笑ましい。 
国王陛下が振り向き、少し目を瞠って見つめて来るから可笑しくなった。 部屋に妻以外にも居たのかという表情を見せるから、我慢出来なくなって笑い声を上げてしまう。

「夕鈴さんしか見えなかったんですよね。 大丈夫ですよ、気にしてませんから」
「いや、失礼をした。 ・・・・朝議を終えて妃の部屋を訪ねると、侍女が一人で部屋から出たと言うから心配したんだ。 後宮内とはいえ、侍女を伴うべきだろう」
「何を言っているんですか、ここは二部屋離れただけの場所ですよ? 第一、朝議が終ったら直ぐに執務室に向かうべきではないですか? 李順さんに怒られるのが判っているのに、どうして後宮に戻って来るのですか! 朝から私に何の用があるって言うんですか? ユーリの部屋に突然足を踏み入れる暇が」
「夕鈴さんっ! もっ、もう、そこまでにっ!」

ぽんぽんっと畳み掛けるように喋り出した妃に対し、国王陛下の表情がゆるりと変化する。 
それはユーリには痛いほど覚えがある光景で、黎翔と同じ顔の国王陛下が続いて何を口にするのか想像に易い。 

「愛しい妻の心配をする夫を蔑ろにするというのか? 少し、二人で話し合おうか」
「・・・・っ! あ、あの・・・・私はユーリの看病に」
「少しと言った。 ユーリ、失礼する」

膝を攫われ抱き上げられた夕鈴さんが、あっという間に部屋から国王陛下と共に出て行く。
ああ、やっぱり同じだ。 
黎翔も拗ねると同じことを言って、同じように人を攫うから困ったものだと苦笑してしまう。
顔だけじゃなく性格まで似ていると思うと、やはり黎翔と何か繋がりがあるのかしらと不思議な感じがする。 
異世界って面白いと、二人が消えた部屋の入り口を眺めていると、浩大が肩を突いて来た。 振り返ると窓を指差され視線を向けると、そこには妃を抱き上げたまま庭園を歩く国王陛下の姿が見える。 
抱き上げられた夕鈴さんが何やら騒いでいるようだが、国王陛下は意に介さず確固たる足取りでどんどん庭園の奥へと進んで行き、二人が木立の向こう側に消えて行った。

「仲良しね~」
「仲良しだろ~」

ほのぼのと眺めていると、急に目の前に影が差す。 背後から回って来た何かの影だと思った瞬間、その背後に向けて肘打ちを仕掛けるが弾かれてしまった。 
腰を据えて振り返ると、そこには無表情男がいて、思わず目を眇める。

「・・・・反応が遅いな」

呟かれた言葉を耳に、愕然としてしまう。
もう、本当にがっかりだ、この男。 
それに後宮だからと浩大は侍女の姿をしているのに、この男は普通の衣装ではないか。
いいのか、それで。 後宮って、国王陛下以外の男性は立ち入れない場所なんでしょう?

だけど気にする風も無く、浩大が可愛らしく首を傾げて桐に問い掛ける。 

「桐もそっくりちゃんの見舞いか?」
「いや、捕獲した奴のことで浩大に話があってな。 ちょっといいか?」
「あ、じゃあ私は老師の部屋に行くね。 だから浩大はお仕事して下さい」
「それなら侍女の衣装で行ってちょうだいね。 今ならオレの温もり付きだよん」
「・・・・はははは。 温かいわ、本当に」

下に隠密衣装を着ていた浩大が侍女衣装を脱いで私の肩に掛けて寄越す。 上着を脱いで袖を通して、どうにか慣れたきた衣装を整えていると視線を感じ、顔を上げると桐が無表情のまま何か言いたげに、私をじっと見下ろしていた。 着方がおかしいのかしらと身に着けた衣装を見下ろすが、問題ないように思える。

「・・・・何?」
「・・・・浩大、もどきはどの程度動かせる?」

私の問い掛けを無視して、浩大に話し掛けるから殺意が揺らめいてしまう。

「駄目だよ~。 毒を飲んでまだ一日半。 下手に動くと熱が上がっちゃうだろうし、熱が出たら最悪、四肢が痺れて痙攣を起こす可能性がある。 ・・・・・・桐、何だ?」
「では場を移すくらいなら大丈夫か? お妃は陛下が連れて行っただろう。 もどきも急ぎ場を移す必要が出てきた。 まあ・・・・浩大が考えるようなことは流石にしない」

話しの内容に眉が寄る。 もしかして茶杯に毒を仕込んだ輩が忍び込んだというのだろうか。 
桐の表情ではどれだけ深刻な状況なのかが窺い知れない。 浩大を見るとこっちも飄々として皆目見当も付かない。 隠密って表情を隠すのが上手いのかしら?
アメリカの浩大を思い出すが、彼とは珠に会っても仕事のことを尋ねたことが無いから参考にならないかと溜め息を吐く。

「歩く分には支障ないよ。 じゃあ、そっくりちゃんは桐の誘導で場を移動してね」
「わかった。 あ・・・・、念のためにスーツを持って行ってもいい?」

部屋を移動するなら戻るために必要なスーツを持って行きたい。 茶杯に毒を仕掛けられた時、変な衣装があると持ち逃げされなくて良かったと今更ながらに思い、ぎゅっと握り締めた。
すると桐が懐から白い布を取り出し、おもむろに突き出してくる。

「これに包め。 汚れたら困るだろう」

初めて桐に気遣いを受けたような気がすると、ユーリが驚きに目を瞠っていると、目を細めて嫌そうな顔で舌打ちまでされた。 
はいはい、さっさと包みます。

荷物をまとめている間に、浩大が部屋を離れ、桐が先を促してきた。 訊いても答えてはくれそうもない気がするけど、ものは試しと尋ねてみる。

「毒を仕掛けたヒトが侵入した? それでお妃様と私は移動?」
「わかっているなら訊くことはないだろう」
「・・・・確かめたかったんです」

そうか、やっぱりそうなんだ。 だけど部屋にいた方が囮になるのではないだろうか。 
私の考えが解かったようで、足を止めた桐が振り向いて嘆息を零す。

「毒を煽ったばかりだ。 無茶はさせられん。 ・・・・流石にな」

足の怪我だけなら無茶をさせたということだろうか。 いや、穿った考えは失礼かも知れない。
信用すると莫迦を見そうだが、隠密としてなら腕は確かなのだろう。 それにしても薬湯を飲んだにも拘らず、息が切れるのが早い。 桐の歩きが早いのか、体力がごっそりと無くなっているのか、薄っすらと額に汗が滲む。 丸一日以上寝台で寝っぱなしだったせいか、熱があったためか手にした包みさえ持っているのが覚束無くなる。

立ち入り禁止区域に来たと解かった時点で力が抜けそうになり、ユーリは手摺に手を掛けて足を止めた。 振り向いた桐が眉を顰めるけど、声が出ない。 ここまで体力が奪われているのかと荒くなった息を整えようとして、噎せ込み咽喉が痛みをあげる。 一気に足から力が抜け、崩れ落ちそうになると大仰な舌打ちと共に膝裏を攫われ、抱き上げられていた。 

「ぐ・・・・っ、げほっ・・・。 あら、お優しい・・・・」
「それ以上喋ると割増料金が発生するぞ」

がっかりだなんて思ったのを訂正してあげよう。 脱力して身を任せることにすると歩行速度が増して、桐は早足だと思っていたけど私に合わせようと彼なりにゆっくり歩いていたのだと気付かされる。 気遣いが解かり難い人だなと苦笑すると、ひどく揺さ振られた。 
・・・・・やっぱり、がっかりだ。



「顔が赤いが熱があがったか? ・・・・少し発汗しているな、無理はいかんぞ」

心配げな老師の言葉に乾いた笑いが零れそうになったが、部屋に奴がいるので堪えた。
横になると更に体力低下が増しそうだったので、椅子に腰掛け卓にうつ伏せる。 荷物を枕代わりに目を閉じると、薬湯のせいかなのか眠気が出てきた。 揺さ振られたせいで目が回っているのも原因か?

「老師、後で顔を出す。 それまでコレを見ていてくれ」
「わかっておる。 ゆうりとか言ったな、上着を羽織り暖かくしておけ」
「・・・・ありがとう、ございます」

浩大の言う通り、ちゃんと全部が治るまでは池に飛び込むのは無理なのかな。 10分も歩いていないのに疲労している体力に驚きを隠せない。
 
早く戻りたいのに。 ・・・・あの甘い夢の感触が消えない内に、早く。
少しでも早く黎翔に逢いたいのに。


肩に掛けられた上着を指で引っ張り、私は泣きそうな顔を隠した。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 15:14:14 | トラックバック(0) | コメント(8)
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2013-10-30 水 16:41:24 | | [編集]
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2013-10-30 水 17:40:24 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。さっさと帰らせて・・・・の辺りに、もう身悶えするほど爆笑ですわ。マジに桐が御気にで超嬉しいけど。大丈夫です、そろそろ帰しますから。(笑)
2013-10-30 水 18:59:02 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ぶんた様、初めまして。そしてコメントをありがとう御座います。まずは読んで下さってありがとうです!コメントもうれしいです。読み逃げでも問題ないです。自己満足の世界ですので、自分が楽しく書いている散文ですから~。でもたまには寄ったよーのコメントがあると嬉しいです(正直者)
2013-10-30 水 20:27:45 | URL | あお [編集]
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2013-10-30 水 20:38:21 | | [編集]
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2013-10-30 水 23:05:10 | | [編集]
Re: タイトルなし
おりざ様、コメントをありがとう御座います。桐の言う割増料金ってタクシーよりは絶対高いよね。(笑)揺らされますので、酔い止めの服用をお勧めいたします。
2013-10-31 木 21:23:16 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。いやいやいや、姫抱っことは限りませんよ。姫抱っこでも有りですけど、想像して貰おうと特に抱き方は(この書き方も卑猥か?)お好きにご想像下さい。そして、存分に揺さ振られて下さい。(爆)あと、やっぱり長くなる話にいつもお付き合い下さり、感謝です。
2013-10-31 木 21:34:38 | URL | あお [編集]
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