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迷宮への誘い  15
「パラレルシリーズ」続き。 オリジナルキャラが褒められると嬉しい反面、陛下と夕鈴を必死に書こうとして書けないジレンマに自嘲してます。 今回も必至に書いております(笑)


では、どうぞ












朝に飲んだ薬湯のせいか、ユーリはぐっすりと深く眠っていたようだ。 
昼を過ぎたのか、ぞくりとした肌寒さに目を擦りながら顔を上げると、老師が目を瞬かせた。

「目を細めていると、同じ人物としか見えぬのぉ」
「ああ・・・・すいません、ぐっすり寝ていました」

掛けていた上着を羽織り直そうとして寒気に身を震わせる。 何だろう、ぞくぞくする。 熱が出たのかな。 熱なんか出たら池に落ちる案が却下されてしまう。 
足元から這い上がる寒気に脚を摺り寄せ、ユーリは気になっていることを問い掛けた。

「あの・・・・皆は? まだ部屋には戻れない?」
「おお、無事に取り押さえることが出来たそうじゃ。 部屋に何やら仕掛けようとする前に、あっさりとな。 お前さんが起きたら伝えるよう言われておったわ」

老師からの話しによると__________

人払いがされた後宮で季節ごとの防虫作業をすると業者が入り作業が始まった。 虫除けの香が焚かれ、敷布や寝具などが運び出され、皆忙しく走り回り、殆ど使用されていない後宮とはいえ、いつ妃が召し上げられることになるか判らないと主だった部屋の防虫に奔走する。

それは全て布石だ。 毒を仕掛けた刺客を誘き寄せるための。
案の定、業者に紛れて奴は忍び込んだ。 昨日一日その話を王宮で蔓延させ、業者も三箇所から呼び寄せたから、互いにどの業者だか判らない。 忍び込むには余りにも簡単な状況だろう。 
逆に相手に警戒させるだろうかとも考えたが、今日一日で後宮の主だった部屋の防虫作業をするとなれば限られた時間では急ぎ忍び込もうとすると考えた。 
それは想像以上に簡単に上手くいったようで、李順の指揮により周囲は固められる。
あとは妃の部屋を移動すると伝えると、いそいそと足を運ぶ奴を捕縛するだけとなったと。



移動先となった妃の部屋へ運ばれる品々。 寝具や長椅子、衣装が入った行李、茶器や宝飾などが防虫作業の済んだ部屋へとどんどん運ばれ、荷解きされる。 呼ばれた侍女が衣装を整え始めると、手伝いますと近付く男がいた。

「よく御使いになる茶器を先に出しましょうか。 茶葉はこちらでしょうか」
「茶葉は後ほど薬師が調べ終えたものを運びますので、先に茶器を揃えて下さい」
「・・・・・では、そのように」

男は忙しそうに動く侍女に背を向け、茶壷の横へ並べた茶杯へ透明な液体をそっと注ぐ。 
余りにも簡単に事が運んだと、僅かに持ち上がる口角と共に男の肩が小さく揺れてしまう。 その肩がおもむろに掴まれ、身体が反転した。 目を瞠った男の前には袖で口元を隠しながら微笑を浮かべる侍女がいて、そして腹部に重い衝撃が奔る。

「・・・・が・・・っ」

鳩尾に受けた痛みに身体を折ると、項に鋭い衝撃を受け、そのまま男は昏倒する。 床に倒れた男を見下ろす侍女は頭を掻き、ずるりとカツラを外した。
業者姿の男が素早く昏倒した男を縛り上げながら、肩を竦ませる。

「あーあ、こんな莫迦を忍び込ませるなんて、オレって不甲斐無い!」
「口を割らせるには楽そうだぞ? ・・・・さて、掃除が終ったようだから品を運び直すか」
「うすっ! はーい、業者の皆さーん! こっちの荷物を元の部屋に移動してね~」

異な姿の男に声を掛けられた業者は困惑しながらも、急ぎ荷物を運び出し始めた。 
指示を出しながら刺客を引き摺り部屋を出て行く桐と擦れ違いに、李順が部屋に顔を出す。

「浩大、カツラを戻すか、衣装を改めなさい。 奇異な目で見られてますよ!」
「はいはい。 おっと、李順さん。 上手く捕まえましたよん」

険しい顔をした陛下側近である李順が眼鏡を持ち上げながら走り回る業者を眺め、嘆息を漏らす。 考えていることは大凡、今回のことで掛かる費用だろう。 

「・・・・防虫は元より必要なことですが、他部屋まで行なう必要があったのでしょうかね。 業者も多く、掛かった費用はきっちりと裏から搾り取らねばなりません」
「そうね~。 まあ、口を割るのは楽そうだって桐が言っているから、すぐでしょ?」
「どの高官の手の者かは見当がついています。 ただ今回は異界から来ているユーリ殿に面倒を掛けてしまいました。 これで衣装損失分は諦めねばなりません」

くぅっと悔しそうな顔をするから、どれだけ守銭奴なんだと浩大は乾いた笑いを落とした。

「衣装分も悪い高官から搾取したらいいじゃん」
「もちろん、その予定ではありますがね」

ボロボロになってしまった妃衣装分を、高官から搾取する分より引き出すのは悔しいとでも言いたげな側近の声に、浩大は苦笑を漏らすしかない。 
余分な部屋の防虫と李順が言い切るのも、陛下が妃を娶る予定が無いことを示唆しており、本妃を娶るのは当分先になると言っているも同然だ。 
今はバイト妃が一人いるだけ。
そのバイト妃に心酔している陛下の行動に、日々神経を遣っている側近の苦慮めいた言動を思い出し、思わずニヤニヤすると睨み付けられる。 藪蛇だと肩を竦めると、李順から地を這うような溜め息が漏れ出した。

「・・・・我が国王陛下は何処か、浩大は承知でしょうね」
「ちょっと待ってよ。 こっちにずっと掛かり切りだったんだよ? 朝にお妃ちゃんを連れて庭園に向かったのを見たきりで、その後は知らないよ。 昨夜はそっくりちゃんの部屋で警護に就いていたんだし、今回の業者の件だって桐から聞いて知ったばかりだしさ。 陛下のお守りまでは出来ないよん」

侍女衣装を脱ぎながら浩大は口を尖らせる。 まあ、今回のことをいいことに、側近と仕事から逃げているだろうとは思うが、その行き先までは把握出来ない。 
これが終ったと知らせに走ることは出来るが、邪魔だと睨み付けられるのは必至だ。 
浩大の気持ちを察したのか、李順が胡乱な視線で言い放つ。 

「睨み付けられようと何だろうと、政務が滞るのは困ります! 至急、執務室に来るよう、陛下に伝えて下さい。 いいですか、浩大。 至急、です!」
「了解っす。 ・・・・・だけど陛下が言うことを聞くかどうかは判りませんがね」
「夕鈴殿にどうにかするよう伝えて下さい。 ・・・・くっ」

陛下が一筋縄ではいかないことを承知している側近は、己の矜持に背いてまでもバイトに頼る。 いや、頼るつもりはないだろう。 バイトを上手く使おうとしているだけだ。 しかし、そう思っても悔しいと思う気持ちが眉間に深い皺を刻ませる。
陛下が言うことを聞かないと、お妃ちゃんが側近殿に謂れのない叱責を受けてしまう可能性がある。 まあ、彼女なら上手く陛下を執務室へと向かわせることが出来るかな。
陛下も兎キックを受けたくないだろうし。

「では急ぎ捜索を開始しますよん」

浩大は笑いを抑えながら場を離れた。





「・・・・そろそろ執務室に行きませんと、仕事がいっぱいなのではないですか?」
「大丈夫だよ。 昨夜も遅くまで仕事したのだから、少しくらいの休息はいいだろう」

妃を膝上に抱き上げ、愛しそうに髪を梳く陛下の笑みに夕鈴は居た堪れない。
ここ最近は以前より執拗と思われるほどの寵愛を見せようとするから、夕鈴には苦行としか思えない日々が続いている。 膝上が当たり前になり、腰やお腹に回る手に躊躇しながら演技を続ける陛下に、いくらプロ妃としての矜持を持ってしても敵わないことが多い。
狼陛下の笑みでじっと見つめられると、頬が赤くなり視線が彷徨ってしまう。
それが楽しいとばかりに顔を近付けられ、侍女や官吏の前では逃げられず、ただ耐え忍ぶしか出来ない。 プロ妃への道は未だ険しいと痛感するしかない。

しかし、ここで陛下にいい様に翻弄されている場合じゃない。 第一、侍女も官吏もいない場所で演技の必要はあるだろうか。 否、ないはずだ! 
きっと山積した書類が陛下を待っているだろう。 
もちろん、その横には鬼の形相で李順が立っているはずだ。 それを想像するだけで寒気が走るが、背を震わせると陛下が気遣わしげに抱き締めてくる。

「日差しはあるけど、夕鈴寒いかな? もっとぎゅっとしようか?」
「いやいや、そう思うなら部屋に戻りましょう? ちゃんと後で政務室に伺いますから」

やる気が出ないと愚痴る陛下のために、本来廷臣以外足を踏み入れない場所に、一介の下っ端妃が足を踏み入れる。 それも専用の席まで常備され、官吏もそれを黙認している現状。 
有り得ないだろうと夕鈴は頭を抱えるが、それをバイト上司である李順が許可しているのだから文句は言えない。 
すっかり慣れた日常となっている政務室での妃の姿は黙認され、今や文句を言うのは柳方淵くらいだろうか。 その文句も耳慣れたもので、右から左へと流すことも容易になった。 
問題はその慣れに慣れてきた自分だろう。 
時々その方淵から辛辣な意見を貰い、バイトとしてのやる気を上げる時もある。
方向性を間違えないよう、自分を叱咤するためにも方淵からの叱責は有り難い時もあるのだ。

「ほら、陛下。 浩大が来ましたよ!」
「・・・・李順からの催促か。 夕鈴、少しだけここで待っていてね」

膝上から夕鈴を下ろし、浩大の許へ向かう。 どうやら面倒ごとは終ったようだと浩大に細めた視線に冷たい笑みを含ませて見下ろすと、小さく頷きが返ってきた。

「捕縛終了したよ。 ついでに茶葉や茶器などは全て調べ直すよう指示してる」
「わかった。 そのまま夕鈴を政務室に連れて行くから、部屋は元通りに整えておけ。 ああ、侍女に言って暖かい装いに変えさせてもいいな。 そう伝えておけ」
「了解。 あとは李順さんが・・・・って、わかるだろう? 怖いよぉ~」

鼻で笑って浩大を早々に下がらせる。 
夕鈴には刺客を誘き寄せるために急遽業者を呼び、防虫作業を始めたことは内密にしていた。 ユーリが怪我を追い、更に毒を服用したことで強い衝撃を受けていることを承知しているから、知らせずに終らせる方針を取ることにしたのだ。 話してもいいのだが、この兎はどう動く判らないから内密に終らせる方が良いと判断しただけ。

上手くいったようだと笑みを浮かべて振り向くと、兎は眉を寄せて睨み付けて来た。

「陛下、やっぱり李順さんが呼んでいるのですね。 急ぎ仕事に行って下さい!」
「うん、そうするよ。 夕鈴も一緒に行こうね」
「いいえ! 私は先にユーリの看病に行きますから、陛下は直ぐに仕事に向かって下さい」

そう言われるとは思わなかった。 そうか、ユーリの看病か。 
今、後宮に行かれると業者の動きに何があったのかと問い詰められそうだ。 もう終っているから今更ばれても問題はないが、ユーリの許へ行き、自分の知らない界の話しに笑みを浮かべる夕鈴が想像出来、それは嫌だなと眉を顰める。 嫌だと思うことはして欲しくない。 
そう思い至った陛下は四阿から夕鈴を攫い、来た時と同じように大股で移動を開始する。

「陛下っ! 私はユーリのところで看病をすると言ってます!」
「夕鈴は僕の奥さんだから、僕のことを優先しなきゃ駄目だ」
「バイトだと言っているでしょう? なんで抱き上げるの? 歩けますって!」
「さっき寒気がしただろう? この方が暖かいと思ってね」

夕鈴から後宮が見えないように胸に顔を押し付けながら、足早に後宮庭園を横切る。 そのまま王宮に向かえば、侍女が迎えに来るまで夕鈴は離れることが出来ないだろう。
迎えに来るのは夕刻近くにさせよう。 山と詰まれた書類を裁き終えるまで、夕鈴には傍に居て貰う方が僕も安心だ。 懐かしいと涙ぐみながら微笑む君の顔を想像するのも辛い。 

「秋風に愛しい我が妃を晒すことなど出来ぬからな」
「狼陛下は必要ないでしょう? あ、歩けるって! 離して、下ろして!」

もちろん、下ろす気はない。 
腕の中で騒ぐ夕鈴の頭上に口付けながら、楽しげに大回りして王宮へと向かうことにした。








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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 02:30:15 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
今回はいつものメンバーですね(笑)。李順さんの守銭奴はさすが!陛下のやきもちもねぇ、報われるといいですねぇ。桐さんがユーリと関係ないところに登場するのは安心しますね(爆)。
2013-11-02 土 09:15:05 | URL | ますたぬ [編集]
イチャイチャ陛下は好きです
良いですねぇ~やっぱり陛下はこうじゃなきゃと思います
あお様の書かれる陛下って甘々なので大好きです
underの陛下も有る意味甘々?好きです~
桐さんも好きですけど甘い陛下の次はどんな陛下が出て来るのか
楽しみです
2013-11-02 土 18:07:53 | URL | 名無しの読み手 [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。桐がユーリから離れて行動するとほっとされると有り、爆笑です。次は他の方と組ませますね~。好きでいてくれて、嬉しいです。
2013-11-02 土 22:30:42 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。いちゃいちゃ陛下好きで嬉しい。私も好き!アンダーはまとめが終り、やっと更新出来ます。もう少しだけお待ち下さい。次はユーリをアンダーに突っ込もうかしら? 桐が妙に人気あってにやけてしまいます。
2013-11-02 土 22:32:58 | URL | あお [編集]
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2013-11-02 土 23:04:06 | | [編集]
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2013-11-02 土 23:13:15 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。はい、ここぞとばかりに夕鈴をめちゃめちゃ翻弄しています。早く正直に束縛したいと打ち明けたらいいのにと思いながら、焦れが堪らんと悶えています。その分、underの陛下がこれでもかというほどにシツコイですけど(笑) あっちは別物として、こっちもそろそろ終盤。あとはユーリが戻るだけ~。桐も好きと言って戴けて超嬉しいです。 毎回、コメントを本当にありがとうです。
2013-11-02 土 23:53:56 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。褒め言葉に思わず犬の尻尾を引っ張り、怒られました(笑)「飾り付けた鎖を君に」「殷紅彩」「頑固な迷路」が御気にですか。ほんとーにありがたいです。これからも好きと言って頂けるよう妄想に磨きを掛けます(爆)
2013-11-02 土 23:56:44 | URL | あお [編集]
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