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迷宮への誘い  16
「パラレルシリーズ」続きです。後から後からボロボロ書きたいことが出来るので、だらだらと続いています。煩悩を振り払って、ラストへと突き進もうと思います。
リンク切れ、申し訳ありませんでした。修正しましたが、他にもありましたら御面倒では御座いましょうがお知らせ頂けると嬉しいです。
under 更新終了。今回も楽しく書けましたー。


では、どうぞ












目が覚めたのでユーリは部屋に戻ろうとしたが、刺客捕獲に部屋を使ったので、しばらくは待つように言われた。 その間にも寒気は酷くなり、上着を引き寄せて脚を摺り寄せる。 
怪訝な顔の老師に、風邪かもしれないと伝え風邪薬をお願いすると直ぐに作り始めてくれた。 老師は薬に関して心得があるようで、漢方薬局のお爺さんを思い出し笑ってしまう。 苦味がある薬湯を飲み干すと、身体が芯から温かくなったような気がした。 
直ぐには効かないだろうことは承知だが、苦味があるとはいえ温かい飲み物で気持ちまでが落ち着いたような気持ちになる。 もちろん、苦いだけに甘味が欲しいと呻く。
老師が差し出す菓子を貪りながら、白湯で飲み込む。
とりあえず、待つように言われたのだから待つしかない。

もう一枚上着を羽織り、卓上のスーツが入った包みの上に回らない頭を乗せて目を瞑る。 
寝汗を掻いた上、酷い寝相で風邪をひいたのか。 もしもそうなら直ぐに治すべきだ。
あとは戻るための策を講じるだけなのだから、早く風邪を治して実行に移したい。 

「もう少しで部屋に戻れるから、それまで暫しの辛抱じゃ」
「はい、大丈夫です。 基本、頑丈なので」

普段は滅多に風邪などひいたことはない。 今回は茶杯に付着した毒の影響によるものだろう。 医師の診立てでは毒による後遺症はないと言うことだ。 浩大の初期処置により殆どを嘔吐したということだが、その後の発熱でごっそり体力が失われたみたいで、酷く身体が辛い。 その発熱で掛け布を蹴飛ばし風邪をひいたなら、自分の責任だ。
それならいっぱい食べて薬を飲んで、一晩寝たら大丈夫。 こんなのは気合で治す。

老師にお茶と追加の茶菓子を出して貰い、黙々と食べ飲みする。 食べれる内に食べてあとはぐっすり寝るだけだ。 そこに李順さんが顔を出し、殆どの片付けが終ったから部屋に戻れると伝えに来てくれた。

「お疲れ・・・・様、です。 李順さん」
「ユーリ殿、体調が悪いようですね。 ・・・・食欲はあるようですが」
「食べて薬を飲んだら、もう一度ぐっすり寝ます。 体力が回復したら元の世界に戻れる手段を探すのに、少しでいいので尽力下さいね」
「それはいいですが・・・・。 部屋までお送り致します。 大丈夫ですか?」

ちょっと寒気が半端無い。 李順さんが険しい顔でスーツの包みを持ち上げる様を視線の端で捕らえながら、部屋へと急いだ。 国王陛下側近という立場の李順さんに私物を持たせるのは悪いと思うが、邸の李順さんとどうしても重なり頼りにしてしまう自分がいた。 すぐに食事と薬湯を用意してくれた李順さんに御礼を伝え、食べ始めて、そして 「あっ」 と思い出す。

「今、李順さんしかいないから丁度いい。 あの、このブローチを受け取って貰いたいです」

李順に持たせていた荷物を解き、黒蝶真珠のブローチを差し出す。 目を瞠った李順が差し出されたブローチに一度視線を落とし、そしてゆっくりと首を横に振る。

「お気遣いは結構ですとお伝えしていますよね。 妃衣装や簪などの件は伺っておりますが、ユーリ殿が気遣うことは御座いませんから大丈夫です」
「いえっ! ・・・・何て言ったらいいのかな。 ここに私が来たんだよって足跡を残したい。 そんな気持ちなんです。 国王陛下や夕鈴さんに渡しても返されてしまうから、李順さんに受け取って貰いたい。 もちろん弁償に充てて貰っても構いません。 いや、そうして貰った方がいいかも。 お妃様の衣装を見事に破いたから・・・・・」

ブローチを李順さんの胸に押し付けながら、ユーリは苦笑して懇願した。 

「その代わりといっては何ですが、今、自分がこの国に、世界にいるという証が欲しいです。 何でもいいのです。 この時代の何かひとつ、私に下さいませんか?」
「この時代の・・・・・ですか?」
「ええ。 そうですね、うん・・・っと、何がいいかな」

李順さんが手にしたブローチを見下ろしながら、困惑した顔を向けてくる。 これくらいしか出来ないと思う自分と、本当に不思議の世界にいるのだという証が欲しいと思う自分がいて、胸がドキドキする。 ああ、バッグの中の携帯があれば証拠が残せるのにと頭を抱えていると、李順さんが嘆息を零した。

「この品の代わりに匹敵するような宝飾を用意するのは難しいですね」
「匹敵なんてしなくていいです! あっ、宝飾というなら刺客に投げつけて失くした簪、あれを見つけたら戴いてもいいですか? お妃様の髪飾りを戴くのは駄目ですか?」
「・・・・それで、宜しいのですか?」

もちろん良いに決まっている。 李順さんの表情を見て、了承を得たと解かると急に寒気がぶり返してきた。 腕を擦りながら頷くと、李順さんも気遣しげに薬湯を差し出してくる。 
今夜中に治して明日早速探すことにしよう。 
すると李順さんが私の考えを悟ったように 「簪はこちらで探しますから身体を休ませて下さい」 と伝えて来た。 私が目を瞠ると、眇めた視線で溜め息を吐く。

「これ以上長引くと、元の界に戻るのが遅くなりますでしょう。 それに関しては手助けが出来ませんので、ユーリ殿が頑張るためにも簪探しはこちらが請け負います」
「・・・・やっぱり李順さんは優しい。 ではお任せします」
「・・・・・・」

微妙な顔を見せるから、それが面白いと私は素直にお願いすることにした。 李順さんが部屋から出て行き、寝台に横になると直ぐに眠気に襲われる。 


深く沈みゆく頭の中で、夢でも良いから黎翔に逢いたいと泣きそうになる自分を解放した。
風邪で潤んでいる目から滲むものを素直に枕へ零し、震える手を握り締める。 
どれだけ願っても夢は思うようになってくれない。 
頬に触れたような甘い夢さえ、本当に見たのだろうかと漠然とした不安に襲われる。
見たのだと、夢の中では確かに黎翔が私の頬に触れた夢を見たのだと信じたい。
 
こんな日々を夕鈴さんはアメリカでどんな風に過ごしたのだろう。 まるで攫うように抱き締める国王陛下に慈しまれているのに、あの頃を思い出させるのは酷だろうか。 自分にわかるのは、別世界にひとりだけでいるというのは酷く寂しいということだけ。 逢いたい人に逢えない、逢いたい人がいない現実が、こんなにも辛い。 
寂しい、悲しい、辛い。 ・・・・・それを感じるほどに泣きたくなる。
こんな感情、欲しくない。 知りたくなかった。 
だからこそ、黎翔が愛しいと強く思う。 
逢いたい、逢いたい、逢いたい。 直ぐに逢いたい。
逢って伝えたいことが沢山ある。 言葉に出して、顔を見て、直接伝えたい。

熱があるのだろうか、眩暈のような酩酊感に口端がふわりと持ち上がる。 
こんなにも好きな人がいるということ。 こんなにも人を好きなれるということ。
そんな自分がすごく好きだと思える。 
戻ったら黎翔にこの気持ちをどう伝えようか。 溢れすぎて苦しいほどだ。 
その苦しさがユーリの胸に、心に、全身に甘く切なく染み入るように響く。 
その響きを胸に抱えながら掛け布を握り締めて、ユーリは眠りに堕ちた。






***






李順が後宮のユーリの部屋から執務室に戻るが、やはり陛下の姿は無かった。 
まだ戻らないなのか。 もしや政務室か宰相の許かも知れないと考えたが卓上の山を眺め、すぐに結論が出る。 陛下はバイト妃とともに、未だ後宮で遊んでいるだけだと。 
しかし、このまま待つしかない。 バイトが上手く陛下を誘導するよう、陛下が己の責務を全うする気になるのを待つだけしか出来ない。 

そして、何があってバイトを抱き上げているのか解からないが、必要ない過剰な夫婦演技をしながら戻って来た陛下に、李順は恭しく怜悧な笑みを向けた。

「陛下、御早いお戻りに笑いが零れそうになります」
「遠慮なく零せばいいだろう。 この山のような書類を前に、私は溜め息しか零れないぞ」
「そうお思いなら、直ぐに夕鈴殿を解放し、筆を持ち、手を動かして下さい!」

陛下の膝上で荒い息を吐いている夕鈴は、李順の声にのろのろと長椅子へと移動を開始した。
後宮庭園から真っ直ぐに王宮の執務室に向かっていたはずなのだが、酷く揺さ振りながら早足で遠回りをする陛下にしがみ付き続け、身体中が変に強張っている。
途中、何度も陛下に急いで仕事に行きましょうと懇願するが、そのたびに酷く揺さ振ってくるから落ちないようにしがみ付くしかなかった。 夕鈴が睨み上げるたびに楽しげな笑みが近付くから羞恥に顔が赤らんでしまう。 
やっと揺れが終ったと安堵した時には執務室に到着していて、更に陛下の膝上に座っている自分に愕然とし、その上、李順に睨み付けられ抗う気力も体力も無くなっていた。

「り、李順さん・・・。 後宮に戻ってもいいでしょうかぁ」
「夕鈴が戻るって言うなら僕が送って行くよ。 そんなにふらふらしているのに一人で戻す訳にはいかないよ。 ユーリの見舞いに行くなら僕も一緒に行くから」
「陛下っ! そんな場合ではないと、卓上を見ればわかるでしょう! 夕鈴殿、今しばらくはそこに大人しく座っているように! いいですか、まずは政務が優先です」

李順の鬼の気迫に口を挟めない。 バイトはいつもこうして翻弄される運命なのねと、それでも上司の前では項垂れて大人しく椅子に腰掛けた。 姿勢良く、妃の品を忘れずに、これ以上追い詰められるのは勘弁と夕鈴は口を閉ざしてバイト妃の演技を始める。
眼鏡を持ち上げた李順が殊勝な様子の夕鈴を見つめ、小さく溜め息を吐いた後、仕事を開始する。 それなのに陛下だけが口を尖らせ、文句を続けた。

「ゆーりん、お茶入れて。 たくさん歩いたから疲れたー」
「陛下。 その書類の山を多少なりとも崩してから、もう一度その台詞を吐いて下さい」

冷たい側近からの一言に、陛下は黙って筆を持ち上げる。 その口は不満を押し殺しているようで、思わず夕鈴が肩を揺らすと目の前に妃教育本が置かれた。
夕鈴は顔を上げることなく、黙ってその本を手に取り開くしかない。  

ユーリの看病にはいつ行けるのだろうか。 昨夜は熱に浮かされ酷く憔悴していたように見えた。 今朝会った時は元気そうだったけど、顔色がまだ蒼白かったように見えたが部屋に現れた陛下に連れ去られ、その後の様子を聞くことが出来なかった。 そろりと顔を上げると真摯に政務に向き合い出した陛下の横顔が見え、文句は口の中で霧散してしまう。 

バイト妃がいなくても、陛下のやる気は損なわれないような気もするが、居て欲しいと言われるのは正直嬉しい。 いつまで続くかわからないバイト期間だけど、だからこそ少しの時間を大事にしたい。 そう思う気持ちが溢れて、思わず恋い慕う気持ちを告げそうになる。 そんなことを告げた途端にクビ決定になるから必死に押し止めようとしているのに、最近の陛下は私の心臓を止めるつもりかと思うほど近付いて来る。 
甘くて、甘過ぎて何も考えることが出来なくなり、いつか自分の口から零れ落ちる言葉に苦しむことになりそうだと夕鈴は唇を噛んだ。 今はバイトとして傍にいるだけ。 そう何度も思わなければ立っていられないと自分を律するたびに陛下の声が甘く響く。

「今は何を考えている? 夕鈴が考えるのは僕のことだけだからね」
「・・・へ? 何をって・・・・」
「陛下が考えるのは目の前の書類を崩すことだけです!」

聞き慣れた遣り取りに苦笑しながら、夕鈴はそっと溜め息を重ねた。
いつも、いつでも陛下のことばかり考えている。 陛下は他にも考えることがいっぱいで、執り行なわなければならないことも沢山で、バイトに係わっている暇など本当は無いはずなのに過分なほど拘ってくる。 下町まで顔を出し、口を出し、翻弄しながらも救い出してくれる。 そんな陛下に私は何が出来るだろうか。

ユーリが少し羨ましいと瞼を伏せる。 黎翔様と結婚という形で結ばれたのだから。 
この世界と同じように身分差があると言っていたが、二人は結ばれたのだ。 羨ましいと考えることさえ痴がましいのかも知れない。 陛下は国王なのだから、あの界の黎翔様とは立場がまるで違う。 同じようでいて違う人。 同じ人が居ても違う界。 

それでもこの界に戻りたかった。 バイトを続けたかった。
陛下の御世を少しでも助けるために私にも何か出来るなら、そう信じて願い、そして戻ることが出来た。 戻った私を心から心配していたと抱き締めてくれた陛下の熱を忘れない。 他のバイトを雇うことなく、私を探し続けてくれたと聞いた時は胸が締め付けれらるほど嬉しかった。

それだけで充分だと思う。 
初めての恋が陛下で嬉しい。 傍にいられて嬉しい。 見つめることが出来て、熱を感じることが出来て嬉しい。 こうしていると残り期限を忘れそうになる。
バイトの立場は忘れちゃいけないことだけど、上手に甘やかしてくる陛下に翻弄されてしまう。

今は余計なことを考えず、妃教育本に集中しよう。 
ユーリの体調が戻ったら元の世界に戻れるよう、いっぱい協力しなきゃ。 気持ちがわかるからこそ、早く何とかしてあげたい。 確か寝台で寝てみたいと言っていた。 私の部屋の寝台で目が覚めたら、この界だったと言っていた。 何があってこの界に来たのだろう。 それがわかれば苦労はないか。 

「ゆーりん! 何を考えているの? 夕鈴が考えることは・・・・」
「陛下が考えることは目の前の書類だと何度言えば御分かりになられますかっ!」

とうとう李順が雷を落とした。 夕鈴は慌てて背を正し、教育本で顔を隠す。







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パラレル | 17:40:16 | トラックバック(0) | コメント(8)
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2013-11-03 日 18:53:28 | | [編集]
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2013-11-03 日 20:43:37 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。ユーリに絡まなければ桐出しても大丈夫・・・・爆笑です。ありがとう御座います。絡めちゃおうかしらと思わずによりとしてしまいます。under陛下もお疲れですが、体力ありそうなので一晩経ったらケロリとしてそう。背中の傷は勲章でしょう(笑)
2013-11-03 日 21:17:47 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。 ユーリ頑張ってますが、さて長くなって来たので戻すのが惜しい気が・・・。いやいや、戻しますけどね(笑)underの陛下は鬼畜というか、もう・・・・動物?夕鈴に対しては底なしという設定なので、もう好きにさせてます。
2013-11-03 日 21:19:59 | URL | あお [編集]
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2013-11-04 月 10:49:52 | | [編集]
Re: 李順さんが…
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。李順さん、ソフトですか。すいません、好きなもので。厳しい人ですが、真面目に仕事している人にはソフトな印象があるものですから。その対象に陛下がいないことが多いのですが、陛下が仕事をちゃんとすると休むことを勧めたり、一緒にバードウォッチングに行ったりしますからね~。(あれはウォッチングというものではありませんが)
2013-11-04 月 13:22:20 | URL | あお [編集]
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2013-11-04 月 22:39:17 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。毎回長いコメントをありがとう御座います。今回はunderも同時進行してましたが、どうにかのんびり仕上げることが出来ました。わーい(^^)まあ、陛下は若いですから何度でも大丈夫でしょう。体力的に辛いのは夕鈴の方です。はははー。 こっちもようやく終わりが見えてきて、肩凝りが半端無い。楽しく妄想しながら書いてます。今回の『出来ないことのない、出来る男』に悶えました。良いなー、そんな男! では、もう少しだけお付き合い下さいませ。
2013-11-04 月 23:43:10 | URL | あお [編集]
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