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迷宮への誘い  17
「パラレルシリーズ」続きです。夕鈴を書くのも、ユーリを書くのも楽しい。 
そしていつの間にかunder拍手が1500突破 ありがたいことです。本当に本当に感謝しております。ありがとう御座います


では、どうぞ














薬湯を飲み、ぐっすりと眠ったユーリは夕餉を済ませると久し振りに湯浴みを済ませてさっぱりし、大きく息を吐いた。 部屋に戻ると笑顔の浩大が薬湯と甘味を持参していて、椅子に腰掛けるといきなり菓子を食べ始める。 侍女姿なのにそんなにリラックスして菓子を食べていていいのかと首を傾げるが、差し出された菓子をユーリも素直に食べ始めた。

「いや~。 本当、久し振りに風邪をひいたわ」
「風邪っていうか、毒を飲んで体力ごっそり取られて熱に魘されただけでしょうに。 だから念のために明日も大人しくしてようね。 そっくりちゃん」
「大丈夫よ。 お風呂に入ってさっぱりして、やる気充分です!」

よく寝たからお蔭で身体が軽いとユーリは浩大に笑みを見せた。 笑みを見せられた浩大は肩を竦めて口を尖らせるが、侍女姿では可愛いだけだ。 

「明日は大人しくしていること。 また熱が出ちゃうだろう?」
「大丈夫だと思うよ。 身体も気持ちも軽いんだよね。 だから戻る手段をいろいろ」
「あー、池に落ちるのは却下だよ。 それは体調が万全と侍医に言われてからね。 じゃないと、そっくりちゃんの警護に桐を就けるよん? 侍女姿の桐なんて、見たい?」
「・・・・う。 無表情の侍女姿で背後に立つ桐は有り得ない」

それは厭だと首を横に振る。 枕元で無表情な顔をして長々と武器の説明が始まりそうだ。
ゾクリと寒気が奔り身を震わせると、浩大はケラケラと笑いながら薬湯を卓へ置いた。 この苦味にも慣れてしまったと飲み干すが、やはり苦いものは苦い。 浩大に無言で手を差し出すと、棗の砂糖漬けを渡され口に急いで頬張る。 

「んんっ。 これ何? すごく甘っ! ・・・っと、そうだ浩大。 私ね、気付いたら夕鈴さんの寝台に居たんだ。 この界に来た時にいた場所がお妃の寝台ですごっく驚いたんだよね。 で、戻るために一度、夕鈴さんの寝台で寝ていいって許可を貰えたんだ。 だから」
「そーれーもー、身体の調子が万全になってからだよ」
「もう大丈夫だって言っているのに」

睨ね付けるも浩大は一蹴して砂糖漬けを差し出してくるだけ。 口に放り込みながら、足を動かしてみるが痛みも殆ど感じない。 ほら大丈夫だよーと目線で頼んでみるが、やはり駄目だと首を振られてしまった。 諦めるしかないかと、ユーリは項垂れる。
早く戻る方法を試してみたい。 黎翔に逢いたい気持ちが膨れ、出来ることなら直ぐにでも池に飛び込んでみたいほどだ。 だけど浩大が止める気持ちもわかる。 今日の昼まで寒気に襲われていた身体だ。 無理をして体調が悪化するのはユーリも困ると唇を噛むしかない。

「じゃあ、明日元気だったら夜に試してもいいよね? だって寝るだけだもの。 それと李順さんに、刺客を捕らえる時に投げつけた簪を譲って貰えることになったんだ。 探してくれるって言っていたけど、浩大は聞いてるのかな?」
「ああ、それは李順さんから話は聞いている。 桐が探しに動いているはずだよん。 もう見つけているかも知れないけど、報告は来てないなぁ」
「本当!? あ、桐の腕の傷はどうなったかな。 確か左腕から血が・・・・出ていた」

今頃思い出して首を竦める。 第二弾の刺客が現れた時、私をガゼボに押しやろうとして傷付いたんだ。 痛みはどうなのだろうか。 投げられた镖に毒は付いていなかったのだろうか。 

「ああ、たいしたこと無いよ。 そっくりちゃんが直ぐに止血してくれたからね」
「そうなのか。 ・・・・それは良かった」
「心配してたか。 教えるのが遅くなって悪かったね」
「ううん、私も今まですっかり忘れていた。 思い出すのが遅くなってゴメンね。 衣装のこととかで頭がいっぱいになっていたんだ、あの時は。 浩大は大丈夫なの?」
「大丈夫だよん。 じゃあ、簪は見つかったら直ぐに教えるから、待っててね」

桐なら直ぐに見つけてくれそうな気がする。 ただ渡される時に何を言われるかが問題だ。 
あの簪を受け取って、そして問題なくアメリカに戻れたら嬉しいな。 この界での話しを、黎翔や桂香さん、李順さんに早く話したい。 そうなると無事に戻って話しが出来ると信じて、今は身体を休ませるだけが私に出来ることか。

夕鈴さんの前で泣いたせいか、心の奥にいつまでもあった拘りが薄れているように感じる。
きっと今までとは気の持ち方が違うだろう。
国王陛下と夕鈴さんの仲睦まじい様子を見て、夕鈴さんと話をして、この界に来て良かったとユーリは思うことが出来るようになった。 今までどうしても拭えなかった黎翔の心の奥に残っているだろう夕鈴さんの存在を、ようやく自分の中から昇華出来るような気がする。

逢えたら素直に黎翔に甘えたい。 
自分を好きだと言ってくれた黎翔に、今なら思い切り甘えることが出来るような気がする。 
軽くなったこの気持ちを黎翔に伝えたい。

そのためには何としても戻らなければならないのだ。
池に飛び込んででも、多少痛くても血を流したとしても厭わない。
黎翔の胸に飛び込めるなら、水の中でも火の中にだって飛び込んでやる。

「じゃあ、明日の昼間は大人しくしている! 夜は夕鈴さんの寝台で寝て、駄目なら潔く池に飛び込むわ! そのためにも今日は身体を休めなきゃね。 おしっ!」
「だから池の水は超冷たいってば。 もう・・・・薬湯を用意して待機するよ」
「そのまま戻れると信じてよ! 明日の夜は夕鈴さんの寝台でまず寝てみるね。 だから、夜に国王陛下が夕鈴さんの部屋に行くのは・・・・我慢して頂いて・・・・夕鈴さんが国王陛下の部屋に行って寝て貰いたいのだけど。 って、今更気付いたけど、夫婦なのに別々に寝ているのね?」

ふと疑問に思って浩大に尋ねると、大きな目で見つめられた。 後宮って陛下と妃の邸みたいなものだよね。 妃が一人なら一緒の部屋でもいいんじゃないのかな。

「あー・・・・。 後宮って、そういうものなんじゃない? 陛下の部屋で寝て貰うようにお願いする時に、一緒に尋ねてみたらどうだろう?」
「そうか。 そうするわ」

妙な表情で嗤う浩大に、ユーリは妙な顔で頷き返して体調復活のために寝ることにした。







翌日、体調は更に良くなった。 浩大との約束通り、大人しく過ごすユーリの許に夕鈴が部屋を訪れてくれたから、早速今日の夜にお妃の部屋で一晩寝てもいいかと尋ねてみる。 体調も良くなったので、今晩にでも試しをしてみたいが大丈夫かと。

「良いと言ったじゃないですか。 ユーリの体調がいいなら試してみて下さい。 だけど・・・・そうなるとユーリはアメリカに帰ってしまうのね。 余りゆっくり話す機会も城下を案内する時間も無いまま、それなのに囮をさせるし毒を飲ませてしまうし・・・・。 本当にごめんなさい」
「したくてしたことですから気にしないで下さい。 それで夕鈴さんの部屋を今夜使わせて貰いますが、そこで質問。 何で国王陛下と別の部屋で寝ているの? 御夫婦なのに」

大きく、零れ落ちるかも知れないというほど大きく目を瞠った夕鈴さんが、私の質問に口を大きく開けて固まったまま沈黙してしまった。 何か変なことを尋ねたのかしらと肩を揺すってみると、はっと意識を取り戻した夕鈴さんは一瞬蒼褪め、そしてジワジワと赤く染まり出す。

「あの。 ・・・変なことを尋ねちゃった・・・・ですか?」
「っ! う、あ・・・・いえっ、そんなことない! あ、あのですね。 陛下は夜遅くまで政務がありまして、そ、それと後宮は夫である陛下が通う形式を取っているので」

ワタワタと説明を始める夕鈴さんが酷く動揺しているように見えて、問い掛けた私の方が慌ててしまう。 そうか、今の国王陛下が特異であって、本来なら後宮には沢山の妃がいるはずなんだ。 国王陛下はその日の気分で、渡る妃の部屋を決められるという訳かぁ。 
一夫多妻制ってそういうことなのよね。 ハーレムみたいな・・・・、というか、そのもの。

でも、黎翔そっくりの国王陛下は夕鈴さんだけでいいと、たった一人の妃を大事にしている。
それなら一緒の部屋で寝起きしてもいいじゃないか。 夫婦なんだから。 それでも今までの後宮の方針を変えることは難しいのかな。 よく・・・・解からないけど。

「あ、でも夕鈴さんの寝台を使う時は国王陛下のお部屋でお休み下さいね」
「ええっ!?」
「ええって。 ・・・・だって、私がお妃の部屋を使わせて頂くのですから」
「そうだな、今夜は私の部屋で共に休むことにしよう! ユーリが無事に戻れるよう、二人で祈っているからな。 今夜は皆で一緒に夕餉としようか。 なあ、夕鈴」
「・・・・へっ、陛下っ!」

あら、今日もやっぱり夕鈴さんの許へと足を運ばれた。 
真っ赤な顔の夕鈴さんが勢いよく立ち上がり、更に大きく目を見開いている。 大股で近付いて来た陛下がワナワナと震えている妃の手を掴み、妖艶な笑みを浮かべて引き寄せるのも、すっかり見慣れてしまった。 そして腕に妃を捉えた陛下がすごくいい笑顔を向けてくる。

「ああ、お早う、ユーリ」
「お早う御座います、国王陛下。 夕鈴さんには既に許可を頂いておりますが、御寝所を使わせて頂きますので、夕鈴さんは国王陛下のお部屋でお休みして頂いて宜しいでしょうか」
「勿論、いいとも! 今日は仕事が捗りそうだな、夕鈴」

名を呼ばれた夕鈴さんが蒼褪めたまま口をハクハクと開閉している。 本当に何があったのだろうと心配してしまうが、夕鈴さんを抱き締めた国王陛下は嘗てないほどの笑顔を見せ、意気揚々という感じだ。 対照的な二人を見て、もしかして・・・・と想像してしまう。

「国王陛下がお仕事されている間、お妃様と庭園を散策させて頂いて宜しいでしょうか」
「ああ、そうだな。 後で献上品の菓子を届けさせよう」
「ありがとう御座います。 楽しみにしています」

足取り軽く部屋を離れて行く国王陛下に、先日言っていた 「人の部屋に勝手に入って」 などの文句も言わずに黙り込む夕鈴さんの耳元に、私はそっと顔を寄せた。

「夕鈴さん、もしかして国王陛下って・・・・」
「え? な、何?」

椅子から転げ落ちそうなほど挙動不審の夕鈴さんを見て、私は確信した。 何処の界の黎翔も同じなのかと乾いた笑いが零れ落ちそうになる。 まあ・・・・うん、いいんだけど。

「夜・・・・かなりシツコイのでしょう? 次の日、起きれなくなるほど」
「・・・・え?」
「忙しい時はいつ寝るのかしらと体調が心配になるけど、休日前夜はこっちの体調が心配になるわよね。 少しは加減というものを考えて欲しいって。 何であんなに執拗なんだろう。 ・・・・あ、国王陛下は違うのかな。 でも束縛具合を見ているとそうかなって思うんだけど、違う?」
「・・・・え?」
「でもお願いです。 一晩だけでいいですから、お妃様の寝所で寝かせて下さい」
「・・・・え、ええ。 それは勿論・・・・え?」
「・・・・え?」

あら、違うのかしらと首を傾げると、きょとんとした顔の夕鈴さんが目の前に。
その顔がじわじわじわ~っと赤らんで来て、鬱血したような赤黒さに変化していく。 つられて自分まで顔が赤らんでいるのが判り、互いに視線を彷徨わせた。 沈黙が落ち、どうしようかと悩んだけど、思い切り息を吸い込む。

「取り敢えず、庭園を散策しましょうか!」




秋の日差しが心地良いというのに、隣を歩く夕鈴さんがギクシャクとしているからユーリは戸惑いを隠せない。 やっぱり夜は束縛が更に増すんだと思うと視線を合わせられないまま、話し掛けていいのか悩んでしまう。 それでも最後の機会かも知れないとユーリは息を吸い込んだ。

「夕鈴さん、は・・・・黎翔、のことを・・・・どう思っていましたか?」
「・・・・え?」
「あっ、あの、夕鈴さんはアメリカに突然行って、そこで黎翔の許で過ごされていましたよね。 数ヶ月間、一緒に過ごしたと聞いています。 ・・・・私は夕鈴さんと同じ顔で、それで黎翔の目に止まって話す機会が出来たようなものですから、実は似ている顔だけが彼の望みなのかと悩んだことがあります」

少し肌寒い風が頬を擽り、肩に掛けたストールを引き寄せた。 
視線を感じて横を向くと、鏡でよく見る顔が眉を顰めて呆然としている。 突然、こんな話しを始められても困るだろうとは思うが、どうしても訊いてみたい。

「逆に夕鈴さんは国王陛下に良く似た顔の黎翔を見て、戸惑いませんでしたか」
「・・・・戸惑ったわ。 声も同じで間違えたこともある」
「強引なところも同じようですしね」

くすくす笑っていると、そっと手を握り締められる。 少し寂しそうな顔で見つめられ、自分も同じような顔をしているのかと握られた手に力を入れた。 少し逡巡した夕鈴さんが足を止め、庭園を眺めながら話し出す。

「でも私は白陽国に、陛下の許に戻りたかった。 ある日、現れたという場所で寝転がると陛下の声が聞こえ、それからはどうやったら戻れるのかと考え続けたの。 私の支えはその時の陛下の声で、黎翔様が珍しい衣装や場所、話しを私にして下さいましたが、頭の中にはどうやったら戻れるのだろうということばかり。 今思えば大変不躾な態度だったと思います」
「慣れない場所ですしね。 生活習慣も食べるものも衣装も違う」
「そうなんです。 最初はドライヤーに驚いて・・・・・。 いくら良くして頂いても、あちらの生活に慣れても、私はこの国へ戻りたいと、そればかり考えていた」

柔らかな笑みを浮かべる夕鈴さんを、私はじっと見つめる。 国王陛下だけを想う彼女がとても綺麗に見えて、胸が熱くなってきた。 彼女の気持ちは自分のことのように嬉しいと。

「夕鈴さんの心の中には国王陛下だけなのですね。 それを黎翔も知っている」
「ええ、知っていたと思います。 隠れて泣いても直ぐに気付かれてましたし、最後にお別れする時にも、そのようにお伝えしておりますから」

彼女の陛下に向けた笑みはとても柔らかで、最後のお別れをした時の黎翔を想い、私は泣きたくなった。 真っ直ぐに陛下を求める夕鈴さんを愛しいと思い、その視線を自分に向けて欲しいと希った黎翔。 そしてそれは叶うことが無かったのだ。 どんなに悲しかったことだろう。
その過程を経た黎翔と自分は出逢ったのだ。 彼への愛しいという想いが広がって、目に映るもの全てが愛おしく感じてくる。 自分は単純だなと笑いを零すと、夕鈴さんが小首を傾げてきた。

「・・・・黎翔が夕鈴さんをとても好きだったと本人から聞きました」

夕鈴さんの目が大きく見開かれ、それを私は冷静に見つめ返した。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 02:17:17 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2013-11-05 火 10:58:16 | | [編集]
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2013-11-05 火 14:06:26 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。本当に桐とユーリの辛味がお嫌いなようで、爆笑させて貰っています。はい、その気持ちのままで戻って貰いましょう。(笑)ユーリの話しを陛下が聞いたら、夕鈴の気持ちを陛下が知ったら、暴走・・・・しちゃうか? 
2013-11-05 火 21:23:09 | URL | あお [編集]
Re: さすがです!!
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。夕鈴の気絶も考えたのですが、話が進まなくなるので諦めました。李順さんのような上司だといい面も悪い面もあるでしょうね。飲み会には来て欲しくないけど、仕事はさくさく進みそうで少し嬉しいかも。妥協もしないでしょうし。だけど社長に振り回されて、そのトバッチリが来そうな気もする。(笑)
2013-11-05 火 21:31:39 | URL | あお [編集]
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2013-11-05 火 23:26:05 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。ユーリの突っ込みに、何と返せばいいのか知識もなく動揺する夕鈴が書きたかったのです。ユーリがどんどん突っ込んだら、どうなっていたのでしょうか(妄想爆)寝台での狼対兎の攻防。書いた方がいいでしょうか? もう、によによしながら書いちゃいますよ?
2013-11-05 火 23:33:06 | URL | あお [編集]
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