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迷宮への誘い  21
「パラレルシリーズ」続きです。最近、仕事が詰めていて疲れモードマックス。仕方がないけど、仕方がないけど休みの日には何もしたくないとゴロゴロしちゃう。そんな時、ペットショップから電話があって「そろそろ来店されませんか」とお誘いが。今はペットショップも営業するのね~。


では、どうぞ













馬車が止まり、ユーリは言われた通りにマントのフードを被る。 浩大がドアを開けてくれて、まず目に映ったのは人影の無い住宅の角地で戸板が見えた。 お昼近いということもあり、近くの家からいい匂いがしてきてユーリはキョロキョロしてしまう。

「さ、ここはお妃ちゃんの家の裏だよ。 オレらはあちこちブラブラしてるから、ごゆっくりして頂戴ね。 夕方迎えに来るから・・・・って、その前に陛下が来るだろうけどさ」
「それと、陛下のことは『李翔さん』と呼ぶように。 間違っても国王陛下などと言わぬよう、くれぐれもその頭に叩き込んでおけ。 解かったか、もどき」

一瞬、桐の言い方にむっとしたが、言っている内容は理解出来た。 
お忍びで実家に戻って来た夕鈴さんがお妃だということが家族にもまだ内緒だというなら、国王陛下の立場も内密になるだろう。 唯一の姉が結婚したということを知らされていない弟が、アメリカでは大学の後輩である青慎だなんて信じられない。 
ボロッと本当のことを言わないよう、桐の言う通りに頭に叩き込むことにした。

「り・・・、李翔さん、ね。 了解です」
「もしも間違えたら・・・・元の界には戻れぬよう、池を埋めてやるからな」
「そ、それは駄目です!」
「桐さん、そんなこと言わないの! ああ、大丈夫よ、ユーリ。 戻れるから、絶対に戻れるから! だけど陛下の呼び名のことは・・・・くれぐれも御願いします」
「大丈夫です。 余り口を開かないよう、お淑やかな宮廷侍女らしくしてますから」
「・・・・それが出来れば注意などせずに済むものだが」
「ぐっ・・・、この(クソ桐がぁ~っ)!」
「まあまあ、そっくりちゃん。 でもよろしくな~」
「・・・・うん浩大、私頑張るね」

桐はいちいち言うことが厭味っぽくて腹立たしいが、それくらい大事なことなのだろう。 
睨み付けるが全く別の方向を向いたまま、そして浩大と共に足早に消えてしまった。 困ったような笑いを零す夕鈴さんに促され、面白くないと口を尖らせたままユーリは向き直る。 

「じゃあ、弟の青慎を紹介するね。 同じ顔だと思うけど、あちらの青慎はいくつなの?」
「アメリカの青慎は、二十一歳です。 こっちは夕鈴さんより下ですよね。 あ、弟だから当たり前か。 と、言うことは身長も違うのよね。 私より大きいのですけどね、あっちは」
「青慎が二十一!? ・・・・陛下と同い年、なんだー」
「ええっ! いや、青慎と比べると国王陛下の方が絶対年上に見えますよ? えええっ!?」
「ああ、ユーリ! 李翔さんで御願いします!」
「あ・・・そうでした。 ごめんなさい。 うん、気を引き締めなきゃ、ですね」

裏木戸を開けた夕鈴さんが手を差し伸べた先には庭があり、そこには洗濯物が入った籠を持っている男の子がいて、きょとんとした顔でこちらを見ている。 そしてその顔にユーリはあんぐりと口を開けてしまった。 

「・・・・か、可愛いっ! え? 青慎・・・君、なの?」
「え? あれ、姉さん。 今日は突然どうしたんですか? お客様をお連れしたのですか」

籠を持った青慎がパタパタと近付いて来る。 
顔は同じ、でも身長が違う。 
アメリカの青慎も可愛い系の顔だけど、身長が小さい分、こっちの青慎はもっと可愛い。 
思わず凝視していると戸惑った顔で窺うように見つめて来て、そして驚いた顔で夕鈴さんと見比べ出した。 籠を持つ手が震えて今にも落ちそうになり、夕鈴さんが受け取ると慌てたように御辞儀をしてくる。

「あ、こ・・・こんにちは!」
「こんにちは! あ、えっと、夕鈴さんと同じ職場にいます、ユーリと言います。 今日は遊びに来ました。 弟さんに会えるのをすごく楽しみにしていたんです」
「ユーリ、弟の青慎です。 青慎、ユーリさんよ」
「あ、姉がお世話になっています。 弟の青慎です」
「いいえ! こちらこそ、いっぱいお世話になっているんです。 それなのに御自宅にまで突然お邪魔してしまい、すいません。 長居はしませんので」

可愛い顔が私を凝視していると思うだけで緊張してしまう。 
隣に立つ夕鈴さんに振り向き、思わず 「か、可愛いですぅ!」 と言うと 「そうでしょう!」 と、真っ赤な顔で激しく頷かれ、激しく同意する。 頬を染めて照れ顔を見せる青慎に二人できゃーきゃー言っていると、家の中へ入るように言われた。

「もう、姉さんったら恥ずかしいよ。 ・・・・・あ、やっぱり同じ顔、だ」

家に入ってフードを外すと青慎の大きな目が更に大きくなり、夕鈴さんと顔を見合わせて笑うと、青慎の目がもっと大きくなった。 

「似てるでしょう? というか、そっくりでしょう? 新しく王宮に来たばかりの人だけど、顔がそっくりで意気投合したの。 で、連れて来たのよ。 驚いたでしょう」
「うん・・・・。 すごく、驚いた。 同じ顔の人が世の中には三人いるというけど、本当なんだね。 でも、目の色が蒼い・・・・ですね。 とても珍しいです」

あ、やっぱり気付くよね。 きょとんとした顔の青慎が可愛いと手がむずむずしてしまう。 
夕鈴さんに振り向くと解かってくれたようで、どうぞと手を差し出された。 では、遠慮なく!

「ああっ! 可愛いっ!」
「わぁああっ、あ、あのあのっ、え、ええー?」
「ゴメンね、少しだけ癒して欲しいの。 朝からすごく落ち込むことがあったから、可愛い青慎君を抱き締めさせて欲しいの! ああ、ほんとーに青慎君の可愛さに癒されるわぁ」

思い切り青慎をハグして、思い切りスリスリしちゃう。 
髪色も顔も同じなのに、背の高さが違うから腕の中にすっぽり納まる青慎が可愛いって愛でながら癒されていると、夕鈴さんが 「お昼作るから食べてね」 と声を掛けて来た。 
手伝おうと振り向き、しかし私は青慎を抱き締めたまま固まってしまう。 大きい鍋や蒸篭はわかるが、それでどうやって何を作るのか、手伝えるのか解からない。

「・・・・台所・・・・・?」
「ああ、アメリカと違うからいいのよ。 こっちは任せて頂戴ね。 そうだ、青慎と近所を少し歩いて来たらいいわ。 ついでに大根を買って来て欲しいな。 あとはお菓子でも」
「わかったよ、姉さん。 あの、ユーリさん・・・・・腕を離して頂けますか?」
「は・・・! あ、ごめんなさい、いつまでも。 青慎くん、すごく可愛くて」
「そうでしょうっ! あのね、ユーリの知り合いにも青慎そっくりの人がいるんだって。 だから会うのを楽しみにしていたのよ。 それとユーリは下町に慣れていないから案内してあげてね」

青慎から両手を離して頭を下げると、また可愛い顔を向けてくる。

「異国から来たので、この界隈のことも仕組みもよく判らないのです。 王宮にも最近勤め出したばかりで、夕鈴さんにお誘いを受けて嬉しいのですが、御迷惑をお掛けします」
「案内といってもただの下町ですから、買い物をしながら歩くだけになりますけど」
「いいんです。 それより抱き締めちゃって・・・・ごめんね、青慎君」

余りにも可愛くて抱き付いたけど、迷惑じゃなかったかな。 そっと顔を覗くと青慎は顔を真っ赤にして、それでも頷いてくれた。 
つい、感情に任せて抱き付いてしまうのはウォルター家で世話になってからの癖だ。 両親が亡くなってから事ある毎に抱き付かれていたから、すっかりそれに慣れてしまい、ハグが定着してしまったが、この界では女性がそんなことをするのは恥ずべきことらしい。 
下町に行ったら余計なことを口にしないように、大人しくしなきゃ。




夕鈴さんの自宅から青慎と歩き出し、初めて見る景色に呆けてしまう。 
テレビで見るアジア方面の番組には確かにこんな場所もあったはずと記憶の中を探りながら、でも時代が違うのが伝わって来る。 映画でもここまでリアルな臨場感は出せないだろう。 
低い建物が何処までも続き、空は曇天ながら空気が違う。 
高層ビルも車もヘリも見えず、いつもは耳にする騒音がない。 人々の活き活きした声と、荷馬車や台車のゴトゴトとした音と土埃が周囲に広がり、驚くのは緑が殆ど町中に見られないことだ。 ペットを引き連れて散歩している人もいない。 籠を背負っている人が多く、髪を縛っている人が多い。 目に映るものが本物だと判ると同時に、異国情緒がじんわりと浸透して来た。

「王宮とは違う感じが、また・・・・。 へええー」
「ユーリさんは異国からいらしたと言ってましたが、お国とは全く違いますか?」
「ええ、人も衣装も聞こえてくる音も見えるものも初めての体験で、本当に映画みたいだ」
「? えい、が・・・・ですか? あ、ユーリさん菓子を見ましょうか」

青慎と手を握りながら、きょろきょろと見回してしまう。 中華料理は食べるけど、母は中国からの留学生だけど、自分自身はアジア方面に行ったこともなければ見たことも無い場所だ。 
片手はしっかりとフードを掴み、反対は青慎の手を握る。 歩きを青慎任せに周囲を見回して楽しんでいると、突然フードが引っ張られた。

「お前、今日は何でそんなものを被っているんだ? まさか、怪我でも?」
「・・・っ!」

急にフードを引かれたため、思わず手刀で振り払いそうになり、ここは下町だったと慌てて振り向く。 顔を上げると見知った顔があり、だけど絵本の中の海賊のような眼帯をしていると、ユーリはポカンと口を開けた。 パラレルの奥深さに唖然としながら目を瞠っていると、相手も片目を大きく開けて私を凝視し、暫し沈黙が流れる。 
先に正気を取り戻したユーリは、落ち着くよう自戒しながら首を傾げた。

「え、と・・・・貴方様はどなたで御座いましょうか?」
「あ、几鍔さん、こんにちは。 ユーリさん、こちらは姉の幼馴染で几鍔さんです」
「・・・・・夕鈴、じゃない・・・・のか?」

その言葉に慌てて瞳の色を見られないようにフードを深く被り直し、青慎の手を強く握った。
几鍔だ! この界では夕鈴さんの幼馴染なんだ、名前は同じなんだ! 
知った顔の連続に、心の中は嵐の海に突き落とされたように激しく動揺する。 しかし急ぎ息を吐いて、出来るだけ上品に見えるよう会釈した。

「初めまして。 私は夕鈴さんと同じ王宮で働いています、ユーリと申します」
「・・・・驚くほどに、そっくりだが。 ああ、目の色が違うか? ・・・・蒼い?」

口元を手で覆い隠して呟きながら、躊躇することなく見下ろし続ける几鍔に笑いそうになる。 
アメリカの几鍔もきっと同じことをするだろうなと肩を震わせていると、その震えを違う方に受け取った青慎がアワアワしながら私の前に立ち塞がった。

「き、几鍔さん。 初めて会った方なのに、ジロジロ見過ぎですよ。 ユーリさんは王宮に従事されている方で、異国からいらしたばかりですので失礼のないようにして下さい」
「あ、大丈夫よ。 そんなの気にしないから問題なし」

眉間に皺を寄せて胡乱な視線を向けてくる几鍔に向き直り、眼帯以外は顔も髪型も体格も同じだと見上げた。 じっと見つめていると、半歩退いた几鍔が自身の頭を掻きながら顔を背けて小声で謝罪をしてくる。

「悪・・・・。 驚かせたみたいで」
「いいえ。 買い物を終らせたら夕鈴さんのところで昼ご飯なんです。 宜しかったら几鍔さんも、一緒にどうですか? あ、お仕事中ですか? 忙しいですか?」

アメリカの几鍔と同じような態度、同じ顔を見てワクワクしてしまう。 私の知っている、同じ顔をしている人がもしかして他にもいるのかも知れない。 騒がないようにしなきゃならないとは思うのだが、興奮してしまうのは仕方がないだろう。 会社で仲がいい友達そっくりさんに会うかも知れないのだ。 ジェーンやミランダ、カレン、エドワード、アレックスに会えたら面白いかも。 
ウォルターそっくりの人はいないかな。 そうだ、桂香さんに似た人もいるかも知れない。

頭の中でぐるぐる考えながら几鍔のそっくりさんを見上げ、いつのまにか近寄っていたようだ。 私がじっと見つめ続けたせいで、更に半歩下がった几鍔の目尻が少し赤くなったように見える。

「~~~青慎っ! 夕鈴も来てるのか?」
「ええ、そうよ。 夕鈴さんのところでお昼って言ったじゃないですか。 で、行きますか? 忙しいですか? 几鍔、さんは夕鈴さんと幼馴染なんだー。 へええええー!」
「青慎っ! こ、こ、ここ、こいつは何なんだ!」

青慎の手を握りながら、ユーリは几鍔が下がった分、前へと足を進ませる。 すると几鍔は青慎に向かって怒鳴るように叫び、近づいてい来るユーリからはっきりと顔を背けた。 
そこでユーリはようやく気付く。 大人しくしなきゃ駄目だと言われたばかりだと。 
項にチリッと痛みを感じて、慌てて周囲を見回す。 桐に今の遣り取りを見られていたら、戻るための最後の砦、庭園の池が埋められてしまうかも知れない。 

急に顔を伏せて口を噤み蒼褪めたユーリを見て、青慎が心配げに繋がれた手を持ち上げる。 
そして几鍔を見上げて眉を寄せ、ユーリの手を引いて 「大丈夫ですよ」 と話し掛けてきた。

「王宮にお勤めの方はそれなりの身分の方なのですから、怖い顔は駄目ですよ」
「こ・・・怖くねぇーだろ! 顔がすげぇ似てる女に詰め寄られて、こっちが驚いてんだよ。 退がっただけ詰め寄って来るし、畳み掛けるように喋るしよぉ」
「・・・・ごめんなさい。 ・・・・申し訳御座いませんでした」

そうだった。 大人しくしている約束の上、私は王宮に従事している侍女役だ。 几鍔にそっくりな人を前に興奮して、桐に止めを刺されるのは非情に困る。 
深く謝罪して、これ以上の揉め事を起こさないようにしなくては駄目だ。
急いで青慎と手を離し、一歩退いて几鍔へと頭を下げる。 御願いですから、これ以上大きな声で怒らないで下さいませ。 似ている人を見かけて浮かれていたんです。

「ユーリさん、大丈夫ですよ。 几鍔さんは滅多なことでは怒りませんから」
「・・・・青慎くん、本当? 几鍔・・・さん、詰め寄って煩くしてごめんなさい」

そろりと顔を上げて几鍔を見上げると、腕を持ち上げて顔の半分を隠した彼が戸惑いながら頷いてくれた。 安堵して背を正すと、ゆっくりと几鍔の腕も下がるから、肩から力を抜いて笑みを浮かべる。 そして戸惑ったまま髪を掻き回して溜め息を吐いた几鍔が、ぼそりと呟きを零す。

「あー・・・・・・。 後で寄るから」
「わかりました、姉さんに伝えておきます。 几鍔さん、お仕事頑張って下さいね」
「すいません、本当に・・・・。 仕事、頑張って下さい」
「・・・・・・気にしなくていい。 ってか、マジに似てるから妙な感じがするな」

幼馴染に似ている私に頭を下げられ困惑しているのが伝わって来るから、気を遣わせないように笑みを見せると、フードごと頭を撫でられた。 驚いて目を瞬くと、しまったという顔を見せるから泣き笑いしそうになる。 こっちの几鍔も優しいなと安堵して、ようやく肩から力が抜けた。 
このまま下町に長居をすると碌なことをしないと自覚したので、青慎と一緒に急いで買い物を済ませ、夕鈴さんの待つ家に戻ることにする。 もちろん、お淑やかな演技をしながら。



「以前も言いましたよね、台所は私の城だと! 立入り禁止ですから離れて下さい!」
「そんな夕鈴がかっこいい! あ、ちゃんと大人しく待っているから大丈夫だよ」

裏木戸から入ると、早速聞き慣れた声が聞こえて来たが、どうも国王陛下の台詞がおかしい。 もしかして下町に来ているということで演技でもしているのだろうか。 可愛い感じがするのが少し不思議だった。 李翔さんと呼ぶように言われたのを思い出し、忘れないよう気を付けようと背を伸ばすと、青慎が私に振り向いて説明を始める。

「王宮の役人をされている李翔さんも来たようです。 姉の仕事の上司なんですが、優しい方ですよ。 あ、ユーリさんの方が御存知ですよね」
「え、ええ。 り、李翔さんですね。 は、はい!」

頼まれた大根と菓子を持ち、台所扉を開けると椅子に腰掛けた国王陛下が私と同じようなコートを羽織り、眼鏡を掛けてニコニコしていた。 小犬みたいだと思って笑いそうになり、必死に耐える。 王宮の役人で夕鈴さんの仕事上司と言うことは、私の上司でもあるのだ。 笑ってはいけない。

だけど黎翔と重なるところを見るとやっぱり顔が緩んでしまいそうになり、余りジロジロ国王陛下の顔を見る侍女も変だろうと顔を背けて、夕鈴さんに先ほどのことを伝えることにした。

「さっき、几鍔・・・さんに会いました」
「ええっ!? な、何でぇ? あ、もしかして間違われて変なこと言われたとか?」
「いいえ、それはないです。 ただすごく驚いてましたよ。 まあ、驚くでしょうね。 幼馴染と同じ顔が青慎君と一緒に歩いているんですから。 で、アメリカにも同じ顔の几鍔がいまして・・・・その、私、すごく驚いて、あの・・・・」

同じ顔なのに海賊みたいな眼帯をしているから注視した上、詰め寄って怒涛の如く喋り捲ってしまったと、どう説明していいのか判らず頭を捻ると、夕鈴さんが私の両肩をがっしりと掴み、蒼褪めた顔で詰め寄って来た。

「ま、ま・・・・まさか、几鍔に抱き付いた・・・・とか?」
「へ? ああ、それはしてない」
「しちゃ駄目よっ! あいつは外道な金貸しなんだから! 近寄っても駄目!」

恐ろしいほどの剣幕で詰め寄る夕鈴さんを見て、さっきの私も几鍔に対してこんな風だったのかしらと深く反省する。 そして思い出した。

「そう言えば、後で寄るって言ってました。 ・・・・几鍔、さんとはこちらでは幼馴染なんですね。 驚いちゃった。 これで何人目だ? 同じ顔・・・・・」
「あれは幼馴染じゃないわよ! 金貸しをしている非道な商家の跡取り息子なの! ・・・って、アメリカにも几鍔がいるの? え? ユーリの近くに?」
「はい、同じ会社で働いています。 辛辣な物言いをしますが、頼れる兄貴って感じで人望もあるし、バイト時代から世話になってるんですよね。 だから吃驚しちゃった」

ぽかんっと呆けた顔の夕鈴さんを見ても、言うような非道な感じは無かったなと思い返す。
右目に眼帯をしているけど他は几鍔そのままで、話し易い感じもした。 そういえば、この界に来て、同じ顔をしている人たちは少しずつ何処かが違うんだと脳裏に浮かぶ。 李順さんは髪の長さが違うし、こっちの方が厳しいようだ。 浩大は顔もやっていることも同じなのに身長がまるで違う。 老師は同じように小さいお爺さんだけど、話したことが余り無いだけに相違点は不明。 だけど、どこか違うところがあるのだろうな。 やっぱりパラレルって不思議だと思うしかない。

黎翔と顔も髪型も身長もそっくり同じな人が国王陛下で、二十一歳という若さなのには驚いたけど、まあ周囲の皆も夕鈴さんと私の顔に充分驚いているし、でも説明は難しいし、困ってしまう。 

パラレルワールド自体、空想でSFで、小説か映画でしか見ないものだと思っていた。 
黎翔がいつか話してくれた夕鈴さんとの出会いのことも、話してくれた黎翔のことは信じているけど、現実に受け止めるのは難しいと思う。 実際体験している今だって、夢だったらいいなと希望を持ち続けているのだから。

肩からずるりと夕鈴さんの手が離れた。 少し疲れた顔で視線が彷徨っているからどうしたんだろうと首を傾げると、何かブツブツ言っているのがわかる。

「有り得ない・・・・頼れる兄貴とかって・・・・人望って。 世話になっている?」
「あの、夕鈴さん?」
「ゆーりんっ! お鍋から湯気が出てるけど、そのままでいいのー?」
「あああっ!」

踵を返して台所の湯気に対峙する夕鈴さんと、わくわくした顔で楽しそうに見守る国王陛下。 そして青慎が洗い終えた野菜をのんびりと家の中に運ぶ姿を見て、ユーリは明日は天気が悪くても絶対に池に飛び込もうと決心した。 早く元の世界に帰りたい。 いや、絶対戻るんだ。 

「絶対に戻ってやる!」

その前にもう一晩、夕鈴さんの寝台を借りてもいいか、あとで聞いてみよう。 
まあ、夫婦なんだから寝る場所は問題ないわよね。 念のため、あとで国王陛下にも相談してみよう。 青慎と一緒に皿を並べながらユーリはやる気に満ちた笑みを浮かべた。








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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 00:26:21 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2013-11-15 金 01:06:30 | | [編集]
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2013-11-15 金 09:17:07 | | [編集]
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2013-11-15 金 17:43:54 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。几鍔に抱き付いたら、ファンの方から石礫が飛んで来そうで汗汗ですよん。SNSで青慎君を黒くしてしまった私なので(爆)兄貴には何も出来ねー(オロロ) アメリカ桐希望が多くて、嬉しいやら困ったやら。その前に戻らなきゃね~。戻さなきゃね~。あとは寝台使用許可っす。さて、同じように兎を開放することが出来るか陛下。脱兎の如く逃げ遂せるか、兎。
2013-11-15 金 21:03:55 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。だけど、ユーリの仕置きを替わりたいと? すげぇえ! あと、コメントはひとつだけでした。御安心下さいませ。
2013-11-15 金 21:31:05 | URL | あお [編集]
Re: おとうとくんかわいい!!
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。調子はばっちり回復傾向。あと、コタツを出した途端に中に潜り込む犬です。住犬です、まさしく。ユーリにたじたじ兄貴と青慎を出せて、もう満足満足です。これですっきりしてユーリを帰せます。わははは。
2013-11-15 金 21:33:40 | URL | あお [編集]
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