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迷宮への誘い  22
「パラレルシリーズ」続きです。下町をちっとも歩いてませんが、几鍔と青慎で楽しめたから私的にはこれで良し!(笑)さて、長くなりましたが、あと少し。もう少しお付き合い下さいませ。


では、どうぞ













夕鈴さんが用意してくれたお昼を皆で食べたけど、浩大も桐も戻ってこないまま、食後の菓子を出したところで几鍔が姿を見せた。 椅子に座った私達四人を見て、特に私と夕鈴さんを見て目を丸くする顔が面白く、思わず盛大に噴き出してしまう

「そんなに笑うなっ! 二人並ぶと・・・・流石に驚くぞ、これは」
「・・・・何故金貸しが来るのよ! 何か用事でもあるの? 無いなら帰れ!」
「何でお前がまた来てるんだよ! そんなに王宮は暇なのか?」
「やあ、こんにちは、幼馴染君。 今日はユーリの案内もあって来ているんだよ。 それより君の方の仕事はいいのかい?」

あら? 何だろう、陛下と几鍔の間に冷たい火花が散って見えるわ。 夕鈴さんはどう見ても幼馴染に対して怒り狂っているようにしか見えないし、どうしたのだろうか。

「ゆ、夕鈴さん? いや、私が来て貰いたかった・・・・って言うのも変か? で、でも几鍔さんを呼んだのは私なので、ごめんなさい! でも、あのっ!」
「ユーリはいいのよ。 それより人の家に勝手に来ないでって言っているでしょー!」

勢いよく立ち上がって几鍔を罵倒し始めた夕鈴さんに慌ててしまう。 そんなにこの界の二人は仲が悪いの? だけど青慎だけは困った顔をしながら几鍔にお茶を出して椅子を勧めるし、国王陛下はニコニコしながらのんびりお茶を飲んでいるから、どうしていいのか判らない。

「あ、あのっ、では私が几鍔さんと外に行きましょうか? ・・・あれ、何でだろう?」
「行っちゃ駄目よ! これから下町を案内するんだから。 一緒に歩きましょうね」
「う、うん。 でも几鍔さんを呼んだのは私、なんですよね・・・・」

困ったなと几鍔を見上げると、目を細めて口角を持ち上げられる。 その顔もあっちの几鍔と同じだなと、へらりと笑い返すと頭をぐしゃりと撫でられた。 急に胸にぐっと来て手が上がりそうになる。 よく几鍔にされたなと思い出して、だけどここでこの几鍔にハグは駄目だろうと思うから、しっかりと手を重ねて押さえ込んでいると尋ねられた。

「えっと、ユーリって言ったよな。 あんたは異国から来たって?」
「はい、そうです!」
「敬語じゃなくてもいいよ。 って、夕鈴と同じ顔をしてるけど結婚してるのか?」
「はぁ? ・・・・ええ、してます」

何だか変な質問だけど、正直に答える。 すると途端ににやりと嗤う几鍔が夕鈴さんに向き直り、何故か鬼の首でも取ったかのような得意そうな表情を浮かべた。

「同じ顔でも片方は結婚していて、片方は・・・・。 ふふんっ」
「・・・・几鍔。 その口を閉じて、早くこの家から出て行きなさいよ」
「え、夕鈴さんは・・・・あ、そか(内緒か)・・・。 では几鍔さんは結婚してるのですか?」
「え? ・・・・お、俺はしてないが。 俺は男・・・・だから」
「じゃあ、御付き合いされている方はいらっしゃるのですか? 結婚をされていると、この国では偉いのですか? 男女で結婚適齢期があるのですか? 私、夕鈴さんより年上ですし、結婚したのも最近なんですが、それって駄目なんですか? 夕鈴さんって十七ですよね。 まだまだ若いのに、結婚しないと問題なんですか?」

その時代により結婚する適齢期というのがあるらしいが、この国ではどうなんだろう。 
夕鈴さんが国王陛下と結婚していることは家族にも内緒だというなら、幼馴染にも内緒なのだろうが、馬鹿にしたように笑う几鍔を見てユーリはむっとしてしまった。
アメリカの几鍔も人の部署が忙しい時にふらりとやって来て、人の背中に 『バーカ』 と書かれた紙を貼って行ったり、髪の毛をぐしゃぐしゃにしたり、垢抜けないとか、地味とか、結婚出来たのは奇跡だとか・・・・・・あれ、怒りが抑えきれなくなって来たんですけど。   

苛立ちを混ぜた視線を几鍔に向けると、大きく見開いた目が私を見下ろし、腕を上げて顔を隠す。 私は一歩大きく近付き、腰に手を宛がい背を正して、ビシリと指を向けた。

「この国は男女差別があるのですか? 几鍔さんはそういう風潮に賛成派なのですか?」
「あ・・・、いや、そうじゃねぇけど」
「では、どう意味で仰ったのでしょうか! 几鍔さん」

真っ直ぐに見つめながら、じりりと几鍔に近寄る。 だけど視界の端に肩をひどく揺らす国王陛下の姿が映り、そこで漸く自分が言い過ぎたと気が付いた。

「あああーっ! 悪いっ! 深い意味は無いよ! 悪かった」
「・・・・いいえ、また・・・・私も言い過ぎました。 几鍔さんに似ている知り合いがいて、そいつの物言いと同じなので、少し・・・・いえ、すごく興奮してしまい、すいません!」

むっとしたまま、それでも一応謝ると几鍔は顔を隠した状態で一歩退く。 
その背後の国王陛下の震えが更にひどくなり、顔が真っ赤に染まり、そして限界が来たのか突然爆発したように噴き出した。 激しく噎せ込み出した国王陛下に夕鈴さんが慌てて水を用意するが飲める状態ではなく、必死に背を叩き治めようとする。 青慎が 「強過ぎるよ、姉さん」 と諌めているが、必死な夕鈴さんには届いていないようで、涙目で卓に押し付けるように国王陛下の背中を激しく叩き続けていた。 
このままでは一国の王の命が消えてしまうと大きな声で夕鈴さんに叫ぶ。

「夕鈴さん! へ・・・李翔さんが痛がってますよ!」
「え? ああっ! ・・・・いつの間にか、噎せ込みが治まったようですが、・・・・あの、大丈夫ですか? まだ、生きていますか? ご、ごめんなさーいっ!」
「けほ・・・・・うん。 地平線まで続く白い花畑が見えたけど、戻って来れたよ」

痛みに歪ませた顔で、それでも愛しい妻に笑みを見せる国王陛下の深い愛情にユーリは打ち震えた。 早く二人が夫婦だと皆に教えてあげたい。 こんなにお互いを思いあっているのに、妃が庶民出身というだけで隠さなければならないなんて何て悲しいことだろう。

思わず二人の仲良い二人を見つめ、唇を咬む。 早く周知の事実となるよう、私は祈ることしか出来ない。 庶民出を揶揄されるとか、唯一の妃を面白くないと考える人による刺客導入で命を狙われるとか、そんな信じられない環境でも二人は愛を育んでいる。
・・・・なんか、友達がよく読んでいるハーレクインみたいだ。
私、そんな話・・・・・・好きなんだよね。 

ユーリから意味深な痛いほど熱の籠もった視線を注がれた夕鈴は、じりじりした熱に頬を染め、慌てて大きな声を張り上げた。 これ以上、このままの状態は精神的に良くないと。

「ユーリ、そろそろ町に行きましょうかーっ!!」
「姉さん、大声出さなくても聞こえるよ。 大きな家じゃないんだから」

柔和な微笑みを浮かべる青慎が姉の叫びを一刀両断した。 こちらの青慎君は結構落ち着いた子だなと見つめ、アメリカの青慎も度胸だけはあるかと思い出す。 やっぱり何処か似ている部分があるんだなと思いながら、几鍔を見上げたユーリは 「一緒に町に行きませんか?」 と誘ってみた。

「いや、俺はちょっと顔を出しただけだ。 暇そうな役人と一緒に町を歩く趣味は無い。 それにしても毎度毎度、役人ってのはマジに暇なんだな。 いい加減、しつこいと思うが?」
「夕鈴のご飯を食べる機会なんて、滅多に無いからね。 仕方ないだろう?」

飄々と応える国王陛下と、それを少しだけ困った顔で見ている青慎君に、この遣り取りはいつものことなのかとユーリは納得した。 口が悪いところもアメリカの几鍔と同じで、だけどあちらの世界ではいくら几鍔でも黎翔と話す機会なんてないわねと想像してみる。 まあ、仕事上でも会うことはないだろうけど、結婚式で顔くらいは見たかしら・・・・。 いや、式を思い出すと黎翔の悪逆非道な淫らな行為を思い出して苛立ちが再燃しそうになる。 
国王陛下が視界に入り、黎翔に重ねて知らず睨み付けていたようだ。 

「ユーリ、どうした・・・の? 僕、何かした?」
「あ・・・・、いえ。 ちょっと黎・・・・夫を思い出しまして」

いけない、いけない。 国王陛下と黎翔は違う人だ。 怒りと共に羞恥が蘇り、変なことを口にしないよう唇を噛み締める。 「俺は帰るから」 と片手を挙げてた几鍔が国王陛下を一睨みして夕鈴さんの家から出て行った。 青慎が 「僕はこれから勉強しますから、皆さんは楽しんで来て下さい」 と笑うから、邪魔はいけないとフードを被り町へ出掛けることになるが、浩大と桐はどうしたんだろうと首を傾げてしまう。 
夕鈴さんの家を出てから、周りに人がいないことを確認した後尋ねると、国王陛下が家の中のさっきまでとは違う雰囲気を纏い教えてくれた。

「ああ、彼らは隠密らしく警護をしているはずだ。 他に城下の調査をしている者から報告を集める仕事もあるから、帰りは別になるだろう。 まあ、問題はない」
「そうか、妃警護だけじゃないんですね」

彼らも忙しいのかと思いながら頷くと、夕鈴さんから冷たい空気が流れて来た。

「陛下、帰りは別になるって・・・・。 陛下だけは先に御戻りになって下さい! どうせ政務を放り出して来たんでしょう? このままでは李順さんに怒られるのは確定ですよ!?」

怒り顔の夕鈴さんに笑顔を浮かべる国王陛下は、その手をきゅっと握り締め、見ているユーリが恥ずかしくなるほどの妖艶な笑みを唯一の妃へと向ける。

「だけど私は愛しい我が妃を側から離したくは無いのだ、仕方がないだろう?」
「な・・・なんで、ここで狼へーかになる必要が・・・?」
「あ、あの・・・。 私は一人で町をぶらぶらしますから・・・・・」

もう、二人の濃厚ないちゃいちゃに居た堪れない。 その雰囲気にやたら恥ずかしくなり、二人を見ることも出来ないユーリは目を逸らしながら呟いた。 だけど、ユーリの言葉に激しく反応した夕鈴が 「駄目よ!」 と国王陛下を突き飛ばして叫ぶ。

「ユーリを下町に連れて、一緒に歩きたいのは私の方なの! 陛下・・・ぢゃない、李翔さんは王宮に戻って政務をなさって下さい。 警護には二人がいるのですから、陛下は真面目に政務をなさって下さい。 あとで睡眠時間が無くなって、あちこちで寝ることになって、また李順さんに怒られて・・・・悪循環ですよ!」
「あ、あのっ! では三人で! ね、三人で歩きましょう? さっき青慎君と少し歩きましたが、見慣れない場所と風景にすごく驚きました。 いろいろな店を見るのが、すごっく楽しみだな~!」
「ゆーりん、ユーリもそう言ってるしさ。 話しているより行こうよ、ね?」

妖艶から今度は小犬のようなニコニコな顔になり、夕鈴さんの手を持ち上げた陛下が歩き出すから今の内に流れに乗ることにした。 確かにここで揉めているより、町を見たい。 引っ張られる夕鈴さんが私の手を引っ張り、三人並んで町へと繰り出すことになった。

野菜を買った場所から少し進んだ先には沢山の店があり、中華風のレストランやカフェや可愛いイヤリングとかネックレスや指輪などを売っている店、生きたままの動物が檻に入れられて売られていたり、泥つきの野菜を売っている店などいろいろあり面白い。 初めて見るものばかりで、すごく楽しいとユーリは目を瞠った。 

「すごい綺麗ね。 へぇ~、楽しい。 あっちは布地ばかりだね」
「あそこはいい布地だから少し値段が高いけど、沢山の品が揃っているのよね。 ・・・・そう言えば黎翔様って、ユーリに沢山宝飾とか贈りそうね。 それも、とんでもない値段の品を」
「それは駄目って言っている。 元々飾り立てるのは好きじゃないし、これがあるしね」

そう言いながら、ユーリは胸元からそっとピンクダイヤのネックレスを出す。 

「贈りたいと言いますが、駄目だと叱ってますから」
「・・・・黎翔様を叱っているんですか? でも買って来そうな気がする」
「ええ、その度に返却させて小一時間は説教です。 だけど叱ると今度は返却不可な品を購入しちゃうから困りものなのよ! 名前を刻印させた靴とかPCとか椅子とか、果ては特別仕様の車とか・・・・。 思い出すと腹が立ってくるから、止めましょうね!」

腕を組んだユーリが口を尖らせながら町の風景を眺めている。 あの黎翔様を叱り付けるのが容易に想像出来、そっと隣できょとんとした顔の陛下を見上げた。 いつもバイトに甘い陛下も財政難で抑えてはいるが、下町に来るたび菓子を山ほど買うし、土産だと差し入れはするし、勿体無いというレベルが違うだろうが気持ちだけは判る。 

「ユーリが好き過ぎて贈り物をするのでしょうね」
「・・・・でも、一般人からすると桁が違いすぎて素直に嬉しいと言えないのよ。 わかって貰えるかな。 もう、なんていうか・・・・・・スケールも違うのよ。 前にも言ったけど島への監禁とか」
「あー・・・・、何か、うん」

夕鈴さんと手を繋いで彷徨いそうな視線を店先の品々に落とす。 
プレゼントは嬉しいが、喜ぶ前に品物と量とやることに唖然としてしまい、その後に遣り過ぎでしょう、莫迦じゃないのかと怒って叱りつけてしまう。 
夕鈴さんの言う通り、黎翔は好きだと言う気持ちを伝えるのに私が喜ぶだろうとプレゼントを選んだのだと解かってはいるのだが、未だにどうしても慣れない自分がいる。 

戻ったら素直に受け取ろうかな。 直ぐには出来ないかも知れないけど、努力はしよう。 嬉しいと思う気持ちを最初に伝えよう。 それから遣り過ぎないようにして欲しいと注意をしよう。 
・・・・・いや、何度も注意しているよね、私。 それにちゃんと嬉しいも伝えている。 それなら悪いのは黎翔じゃないか。 努力も反省も、必要なのは私じゃなくて黎翔ぢゃないか! 
 
「えっと、二人してお話のところ悪いけど・・・・・何か贈りたいって悪いこと?」
「「そうは言っていないでしょう!?」」

二人で声を揃えて振り向くと、意味が判らないとばかりに国王陛下はきょとんとして首を傾げる。 国王陛下も黎翔のように妃へ沢山の贈り物をしているのかと思うと、彼女の気苦労が知れた。 同じような出自だからというだけではなく、夕鈴さんとは考えの方向がすごく似ていると感じる。
 
「こく・・・李翔さん、私は気持ちを言葉にして伝えて貰ったり、ただ側に居て貰えるだけでも充分嬉しいです。 過分な品は、嬉しいけど恐縮してしまうし、値段の方が気になってしまう。 贈り物をしてくれる気持ちは嬉しいけど、やっぱり貧乏性なので」

そう伝えると、国王陛下は夕鈴さんを見てから私を見て、納得していない顔のまま小さく頷いてくれた。 夕鈴さんはお妃様なのだから国王陛下からの贈り物は慣れなくてはいけないだろうが、それでも程度があるだろうなと苦笑してしまう。 

「李翔さん、私もユーリと同じ気持ちです。 贈られることは嬉しいですが貧乏性ですからね。 財政も気になりますし、妃としては過分な宝飾を頂いております」
「・・・・殆ど受け取らないじゃないか」
「・・・・(受け取らないんじゃなくて、レンタルなんだよ!)」

あら、夕鈴さんの笑顔が固まった上に、今日一番の肌寒い雰囲気を醸し出した。 
この世界に来てから、こんな風に感じるのは何度目だろうか。 国王夫婦が表面上は柔らかく微笑みながら、互いを牽制しあっているような感じがする。

「あ、あの、そろそろ戻りましょうか。 もう充分堪能しましたし、明日の天気次第になりますが池に飛び込む準備もしたいです。 それと来た場所に出来るだけ居た方がいいですよね?」
「ユーリ、池は本当に止めた方が・・・・・。 もしかして気を遣わせてしまったのかな」
「いいえ。 本当に来た場所から離れていることが気になりますし、町も楽しかったです。 あとは皆にお土産を買って戻りましょう。 それに、陛下もお仕事がありますのでしょう?」

ふと土産に貰った簪を思い出し、他に持ち帰れそうなものはないかなと考えた。 菓子は駄目だろうなと考え、軽くて楽しいものがいいと目に映るものを眺める。 
何かこの世界に来た記念になりそうな・・・・。

「あの・・・・後宮庭園の花をホンの少しでいいので、頂けないでしょうか」

小声でそっと夕鈴さんの耳に話し掛けた。 不思議そうな顔で振り向いた彼女に微笑み、思いついた案を話すと 「もちろん、いいです!」 と笑ってくれる。 邸の温室にある花は四季折々、いろいろな花を咲かせるが、見たことのない花が後宮庭園に咲いていたことを思い出し、押し花にして持ち帰りたいと御願いした私は、願いが受け入れられたことに安堵した。

花が萎んでしまう前に戻りたいと伝えると同時に、今夜も夕鈴さんの部屋で寝ていいか尋ねてみた。 池に飛び込む前に、もう一度だけ妃の寝台で寝てみたいと。 

「えっ? あ、あう・・・・。 も、もちろん、いいに・・・決まっています」
「ありがとう御座います。 これで駄目なら速攻池へダイブです」
「そ、それも・・・・考え直しは・・・・うううう。 本当に寒いし冷たいですよ?」
「その前に今夜こそ、夕鈴さんの寝台から元に戻れるよう頑張りますね! どう頑張ればいいのか全く判りませんが、もう一度試す機会を無駄にはしませんから!」

二人顔を寄せて寝台拝借話しを小声で話していると、いつの間にか菓子を沢山買い、それを入れる籠まで買った国王陛下がニコニコしながら近付いて来た。

「何、どうしたのぉ? ゆーりん」
「陛・・・、何でもありません。 李翔さんは下町に来ていた分、沢山のお仕事がお待ちでしょうね。 戻りましたら閉じ込められるでしょう。 何度も駄目だと言ったのに来たのは李翔さんですからね! ですから李順さんに夜通しやれと言われても、真摯に対応して下さいね!」

真っ赤な顔で捲くし立て始めた夕鈴さんに目を瞠った国王陛下は私に視線を移す。
昨夜はそんなに夕鈴さんを束縛したのかと、こっちまで赤くなりながら私も視線を落とし、言葉を失ってしまう。 後宮に妃が一人しかいないのなら、毎晩愛でるのは有りかも知れないが、黎翔を思い出すと連日連夜は身体が持たないと思い、じりじりと顔中が熱くなる。

「・・・・二人で何を話していたのか判らないけど、何で顔が真っ赤なの?」
「「・・・っ!」」
「 ? ・・・・えっと、取り敢えず戻るってことになったのかな? ユーリは下町を堪能出来たの? もう、いいの? 何か買いたい品はなかった?」
「は、はい。 満喫しました。 青慎君にも会えたし、後は皆に菓子を買って戻れたらいいなって思ってましたが、李翔さんが沢山買ったようなので充分かと思います」 

今、この場で国王陛下に妃の寝所を今晩も使わせて貰う話はしてはいけない気がして、必死に明るい声を張り上げた。 柔和な笑みを浮かべながら何かを探るような視線を向ける国王陛下が、少し怖い。 それでもこの場で騒ぐのは得策ではないと、夕鈴さんの腕を掴んで急ぎ場を移動することにした。

「焼きたての品を売っている店が多いですね。 それにレストランみたいな店も」
「そ、そうね。 ああ、何度か桂香さんと一緒に行ったことがあるわ」
「へえ~、それは初耳です。 今度、その店に一緒に行ってみようかな」

二人で必死に話を逸らしながら歩き続けて、待ち合わせ場所で待機していた馬車へ乗り込む。 
ふと、王宮でも下町でも夕鈴さんから離れないで側に寄り添う国王陛下を見つめ、こんなに一緒にいるなんて羨ましいと笑みが零れた。 
黎翔とは結婚してから互いの休みには大抵邸内でのんびり過ごすことが多いから、今度二人で街中デートもいいかなと想像してみる。 連休に休みが重なれば小旅行もしてみたい。 

そのためには元の世界に戻ることだ。 それが大前提だとユーリは拳を握り締める。 
駄目で元々と何度も何度も試して試して、そして絶対に帰る。 
王宮に戻ったらスーツを持って妃の部屋に移動して、いつでも戻れるようにスタンバイするのがいいだろう。 夕鈴さんもこの世界の衣装を着て戻れたと聞いたはずだ。 直ぐに着替えて、寝台に転がっていた方がいいかも知れない。 それでも駄目なら池に飛び込むだけだ。 それでも駄目なら、この世界の衣装で飛び込んでみようか。 お妃衣装で飛び込んだら、夕鈴さんの時のようにアメリカに行けるかも知れない。


実行すべきこと、駄目だった時の案を考え出したユーリは口を閉ざして夢中で考え出した。
馬車の対面に腰掛けた妃を必死に膝上に誘おうと頑張っている国王陛下と、演技が必要ない場所で何をするんだと小声で抗う夕鈴の騒がしい攻防も、今のユーリの耳には全く届かない。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 02:50:22 | トラックバック(0) | コメント(8)
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2013-11-18 月 13:37:36 | | [編集]
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2013-11-18 月 14:45:28 | | [編集]
何だかとっても切なくなりました
一緒に居て互いに想い合ってるのに
最後の一線が越えられない二人と
結ばれた筈なのに時空によって引き裂かれた二人
どっちも切ないです
甘々な台詞も切なく感じます
あー早くユーリが戻れます様に!
ついでに現代の桐さんと対決出来ます様に(笑)
2013-11-18 月 21:51:10 | URL | 名無しの読み手 [編集]
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2013-11-18 月 23:16:32 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。もう先に謝っておきます! 最後に! 最後に少しだけ絡ませて下さい! あと、アメリカ桐はどうでもいいんですよね。ユーリと絡んでもいいって言いましたよね。いいですよね? アメリカ桐は絡んでもいいですよね? ますたぬさ~ん。
2013-11-19 火 20:20:36 | URL | あお [編集]
Re: はーれくいん…?
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。陛下並ではありませんが、年末近くなるとやっぱり何処も忙しいです。ついストレスが飲み会になるので痩せません!!(笑) 今時期の飲み会は帰りが寒くて辛い~。兄貴の周りは明玉を含め、みんな賑やか。一番賑やかなのはおばば様でしょうけどね。そういう星回りなんですよ。きっと几鍔はおばば様に結婚相手を推し進められるでしょう。 ・・・・・ちーん。
2013-11-19 火 20:43:03 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。好みに走って下町に行かせたので予定より長くなりましたが、楽しく書いてます。グラチャンバレーに嵌り、連日娘と叫んでいます。 今日も叫びすぎて咽喉が痛くて、ケホケホです(笑) あと少し(たぶん、二回で終了予定)ですので、もう少しお付き合いお願いします。
アメリカ桐・・・・・・うん、頑張ります。
2013-11-19 火 20:52:03 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。 下町はただ単に兄貴を出すだけだったので、さらりと終了してしまいましたが、もっと弄っても良かったかと少し心残りが。(笑) 几鍔にハグ・・・・考えたのですが、剃刀送られて来たら困るから(爆!)ストップしちゃいました。青慎君だけでも充分満足しましたしねー。今回の話はバイト妃と結婚後ユーリなので、想像の域が大幅に違うから楽しかったです。もう少しだけ(結構こればかり言ってますが)お付き合い下さいませ。
2013-11-19 火 21:06:51 | URL | あお [編集]
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