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迷宮への誘い  25
「パラレルシリーズ」続きです。アメリカに戻って来たユーリをまとめ終えたら、夕鈴を書きます。もう少しなので、お付き合いお願い致します。(もう少しって、何度書いたことでしょうかー(爆))


では、どうぞ













久し振りに手足を伸ばして入浴し、部屋に訪れる桂香さんを始めとしたメイドさんたち、執事さんや警備スタッフ、庭師、厨房の皆に長い間心配掛けたと謝罪とお礼と、感謝の気持ちを伝えた。 執事さんが涙混じりの声で無事を喜んでくれ、皆も涙顔で笑みを見せてくる。 

「こんなに長い間姿を消していたとは知らなかったの。 心配掛けて本当にごめんなさい。 そして皆さんに伝言を預かって来ました。 ・・・・夕鈴さんが、皆さんに別れも告げずに消えて本当にごめんなさいって。 いっぱいお世話になってありがとうと伝えて欲しいって頼まれました。 今は幸せに過ごしていますからって」
「そうですか・・・・。 それは本当に良かったです」
「し・・・信じて下さいますか? 私が夕鈴さんに会ったなんて、すごく不思議な話ですが皆さんは信じてくれますか? あ、本当のことなんですけど、でもあのっ!」

伝えたかった言葉だけど、信じて貰えるかは半信半疑。 だけど誰も彼もみんな、柔らかく微笑みを浮かべて頷いてくれた。 桂香さんが私にハンカチを渡してくる。 顔を上げると皆の顔が歪んで見え、そこで私は泣いているのだと気付いた。 隣に座る黎翔がしゃっくり上げる私の頭をそっと抱え込むから、余計に涙が止まらない。 

「ユーリ様、夕鈴様のお言葉をお伝え頂き、ありがとう御座います。 私達は心から安堵致しました。 きっとお二人は通じる何かがあったのでしょうね」
「その言葉がすごく嬉しい、です・・・・・」
「もう、それ以上泣くな。 また熱が上がるから」

皆が部屋から退室して行くけど、私の涙はなかなか止まらない。 普段泣かない分、一度箍が外れると止めようがないと困り果てていると、桂香さんが泣き続ける私にお茶を用意してくれた。 

「ユーリ様、温かいミルクティーを御用意致しましたから、ゆっくりお飲み下さい。 そのまま泣き続けて、また熱が上がったら大変ですわ」
「私の腕の中では何度も泣いているけどね。 感じ過ぎて悦い・・・・・ぐっ!」

握り拳を思い切り下から突き上げ、黎翔の頤にヒットさせる。  呆れた顔を浮かべる桂香さんが黎翔に 「これ以上興奮させませんように」 と注意を残して退室した。

「何を言い出すのよ!」
「う・・・・ごめんなさい。 ユーリ不足でつい・・・・。 でも泣き止んだだろう」
「確かに涙は止まったけど・・・・。 そうだ、お願いがあるの。 たくさん心配掛けたばかりだけど、どうしても聞いて欲しい。 黎翔に駄目って言われても・・・・どうしても」

殴ったばかりの黎翔の頤を撫でながら、思い出した願い事を口にする。 
結婚後に止めさせられた古武術道場通いを、どうしても再開したいと。 
柔軟や模擬動作であんなに身体が動かなくなっていたとは自分でも驚きで、心底悔しいと感じていた。 だけどやっぱり黎翔はいい顔をしてくれない。 

「あのね、あっちでね、国王陛下唯一のお妃様として狙われている夕鈴さんの囮をしたのだけど、身体が結構鈍っていて愕然としたのよ。 戻ったら絶対に通うって決めたの。 だから駄目って言われても通うからね! でも反対はされたくないし、判って欲しいよ」
「必要なら邸にインストラクターを呼ぶ」
「あの道場がいい! 師範代だって私の癖を知っているし」
「・・・・じゃあ、ユーリ個人のボディガードをつける。 私と出掛ける時以外は常時だ。 それが駄目だというなら道場通いも許可出来ない。 これ以上の譲歩は出来ないぞ」
「・・・ぐぅ・・・。 うん、ありがとう!」

時季によっては私も警護対称としてボディガードが就くことがあるが、基本は姿を見せず影から警護する形だ。 常時の個人警護となると今までと違うのだろうか。 でも、それで道場通いが出来るというなら、私自身も多少の譲歩をしなきゃ駄目か。  

「・・・・ユーリ。 今、囮って言ったか?」 
「え? ああ、そうなのよ! 国王陛下唯一の妃を殺して次の妃を推奨しようとする悪い奴が時々王宮に忍び込んで来るんだって。 いる間に夕鈴さん警護の浩大と桐と協力して捕まえたんだけど、他にも毒を仕込んだり、矢を射ったり酷いんだよ!」

説明している内にも思い出し怒りに震えてしまう。 か弱い妃になんてことを企む奴がいるんだ。 更に陛下唯一の妃として幸せに過ごしていることを家族に伝えることが出来ないなんて、そんな世の中間違っていると、ユーリは握った手を宙で震わせた。

「ユーリ、協力して捕まえたって? 囮として動いて・・・・その悪い奴を積極的に捕まえるために動いたというのか? 怪我は足だけか? 毒とか矢とかって何だ」
「なっ、なんで足の怪我を知っているの!?」

目を瞠って黎翔を見ると 「着替えさせる時に全身をチェックした」 と事も無げに言われる。 
パジャマ姿の自分を見下ろし、確認するのは当たり前かと納得した。 そして着替えで思い出し、着ていたスーツを持って来て欲しいとお願いする。

「スーツというより・・・・これ、だろう?」

銀色に輝く簪を渡され、大きく頷いた。 先端が異常なほどに尖っていて、反対側は重くカスタマイズされてしまった異世界の稀有な簪だ。 そして小さな袋も渡され、見ると中にはオレンジ色の小花が入っていた。 何故か手首にしていたはずの鉄環手も袋の中に一緒に入っている。

「全て同じポケットに入っていたそうだ。 先端が異様に尖っている簪のせいで穴が開いたから、スーツは処分しようかと思っているがいいか? この鉄の環は何だ?」
「・・・・浩大が入れてくれたのかな。 まだ匂いがするような気がする」

後宮庭園の花々を思い出し、目が潤んでしまう。 本当に行っていたんだ、あの世界に。
時間の流れの違いに驚くが、ちゃんと戻れたことに感謝しよう。 
そして『お土産』が手元にある不思議を楽しもう。 私は黎翔の手に簪を置き、身体を預ける。

「これね、夕鈴さんが使っていた簪だよ。 いろいろあって刺客に投げ付けたんだけど、その後に余計なことをされたけど頂けたんだ。 これは夕鈴さんが住む後宮庭園に咲いていた花で、鉄の環は・・・・私が使わせて貰った武器。 本当に・・・・あの世界に居たんだ、わたし」
「刺客とか囮とか武器とか・・・・・。 ユーリから聞かされる内容は心臓に悪い」

包み込むように抱き締められ、頭上から嘆息が落ちて来る。 

「黎翔、今日はお仕事ないの? そういえば目が覚めてから李順さんに会ってない」
「仕事よりも前に、他に何があったか、掻い摘んで教えて欲しいな」
「掻い摘んで・・・・・。 あー、えっと、まず目が覚めたら夕鈴さんの国の王様の住む王宮の後宮に居て、黎翔そっくりの国王陛下に不審者と思われて腕を捩じ上げられて、小さい浩大に会って、夕鈴さんに会って驚いて、李順さんに会って、後宮で世話になったの。 顔が同じだから夕鈴さんの従姉妹としてね」

抱き上げられ、寝室へと移動する。 紅茶を飲み終えたから横になれと言うのだろう。 黎翔が黙って聞いてくれるから、思い出しながら出来るだけ順番に説明を続ける。

「それから庭園を歩いている時に刺客が現れて、妃の夕鈴さんが狙われているって聞いて囮になるって無理やり協力させて貰ったの。 刺客をどうにか上手く捕まえることが出来て、そのあと・・・・・えっと少し熱が出てね、元気になってから夕鈴さんの実家に遊びに行ったら、会社でバイトしている大学の後輩が夕鈴さんの弟として存在していて驚いた」
 
まだ昼間だけど、私に付き合いベッドに横になる黎翔の腕の中で話を続ける。  

「会社では先輩の几鍔があっちでは夕鈴さんの幼馴染で、海賊みたいな片目眼帯していた。 その後王宮に戻って庭園でお土産用の花を摘んでいる時に突然、思い出したんだ。 ・・・・私、仕事の帰りに芝生で花を拾ったって」
「花?」
「その花ね、夕鈴さんの髪飾りだった。 思い出してポケットから出すと、花は潰れずに綺麗なままでね、すごく驚いたけど夕鈴さんに渡すことが出来た。 それで・・・・・戻って来れたんだ」

まとまらないまま呟くように説明している内に少しだけ寒い気がして、黎翔に抱き付く。 同じことはもう繰り返さないだろうと確信しているのに怖くなった。 
もしも戻れなかったら・・・・私はあの国にずっと囚われていたかも知れない。 

「・・・・戻りたいって思っていたけど」

きっと思うだけでは戻れなかった。 花の存在に気付かなければ何時までもあの世界で異邦人として過ごし続けなければならなかったのか。 異世界に行くきっかけが花だというのに、どうして直ぐに思い出せなかったのだろう。 池に飛び込んでいたらまた熱が出て、戻る機会が先送りになっていたところだ。 一週間が二ヶ月以上の行方不明だったとするなら、二週間なら四ヶ月以上、ひと月なら・・・・・黎翔は私を諦めていたかも知れない。

「ユーリ、思っていたけどって。 ・・・・・まさか、戻りたくなかったのか?」
「違うよ。 思うだけじゃ駄目だったんだって判っただけ。 黎翔が好きだから戻りたいって何度も思ったけど、いろいろ試そうとしたけど、きっかけの花を思い出さなきゃ、いつまでも戻れなかったのかも知れないと思うと・・・・・今頃、怖くなって」

この腕の中の幸せを知った自分が、同じ顔を見続けながら後宮に居るだけなんて、どうしたって考えられない。 何度も何度も戻るための試しを続けるだろう。 心が折れるまで試して、それでも駄目だと知った時、私はどうなるのだろうか。

「黎翔に逢いたいって何度も思った。 私が好きって言ってくれる黎翔に逢いたくて、すごく泣いた。 逢いたくて逢いたくて・・・・・。 私の中では一週間だけど、ここでは二ヶ月以上も黎翔は探してくれたんだよね。 ありがとう、ほんとうに」
「当たり前だろう。 ・・・・・最初は営利目的の誘拐だと思ったが連絡もない。 バッグが落ちていた場所が場所だけにまさかと考えたが、異世界に行ったというなら手の出しようがない。 周囲に対人センサーを設置して監視しながら、誘拐の可能性も捨て切れず捜索を続けた。 諦めるなんて考えもしない」
「もう・・・・ないよ。 私、二度と何処にも行かない。 黎翔から離れない」

腕の中から顔を上げて黎翔の頬をなぞる。 私の好きな人で、私を好きだと言ってくれる人。

「黎翔が私を好きでいてくれる限り、焼きもち妬くこともない。 私、黎翔がすごく大事。 何よりも大事で、大好きだよ。 逢いたくて逢いたくて、やっと逢えた」
「・・・・・ユーリからそう言われるのは珍しい」
「そうだよね。 今まで頑なだったから反省する。 好きな人に好きって伝えられないのが、こんなに辛いと思わなかった。 今は伝えることが出来るんだもの、いっぱい言うよ。 大好きだって、そばに居られて嬉しいって。 諦めないでいてくれてありがとうって」

少しだけ泣きそうな黎翔の顔を近くからじっと見つめる。 
国王陛下は夕鈴さんだけを見つめ続けていた。 今になってわかる。 
国王陛下に私の胸がときめくことはなかった。 それは違う人だと知っているからだ。 私の胸がときめくのは彼じゃないと解かっているから、同じ顔でも私の鼓動が跳ねることはなかった。

「黎翔にだけ、ドキドキする。 きっと死ぬまで恋し続けると思うよ」

それは何て幸せなことだろう。 好きになった人が目の前にいてくれる。 憧れと畏怖と尊敬を私に与えてくれた人が、恋愛まで教えてくれた。 それも一方的な恋じゃない。 
互いに恋をしようと、腕を広げて私を抱き締めてくれる。
 
抱き締める腕に身を委ねながらユーリは幸せに酔った。






目が覚めてから数日後、ユーリが勤める会社の皆が見舞いに訪れた。 突然細菌性の病気に罹り長く面会謝絶とされていたが、やっと退院出来たという設定だ。 見舞いに来てくれた皆が元気になって良かったと笑みを見せてくれるからユーリは引き攣った顔で礼を伝えた。 
義兄であり上司でもあるウォルターには会社の皆が来る前に電話でおおまかな話をしている。 
流石に異世界に行っていたとは言えず、行方不明だった間の記憶がないと話すと、養父母が心配しているから一度顔を出すように言われた。 何があったと詳しく問い詰めて来ないウォルターの優しさに感謝して、近々黎翔と一緒に顔を出すと約束する。
ただ会社の皆と一緒に来た几鍔からの問い詰めるような視線が痛くて、ユーリは両目に眼帯をしてやりたいと思いながら視線を逸らし続けた。 
 
熱がある間は、ずっと黎翔がそばに居て甲斐甲斐しく看病をしてくれたのが嬉しい。 
朝から晩までそばに居てくれる幸せに浸り、その優しさに嬉しいと素直に感謝していた。

だけど、熱が下がってから三日も過ぎると段々と心配になってくる。 
仕事は大丈夫なのか。 毎日そばで仕事をしているが会社に行かなくていいのか。 
李順さんが蒼褪めた顔で出入りするたび、何か言いたげな顔で私を見るけど大丈夫なのか。 
いや・・・・駄目だろう。 そばにいて欲しいと願ったのは自分だと承知しているが、度を越した甘い束縛に居た堪れなくなる。

李順さんがファイルブックを山と運び、方淵が忙しなく本社と邸を往復する。 
方淵に黙したまま睨まれた時は、黎翔にもう大丈夫だからそろそろ本社に行って仕事をして欲しいと叫んだほどだ。 熱が下がっても私はパジャマの上にガウンを羽織り、タオルケットに巻かれた状態で黎翔の執務室で膝上抱っこされ続けている。 李順さんが私を下ろして仕事をしろと雷を落とすが、黎翔は耳を貸さない。

「だってユーリが傍に居てって言うんだもの。 仕事が滞るよりましだろう?」

言質を取って私の額にキスをする黎翔を、白けた顔で李順が見下ろす。

「確かに表面上は問題ありませんが、会長指名の視察や会議をいつまでも代理に任せておく訳にはいきません。 周氏も忙しいのですよ! 各事業を統括されているだけでなく代表執行役社長兼最高執行責任者までされているのですから。 周氏の秘書課など屍累々状態で、こちらから応援部隊を派遣している状態です!」

李順から聞かされる内容を耳にして蒼褪めたユーリが必死に黎翔を説得するが、全く聞いてくれない。 だけど邸に訪れた周さんだけは 「問題御座いません。 仕事の進みは順調ですから、ユーリ様が気に病むことはありません」 と言ってくれた。

「例え、このままの状態を続けて暴風となろうが、竜巻が発生しようが、大洪水となろうが、最終的にそれは会長である方の責で御座いますゆえ。 歴の名言に 『為す者は常に成り、行なう者は常に至る』 とあります。 我が会長に於かれましては心配などないでしょうが、ユーリ様の御心痛を察しますと」
「周・・・・・、それ以上の戯言は止めろ。 わかった、明日は出社する」
「御理解頂けましたら幸いで御座います。 会長付きの秘書課の者達が連日疲労困憊で私の秘書課へと派遣されております。 指示を出す李順も苦労しておりましたから、このままでは」
「・・・・・わかったと言った。 それよりこの書類に関して詳細を報告しろ」
「エヴァイス社と合同で行なう予定の新規商品開発について、会長からの意見を」

青白い顔色で訥々と話し続ける周に一言も口を挟めず、ユーリは黎翔の膝上で固まっていた。 
そしてふと、思った。 国王陛下にも周さんのような人がいるのかしら、と。 



順調に回復し医師から許可が出て、久し振りに出社出来ると張り切ってスーツを着る。 
帰りには道場に寄って、再び通いますと師範に伝えるつもりだ。 邸に閉じ篭り状態で約ひと月経過していたから、久し振りに戦闘服に身を包みユーリは笑みを浮かべる。 
しかし、その後に現れた人物の顔を見て愕然とした。

「ユーリ、以前話していた個人警護担当者に会わせるよ」
「初めまして。 ユーリ様」

息が止まる、目が大きく見開く、口がポカンと開いたまま固まってしまう。 
どんな風に同じ顔をした桐と出会うのだろうと思っていた。 最後に楽しみにしているとも言ったけど、こんな形になるなんて想像もしていなかった。 
個人警護を担当するということは、桐が邸と会社の往復、道場の送迎もするということか?

「・・・・き、桐・・・・」
「ユーリ、彼に何か問題でも?」
「あ、いえ。 ちょっと知人に良く似た人がいて・・・・すごく・・・・驚いて」
「パウロー・ニアスと申します。 今後は送迎及び会社内、道場でも常に御側で警護を致しますので、無茶な行動はされませんよう最初にお願い申し上げます」

顔が酷似しているだけの初めて会った人に壁を作るつもりはない。 だが、人を喰ったような最後の台詞にカチンときてしまう。 顔が似ているだけと解かっているはずなのに、やっぱり中身も同じじゃないかと文句を言いたくなる。

「無茶な行動とはどのようなことでしょうか、具体的にお教え願えますか」
「背後から手の内の書類を奪おうとした人間に踵落としをして昏倒させるとか、御年配のバッグを奪い去った人間を追い駆けて肩の骨を外すとか、痴漢を半殺しにするとか、大学時代には友人のストーカーを病院送りにしたこともありましたよね。 他にはショッピングモールで」
「もう・・・・・結構です」

目を大きくして私を凝視する黎翔の視線が痛い。 
過去のことです、全て! そんな無茶なこと、結婚後はしてません。 

「え? 黎翔、会社内や道場でもそばにって・・・・?」
「ウォルター氏には許可を貰っている。 常に、と言っただろう?」
「そんなのない! 会社内はいいじゃないの、そこまで束縛されるのは困るわ。 黎翔と結婚しているのは皆承知だけど、そこまでされると引かれちゃうよ!」
「出来るだけ目立たぬように致しますから問題ありません」
「ずっと大人しく会社内で仕事しているから、送り迎えだけにして!」
「大人しくされていないから社内での警護も指示されているのだと思いますが?」

言い方が桐そのものだ。 これから久し振りの出社だというのに頭痛がしてきた。 
行きも帰りも会社でも道場でも一緒なの? 桐もどきと? もう・・・泣いちゃおうかな。

「それが厭なら、道場は中止。 ユーリ、私の心配が完全になくなるまでは警護を外さないからな。 パウロー、常にといっても余り近付くことの無いように」
「承知しました。 ・・・・ではユーリ様、急ぎませんと遅刻ですよ」

今、鼻で笑いませんでしたか? 何だか、涙で前が見えません。 どうしよう、どうしようか。 
いや、もう警護は就いてしまった。 大人しく、いい子でいたら外してくれるだろうか。
ウォルターに泣きついてみようかな。 いや、義兄は黎翔に弱い。 ああ、本当に時間がない。 今はいろいろ飲み込んで、足取り重く会社に向かうしかない。 

悪いのは桐に似ている彼のせいじゃないと判っているけど、睨み付けてしまう。 片眉を持ち上げて口端を持ち上げるパウローが私のバッグを持って玄関へと促す。

「久し振りの出社と伺っております。 ・・・・遅刻は厭ですよね?」
「・・・・・言い方が桐だ」

項垂れて車に乗り込むと、黎翔が隣に腰掛ける。 目で厭だと訴える私に黎翔が問い掛ける。

「ユーリ、桐って誰だ? ・・・・・この間もあちらの話をしている時に言っていたな」
「あ、夕鈴さんの警護をしていた人で、背の高い隠密さんで、武器大好き男だよ」
「・・・・焼きもちを妬かないと言っていたが、妬かせる気はあるようだな」

朝から妖艶な笑みを駄々漏れに降り注いでくる夫を前に、私の心臓はバクバクと鳴り響く。
次の休みは実家に避難した方がいいかしら・・・・・・。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 00:10:25 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2013-11-24 日 01:34:37 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、早速のコメントをありがとう御座います。そうなんです、宰相に会わせられなかった! まあ、夕鈴の従姉妹設定なので、後宮から出せない事情がありましたが。 本当は水月に会わせたかった! 頑張ろうかと思ったのですが、やっぱり無理があると諦めました。 そして、やっと出せたアメリカ桐。も少し絡ませてから白陽国編を書きたいなと思っています。
2013-11-24 日 02:09:53 | URL | あお [編集]
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2013-11-24 日 05:22:33 | | [編集]
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2013-11-24 日 18:27:21 | | [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。最近、のんびり更新ですのにお付き合い頂き感謝感激です。桐をやっと出せてほっとしてます。ここまで引っ張れて嬉しいっす。国王とのハグは・・・・・・ほほほほほ。ほほほほほほ。
2013-11-24 日 19:13:44 | URL | あお [編集]
Re: 真打ち登場
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。おお、初のunder 遠慮意見ですね。まあ、ユーリが翻弄されるのは目に見えていますからね~。ドSですしね、ここの黎翔さんは。ほんわか雰囲気でいちゃいちゃしている夫婦ですが、石を投じたくなる私もSかな(笑)
2013-11-24 日 19:17:05 | URL | あお [編集]
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2013-11-25 月 23:23:40 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。やっとアメリカ桐を出せて安堵安堵で御座います。そしてやっとアメリカ終りです。次は白陽国へ戻りっです。本当に思った以上に長くなり、つい過去作品の手直しをしたりして、現実逃避してます。娘が試験勉強する横で誤字脱字を見つけては、ひとり汗汗です。偽夫婦の方が書くのが楽・・・・・かな。楽しさは変わりないんですが、出来るだけ同じようにと思うほどに苦労する。でも、やっぱりたのしー!
2013-11-26 火 00:06:31 | URL | あお [編集]
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