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千思万考  3
ずっと調子の悪かったパソコンから新しいのに変える相談を旦那にしたところ、なんと翌日に新しいのが到着。わお。今の流通の速さにびっくりです。確かに「これがいいな」と言ったけど旦那も頼むの早ぇえよ。慣れるのに多少時間が掛かりそう。でも仕事場のと似てるから大丈夫かな。


では、どうぞ













翌朝、重い頭痛ともたれる胃を抱えて気分最悪で目が覚める。 額を押さえて寝台から離れ、冷たい水で何度も顔を洗い意識を浮上させていると、青慎が心配げな顔で側に寄って来た。

「姉さん、父さんが置きっ放していた茶杯のお酒を飲んじゃったんだって?」
「・・・・そうみたい。 父さんは夕べ帰って来たの? って、その話を誰から聞いた!?」

そうだ、いつの間に私は部屋の寝台で寝ていたんだ? 
青慎が帰って来るのを待たずに先に寝てしまったことも驚きだが、私が酒を飲んだと誰に聞いたというのか。 記憶の隅に思い出したくない人物が揺らめくが、出来ることなら直ぐにでもそんなオゾマシイ記憶は抹消して、そんなことは無いよと、一人で横になったんだよと誰かに言って貰いたい! 

「僕が帰って来た時に几鍔さんが家にいて、茶杯に入っていたお酒を姉さんが間違って飲んだって教えてくれたんだ。 勿体無いからって、そのままにして置いた僕が悪かったんだよ。 だから父さんを怒らないでね。 父さんは・・・・・姉さんがどういう状態で寝ているのか知って、今日は帰らないって言い残して仕事に行ったよ」

ああ、記憶の抹消は出来なかった。 さっさと帰ればいいものを、いつまで人の家に居たんだ、あいつは。 そう言えばあいつに・・・・・几鍔に何か訊かれたか? 
いや、私は几鍔に何を言った? 奴と何かを話した記憶がぼんやりと残っている。 
もしかして陛下のことを口にしたか? まさかバイト妃のことは言ってないよね、私。

一気に蒼褪めた私はその場で動けなくなった。 きりっと痛む胃がどうにか私を正気に戻してくれたが、頭が上手く動かない。 最近ずっと食欲が無かったせいか、朝粥を作りながら今日すべきことを考えようにも胃の痛みと悪い考えが浮かび続けて纏まらない。

「姉さん、顔色が悪いよ。 折角休みに来たんだから、今日はゆっくり寝ていて」
「・・・・じゃあ、昼まで。 寝たからお酒は抜けたのよ。 ちょっとだけ頭が痛いのと夕べ何も食べずに酒なんか飲んだから胃がビックリしているだけ。 青慎は今日も学問所でしょう。 私は少し休んだから大丈夫だから心配しないでね」

「くれぐれも無理はしないでね」 と優しい弟の言葉を聞きながら手早く後片付けをして、夕鈴は寝台に横になることにした。 一晩寝て顔を洗ったせいか酒気は抜けている。 
あとは鈍い痛みを訴える頭と胃が問題だ。 それも少し横になったら治るだろうと寝台で目を閉じた時、窓を叩く音が聞こえて夕鈴は飛び起きた。

「お妃ちゃん、大丈夫かぁ」
「こ、浩大?」
「ちょいといいか? じぃちゃんから薬湯を持って来たから入れて~」

その言葉に驚きながら台所へ向かい、勝手口を開けると浩大が壺に入った薬草を卓へ置いた。 早速湯を沸かして浩大用にお茶を淹れ、自分用に薬草を煎じる。 独特の香りが立ち昇るのを呆っとしたまま眺めていた夕鈴に、浩大が懐から菓子を取り出し口へ運びながら問い掛けてきた。

「お妃ちゃんは風邪じゃないかって、じぃちゃんが心配してたよん」
「・・・・風邪? そう、なのかな」

ちょっと胃が痛むような気がするけど、それって風邪のせいなのかな。 少し休んだら家の掃除をしようと思っていたけど、風邪をひいているなら青慎に移っちゃう心配がある。 そうなると、薬湯を持って来てくれたことに感謝しなくてはならないだろう。

ここ最近の陛下の甘々演技に翻弄されて胃がもたれているのかと思っていたが、風邪だというなら治すだけだ。 そうか、陛下の過剰演技に追い着けないとへこんでいたが、体調が悪かったなら納得だ。 自分は出来る! プロ妃として頑張れる! 
家で風邪をちゃんと治し、今度こそ完璧なプロ妃演技をしてやろうではないか。

青慎の将来が素晴らしいものになるよう自分は努めるし、そのためのバイトだ。 青慎が青慎らしく頑張れることを姉として応援したい。 学問所で頑張り、好きな人が出来て将来家を出るならそれでいい。 自分の将来は、まず借金を返済してから考えよう。 今は妖艶な狼陛下の演技に対抗し得るだけのスキルを身に着け、プロ妃として頑張ればいい話だ。 青慎が家を出る頃の、先の話を考えても仕方がないことだ。 今自分がすべきことを遣り遂げてから次を考えよう。 そのために自分がすることは、風邪を治して気合を入れ直すことだ。

「ヨシッ!」

そう意気込みを新たに薬湯を飲み終えた私に、浩大は細めた胡乱な目線を向けて来た。
水を飲み薬湯の苦さを紛らわせながら浩大に問い掛けてみる。

「・・・・・何?」
「お妃ちゃんの幼馴染君って甲斐甲斐しいね~。 酔ったお妃ちゃんを部屋まで連れて行って寝かせてくれたし、風邪ひかないように布団掛けてくれたし、そのあと使った茶杯を洗って片付けて、おまけに戸締りが不安だったのか弟君が戻るまで待っているなんて、男前じゃんか」
「やぁああ、めぇーーーっ! ぐ、・・・げほっ!」

昨夜の幼馴染君の行動を話しただけで、お妃ちゃんは真っ赤になりながら蒼褪めるという面白い顔色を披露しながら勢いよく立ち上がり、そのまま激しく噎せ込み出した。 背を丸めて痙攣したように身体を震わせながら卓から離れ、水甕から柄杓で水を掬っているようだが噎せ込みが激しくて飲めないようだ。
そこまで動揺させるつもりはなかったが面白いので黙って見ていることにした。

どうにか少しは飲めたのだろう、噎せ込みもようやく治まったようだが未だ狼狽した様子で恐々と振り返るお妃ちゃんに声を掛ける。

「幼馴染君はお妃ちゃんが心配で寝かせただけ。 だから何の心配も無かったしー。 実家に戻って来たのはのんびり過ごすことが目的だからさ、危険が無いならオレの出番は無い訳。 だけど、報告はさせて貰うから、それだけは承知して頂戴ね」
「・・・・報告って、何をよ」
「陛下にさ、幼馴染君の前で不用意に酒を飲み、頬を染めて酔ってふら付く身体を幼馴染君に抱かれて寝室に向かったって報告。 そんで朝起きると二日酔いで頭が痛いって呻いていること」
「抱かれたって・・・・こ、浩大。 酷く誤解を受けそうな言い方だよね?」
「間違ってはいないと思うけど、何か問題あるか」

問題だらけだと夕鈴は蒼褪める。 そんな報告をされたら、今まで以上に妖艶な狼陛下に翻弄される自分が想像出来て、身体が火照るのに寒気がして来た。 襲って来た寒気にぶるりと身を振るが、浩大は薄く微笑を浮かべながら 「ごめんね」 と嘯く。

「陛下は・・・・灌漑工事の視察に行っているのよね。 私が実家に来ているのを知っているのは李順さんだけのはずでしょ? それにイチイチ報告するなんて」
「あー、だってオレ、お妃ちゃんの護衛兼監視役だしぃ、それが仕事だしぃ?」

腹が立つほど明るい隠密の口調に苛立ちさえも砂上の城の如く崩れゆく。
薬湯を飲んだばかりだというのに胃が重く感じる。 報告を聞いた後の陛下の演技は更に磨きが掛かり、私の胃にはストレス性の穴が開くだろう。
 
ちゃんと演技できない私が悪いのか、演技の質を突然鬼神レベルまでアップさせる陛下が悪いのか。 私が雇われた仕事内容は仲良し夫婦を演じるための臨時花嫁であって、周囲の目に仲良し夫婦だなと映ればいい話だよね。 バイト妃を追い込むまで演技を濃厚にする必要はないはず。 ましてや濃厚演技に疲れ果てた私の実家ライフまで逐一報告させるって、何処まで干渉したら気が済むのよ!

「私が実家に来ていることを陛下は御存知ということ?」
「まあね。 オレが警護に就くんだから把握してると思ってよ。 陛下が離れている間、お妃ちゃんの動向は出来るだけ詳細に報告するよう言われて」
「浩大っ!」

叫びながら浩大に手を伸ばすが容易には掴まる訳もない。 
しかし睨み付けるように見据えて懇願してみた。

「私はここにリフレッシュに来ているのよ! 酒を飲んだとか、几鍔に運ばれたとか、余計な報告はしないで! それじゃあ・・・・・王宮に戻った途端、狼陛下に弄られそうだわ! おばば様の時はどれだけ陛下のイヤガラセに苦労したことか・・・・っ! だからお願い! 余計なことは報告しないで頂戴っ!」
「う~ん。 そうしてあげたいけどねぇ」

ニヤニヤ顔の浩大に取って置きの菓子を出す。 昨日、青慎のために買って来て渡せなかった菓子。 とても人気がある店で、この菓子は午前中に売れ切れてしまうほどの品。 
片眉が持ち上がり卓に身体を寄せた浩大の口に無理やり押し込みながら、必死にお願いを繰り返す。 今晩一晩泊まったら明日には王宮に戻りバイト妃として過ごすことになる。 
演技が厭な訳でも、陛下が苦手な訳でもない。
やるからにはちゃんと演技をして、バイトとしてプロ妃を目指したいだけだ。
そのためのリフレッシュ休暇なのに、問題抱えて戻る訳にはいかない。 
その問題を陛下に届ける役目の浩大を懐柔するのが一番の解決策。 陛下がバイトの休暇を知っていても、仕事中に王宮に戻れば下町での平穏を掻き回されることも無く、浩大が報告しなければ弄られる心配も無い。

「美味しいでしょ? 午前中には完売しちゃうほど人気の菓子だもの」
「マジ、美味い! ええ、この店どこ? 今行っても売ってるかな?」
「午前中の内に並べば買えるかもね。 それは全部あげちゃう! だから酒のことも几鍔のことも陛下には内密にしてよね。 って言うか、もう口に入れたんだから聞いて貰うわよ!」

菓子を口に銜えながら目を大きく見開いた浩大が、私と菓子を見比べて考え込んだ顔をするが、しばらくするとどうにか小さく頷いてくれた。 それに安堵して全身から力が抜けていく。 
卓に疲れ果てた上体を乗せて息を吐けば 「早く休みなよ~」 と呑気な声が聞こえてきた。 顔を上げると既に浩大の姿は無く、私はのろのろと立ち上がるしかない。
薬湯も飲んだし、昼までは寝よう。 風邪だか二日酔いだか解からないが、今動いても時間の無駄だ。 効率よく動くために、今は少し身体を休める方がいい。

実家に戻って丸一日。  
何でこんなに疲れるのだろうと夕鈴は泣きそうになった。



目が覚めると昼を少し回った時刻になっていて、まだ洗濯もしていないと夕鈴は動き始めた。 
薬湯のおかげか、横になって休んだためか、頭も胃の調子も良くなっているように感じる。
問題は本当に浩大が陛下に余計な報告をしないでくれるかだ。 もう少し懐柔出来るような菓子か酒を用意した方がいいだろうか。 酒・・・・か。 明玉に聞いてみようかな。 
どうせ買い物もある。 足を運んで珍しい酒でも買って来るとするか。 

余計な出費は痛いけど、王宮に戻ってから妖艶な笑みと膝上抱っこと間近な陛下の視線に耐えうるだけのスキルはまだない。 プロ妃を目指しているとしても、あの執拗な演技を続けるのは辛い。 

・・・・・本物のお妃様が来たら、陛下は優しく微笑み、そして触れるのだろうか。

風が吹き、洗濯途中の濡れた手を冷やされる。 考えている内に知らず手が止まっていたようだ。 鈍い痛みが再燃しそうで夕鈴は目の前の洗濯に集中することにした。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 22:43:02 | トラックバック(0) | コメント(4)
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2013-12-05 木 23:33:04 | | [編集]
Re: お姉さんはがんばる!
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。夕鈴が頑張るのは父ではなく、可愛い弟のため。そのためには頑張ってもらわなきゃね。下町と言えば兄貴。なので次も兄貴を出す予定です。損な性分と子分に言われている兄貴が好きなので、つい夕鈴との絡みを書きたくなる。さて、浩大も出したし、次は誰かな(笑)
2013-12-06 金 00:20:38 | URL | あお [編集]
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2013-12-06 金 01:41:35 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。桐・・・・・出す前にもう一人、出します。ちょろりですけどね。そしてもう少し出したい兄貴。話は進みませんがお付き合いお願いします。あ、黒いますたぬ様も大好きです。
2013-12-06 金 22:00:06 | URL | あお [編集]
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