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千思万考  4
下町を書くのは楽しいです。まだパソコンに慣れないから時間掛かるけど、さくさく動くのは超嬉しい。かなり古い型だったからな~。新しいのってやっぱりいいな~。つい新しいことに挑戦したくなる。そして失敗して娘に怒られる(笑) ビスカス様、お元気ですか?


では、どうぞ












洗濯を干し終わり、大まかな夕飯用意を済ませたあと、足りない食材を買うためと明玉に会いに町へと繰り出した夕鈴は、予想外の人物に偶然会う。 徐克右さんだ。 
体躯の良い彼が片手を挙げて近寄って来るから、慌てて会釈を返した。

「買い物か? 娘さん」
「はい、夕飯の用意のために。 徐克右さんは・・・・・お仕事、ですか?」

徐克右さんは確か城下でいろいろな情報収集をされているはずだ。 王宮関係者だと周囲に知られないよう、互いに顔を近付けてそっと話す。 彼は私のことをバイト妃だとは知らない。 その上何やら誤解をされているような感じもあり、生温く応援されている節も見られる。 そして彼は狼陛下のことをすごく敬愛されているんだなと言葉や態度のあちこちから感じられた。
 
『女は王に禍を招く。 そしてその女達も大体が不幸になった。 ・・・あんたは 「王を堕落させた」 などと言われないでやってくれよ?』

そう言った時の克右さんは眉を顰めた切なそうな表情を浮かべていたのを思い出す。 その表情に私は何も答えることが出来なくなり、ただ立ち竦んでいたのを思い出して、じっと彼の顔を窺った。

「怪しい役人の動きやら大きな商家の裏を調べるのは時間が掛かるからな。 ああ、娘さんの知り合いの几家は今のところ問題ないようだ。 ところで陛下は御一緒じゃないのか?」
「几家は私と一切関係ないですからね! へ、いかは御視察で三、四日ほど地方に行かれてます」
「やっぱり、そういう情報は娘さんにも届くんだ。 仲がいいな。 うんうん。 で、娘さんは何か仕事か? 『耳』として情報集めか何かか?」
「仕事じゃありません。 これから買い物なので失礼しま」

下町での内密行動協力者が陛下の動向を知っているのはおかしいかと自分の台詞を撤回したくなるが、言ってしまったものは戻せない。 話を変えて場を離れようとした時、今までへらへらと笑っていた克右さんの顔が急に硬くなり、そして一歩退く動きに夕鈴は目を瞠ってしまう。 彼の視線が自分の背後に向かっているのがわかり振り返ると、眇めた視線を投げ掛ける几鍔が腕を組んで立っていた。

「几家の坊ちゃんに睨まれている理由は・・・・やっぱり娘さんの彼氏か?」
「「 違うっ! 」」

思わず声を張り上げると、几鍔と同調していたようで克右さんが柔らかい笑みを零して頷いてくる。 わかっているよと言いたげな妙な笑みを浮かべながら背を向けようとするから背筋にいやな汗が流れそうになる。 変な誤解は止めて欲しいと足を進めると、几鍔に腕を掴まれ克右さんから引き離された。

「・・・・確か商家の荷運び護衛をしている用心棒だよな、あんた。 こんなのより格段にいい女がいる茶飯屋を紹介するぞ。 ああ、何なら娼館でもいい。 あんたなら間違いなくモテるぞ」
「几鍔っ! 莫迦じゃないの、あんたは! 昼間っから何、失礼なことを言ってんのよ! 克右さん、ごめんなさい! 気にしないで下さい、本当にこの莫迦の言ったことは失礼だと思うけど、あのっ!」
「夕鈴は黙ってろ! おまえはすぐに怪しい男に付いて行こうとしやがって!」
「話をしていただけでしょう!? あんたこそ黙っていなさいよっ! ばーか几鍔!」
「うるせぇっ! すぐに騙されるお前が哀れだから助けてやってんだろうがっ!」
「・・・・あ、兄貴ぃ。 あまり騒がしいと人だかりが出来ますよぉ」

細目の、いつも几鍔の背後に控えている子分がオロオロしながら几鍔の袖を引く。 
そうだ、几鍔と言い争いをしている場合じゃないと夕鈴が振り向くと、克右さんが片手を振って生温かい笑みのまま離れて行くところだった。 失礼極まりない言葉の乱打にも別段気にした風もなく、そのうえ新たな誤解をさせたようで夕鈴は蒼褪めてしまう。 
彼は元軍人の王宮従事者だ。 不敬罪で几鍔が捕まるのは何の呵責もないが、克右さんに言った余りにも失礼な台詞の数々に申し訳ないと泣きそうになる。 その上、几鍔との遣り取りで下町の悪女のレッテルが彼の脳裏にも貼られることになったら次に会った時にもそう思われるんだ。 いや、もう思われているのか?

ぐらりと目の前が歪み、怒りが湧き上がった夕鈴は持っていた籠で思い切り几鍔の頭を殴りつけた。

「・・・・のっ!」
「痛ぇな、このバカ女っ!」
「この間も大丈夫だって言ったでしょう! 何で毎回・・・・・痛い・・・・」

ああ、もう限界だ。 胃が痛い。 リフレッシュに来たはずの休暇で怒鳴るわ、心配するわ、酒を飲むは、果ては王宮従事者に罵倒するだ。 少し休んで治まったはずの胃の痛みが再発し、思わずしゃがみ込むと目の前が暗くなる。 腕を引かれ顔を上げると几鍔が片眉を持ち上げ何か言いたげな顔を見せた。

「・・・・余計に痛くなるから、離れてよ」
「胃が・・・・痛ぇのか? 買い物はこれからか? 本当に今回は役人は来てないようだな」
「あんたに関係ないことばかり・・・・・。 いいから放って置いて」
「姐さん、大丈夫そうな顔色じゃないですよ。 言ってくれれば買い物しますよ?」
「大丈夫だって。 ・・・・つぅ」

怒鳴ったせいなのか咽喉も痛い。 咳も熱もないのに本当に風邪なのだろうか。 
家に戻ったら薬湯をもう一度飲もう。 青慎にだけは移したくない。 ああ、そういえば告白はどうなったのだろうか。 学問所に通っているのだから今しばらくは勉強に専念して貰いたいし、浮かれないように伝えたい。 だけど覗いていたなんて言えないから、どうやって伝えたらいいのだろう。

裾を払って立ち上がり、思い切り几鍔を睨み付けて夕鈴は踵を返した。 早く買い物を済ませて家に戻ろう。 ああ、明玉に酒を頼もうと思っていた矢先にこれでは浩大がまた余計な報告をしそうだ。 これ以上、陛下に翻弄されるネタを提供する前に家で休むに限る。 
家の掃除に専念してすっきりして王宮に戻ろうとした私の決意は、ここで崩れ去った。 

「おい、ひでぇ顔だぞ。 昨日も今日も体調が悪いんじゃねぇのか?」
「・・・・・あんたに遭わなきゃ酷くならなかったわよ。 今から明玉の店に行くんだから着いて来ないでよね! あと、もう家には来ないでいいからっ! ・・・・これ以上胃が痛むと、絶対血を吐く」

足早に明玉の店に飛び込み 「休ませて」 と席に腰掛ける。 座った途端、どっと押し寄せる疲労感にやっぱり風邪なんだろうかと思う。 同時に足元から寒気が這い上がって来て身を竦ませてしまう。

「あら~、来てたの? ・・・・って、ちょっと顔色悪いわよ。 働きすぎじゃないの?」
「買い物が終わったら家で寝るわ。 ところでお願いがあるのよ。 ちょっと珍しいお酒が欲しいの。 手に入らないかな? 珍しくて旨いと評判で高級っぽくて、出来れば格安の酒!」
「・・・・面倒なことを言うわね~。 それなら後ろの人に頼んだ方が伝手があるんじゃない?」

明玉のにやにや顔を訝しみながら振り向けば、撒いた筈の几鍔がいて脱力しそうになる。
 
「酒か。 昨日間違って飲んだ分か? いや、お前がそんなの気にするってのはおかしいな。 何に使う気なんだ。 まさかさっきの奴に頼まれたのか」
「違うわよっ! ・・・・お、王宮でお世話になっている人に渡そうと思って・・・・」

なんで几鍔に言い訳めいた説明をしているんだろう、私は。 頭を押さえながら溜め息を吐くと明玉が頭を撫でてくれた。 顔を上げると難しい顔で小首を傾げる。

「この時期は珍しい酒や高価な品は献上品とかで貴族が買うことが多いのよね。 まあ、そこまでの品じゃなくても時期的に買占めが多いから割高になるし。 素直に後ろの人にお願いしたらぁ?」

明玉の言葉に思わず舌打ちしそうになる。 絶対に振り返らないぞと思いながら椅子から立ち上がり、手を振って店を出ることにした。 駄目なら駄目で諦めるだけだ。 無い物ねだりしたって仕方がないし、第一先立つものもない。 あとは買い物して家に帰ろうとする私に掛けられたのは几鍔の声。

「・・・・用意するか? ツケといてやるぞ」
「借金はこれ以上無理! 無いなら無いで諦めるわよ。 他のものを探すからいい」

几鍔に世話になるつもりは毛頭ない。 店を出て野菜を数点買い求め、足早に戻ろうする私に吹き付ける風は冷たい。 顔を上げると寒々しい空模様で、青慎は温かい服装で学問所に行ったかしらと不安になる。 襟元を寄せながら今夜は青慎のために温かい野菜たっぷり湯を用意してあげようと家路を急ぐことにした。

もう既に予定の一泊は無情に過ぎ去った。 思い切り掃除しようと思っていたが体調不良のまま王宮に戻る訳にはいかないし、そのまま家に留まると陛下がやってくる可能性がある。 それに青慎に風邪がうつるのは駄目だ。 急いで夕飯を作って青慎が帰って来るまで横になろう。 頭の中で流れを組み立て終えた私の前に、今度は桐さんが現れた。

「・・・・・今度は何ですかぁ?」
「今度とは何だ。 浩大に頼まれて煎じ薬を持って来たんだ。 ありがたく思え」
「・・・・助かります。 ありがとう御座います」

老師特製の薬草は王宮御用達だから高価な品だ。 上からの物言いの桐だが、ここまで薬を持って来てくれたことには感謝しよう。 だけど背筋に厭な寒気が奔るのは、風邪のせいじゃない。

「荷物を持ってやる。 顔がおかしなことになっているぞ。 明日には王宮に戻るのだから早々に休むことだな。 李順殿より予定通りにお妃を戻すよう指示が来ている。 陛下が下町に逃亡しないようにな」
「休みます。 薬も本当に助かります。 だ、だけど、あのっ!」

今日一日で顔が変だと何回言われたの、私。 顔色が悪いって、正しく言って欲しいわ。
それよりも、滔々とした桐の言い方に寒気が増す。 
何で? どうして? まさか・・・・・まさかでしょ?

「な、何で桐さんが来たの? こ、浩大が私の警護のはずでしょう? どうして桐さんが?」
「・・・・陛下への定期報告でお妃から離れるから、その間の交代だ」
「ほ、報告することなんか何もないはずよ。 わざわざ陛下の許に足を運ぶなんて・・・」

賄賂として人気店の菓子を浩大の口に押し込んだのは今朝のことだ。 
その足で何を報告しに行ったのだろう。 解かっているわよね、浩大。 
美味しいって口に入った菓子を飲み込んだわよね。 
内密にして欲しいってお願いしたら、確かに頷いてくれたよね。

「こ・・・・浩大が何を報告するか、桐さんは知っているの? いつ、浩大は戻るの?」
「気に病む前に家に戻って、やることやったら煎じた薬湯を飲んで、何も考えずに休んだ方がいい。 風邪は万病の元と言うだろう。 そのままの体調で王宮に戻ることはお前のためにならん。 ほら、足を急がせろ。 寒気がしているんだろう」
「気遣いが怖いんですけどっ! 桐さん! お願い教えてぇ!!」
「・・・・・・・」

無表情無返答の桐からは何の情報も伝わってこない。 言わないとなったら絶対に教えてはくれないだろう。 だからこそ恐怖が増し、浩大に会いたいと切に願った。 
菓子を食べたくせに裏切ったのか、奴は。 でも、ちゃんと頷いてくれたのを目にした。 
だけど浩大は・・・・・陛下の隠密だ。
そう思った時、浩大の台詞が脳裏に浮かんできた。

『あー、だってオレ、お妃ちゃんの護衛兼監視役だしぃ、それが仕事だしぃ?』

明るい声で監視役だと言った台詞を思い出し、目の前が歪みそうに感じる。 本日最大の寒気に襲われた夕鈴は、足を竦めるか弱き女性を置き去りに人の家へと向かう隠密の背を呆然と眺めていた。 足音が聞こえないことに訝しいと思ったのか、振り向いた桐が大仰な嘆息を吐いて踵を返す。

袖口を摘ままれた状態で家路へと足を動かしながら、夕鈴は頭の中を真っ白にしていた。








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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 02:49:04 | トラックバック(0) | コメント(4)
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2013-12-07 土 03:33:44 | | [編集]
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2013-12-07 土 09:13:55 | | [編集]
Re: 出た!!
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。本当に寒暖の差が激しいですが、冬はこれからが本番ですよね。ということで娘が思い切り風邪。のど、鼻水、胃部の痛みでまあ大変。パソコンしている場合じゃないと睨まれてました。くすん。今回、兄貴をたくさん出せて幸せです。もう少し、出したいな。
2013-12-08 日 23:37:53 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。あ、桐やさしいのはダメだった? ユーリじゃないから大丈夫かと思っていたのですが。えへ。今回の夕鈴の胃の痛さはマジに流行中のウィルス性の風邪です。今は娘が胃の痛さにのた打ち回り中。でも試験期間中だから薬でしのいでいます。皆様も御自愛下さいませ。
2013-12-08 日 23:40:24 | URL | あお [編集]
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