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千思万考  6
あっちもこっちも手を出して、超楽しいけど忙しい。ネットの調子が悪くて、家中のパソコンがものすごく重くなった。息子のも旦那のも私のも動かず、娘も頭を抱える。夜中を過ぎてからようやく復活したけど、なんだったんだろう。ちゃんとバックアップをこまめに取ろうと思った瞬間です。


では、どうぞ











「私が実家での休暇中、何をしていたかは兎も角、陛下は視察へ出発されていたはず。 また下町に足を運ばれて、あとで絶対に李順さんから叱られますよ! 李順さんは御存じないのでしょう?」
「李順なら、すぐに検討がつくだろう。 それよりも先ほどの問いに答えて欲しい」

駄目だ。 このままではいつもの陛下ペースに巻き込まれるのは目に見えている。 狼のままで細めた視線を投げ掛けられ、抗えるのは時間の問題だ。 何を言っても陛下はバイトの言うことなんか聞いてくれない。 

酒を飲んだのだって間違えただけだ。 父さんが飲み残しを置きっ放しにしたのが悪い。 
全くあの父親ときたら、闘鶏で借金作って几鍔のところで金を借りて、年中ふらふらして、何時まで経ってもうだつの上がらない下級役人で満足して、その上おばば様とぶつかって娘に被害を押し付けて。 
そのせいで、私がどれだけ大変な目に遭ったと思っているのだろう。 
・・・・いや、父さんは何も考えていないな。 ごめんって謝りながら姿を消すだけだ。

「・・・・・はぁ」

運勢最悪って、誰から言われたんだっけ。 納得できる自分が哀しいな。
掴まれた陛下の手を振り払い、卓に置いた茶杯を持ち口へ運ぶ。 ちらりと陛下を窺うと薄く笑みを浮かべたまま、私の答えを待っているのが解かる。 どんなに説明したって納得なんかしてくれない癖に。

「私が下町に来たのは家で思い切り掃除をして、リフレッシュを図ろうと思ったからです。 プロ妃としては失格かも知れませんが、ここ最近の仲良し夫婦演技に心身ともに疲労していたからですよ。 陛下が視察に行かれている間、家で掃除をしてリフレッシュ出来たら、王宮でちゃんとバイト妃として演技出来ると思ったからです」
「それがどうしてお酒を飲むことになるの?」
「・・・・・知ってる癖に」

狼の皮を被ったまま、妖艶な笑みを落とす陛下を見上げる。 

「父さんが飲み残しの酒を置いて行ったの。 知らずに飲んだ時に、たまたま几鍔が居ただけ」
「それで寝台に抱っこで運ばれたんだ」
「・・・・・不可抗力です。 第一、私は覚えていないし」
「君は酒に弱いということを自覚しないと。 覚えていないだなんて、一番危険だろう」

段々苛立ちが大きくなってきた。 不可抗力だと言っているのに、畳み掛けるように追い詰めるのは何故なのだろう。 バイトが休暇中に実家で何をしていたっていいじゃないか。 それともバイト妃は休暇中も全ての行動を逐一報告しなきゃ信用出来ないというの?

「それは・・・・申し訳御座いませんでした。 ところで陛下は視察中だったはずですよね。 陛下が下町に足を運ぶことを李順さんがどう思われているか、重々御存じのはず。 急ぎお戻りになった方が宜しいと思いますわ。 私はこれから家の掃除をしますので失礼させて頂きます」
「夕鈴」
「これ以上のイヤガラセは受け付けませんからね! ふんだ」

今日いっぱいは休暇中なんだ。 私はちゃんと李順さんに許可を貰って休みを取っている。 
だけど陛下は仕事中に抜け出して来た、所謂『サボり』だ。 急ぎ政務である視察に戻った方がいいに決まっている。 バイトをからかう前に国王陛下としての仕事をして欲しい。
きっぱり言い切ると私は立ち上がって茶杯を片付ける。 袖を捲って朝飯の片付けを始める背後から、今度は弱々しい声が聞こえて来た。

「・・・・・僕、夕鈴が心配で」
「休み中のバイトの御心配は無用に御座います。 それよりも陛下は御自身のなさるべきことを真摯になさって下さいませ。 こちらに足を運んだこと、李順さんには直ぐに伝わるでしょうね。 きっと、山のように書簡や書類がお待ちで御座いますわよ」
「僕はお嫁さんが心配だったんだよ・・・・」

ああ、今度は小犬か。 
声色を変えようが、表情が切なそうに見えようが、絶対に絆されてなんてやらない。 

「では、陛下は直ぐに王宮に戻って・・・・って、視察していた場所に戻った方がいいのかな? と、とにかく直ぐに仕事に戻って下さい。 書簡の山が積まれた部屋に戻るなんて厭ですよね?」
「視察は李順と同行した大臣に任せて来たから大丈夫だよ。 灌漑視察は建前で、他の目的があっただけだし、その目的も殆ど達せられたから問題ないんだ」
「・・・・他の目的、ですか?」

思わず眉を寄せて振り返ると、柔らかな笑みを浮かべながら僅かに眉が寄せられたのが見えた。 それはバイト境界線の向こう側の話だろう。 それ以上は立ち入らないで欲しいというのが伝わって来て、夕鈴は洗い場に向き直る。 それに仕事が終わったとしても、通常の政務が山と待っているはずだ。 
それらに関しては何も手伝うことが出来ず、自分はバイト妃として微笑んで美味しいものを食べて綺麗な衣装を着て過ごすしか出来ない。 寵愛を受ける妃として仲良し夫婦の演技をするバイトだが、その演技に疲れ果て、実家に逃げ帰るような自分だ。
その上、下町に陛下が来たと知ったら李順さんがどんなに怒り狂うだろうか。 きっと陛下は宰相部屋に連れて行かれ、しばらく後宮でも政務室でも顔を見ることがないだろう。

・・・・・そうか、怒り狂った李順さんに宰相部屋へと連れ行かれると、しばらく陛下には会うことが出来なくなるんだ。 また十日くらいは中央殿に籠もることになるのだろうか。  

そっと振り返ると、幻の耳と尻尾を下げた小犬が鼻を鳴らしてじっとこっちを窺っている。 絆されないぞと気合を入れたはずなのに、胸がきゅんとなってしまう。 ここは厳しい態度で王宮に戻るよう伝えなきゃいけないというのに、真逆なことを言いそうになる自分を抑えるのが辛い。 どうして自分はこんなにも小犬陛下に弱いんだろう。 惚れた弱みって耳にしたことがあるけど、これがそうなのかな。 ああ、そんなにじっと見ないで欲しい。
目が離せないでいると、陛下がお腹を押さえて目を瞬いた。 

「ゆーりん、お腹が空いた。 馬を駆らせて来たからペコペコだよぉ」
「~~~~っ! ちょ・・・・ちょっと待って下さい!」

小犬には敵わないと知っているだけに悔しくなるが、空腹の陛下を追い出すことも出来ない。 こうなったら急いで作って、急いで食べて貰って、急いで戻って貰うしかないだろう。
そうだ、茶飯屋のバイトだと思えば、客だと思えば腹も立たない。 小犬化した陛下は縋るような濡れた瞳で見つめてくるけど、それだって背を向けてしまえば気にならないはずだ。 台所は私の城だと以前伝えてあるから、陛下は近付かないはずだ。 だけど・・・・じぃーっと凝視され続けるのは、ちょっと辛い。

遅めの朝食兼昼食を食べる陛下の横で青慎のための夕飯準備を始めた私は、朝飯の後に薬湯を飲むのを忘れていたと煎じ薬を取り出した。 すると目敏く陛下が目を瞬かせ、私の顔をじっと見つめてくる。 

「ちょっと風邪をひいたようで、その薬湯です。 ああ、下町では風邪が流行っているんですって。 ですから陛下は急いで王宮に戻った方がいいですよ。 私にも近付かないで下さいね」
「ゆーりん、風邪ひいたの? じゃあ急いで王宮に戻って温かくして美味しい果実を食べて」
「ちょ、ちょっと待って! 今はもう治り掛けなんです。 ですから私のことは放置して、陛下は食べたら急いで李順さんの許か、王宮に戻って下さいね! 万が一、私の風邪がうつったら・・・・・李順さんに私まで怒られますよ、絶対に! それだけは厭ですからね」

唾が飛ばないように離れて、更に口元を手で押さえて強く言い放つが、陛下は気にする様子もない。

「大丈夫だよ、僕は滅多に風邪なんかひかないから」
「風邪は万病の元です! 滅多にひかないのと、絶対にひかないのは違います!」
「う~ん、と。 じゃあ、絶対にひかない。 それでも、もし風邪をひいたら、その時はたっぷりお嫁さんに看病して貰うよ。 美味しい粥を作って貰って、枕もとで果実をうさぎ型に切るのが看病の定番なんだろう? なんか、風邪をひくのも楽しそうな感じがしてきた」
「・・・・定番って、そんなの聞いたことがないですけど」

そう言いながら足取り軽く近付いてくるのは困る。 困る、困る、駄目だってば! 
口元を押さえながら後ろへと下がるも広い家じゃない。 直ぐに壁に行き当たり、この場面は覚えがあるぞと脳裏に浮かんだのは狼陛下にイヤガラセされた時のこと。 真っ赤になり俯くと耳横の壁に陛下の手が見えた。 そろりと顔を上げると真正面に陛下が立っていて、逃げ場はすでにないと知る。

「風邪を召しましても李順さんのことです、絶対に政務を押し付けてきますよ!?」
「そうだろうね。 でもお嫁さんの看病ですぐに良くなるよ」

にっこり笑う陛下の顔を前に、夕鈴はまたイヤガラセを始めたと唇を噛みしめた。 何がお嫁さんの看病よ。 どうせ、陛下の部屋付きの綺麗な女官さんが一生懸命に看病してくれるわよ。 優しく甲斐甲斐しく、綺麗な女官さんたちが薬湯を口元へ運んで下さるわ。 
でも・・・・・陛下の看病か。 枕もとで果実を切るくらいは仲良し夫婦としては有りよね。  
今は一人しか妃がいないんだから、陛下の寝所に入っても・・・・・。

だけど本来の後宮は違うのだろう。 妃の部屋へと陛下が足を運ぶのだ。 
陛下の部屋に入ることが出来るのは正妃か、極限られた寵妃だけだと思う。

ちくんっと痛む胸に克右さんの言葉も浮かび、この人が求めている後宮とはどのような姿なのだろうかと考えた。 直ぐにそれはバイトが立ち入るべき問題でないと頭から打ち消し、陛下の顔をじっと見つめる。 自分がバイト妃として後宮に上がる前は、狼陛下で怖い王様を演じ続けていた。 それを知っているのは李順さんや浩大くらいだろうか。 徐克右さんを始め、大臣たちも知らない顔をバイトが知ってしまった。 その分、人払いの済んだ妃の部屋では演技をしないで済むと寛がれているが、以前は女官がいる自室でも人払いをするまでは演技し続けていたのだろう。

その内に必ず来る本物の妃。
後宮としての在り方を老師から何度も聞かされた。 召し抱えた妃から齎される強固な後ろ盾と財力。 競い合う華たちにより癒される王様。 血筋正しい世継ぎたち。 華やかさを象徴してこそ後宮であり、それを持つことが許された立場の人が、陛下だ。 

何時まで続くかわからないバイト生活。 と、言ってもそれは借金返済が終了するまでだ。
終了したらバイトは終わり、庶民の生活に戻るだけ。 下町生活に戻れば陛下と会うことは二度とない。 自分が王宮に足を踏み入れることが出来るのはバイト妃だからだ。 バイト期間だけの浅く短い付き合い。
 
夕鈴は深く息を吸い込むと、横を向き静かに息を吐く。 
好きになったのが国一番高貴で、偉くて、身分が高くて、自分とは身分が違う人。 絶対に手の届かない雲の上の人。 それなのに下町のボロ家に足を運び、楽しそうにバイトを翻弄している、本当は小犬のような性格の、だけど国のために一生懸命お仕事をしている人。

「ゆーりん? あ、の・・・・風邪で調子が悪いの?」
「・・・・少し、頭が痛いかも」

考えたって仕方がないことが頭の中を竜巻のように掻き回し、眉間に大きな皺が寄ってしまう。 私がいくら考えたって、世の中にはドウシヨウモナイことは山のようにある。 お金持ちは大きな屋敷に住んでいるし、貧乏は必死に働かなくちゃいけない。 浩大や桐は陛下の隠密でバイトの監視をするのが仕事で、李順さんはバイト上司。 借金返済が終わるまでは陛下に翻弄されるのがバイトの仕事で、返済が済めば用無しだ。
次の臨時花嫁が来たら、狼の演技のまま四阿や後宮で仲良し夫婦の演技をされるのだろう。
すっぱりと私のことは忘れて。

「今日は家の掃除をどうしてもしたいのです。 青慎の夕飯を作って、それからバイトに戻ります」
「頭が痛いなら掃除は止めて、直ぐにでも休んだ方がいいよ」
「薬湯を飲んだので、その内に治ります。 それに動いている間にいつの間にか忘れているもんです。 それより陛下は王宮にお戻り下さい。 本当に、お願いしますから、戻って下さいね!」
「薬湯が効き出すまでは休んでいたら?」
「時間もありませんし、やる事をやってからじゃないとすっきりしませんから」
「本当に・・・・・頑固だよね、夕鈴は」

くすりと笑う狼の声に、鈍い痛みがぶり返す。 誰のせいだと思っているんだろう。 
頑固なのは性分だけど、毎回下町に顔を出す陛下こそ頑固じゃないか。 言っても怒っても脅しても、毎回顔を出して近寄って来る。 手に触れてくる。 顔を近付ける。 
だけど本当は全部が演技なのだ。 本当の気持ちも考えも、バイトには立ち入らせない境界線の向こうで、その内に訪れる本物の妃にだけ見せるのだろう。

「・・・・が、頑固ですよ、どうせ。 でもちゃんと妃演技はしているつもりです!」

薬湯を飲んだばかりなのに鈍い痛みが治まらない。 これが老師の言うように風邪だというなら、間近にいる陛下にうつってしまう。 どこか扉が開いているのか、足元から這い上がる寒気に鳥肌が立つ。 寒気を感じているのに、目元と鼻が熱く感じた。 何だか腹が立って、情けなくて、泣きたくなる。

「風邪がうつるから帰って下さいと何度言っても聞いてくれないんですね!」
「僕、ちゃんと待っているから一緒に戻ろう? あ、僕も掃除を手伝えば早く済ませられるね」 
  
何度も私は実家にリフレッシュに来ているんだと言っても通じない。 悔しくて鼻を啜って陛下を見上げると、小犬が爽やかな笑みを零して卓を拭き始めた。 






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長編 | 02:06:06 | トラックバック(0) | コメント(10)
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2013-12-12 木 02:48:54 | | [編集]
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2013-12-12 木 08:59:56 | | [編集]
Re: タイトルなし
らぁ様、コメントをありがとう御座います。そうですね、兎キック炸裂も良いかも!しかし、ここは下町。陛下をへこませるのに刃物はいらねぇ。はい、そういうことで次は兎の下町流反撃となります。あちらにも足を運んで頂き、ありがとうございます。わーい(^^)
2013-12-12 木 20:15:14 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。夕鈴悶々中なのに、狼と小犬で攻める陛下。ああ、楽しい。気の毒になるほどぐーるぐる考える夕鈴が大好きです。そういえば昔のコマーシャルに「みんな悩んで大きくなった」とありましたが、何のコマーシャルだったかしら。頑張りましょうねー。
2013-12-12 木 20:34:23 | URL | あお [編集]
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2013-12-12 木 23:11:59 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。はい、狼は小犬の皮を被って翻弄してます。下町では自覚なしに翻弄し、後宮では自覚あっても翻弄する。まあ、バイト妃には頑張れの応援しか出来ません(笑) そんな夕鈴だけど、帰り時間が迫る中、さて掃除は進むのかしらーと他人事のように下書きをしております。やばい、また寝不足になっちゃう。土曜日は飲み会なので更新はどっちもなしです。御了承下さいませ。潰れるまで、飲むぞー!
2013-12-13 金 00:00:42 | URL | あお [編集]
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2013-12-13 金 00:19:19 | | [編集]
Re: エンドレス
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。いや~、時々めちゃ遅くなったり、いきなりネットワークが切れたりしますが、どうにかこうにか誤魔化しながら打ち込んでます。可哀そうな夕鈴とうちのネット状態。これは飲み会で憂さを晴らさねばなるまい!(笑)
2013-12-14 土 01:31:07 | URL | あお [編集]
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2013-12-14 土 03:25:42 | | [編集]
Re: タイトルなし
しきしま様、コメントをありがとう御座います。カウンタが面白い数字ですね。自分ではなかなか面白い数字に当たることがないので、他のサイトでも見逃しちゃいがち。今度から気にしてみることにします。ちょいと飲み会やリアで忙しく、のんびり過ぎの更新ですのに足を運んで頂き、ありがとうです! あっちも、こっちもどうぞよろしくお願いします。
2013-12-16 月 01:00:49 | URL | あお [編集]
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