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錆びた逃避思考  2
久し振りの夕鈴狙われーの、攫われーの話です。バイト妃には頑張って貰いますが、今回可哀そうなのは夕鈴じゃなくて、彼の方。もう、泣いちゃいそうですよ、彼は。泣かないだろうけど(笑)

では、どうぞ












「お妃様っ!」
「むぐぅ・・・・っ!」

向けられた刀の切っ先が夕鈴にジリリと近付き、切っ先から逃げようと顔を背けた先に白い布が迫ってきた。 押し付けられた布の濡れた感触に息を止めるが後頭部に回った手に挟まれ、暴れるほどに息が苦しくなる。

「お妃様っ! お前ら! 王宮に忍び込むなぞ、誰の手引きだ!」
「ぐ・・・、ぐぐ・・・っ!」
「お妃、頑張って息を止めていろ!」
「ふぐ・・・っ!」

そう言われても方淵殿っ、もう無理です! 限界が近付いています!

必死に男の手を外そうとするけど、力いっぱい押し付ける力に抗えず息が苦しい。
耳に聞こえてくるは危険を孕んだ頭上からの剣戟音。 
直ぐに遠くから甲冑が擦れる音と砂利を踏みしめる音が聞こえて来た。 その音は本物の王宮近衛兵だろう。 これで安心出来ると思ったが、それよりも息を止め続けるにも限界があって、耳鳴りがして段々周りの音が聞こえなくなって来た。 後頭部を痛いほどに掴む男が、顔全体に濡れた布をぐりぐりと押し付け抗うことも出来ず、耐え切れずに息を吸うと意識が一気に遠のいていく。 膝から力が抜け、方淵の怒鳴り声が耳に届くが何を言っているのかは判らないまま、目の前が真っ暗になり・・・・。
頭の片隅に陛下の顔が浮かんだが、直ぐに闇に飲み込まれていく。

「近衛兵、こいつらを押さえろっ! お妃が連れ去られるぞ!」

近衛兵の姿が見えたと当時にいくつもの爆発音が響き、そして爆煙が周囲を覆い隠す。 
回廊や手摺が爆発により無残に破壊され木屑が飛び散り、砂利が礫となり兵を襲った。 爆煙と兵らの怒声で一瞬周囲の様子が判らなくなったが、妃の一番近くにいた方淵は何かを担ぎ上げ移動しようとする人影を追い、手を伸ばす。 伸ばした先に髪の毛らしきものが触れ、手で煙を払いながら更に腕を伸ばして力いっぱいに掴んだ。 しかし、掴んだ物は相手の顔を覆っていた布で、それに気付いたと同時に方淵の後頭部に激しい痛みが襲い、目の前に火花が散り闇が広がる。
そして傾いでいく身体をどうすることも出来ずに、方淵は意識を失った。




その後、方淵が目覚めると馬車の中で、あの場に捨て置かれなかったことに驚愕する。 
あの状況では一撃で殺されていても不思議ではない。 または奴らの目的だろう妃を殺害するか拐うかして、邪魔となる自分は置き去りになっていただろうと困惑したまま考える。 自分を連れて来た意味は何だと考えながら薄暗闇の馬車の中を確かめると、転がる縄や板がガタガタと埃を舞わせ、耳障りな音を立てながら車内をより狭くしていた。 そして白っぽい衣装が見え、目を凝らして確かめるとそれは妃だと解かる。
手を伸ばそうとして後ろ手に縛られていることに気付き、忌々しさに舌打ちする。
その苛立ちは転がっている妃に向けて怒声となって現れた。

「呑気そうに寝てる場合か! お妃っ、さっさと目を覚ませ!」

妃から返事がないことに、まさか死んでいるのかと確認しようとして足首も縛られていると気付く。 
目を凝らすと妃も後ろ手に縛られているが足までは縛られておらず、そして衣装に血の跡は見当たらない。 薄暗闇と馬車の振動で聞き取り難いが、小さな呻き声も聞こえて来た。 その声に方淵が深く息を吐き、そして再び妃に向けて怒声を上げる。

「起きろっ! のんびり寝ている場合か! 目を開けて現状を見ろ!」
「・・・うぐっ」

石に乗ったのか馬車が横に跳ね上げた瞬間、立て掛けていた板が妃の足上へと倒れ、その痛みにより覚醒したようだ。 呻き声を上げて覚醒した妃に方淵が転がりながら近寄り、肩で板を払い退けて怪我の有無を確かめる。 薄暗い中とはいえ怪我をしたようには見えず、再び声を掛けようとした時、瞬きをした妃が突然叫ぶように泣き出した。 

「い・・・・たぁーいっ! 痛い、いっ、いぃいいいいーっ!」
「なぁ!? お、大人しくしろ、お妃!」

今まで怒鳴っていた自分を忘れ、突然喚き出した妃に目を瞠った方淵は、今度は静かにしろと必死になった。 馬車を操る御者が何人いるか判らず、騒ぐことにより何をされるか判らない。 
その上、自分は縛り上げられた状態で、妃どころか自分さえ守れるか判らない状況だ。 
それなのに不自由なまま膝立ちした妃が、激しく左右上下に揺れ動く馬車の中で立ち上がろうとするから、この状況を何故理解出来ないのかと頭痛がする。

「た、頼むから大人しくしろと言っている! 何故、貴女は人の言うことが聞かぬのか」
「いっ、痛いんだもの! ほ、方淵殿のばかぁーっ!」
「馬鹿とは何だ! 状況を正確に判断しろ! 泣き喚いて現状が打破出来るか!」
「う、ううう・・・、方淵が怒るぅ・・・うぁああああ!」

これが貴き御方である国王陛下唯一の妃なのかと唇を噛む方淵の前で、大きく跳ねた馬車の揺れに、ふら付く妃が尻餅を着き床に転がる。 壁側に回り、これ以上怪我をしないようにと必死に押さえ込んだ妃から異臭が漂い、いつもと違う様子はこれが原因だと気付いた。 嗅がされた何かにより妃の意識が朦朧としていると理解出来たが、それが判っても状況は変化しない。 
乱暴な運転が続き馬車がひどく揺れる中、人の言うことを全く聞く気がない妃が立ち上がろうとするから、方淵は怒鳴りながら傷を付けないよう自らを緩衝材とする。 その必死な行動を理解もせずに泣き喚きながら動き続ける妃に疲労もピークに達した方淵は、誰でもいいから助けてくれ!と心の中で助けを求めた。




***




近衛兵から報告を受けた場所に向かうと、たなびく煙と爆破により無残な情況を呈する回廊が目に映る。
捕らえられた輩が刑吏によって移動を始めたところで、怪我をした近衛兵に医官が処置を施していた。 王宮警護の禁軍が周囲の捜査を始める中、鋭く怜悧な眼差しを浮かべる陛下が周囲を見回し低い声を落とす。

「・・・・現段階で判っていることを詳細にまとめ、報告しろ。 捕まえた輩は刑房でその目的と妃を連れ去った行方を吐かせろ。 至急だ! どちらも急げ!」

直ぐに幾人かの警護兵が陛下の前に跪き、次々に声を張り上げる。

「近衛兵からの報告で、柳方淵殿も連れ去られた可能性あり。 柳大臣に伝えて参ります」
「侍女を後宮へ下がらせ、箝口令を布きました。 詳細は随時陛下へ届くよう手配済みです」
「物見台より怪しい馬車が王宮より出立したと報告あり」
「各関所門を封鎖するよう伝令馬を走らせております」

報告事項が陛下へ届けられる中、禁軍右将軍が跪き恭しく一礼して顔を上げた。 

「直ぐに騎馬隊を向かわせますか?」

夕鈴を追い掛け、浩大は既に動いている。 物見台からの報告と共に、夕鈴と柳方淵が連れ去られた先が南方であることが判っている。 しかし何故柳方淵まで連れ去ったのか疑問が残る。 
そこへ李順が近付き、陛下へ密やかに声を落とした。

「浩大と共に動いた密偵より、目的が判らない状態で動けないとの報告が来ました。 桐が急ぎ補助に向かっております。 ・・・・目的は妃だとしても柳方淵まで連れ行く意味が判りません。 柳大臣子息と知ってのことなのか、他に意図があるのか未だ不明です」
「それもおいおい判るだろうが、早期奪還が最優先だ」
「御意。 では騎馬隊を向かわせます」

右将軍に李順が指示を出し、少数騎馬隊を直ぐに出立させた。 
同時に南方への街道を囲むように少数精鋭部隊をいくつかに分け、馬車が通った可能性のある街道全てを走るよう指示する。 どの方向に進路を変えても必ず追い着けるようにと。

二人が馬車に乗せられ南下しているとしか判らず、詳細は想像も出来ない。
浩大が追っているが容易に動けない状況だという。 
もし夕鈴にカスリ傷ひとつでも負わせようものなら、画策した大臣がどんな立場の者でも一族郎党、どのような目に遭おうと自業自得だろう。 王宮に忍び込み建物を破壊し、妃を誘拐し、臣下をも攫った。 狼陛下に刃向おうとする愚かな者がまだいるということか。 

宴の余韻が一変した殿近くでは慌ただしく禁軍衛士が動き出し、出立を始める。 
極寒の雰囲気を身に纏った陛下が近衛兵に檄を飛ばし、李順に怜悧な笑みを向けた。

「全ての動きを逐一報告しろ! 李順、あとの指揮系統を任せる」
「・・・っ! 陛下がなさって下さい! まさかとは思いますが、それは駄目です!」
「馬を用意しろ」
「陛下! お待ち下さい」

外套を払って踵を返す陛下を李順が必死に止めようとするが、足早に厩舎へと向かう彼を止められない。 今回はバイト妃が狙われただけでなく、柳大臣の子息まで連れ去られている。 いつも以上の面倒ごとになっている上、陛下が王宮から離れるとあっては余計に面倒ごとが大きくなりかねない。 
李順が怒気を露わに、馬具を装着する馬丁を下がらせて息を整えた。

「・・・・浩大ら隠密が勢威動いています。 私の密偵も南方の動きに怪しいところがないか調べ直ししているところです。 陛下は王宮に留まり指示を出して下さい! どんな裏があるか解かりませんし、柳方淵も一緒です。 腕の立つ彼でしたら、きっと夕鈴殿を」
「騎馬隊に直接指示を出すには同行した方がいいだろう?」
「陛下っ!」
「ここで我が妃を待つつもりはない。 妻を迎えに行くのは夫である私の役目であろう。 あれだけのことを仕出かしたのだ。 相手の動きが読めない以上、誘いに乗るのも手かも知れないぞ」
「夕鈴殿はバイトだと何度説明したらいいのでしょうかね。 それに相手は爆薬を所持して王宮に乗り込んでおります。 楽団員も足止めして全て調べるよう指示は出しておりますが、どのような意図があるか不明です」
「ああ・・・、修理費も莫迦にならぬな。 李順、修理費用も早急に算出しておけ」

李順の声を背に、冷笑を浮かべながら馬具を取り付け終えた陛下が騎乗する。 
留まるよう繰り返し伝えるも、まったく耳を貸す様子の無い陛下に、李順は眉を顰めて額を押さえるしかない。 言うことを聞かないのはいつものことだが、今回は王宮に忍び込んだだけではなく爆破までしておきながら、妃を殺害することなく攫っている。 それも何故か柳方淵までもを。 柳方淵は巻き込まれたのか、それとも意味あって連れ去られたのか、それさえも不明の中、陛下はバイト救出に向かうと言う。 
李順は苦悩しながら逡巡し奥歯を噛み、そして嘆息を零す。 

「・・・・残党を締め上げ、急ぎ目的を吐かせます。 どうぞ御無事で」
「それは相手のことだろうな。 李順、任せるぞ」

闇に消えゆく王の姿を視界の端に、李順は眉を顰めたまま刑房へ厳しく取り調べるよう指示するために足を進める。 冬の冷たい夜気の中、浮かぶ星々が綺麗に瞬いた。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:42:02 | トラックバック(0) | コメント(10)
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2013-12-27 金 02:23:24 | | [編集]
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2013-12-27 金 07:40:19 | | [編集]
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2013-12-27 金 10:11:44 | | [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。楽しいけど、方淵ごめんなさい気持ち、よく解ります。そう思いながら書いてますもの。桐はもう少し後で出る予定です。次は二人だけの登場。うまくまとまらないのよ、この二人は。次も方淵、ごめんなさいばかりです。(笑)
2013-12-27 金 12:23:56 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
彩華様、コメントをありがとう御座います。陛下がお好みで嬉しいです。次回は黒陛下出て来ませんが・・・・しばらく出て来ませんが、それでもお付き合い下さいませ。
2013-12-27 金 13:22:08 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。方淵がんばれエールをありがとう御座います。陛下のブリザードは次回はお休み、というか、しばらくお休みか。次は馬車の中でいちゃいちゃらぶらぶ~な不倫情報をお知らせ・・・・・ああ、背後からの冷たいオーラと、首筋を這うような冷たい鉄の感触に、ワタクシ、只今激しく尿意を催しております!!生きていたらまたお会いしましょう!
2013-12-27 金 13:30:36 | URL | あお [編集]
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2013-12-27 金 18:24:02 | | [編集]
Re: 不憫な…
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。陛下ブチギレのうえ、王宮脱出成功!わーい!李順が血を吐くのもそろそろか? 夕鈴との逃避行中の方淵も殺されないよう、何か考えなきゃ可哀そうですよね。ああ、なんて可哀そうな運命の人でしょう。方淵と李順、どっちが可哀そうかな。なむ・・・・。
2013-12-27 金 20:10:11 | URL | あお [編集]
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2013-12-28 土 00:06:40 | | [編集]
Re: タイトルなし
彩華様、忘れておりました。すいません。プレイじゃありません。私がおっちょこちょいなだけです。
2013-12-28 土 00:14:04 | URL | あお [編集]
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