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錆びた逃避思考  3
可哀そうな方淵とブラック陛下と胃痛李順と名だけ出て来た桐に応援が来ております。ありがとう御座います。一番大変なのは方淵でしょうか。おお、なんて可哀そうな人なのでしょう。(落涙) 彼の幸せはどこにあるのか、一緒に探してあげたいです。この人、お休みの人は一人で書物を読んだり、一人で剣の鍛練したりして過ごしそうな感じがします。本人満足してそうだけど、傍から見るとちょいと寂しいかも。


では、どうぞ












「・・・・ほぉーえーん」
「もう、黙っていろ。 いい加減、こっちも満身創痍だ」
「りゅーうー・・・・ほぉ・・・」
「気安く人の名を何度も繰り返すな。 黙っていろ」
「ほーえん・・・・・ほ、う、え・・・・」
「手が自由になったら、直ぐにお妃の口を塞いでやる」

やっと泣き止んだが、激しく揺れ続ける馬車の床に転がったまま人の名を気安く呼び続ける妃に方淵は辟易していた。 背を向けて呟くように人の名を繰り返す妃に苛立ちながら、馬車がどの方向に向かっているのか薄汚れた窓から窺い続ける。 まだ数刻しか経っていないのだろう。 窓から見える外は闇に包まれ、馬車がどの方向に走っているのか全く判らない。 
苛立ちと焦燥を募らせながら、馬車が止まった後のことを想定する。 
帯刀していた獲物は奪い去られ手元にはない。 他に武器はないかと見回したが、妃の髪を飾る簪も見当たらず、板と縄が振動する床に埃と共に転がっているだけ。 その上、手と足は縛られた状態で解こうにも手も歯も届かない。 更に、何らかの薬を嗅がされ酩酊状態の妃だ。

「こ奴が少しでもまともなら縄を解く手伝いをさせるのに」

ガタガタと酷い揺れの中、床上で動かなくなった妃を一瞥し、そのまま動くなよと念じる。 これ以上妃を守るために身体を差し出していたら、いざという時動けなくなるだろう。 大人しくなったのなら、それでいい。 面倒ごとが一つ減っただけでも精神的に軽くなった気がする。 

しかし、方淵の災難は続く。

「・・・ぐ、ふっ。 げふ!」
「なっ!? どうした、お妃」

暗がりの中、突然激しく噎せ込む音が聞こえ、振り返った途端に馬車が揺れてバランスを崩した方淵が床に叩きつけられる。 床に置かれていた板の上に肩が強かにぶつけながら、必死に身体を起こして噎せ込み続ける妃の許へにじり寄った。 暗がりで顔色が判らないが、苦しげな声を漏らす妃に声を掛ける。

「おい・・・、気分が悪いのか。 馬車に酔ったのか。 それとも嗅がされた何かで吐きたいのか? ちゃんと答えてくれないと判らないぞ。 お妃、おいっ!」
「げ、ほっ。 ぐっ・・・・げほっ、ごほ・・・っ」
「お妃! ちゃんと答えろ!」

それでも馬車は停まらず時に激しく揺れ、噎せ込む妃の身体がその度に右へ左へと転がり続ける。 噎せ込むだけで吐いている様子はないが、もし馬車に酔っているなら外の空気を吸わせた方がいい。 
一番いいのは一度馬車を停めて外に出るのがいいが、それは無理だろう。 
どうにか後ろ手で妃の身体を引き摺り、背後の扉へと近付ける。 少しでも外の空気を感じられる場所へ移動させようとするが、その度に馬車が揺れるので上手くいかない。 

「ぐ、ふ・・・・っ! ご、ごめんね。 りゅ・・・方淵、どの・・・」
「正気に戻ったか、お妃様。 吐きそうか? 酔ったのか?」
「酔・・・ったみたい、だけど・・・吐きそう、だけど・・・ない」
「吐きそうなのか? ないとは、どういうことだ!」
「吐気・・・・だけ・・・・げほっ。 吐かない・・・・」

方淵に引き摺られた上、馬車の揺れに夕鈴の身体が扉に痛いほど押し付けられた。 身体が寄り掛かった馬車後部扉の開いた隙間から冷たい空気が入り込み、目を開けると太い閂が見える。 どうにか新鮮な空気を吸いながら重い頭を振り、夕鈴が顔を上げて周囲を見回すと、暗がりの中疲れ果てた方淵の顔があった。 
何か声を掛けたいが揺れに胸が押し上げられ、息をするのがやっとの状態。 それでも扉に凭れ掛かりながら暫く時間を置くと噎せ込みも治まり、ようやく声が出る。

「・・・・あの、柳方淵殿は・・・・怪我ない、ですか」
「打撲はあると思うが、気にしなくていい。 それより酔いは治まったか。 嗅がされた何かで自身が今までどのような様であったか覚えは・・・・・いや、それよりもお妃様に、気分不快や痛みはないのか」
「ない、です。 あの・・・・縛られているけど指は自由に動くから、背中合わせになって紐を解いてみましょうか。 揺れがひどいから上手くいくか判らないけど」

それは妃が正気に戻ったら直ぐにでも実行したかった案だ。 
妃の声が多少掠れて聞こえるが、今まで噎せ込んでいたせいだろう。 本人が大丈夫と言っている内に、助かる道を模索しなければならない。 どこか痛みなどがあるなら、助かってから治療して貰えばいい。 妃が正気の内に動かなければ、この後の展開を考えると眉間に皺が寄るばかりだ。

「まずはお妃様の縄から解こう」
「いえっ、何があるか判りませんから、柳方淵殿の縄を先に解きましょう。 活路を見出すにはその方がいいわ。 だけど手探りだから痛むかも知れない。 我慢してね」
「大丈夫だ、問題はない。 では急げ!」

薄暗い馬車の中で激しい揺れと後ろ手に縛られている状態だ。 
頭の中もまだぐちゃぐちゃに掻き回されていて、状況がよく解らない状態だが、自分が方淵と共に攫われたというのは理解出来る。 そして、この状況を打破しないと何が起きるか判らないのも。 
揺れと暗がりの中、どうにか背中合わせになり結び目を探り寄せて、きつく縛られた縄を必死に解く。 荒縄で急ぎ縛り上げたのだろう、結び目に指を入れて解く作業を続けていると緩んで来たようだ。 少し緩まったところで方淵が 「もう、抜ける」 と一人で縄を解き終え、そのまま自分の足の縄を解き始めた。

集中が途切れた瞬間、胃から苦いものが込み上げて夕鈴は扉に凭れ掛かる。 
方淵さえ無事なら問題ない。 庶民のバイトより王宮に従事する方淵の方が大事だ。
どのくらいの時間縛られていたのか判らないが、彼なら問題なく動けるだろう。 彼が自身の手首や足首を擦り動かしている様子を見ながら、安堵の息を吐く。 何処に連れ行かれるか判らないが、柳大臣の息子でもある彼がこのまま馬車に居てはいけない。 深呼吸を繰り返し、夕鈴は考えをまとめ終えた。

「方淵殿、手や足はどうかな、痺れてない? 動ける?」
「・・・・まあ、問題はないだろう。 だが刀が奪われている。 馬車が停まると同時に襲われたら武器の無い今、貴女を庇って動くのは難しい」
「ほんとう・・・・・正直だわ。 そうね、何か考えなきゃね」

手首を解し終えた方淵が夕鈴の手首の縄を解く。 手首だけでなく肩から肘まで鈍い痛みが奔るが、その内に解消されるだろう。 それより方淵を無事に逃がさなければならない。 そのためには扉に掛けられた閂を外して馬車から脱するのが一番妥当だ。 
目にした板を割り折り、扉を押して出来た隙間にささくれ部分を差し込む。 揺れが激しい中、下から押し上げると閂が動くのが判る。 だが隙間を作ろうと扉を押している分、閂が締まり上手く持ち上がらない。

「替われ。 お妃様の考えは理解した」
「扉に隙間が無いから、押して閂を上げようとすると力が要るわ。 お願い」

だが板のささくれでは弱いようで、すぐに折れてしまった。 
馬車の中を見回すも他に役に立ちそうなものは無く、夕鈴は幅広の腰紐を解いた。 

「なっ!? お妃さ、ま! な、何をするつもりだ!」
「うん、小窓があるから割ろうと思って」

折った板で薄汚れた窓の端を割り、大きな窓破片を腰紐で掴み、怪我をしないように包み込んでから方淵へ渡す。 方淵が目を大きく瞠ったのが薄闇から判る。 窓から入る冷たい風に頭が幾分かすっきりして、夕鈴は笑みを浮かべた。

「怪我をしないようにね。 大きい破片だから上手く持ち上げられるといいけど」
「・・・・お妃様に怪我はないか」
「大丈夫よ、腰紐で掴んだから。 だけど方淵も気を付けてね」

今度は上手く力を入れることが出来、閂が持ち上がって扉が大きく開いた。 
土煙を上げながら走り続ける馬車が現在どこを走っているのか確かめようと、方淵が周囲の風景に視線を投じて現在位置を頭の中で必死に模索する。 しかし夜間であり、周囲は森だ。 
場所の特定など出来る訳もなく、とりあえず手足が自由になり、馬車の速度が落ちたと同時に逃げる可能性が出来たことだけでも良しとするかと詰めていた息を吐く。 
問題はいつ馬車の速度が落ちるかだ。 速度が落ちたとしても周囲が崖や沼地では容易に降りることが出来ない。 しかも妃連れだ。 不用意に動いて妃を傷付けてはならない。 刀を持った輩共に周囲を取り囲まれる場合もある。 しかし、御者が気付いていない、この好機にどうにか動きたい。

方淵が後方に流れる景色を眺めながら思案を続けていると、突然頭に白い布が幾重にも被さり、そして身体に衝撃が奔った。

「なっ!?」
「こ・・・っ、警護の人、頼むわ! 方淵、怪我しないでね!」
「・・・お妃ーっ!」

夕鈴が方淵の頭だけでも守ろうと衣装をぐるぐる巻きにして背を押し出したため、馬車から転げ落ちた彼が衣装を取り外して顔を上げた時には追い着けないほど距離が離れていた。 
バタバタと揺れ動く扉の音を森に響かせながら馬車は瞬く間に姿を消していく。 
長く拘束されていたため、立ち上がろうとして膝から力が抜け地に落ちる。 闇に紛れるように見えなくなって行く馬車を睨み付け、方淵は地面に拳を叩き付けた。

「あ・・・の、莫迦妃め・・・っ!」

縄で擦れたのだろう、手首足首がじぐりと痛む。 その傷痕を睨むように見据えた後、苛立ちに震える唇を噛み締めながら妃の衣装をまとめた。 馬車から落ちた時、背と肩を強かに打ったが衣装のお蔭で頭に痛みは無く、ただ無謀な行動を取った妃に殺意に似た怒りが湧く。 妃は未だ馬車の中で、どの方向に攫われたのか不明のまま。 現在地も判らず、闇に沈んだ森の中に一人残され、どうしたらいいのか考えが纏まらない。 
一体、あの妃は・・・・・何を考えているのだ。

しかし、ふと背後が明るいと気付き、振り向くと松明が道に落ちていた。 
何かの罠かと周囲を見回すも誰の気配も無く、いつの間に誰が置いたのかも判らない。 耳を澄ますと遠くから梟の啼く声が聞こえるのみで、方淵はそろりと松明に手を伸ばした。 明かりがあるだけで随分気持ちが落ち着く。 深く息を吐き、妃のことは一旦置いておき、今自分が出来ることを考えることにした。
まずはこのまま馬車を追うべきか、それともこの場に立ち尽くすべきか。 
考えても埒が明かない。 近くの茂みで乾木を探して街道の中央に山を築き、火を点ける。 炎が大きく立ち上がったところで松の葉を投じて、煙を出す。 
妃が連れ去られたのはあの場にいた幾人かが目にしていたはず。 不甲斐無いながら自分も一緒に攫われたと見ていた者もいるだろう。 直ぐに不審者の討伐隊が結成され追い駆けているはずだ。 大きな街道からは少し外れているようだが、この火と煙に気づいて貰えることを祈るしかない。

聞こえなくなった馬車に残された妃が気になるが、今は耐えるだけだ。
後方部隊に詳細を伝えることが出来るのは、今ここにいる自分だけと思うしかない。
出来るだけ乾木を探し、どんどん投じる。 火が消えぬように、誰かが一刻でも早く気付くように。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:03:03 | トラックバック(0) | コメント(8)
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2013-12-28 土 01:00:02 | | [編集]
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2013-12-28 土 12:07:36 | | [編集]
Re: はじめてコメントさせていただきます
あきももママ様、初めまして! そして、コメントをありがとう御座います。読み逃げおっけーです。足を運んで貰えるだけでも嬉しいですよん。拙い妄想二次ですが、お好みに合う話があると嬉しいです。どうぞ宜しくお願い致します。
2013-12-28 土 19:03:45 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。桐・・・・ああ、桐は次に出る予定です。どちらを夕鈴と絡ませようか思案中です。どちらにしましょうか。(笑)男前夕鈴は最高の褒め言葉です。ありがとうございます。うひゃー!うれしい。
2013-12-28 土 19:07:21 | URL | あお [編集]
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2013-12-28 土 21:19:10 | | [編集]
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2013-12-28 土 21:58:39 | | [編集]
Re: ポン酢しょうゆと青い鳥
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。ポン酢しょうゆ・・・・何でしょう。個人的には好きです。必ず冷蔵庫にありますし、時期的に鍋が多いので必需品です。たぶん、そういう意味じゃないですよね(笑) その後の方淵と夕鈴の運命は可哀そうなものでしょう。夕鈴は覚悟を決めた方がいい。李順相手じゃなくて、陛下相手の覚悟を。李順へのお心遣い、ありがとうです。
2013-12-28 土 23:54:51 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。方淵の方が大事だと思うのは、バイト夕鈴らしいかなと無謀な真似をさせました。痛いよね、方淵! でも頑丈だから大丈夫だろう。ははは。陛下ももう少しで来るだろうし、違う危険は迫っているけど頑張れ、夕鈴。しかーし、それで終わったら詰まらないので、イジメル予定です。(鬼)どうぞ、お付き合い宜しくお願い致します。
2013-12-28 土 23:59:08 | URL | あお [編集]
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