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錆びた逃避思考  4
やっと方淵は解放。良かったね。さてここからは夕鈴と隠密ちゃんの出番です。頑張って欲しいです。冬休みに入って、娘は冬コミのために日夜コスプレ衣装作りに頑張っております。かなり力を入れていて、玄関に銀色のスプレーの飾りが。おいおい・・・。


では、どうぞ












馬車の後部扉がバタバタと大仰な音を立てている。 これでは直ぐに御者も気付くだろう。 
そう判断した夕鈴は床に置かれた縄を腕にぐるぐると巻き付け、頭を抱えて馬車から一気に飛び降りた。 出来るだけ道端の石が少ない場所目掛けて飛び降りたつもりだが、走る馬車から急ぎ飛び降りたため、肩や腰や背中が地面に叩き付けられ息が詰まる。 
だけど意識がある内にと、必死に痛む身体に鞭打って近くの茂みに転がり込むように移動した。 そのまま奥へと、道から離れた場所へと足を急がせる。 夜風が腕や背に冷たく感じ、手で擦ろうとしてぬるっとした感触に気付き、腕から血が出ているのだと知った。

「・・・・方淵は大丈夫かな。 今更ながら酷いことをしたと思うけど、無事だよね。 ・・・・そろそろ浩大を呼んでもいいかな。 でも馬車が引き返す可能性もあるから、もう少し待ってからの方がいいかな」

下手に叫んで敵に見つかっては逃げ出した意味がない。 それに夜の森では白い肌着に近い衣装では目立ち過ぎる。 葉が茂る枝でもあればいいのだが、季節は冬だ。 広葉樹は背が高く、茂った葉がある枝には手が届かない。 隠れる場所も暗闇に目を凝らすが見つからず、見つかる可能性のある街道から出来るだけ離れようと考えた。 耳を澄ますが、もう馬車の音は聞こえない。 
あれだけ盛大に扉が音を立てていたのに奇怪しなことだ。 そう思うと違った恐怖が背を這い上がる。

「吐気も無くなったし、大きな怪我もない。 あとは、もう少し離れてから様子を見て、浩大を呼んだ方がいいかな? そういえば浩大・・・・いるよね。 いなきゃ困る。 方淵を突き飛ばしたのに」

そういえば口元に濡れた手巾を押し当てられて気を失ったと思い出す。 
馬車に居た方淵もそうなのだろうか。 妃が狙われるのは判るが、何故方淵までも攫われたのだろう。 たまたま傍にいたからなのか。 いや、それでは危険が増えるだけだろう。 
妃を攫うのが目的なら、余計な人物は必要ない。 ましてや刀を振り回してた人物など。 
だけど傷付けることなく連れて来たのは柳大臣の息子だからだろうか。 
早々に馬車から落として正解だったのかな。 ・・・・正解にしておこう。 
じゃなきゃ、柳大臣の息子を馬車から突き落とした下っ端妃として、更にひどい悪評が王宮に回ってしまうじゃないか! そうなると今度こそバイトクビ確定だ。
追い掛けて来ない馬車の恐怖とも、寒さとも違う怖気が夕鈴を襲う。
今はそんなことより、他を考えようと頭を振った。  

妃を王宮から連れ出して馬車でどこに向かおうとしていたのか。 方淵まで連れ出したのは何故か。 直ぐに殺さなかったのはどうしてなのか。 だけどバイトの夕鈴が幾ら考えても判らないことばかりで怖くなる。 
思い浮かんだのは妃衣装を、それも宴用に用意されたいつもより豪奢な衣装を方淵の頭に巻き付けて馬車から突き落としたこと。 きっと後から李順さんに叱責されるだろう。 衣装代が借金に加算されるだけじゃない。 私が突き飛ばしたのは柳大臣の息子だ。 どうしても浮かんで来る李順さんの蒼褪めた表情に、足元から這い上がるのは様々な恐怖だ。 夕鈴は街道方向を見つめながら静かに後ろへと退いた。
李順さんが頭の中いっぱいに私を責めて来る! 怖い! 刺客に狙われるより、闇より、寒さよりも怖い!
駄目だ。 今はそれよりも逃げることを考えなきゃ。 
生きて戻ること! まずはそれを第一に考えよう。 後のことは後のことだ!
叱責されるということは、生きている証拠。 その証拠を実感するために、必ず陛下の許に戻ろう!

闇に慣れて来た目に周囲の様子が見えて来た。 立木が疎らな場所な山の中腹あたりだろう。
方淵を怪我させないために来ていた宴用の豪華な衣装を殆ど頭に巻き付けてしまったため、冬空の下ではかなり寒い。 腕を擦りながら歩いていると、肩から流れる血が寒風に晒され痛みよりも寒さが身に沁みる。 一晩だけでいいから、この寒さを凌げるところはないかと足を進めているが闇が広がるばかりで何も見えない。 街道から随分離れたし、馬車も遠くまで行っただろうと夕鈴は声を張り上げた。

「浩大ーっ! 私はここでーす!」

繰り返しいろいろな方向に向かって叫ぶが、返事はない。 今更になって無謀なことをしてしまったかと慌てて街道方向に向かうが、最初に闇雲に逃げてしまったため見当がつかない。 記憶の中の木立を選びながら街道があるだろう方向に向かって歩き出したが、途中何度も立ち止まり、不安に襲われる。

「浩大ー・・・・。 私はここですー・・・。 見つけて下さーい」

時間の経過と共に、疲れと寒さと心細さで声を張り上げることが出来なくなる。 宴が終わって攫われてから、どのくらい馬車に揺られていたのか判らないが、真夜中はとうに過ぎただろう。 朝になれば周りの状況も見えてくるだろうが、それまでこの林の中に居たら凍死してしまうかも知れない。
何度か繰り返し浩大を呼ぶが返答がないことに焦りが生じる。 それでも声を出している間は気が紛れる。 しばらく進んでいると遠くにユラユラと揺れる赤い炎のようなものが見えた。 一瞬、敵の存在が頭に浮かぶが、私だけじゃなく柳大臣子息である方淵も攫われたのだ。 王宮警護兵が直ぐに出立しているだろう。 その警護兵に見つかるようなことを敵がする訳がない。

「そう思うことにしよう! 私みたいに道に迷って暖を取っている人かも知れないし、木こりの山小屋の可能性もある。 外で楽しく酒盛りしているのかな? 人相が悪そうだったら逃げたらいい話よね。 まずは目標に向かって出発しましょう!」

盛大な独り言を口にした夕鈴は自身を奮い立たせて足を進ませることにした。
その先に大きな深淵が口を開けて待っているとも知らずに。





***





「おーい、お妃ちゃーん! ・・・・まっずいなぁ。 ああ、すごっく不味い!」

浩大は馬上で頭を抱え込んで悩み続ける。 
追い駆けていた馬車の後方扉が突然開き、二人の無事が確認出来たと胸を撫で下ろす暇もなく、柳大臣の子息が馬車から落ち、浩大はひどく慌てた。 隠密として姿を見られる訳にもいかず、しかし相手は柳大臣子息。 馬を止めて様子を窺うと大きな怪我はないようだ。 馬車から落下したのではなく、彼の怒声からバイト妃が突き落としたのだと判り、取り敢えず持っていた松明を街道に置いた。 
彼なら松明に直ぐ気付くだろうし、馬車に残ったままのバイト妃も飛び降りる可能性がある。 
柳方淵に気付かれぬよう林の奥へと入り込み、大回りしながら急ぎ馬を駆らせて馬車を追い掛けたまではいい。 ようやく追い付いたと思ったら、しかし馬車の中に彼女の姿はなかったのだ。 驚いた浩大が急ぎ前に回り込み馬車を停め、蒼白の面持ちで御者台に座る男を問い詰めると、彼は悲痛な顔で叫び声を上げる。

「う、後ろの扉が開いたのは判りましたが、怖くて停められませんでしたぁ!」
「馬車に誰が乗っているのか知っていたんだろう? それなら」
「だからです! 人攫いの片棒を担ぐのを承知で受けた仕事ですが、ま・・・まさか狼陛下唯一の妃を攫うなど、思ってもいなかったことで! その上、大臣の息子を一緒に乗せたと聞き、お、恐ろしくて・・・っ! このまま走らせて国境まで逃げようと思っていたのです! 申し訳御座いませんでした!」

怯え震える男は、扉が開いた音に気付いても自分の命の方が大事と耳を塞ぎ逃げることに専念したという。 
きっと柳方淵が落ちた場所から、馬車を停めた区間のどこかでバイト妃は飛び降りたのだろう。 
頭痛がすると浩大は頭を抱え込む。 
陛下の足手まといになりたくないと考え、バイト妃は自ら飛び降りたと想像出来るが、馬車に追い付くまでに彼女の姿は見当たらなかった。 
馬車が引き返すのを想定して、闇深い林の奥へと足を向けた可能性が浮上する。 
ここは南方にある州へと向かう途中の山の中だ。 
鉱山がある普段は閑散とした場所で、山菜取りや獣捕獲、材木を伐採するために立ち入ることはあるだろうが、冬季期間は人の出入りなど殆ど無いと思われる場所。 
どこまで逃げたのか、この闇の中を探すのは大変だと眉を顰めるしかない。 

馬車から荷台部分を離し、馬に御者の男を括り付ける。 来た道を戻るよう男に告げて、馬の尻を叩き走らせた。 御者が乗った馬は、後から追い駆けて来ているはずの禁軍騎馬隊が見つけてくれるだろう。 荷台の壁を引き剥がし火を点け、松明代わりにする。 ついでに燃やして、この先に目的の妃は居ないと判るようにした。 松明代わりの板を持ち上げるが、林の奥まで光が届く訳もなく、バイト妃の姿も見えない。 
馬車を走らせていたのは頼まれただけの御者で、王宮に忍び込んだ輩の姿はない。 
だが、爆薬を持ち忍び込んで妃を攫った輩が、他人任せにして放置するとは考えにくく、柳方淵を一緒に攫った理由も不明のままだ。

「あー・・・、何処にいるのかねぇ。 結構広いんだよね、この山って」

嘆息を零すと直ぐに白い息となり、夜気に広がるばかり。 
浩大が頬を掻いていると背後から蹄の音が聞こえて来た。 
口角を持ち上げて振り向くと深い皺を寄せた桐が口端を下げて近寄り、深い溜め息を吐く。

「南州へ向かう街道全てを王宮騎馬隊が誘拐犯討伐のために出立した。 浩大は一足先にお妃を追い掛けていたはずだろう。 お妃は・・・・・考えたくない状況か?」
「お妃ちゃんが柳の坊ちゃんを馬車から逃がした。 というか、落としたんだよね。 それで、まあ闇の中に置き去りは可哀想だと思ってさ、松明を用意している間にお妃ちゃんも馬車から自主的に降りたらしいんだよ。 で、今はご覧のとおり、行方不明」
「・・・あの、莫迦妃が・・・・」

桐の物言いは柳大臣子息と同じだなと、手厳しい彼に思わずニヤついていると眇めた視線が返って来た。 
途中で大臣子息は見なかったと問うと、盛大に燃え盛る火を起こすために近くの林をうろついていたから、気付かれないよう大回りしたと謂う。 取り敢えず左右に分かれてバイト妃を捜索しながら、騎馬隊が見えたら一度戻り情報交換しようと話がまとまった。

「柳の坊ちゃんを落とす時に衣装を頭に大量に巻き付けていたから、お妃ちゃんは薄着なんだよ。 風邪ひかせちゃ大変だから急ごうぜ。 たぶん、陛下も追い駆けて来るような予感がするんだよね」 
「正解だ、浩大」

浩大が振り返ると桐が薄く笑みを浮かべて肩を竦めた。 
やはりそうなるかと嗤うしかない。
早速バイト妃の捜索を開始するが、闇の中に王宮で爆破をしかけた黒衣の仲間がいる可能性がある。 出来るだけ静かに捜索をすべきか、声を上げて周囲に自分たちがいることを知らせながら捜索すべきか暫し悩む。

「いや、声を出すべきだろう。 敵の存在よりもお妃を見つけ出す方を優先した方がいい。 この闇の中、気温もまだ下がる。 相手の出方が判らない以上、早期に見つけて連れ戻した方がいいだろう」
「了解っす。 ではその方向で!」

馬車を燃やしている場所から王宮へ戻る道を逸れて立木の闇へと馬を促す。 
枯草を踏みしめる蹄の音が夜気を震わせながら、二人は場を離れて捜索を始めた。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:25:04 | トラックバック(0) | コメント(12)
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2013-12-29 日 01:37:39 | | [編集]
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2013-12-29 日 01:48:18 | | [編集]
ずっと追いかけて読んでます(*^^*)
一気に読みたいのでしばらく我慢して読んで、また感心の嵐です。
よくもこんなに文才があるな、と。どれを読んでも面白くてワクワクします。
今年も楽しませてくれて、ありがとうございました!
一言、年末にお礼が言いたくて失礼しましたm(_ _)m

良いお年をお迎えくださいませ。
2013-12-29 日 15:41:59 | URL | 希望 [編集]
Re: 大変申し訳ございませんでした!!
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。いえいえ、大変楽しかったです。もちろんCMも覚えています。夕鈴を助けるために動き出しますが、素直に救出されるかどうか・・・。ははは。あ、娘のコミケは無事に上手くいったようですが、少し笑いが。でも超楽しかったそうです。天気も良くて良かった。ヒールで動き回り続けて足が大変そうですが。
2013-12-29 日 21:09:05 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。桐を動かそうか悩みつつ、初志貫徹です。でも辛辣な会話を楽しみたいので、もう少しお待ちくださいませ。その前に夕鈴を苛めないと。(笑)
2013-12-29 日 21:17:31 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
希望様、コメントをありがとう御座います。追い掛けて頂き、もう、本当に感謝です。これから年末、滞ることもありますが、のんびりお付き合い下さいませ。我慢している間に話が少しでも進むように頑張ります。来年も宜しくお願い致します。
2013-12-29 日 21:21:22 | URL | あお [編集]
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2013-12-29 日 23:01:41 | | [編集]
お久しぶりです
桐様、素敵v-10

ゴホゴホ、いつも素敵なお話ありがとうございますi-189

リアルが忙しくて、コメ残さずに読み逃げばかりですみません(あ、拍手はしてますw)

寒くて何かと忙しい年末年始、ご無理なさらず、ご自愛ください。あお様とご家族の皆様が良いお年を迎えられますようにv-457v-353

追伸:新しいサイトのお話の更新も楽しみにしておりますv-344リアルが忙しくて、ベットでiPad miniで読みながら、途中で寝ちゃうので、朝晩と二度読みして、二度美味しい思いをしておりますw
2013-12-30 月 14:40:29 | URL | Norah [編集]
皆様、良いお年を!!
あお様
今晩は。
明日は、通信回線が混みそうなので
(笑)今日書き込みさせて頂きます。
娘さんは、靴擦れとか大丈夫でしたか?
毎回、毎回、コメントに返事をくださって、ありがとうございました。来年は、もっと分かりやすい文体で、簡潔にできるよう努力します。
来年が、あお様や、ご家族、わんちゃんにとって善き年でありますよう、お祈りもうしあげます。もちろん、「狼陛下の花嫁」もハッピーエンドに突き進むよう、願掛けします! では、良いお年を!
2013-12-30 月 20:51:05 | URL | ぶんた [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。いや~、大掃除に追われてPC立ち上げる暇もなし、こんな時間にようやく見ることが出来ました。夕鈴イジメ、ええ、これからです(笑) 方淵との絡みは最小限にしておきます。これからは浩大、桐、陛下の順かな。もちろん敵さんも登場。長いので、年はばっちりマタギマス。来年も引き続きお付き合い頂けると嬉しいです。どうぞ、来年も良い年になりますように心からお祈り申し上げます。来年、しょっぱなから夕鈴は大変ですけど!(爆)
2013-12-30 月 23:54:41 | URL | あお [編集]
Re: お久しぶりです
Norah様、コメントをありがとう御座います。御久し振りです。そして拍手をありがとう御座います! あちらのサイトにも足を運んで頂き、ありがとう御座います。ストレス発散に手を広げ、そして首を絞めておりますが、妙に幸せなのは「M」だからでしょうか。(自爆)引き続き、足を運んで頂けたら嬉しいです。
2013-12-30 月 23:56:54 | URL | あお [編集]
Re: 皆様、良いお年を!!
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。確かに明日は動作が遅くなりそうですね。なので、今夜中にもうひと踏ん張りです。昼間はどうしても大掃除があるので、遅い時間に頑張るしかない。灯油代が心配だけど気にしない(笑) あ、娘はヒールだったので迎えに行った車の中で悲鳴でした。足がー、足がー!と煩い、煩い。でも満足な冬コミだったようです。本人が幸せならいいや。ぶんた様も幸せな年越しをされて下さいませ。来年もどうぞよろしくお願い致します。
2013-12-31 火 00:00:01 | URL | あお [編集]
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