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錆びた逃避思考  6
2014年、明けましておめでとう御座います。今年ものんびり楽しみながら妄想していきたいです。本誌、狼陛下もじりじりと動いておりますね。によによ笑いながら萌えを頂戴し、トンデモナイことを妄想して生きる糧としたいです。どうぞ、よろしくお願い致します。


では、どうぞ












突然の動きにまず反応したのは、街道を挟んでバイト妃捜索をしていた桐だ。
 
林立する場所から飛び出した馬が街道を駆け抜ける瞬間、馬上に白いモノが乗っていたのを目にした。 追い駆ける馬上にいるのは間違いなく浩大だ。 では追い駆けている白いモノはバイト妃か。

「あのお妃は馬車から降りて、今度は何処へお出掛けだ?」

街道を挟んで捜索を続けていたが、その街道へ突然姿を見せた二頭の馬の動きに手綱を引く。
そのまま木立の中を追い駆け始めるが、思うようには走れない。 しかし街道に馬を走らせ浩大と同じ行動を取ったがために負うリスクを考え、このまま陰から追跡することにした。 妃警護を任された陛下直属の隠密として、出来るだけの策を講じる必要がある。 どんな場合でも裏から補助出来る、または別行動により他の道を模索する必要がある。 そのため見通しが悪いという条件を耐えて、馬を駆使して追い掛けるしかないのだ。 

乱立する木立を駆け抜けながら目を眇め、桐は舌打ちを零した。 街道で盛大な焚火をしている柳大臣子息がウロウロしているのは見た。 座ったり立ったり落ち着きない様子を目に、大きな怪我はないと解かる。 その内、到着する騎馬隊に救助されるのは時間の問題だろう。 
問題はバイト妃だ。
相手の意図が掴めない以上、このまま南州へ連れ去られる訳にはいかない。 浩大が追い駆けている以上バイト妃が命の危機に晒される事態にはならないと思うが、問題は狼陛下だ。 
あの陛下がバイト妃が連れ去られているというのに大人しく王宮に留まるとは思えない。 
状況を知るためにも御自ら向かっていることだろう。 どちらも大人しく待つということを知らないから、李順殿が胃を病む。 そのストレスがバイト妃に向けられようが、陛下は一切気にせず笑いながら擁護するだけだ。 そして陛下の態度に李順殿が胃を・・・・。 悪循環に一役買っているのを陛下は御存じないだろう。 いや、知っていてバイト妃を翻弄しているのかも知れない。 
・・・・・思わず余計な考えが浮かび、桐は失笑を漏らした。
あのバイト妃に係わると、陛下が絡むような大ごとでも結果が面白く、つい陛下側に加担したくなる。
今はそれどころじゃないというのに、だ。
緩む頬に受ける切るような冷風に気を取り直し、桐は馬の速度を上げた。

二人が乗る馬の速度は変わらないどころが徐々に増しているように見える。 木立を避けながら駆け続ける桐の視界にもう馬の姿は見えないが、街道沿いに駆け続けた。 街道先にある州を管轄する貴族を頭の中の引き出しから広げ、妃誘拐に関与しそうな人物を考え出した時、前方から聞こえた馬の嘶きが桐の意識を奪う。
浩大が何か仕掛けたかと思ったが、お妃が乗る馬に何かする訳がない。 
あの速度では危険がありすぎることは誰の目にも明らかだ。 では、何だと考えるより早く木立から街道へと馬を促し腹を蹴り上げていた。





遙か前方の闇から馬の嘶きが聞こえ、手綱を握る陛下の手に力が入る。 
今出来ることは、彼女の無事を祈るだけだ。
嘶きが浩大の馬だと直感が知らせる。 夕鈴が連れ去られたとして、浩大が彼女を傷付けるような真似をする訳がない。 万が一、何か生じてたとしてもは考えたくないが、それでも彼女が無事だと信じるしか今は出来ない。 自分が出来ることは祈りと共に、馬を駆らせて一刻も早く彼女の許に向かうだけだ。

「この先にある地方に邸を構えているのは・・・・」

細めた視線が辿るのは先ほど思い描いた貴族以外だ。 妃推挙を推し進める気概のある者は少なくなった。 夕鈴には悪いと思うが、独り歩きしている 『狼陛下を翻弄する後宮の悪女』 の噂のせいで、妃推挙を申し出る者は減っているという。 そんな折の妃誘拐。 それも柳方淵までも連れ出すなど意味が判らない。 
追跡されることは予想出来るだろうに、その場で妃殺害を行わず、己が邸に誘い込もうとする意図も判らないままだ。 王宮での妃殺害を断念しての愚行なのか、それとも連れ出すのは最初からの予定なのかも判らない。 その場にいた方淵を連れ出したのは口封じか。 彼でなくてはいけなかったのか、たまたま傍にいたからなのか。 宴に妃が参加することをいつ知ったのか。 忍び込んだ輩は幾人だったのか。
・・・・・前方の闇に視線を投じても答えなどない。 
しかしその闇の中に夕鈴がいるのだ。 答えを待つつもりはない。 
手を伸ばさなければ何も得られないと、自分自身が一番知っている。

「何事もなく、無事でいろ! ・・・・夕鈴!」





桐が街道を駆け出すと、こちらに向かって来る馬がいた。 馬上には誰もおらず、しかし見慣れた頭巾が括り付けられている。 僅かに降り注ぐ月の明かりでは心許ないが、馬に血の付着は見られず、来た方向に目を向けるも深い闇が全てを飲み込んでいた。 
その闇を注視していると、ゆらりと動く気配を感じる。 
街道の砂利を静かに踏みながら近付いて来たのは黒衣に身を包んだ男が乗る馬が二頭だ。 王宮に忍び込んだ輩と、妃を乗せて駆け抜けた輩の他、一体どれだけの人員が配されているのか、浩大はどうなったのかと疑問が浮かび上がるが、それよりも目の前の邪魔な輩を退ける方が先だと手綱を繰る。

「問いに答える気はあるか」
「・・・・・・」

試しに尋ねるが、やはり沈黙が返って来るだけだ。 それならば己のすべきことを成すだけ。
桐は戻って来た馬の手綱を引き寄せながら二人の間を駆け抜けようとした。 やはり邪魔をする気だろう、軽く腰を上げた相手が抜刀するのが見える。 相手がその気なら仕方がないと、片方の男に馬を差し向けながら袖から小刀を投げ付け、反対の男へと節鞭を繰り出す。 素早い動きに対応し切れなかったようで、二人の男が馬から転がり落ちた。 畳み掛けるように小刀を叩き込み、桐は馬から降りると一人の首を掻き切り、もう一人の男の首へ仲間の血が滴る小刀を宛がう。

「答える気がないなら口を閉ざしたままでいいが?」

桐の問いに男は目線を既に物言わぬ仲間に向け、咽喉を鳴らした。 薄皮を悪戯に引き裂くと大きく震えながら、覚悟を決めたように目を瞑り口を戦慄かせる。

「・・・姜様より指示を頂いた」
「そうか、それだけでいい」

男の答えを耳に、桐はそのまま咽喉へと小刀を沈め、動きがなくなったのを確認して刃を男の衣装で拭い、溜め息を吐きながら立ち上がる。 得た情報を次へどうやって伝えようかと思案していると、伝えたい相手が到着したことに笑いそうになった。 桐が肩を竦めながら到着した雇い主を見上げると、冷酷な表情で足元の物を見下ろし、顎を持ち上げ先を促してくる。

「得た情報は一つです。 この先に姜という者は居りますか?」
「・・・・奴か。 南州は工望という町に邸を構えている。 ・・・・桐は後方の騎馬隊に速やかに姜の邸に向かうよう伝え、その後お前も合流しろ。 しかし、奴は大人しいだけの人物だと思ったがな」
「大人しい人物、ですか。 ではそれも含め、急ぎ伝えて参ります」

乗り手のいない馬を連れて桐は来た道を戻って行った。 
闇に伸びる街道を見つめる陛下は馬の首を撫でながら眉を顰め目を細めて息を吐く。 
姜は妻と娘を前年の流行病で亡くし、失意のまま邸で過ごすことが多くなった貴族はずだ。 しかし治めるべき町に問題はなく、時間の経過と共に傷心も癒されるだろうとの報告を受けた記憶がある。 恒例の宮廷行事には参列し、目立たぬ場所で静かに鎮座していたはずだ。 
脳裏に浮かぶ人物と、今回の妃襲撃誘拐が結びつかない。 

「兎も角、向かうしかないか」

呟きは冷ややかな夜気に溶け込み、腑に落ちない苛立ちを増すばかりだ。 
舌打ちと共に手綱を引き胴腹を蹴る。
痛みを伴う冷気が頬を嬲るが、それよりも一向に姿が見えない目的と夕鈴の無事が気になり、増すばかりの苛立ちを何処へ向けるべきか不明のまま、馬を駆らせた。 桐が連れて行った乗り手の無い馬は浩大が乗っていたものだろう。 桐から報告がないということは、奴も判らないということだ。 浩大が簡単に捕まるとは考えにくいが、夕鈴を枷にされたなら、その可能性もあるだろうか。 その場合、夕鈴の心情を思うと手綱を掴む手に力が入る。 ギリリと噛み締める奥歯から、厭な音が響いた。

真夜中を過ぎ、山の中を疾走する馬の目的地はほど近い。 一刻ほどで到着出来るはずだ。 
奴の邸に夕鈴がいると思うしかない。 他の場所に匿われているとしても探し出すだけだ。 
連れ去られたであろう浩大の行方も気になる。 共にいるのか、他の場所に連れ去られたか。 その場合、夕鈴は一人で敵陣に居るということになる。 多少気丈な兎だが、自ら逃げ出そうとして、余計な怪我を負わぬかが心配だ。 その場合は周囲の者たちがどうなるか、彼女は知る由もないだろう。 

『陛下の敵を減らしたいんです!』

そう言いながら、今にも無謀に動き出すのではないかと手綱を握る手に力が入る。 
それこそが夕鈴だが、だからこそ焦ってしまう。 
言うことを聞かないし、聞かせようとすると怖がらせてしまう。 怖がらせないようにと距離を取ると、今度は近付いて来て、上目遣いで見上げたり泣き出したり袖を掴んで来るから、そのたびに心臓が跳ね上がる。 
そんな彼女の一挙一動に動揺する自分が楽しいと夕鈴から目が離せない状態で、今はいつまでも傍に居て欲しいと心から願っている。 しかし逃したくないと本能のまま手を出すと、返って来るのは兎の後ろ足による鋭い蹴りだ。 微妙な距離感を常に念頭に置かなければならないのが難点だが、それさえも夕鈴らしいと笑ってしまう。

そんな日常を返して貰おう。
彼女を傷付けることも、彼女が憂うことも許さない。 
だが、妃警護を任せた浩大の状態が判らない今、無茶なことをしないでくれと願うばかりだ。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:55:06 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2014-01-03 金 01:25:21 | | [編集]
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2014-01-03 金 09:08:22 | | [編集]
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2014-01-03 金 19:07:26 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。こちらこそ本年も宜しくお願い致します! 桐をもっと使えとのリクエスト、了解しました。では桐にはもっと頑張って貰いましょう。方淵が残念な立場になりましたが、ごめん、最初から捨て駒です(どーん!) でも可哀そうだから後で活躍して貰いましょうか?
2014-01-04 土 13:05:06 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
七尾蛍人様、コメントをありがとう御座います。そして今年もどうぞ宜しくお願い致します。誘拐後の夕鈴は次に登場予定です。夕鈴のその後如何によっては陛下の怒りも知れますよね。うん、怖い怖い。そんな怖い展開をにやにやしながら書かせて頂きますので、お付き合い頂いです。宜しくお願い致します。
2014-01-04 土 13:10:02 | URL | あお [編集]
Re: 新年 おめでとうございます
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。あけましておめでとうございます。娘の取材は夏同様、そっち系のホームページに載るそうですが、また掲載されていません。見てもお母さんじゃ判らないよと言われました。くすん。本に載ったら旦那が三冊は間違いなく買うでしょう。(爆)
2014-01-04 土 13:25:25 | URL | あお [編集]
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