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錆びた逃避思考  9
学校が始まりました! 朝が忙しくなります。何しろ身嗜みに時間を掛ける娘が時々叫ぶので、忙しい上に甚だ迷惑です。 尻を叩くのも面倒なので放置してますが、娘大好きな旦那が必死に世話を焼きます。 娘を持つ父親ってそんなものなのかしら。 上手く使う娘も怖いわ~(笑)


では、どうぞ











桐が屋根上から山を下る騎馬隊の土煙を確認した後、邸裏手に回ると黒衣の者たちが三人音もなく現れる。 やはり居たかと腰から镖を取り出し、間髪入れずに一人へ向けて投げ付けた。 
吸い込まれるように首へ沈んだ镖に男が倒れると、残り二人が柳葉刀を抜き構えを取る。 
重量のある刃を軽々と持ち上げる二人に、桐は目を細めて口角を上げた。 距離がある分、さっきのように镖を投げ付けようかと思ったが、相手もそれは察しているだろう。 投げ付けたとしても上手く躱されそうな予感に、笑みを浮かべながら頭の中で次の暗器を選び始めた。

「狼陛下の妃はこの邸にいるか?」

桐の問いに、じりっと近付く男から返答はない。 
敵は減らした方がいいに限るし、情報を寄越さないなら遠慮はいらないだろうと、桐は腰袋から流星錘を取り出した。 これならば多少の距離があろうと問題はない。 
ゆっくりと錘を回しながら近付くと、刀を盾にして相手が僅かに退く。 耳元で風を切る錘の重みと動きに笑みを浮かべる様子に違和感を感じたのか、一人が大きく足を後退させた瞬間、錘をその男目掛けて解き放った。 柳葉刀を顔前に掲げ盾にしたようだが、桐が軽く縄を引くと錘は円を描くように男の首に巻き付き、勢いをつけたまま側頭部に叩き付けられる。 
詰まった声を漏らして男が倒れると、弧を描きながら桐が自身を回転させて縄を引き寄せ、その反動を利用して隣の男へと錘を放り投げた。 同時に、錘を叩き落とそうと柳葉刀を振り下ろす男へ一気に駆け寄り、匕首でその首を掻き切る。 一言も発せずに地面に男が倒れると、桐は流星錘を手繰り寄せて舌打ちを零した。

「・・・ちっ、錘が少し歪んだな。 重さのある柳葉刀を用意して俺の武器に傷を付けたのは褒めてやるが、残念ながら使い方がなってない。 せめて大事に鞘に入れておけ」

地面に伏す男の身体にそれぞれの柳葉刀を突き刺し、桐は邸内へと足を向ける。





甘い香りが漂う大広間に違和感を感じながら方淵は先を進む。 眉間の皺を緩めることなく物音がしない邸内を見回していると、何処からともなく笙の音が耳に届けられる。

「陛下・・・・人がいることは間違いないようですね。 この香りも甘いだけで害はないように思えますが、異様なほど焚かれているのが不思議です」
「そうだな。 纏わり付くような香が気に障るな・・・・」

清廉な佇まいに似つかわしくない甘すぎる香と、ひと気のない邸。 
そして途切れてしまった笙の音。
聞こえて来た方向に足を進める方淵がふと振り返った。

「陛下、こちらの邸は姜の邸と伺いましたが」
「姜瑛玖だ。 参内することもあるから顔だけは知っているだろ? 工望を管轄する一貴族なのだが、穏やかな人物としか記憶がない。 奴の意図がはっきりしていない内は気を付けて進めよ、柳方淵」
「御意。 先の部屋を見て参りますので、陛下もお気を付け下さいませ」

周囲を気にしながら、それでも大胆に次の間へと姿を消す方淵を眺めながら、姜の姿を思い起こす。
常に穏やかな表情を浮かべているが氾とも違う雰囲気があり、良く言えば寡黙な男であり、悪く言えば何を考えているか裏が見えない男だ。 王宮に顔を出しても己を出すことなく、控えめに他の貴族や大臣の話に頷き、印象に残らないのが印象的な男。
妻と娘を亡くし、今は後妻を娶らずに一人静かに暮らしているはずだ。
やるべきことはやっているようだが、例えどんな理由があろうと、夕鈴にかすり傷ひとつでもあれば話は変わる。 奴から妃誘拐の意図を聞き出す前に、ただの肉塊にしてしまうだろう。 

場を離れた方淵と交代するように桐が現れた。 足元に跪いた桐が 「三人始末しました」 と告げた後、急に顔を顰める。 どうやら周囲に漂う香りが気に喰わないようだ。 苦笑しながら、気に入らないなら出所を探ったらどうだと桐に伝えると、肩を竦められる。

「いえ、構いません。 私は引き続き残りの輩を見つけ次第、片付けて参りますが、柳方淵は好きに動いていて宜しいのですか? いろいろと・・・・特に、お妃の立場も御座いましょう」
「問題ない。 それよりも騎馬隊が近付いているようだな」
「はい、間もなく到着となるでしょう」

僅かに後方に視線を向けた桐が静かに場を離れると同時に、方淵が姿を見せる。 奴も忙しいことだと笑みを浮かべると、眉間に深く皺を刻んだままの方淵が訝し気な顔を向けて来た。 

「どうだ、先には何かあったか?」
「この南側邸には人の気配はないように思われます。 東側へ足を進めましょう」

桐からの報告では邸東側のどこかに姜がいるはずだ。 方淵に刀を持っているか問うと、騎馬隊から拝借していると腰に手を宛がった。 この先に邸の主である姜がいるなら、侵入者を阻む輩が出てくる可能性もある。 抜刀したまま進むよう伝えると、方淵は指示に従い刀に手を掛け、扉を開けた。
南に広がる庭園の大きな池で魚が跳ねる音が聞こえたが、他に物音は聞こえない。 しばらくすると、外回廊を慎重に歩いていた方淵が大きく息を吐いた。

「過ぎる緊張は動きを鈍くするぞ」
「あ、いえ。 あの匂いが消えて息が楽になっただけです」
「確かにあの香は強過ぎるな。 この先の部屋も同じなら窓を開けるか」
「そのように致します。 冬の冷気の方がずっとマシですからね」

日が差してきたとはいえ、冬季の空気は冷たい。 息が仄かに白く吐き出される中、方淵が東側邸へ通じる扉を開く。 軋む音を立てて開く扉に反応するものはないが、邸の外から物音が聞こえてきた。 方淵が物音がする方向へ急ぎ向かおうとすると、それを陛下が制して先を促す。

「あれは邪魔な輩を片付けている音だ。 このまま奥へ向かうぞ」
「・・・・御意」

邸内ではなく外に不審な輩がいること、それを片付けている者がいることに眉が寄るが、方淵は言われた通りに奥へと足を運ぶ。 甘い香りが漂い始め、歩きながら窓や扉を開けていくが進むほどに香りはきつくなっていく。 袖で鼻と口を覆いながら進むが、纏わり付くような香に頭が重く感じるほどだ。

「方淵、一度外に出て深呼吸をしろ。 そのまま正門にて騎馬兵を待ち、周囲を囲むよう伝えろ」
「し、しかし先の様子が不明の場所に御一人では、どんな危険があるか判りません」
「柳方淵、たまには私にも運動をさせろ。 それとも己が認める王が信じられぬと申すか?」

ぐっと答えを詰まらせた方淵は陛下の顔を見上げ、深く項垂れ踵を返した。

「直ぐに戻りますので、首謀者を物言わぬ塊などになさいませんように」
「ああ、そうだな。 連れて戻らねば李順に何を言われるか判らぬからな。 しかし、それも相手次第だろう。 我が妃が無事なら多少考えを変えてやってもいいのだが」

楽しそうに笑う陛下に一礼し、方淵は回廊を走り出す。 方淵が角を曲がり、その姿が見えなくなると陛下の表情から笑いは消えた。 扉を開け奥へと進みながら、その瞳に心情を映し出すように紅が浮かび上がる。
一段と香がきつく感じる場所で足を止めると桐が姿を見せ、激しく嫌悪を示しながら周囲の窓を開放した。 眉間に皺を寄せる顔を見て 「解かるか」 と問うと、桐は嘆息と共に頷きを返す。

「久し振りに何の匂いか思い出しましたよ。 直ぐに判らなかったのが不思議なくらいですね。 あと、邸裏手で待機していた輩の始末は終えました。 陛下は正門から堂々と入られると考えてのことでしょう。 邪魔な者だけを排除しようと裏手に集中していたと思われます。 ・・・・どうされますか?」
「まずは挨拶を済ませよう。 この匂いの中では夕鈴も可哀想だ」
「香だけではないですね、冷気がすごいです」

桐が扉を開くと、一気に増す甘い香りと足元から這い上がる冷気に陛下は眉を顰めた。
部屋の壁一面に白い布地が貼られ、窓には板が打ち付けられているのか薄暗い。 色硝子で鳳凰を模した衝立の向こうに僅かに明りが見え、足を進めると全ての調度品に白い布地が掛けられているのが見える。 床にも同じように布が敷き詰められ、その上にたくさんの氷柱が置かれており、冷気の正体が判る。 
背凭れのある椅子に腰掛けていた男が鷹揚に立ち上がり、手にしていた笙を近くの卓に置くと柔和な笑みを浮かべて恭しく拱手一礼してきた。

「我らが白陽国国王陛下様。 お待ち申し上げておりました」
「姜瑛玖。 我が妃は何処だ?」

笑みを浮かべたままの姜が近くの椅子から白布を取り払う。 
「どうぞ」 と勧められた椅子へ座ると、姜は嬉しそうに話を始めた。

「此度の件に関しまして、まずはお詫び申し上げます。 本来でしたら私から足を運ぶべきところ、わざわざ御越し頂き、感謝申し上げます。 崇敬すべき我らが王へお願いの儀が御座います」
「私は我が妃の行方を問うたのだが?」

柔和な笑みを浮かべた姜は人の話を聞く気が無いらしい。 恭しい態度はそのままに、しかし視線を卓に乗せた笙へと向けると暫し愛おしげに眺めた。 そして顔を向けた彼は目を細めて口を開く。

「以前より陛下のお妃様へ向けられる御寵愛を拝見しておりましたが、その寵愛を是非、他へも御向け下さいますよう心より御願い致したく思います」
「我が妃は一人でよいと、そう伝えているはずだが?」
「ですが会うこともせずに御決めになるのは、聊かなりとも陛下へと献身を尽くす臣下に対し澆薄ではないでしょうか。 一度で宜しいのです。 他の華に目を向ける御時間を設けて戴きたいと存じ上げます」
「・・・・お前が推挙する者と会おうとしなければ、我が妃を弑ると申すか?」

柔らかな笑みを浮かべた姜は、陛下の問いに口を閉ざした。 悲しげにも見える表情からは意図が読めず、白い息を吐くしかない。 目の前の姜は狼陛下の怒気にも何ら動ずることなく、自分の要求が通るかどうかを待っているだけだ。 

「まずは我が妃会わせて欲しいのだが」
「陛下が私の意を酌み取って戴けるのでしたら、すぐにでも」
「脅しとも取れるが、それはお前の意志か? 真意は何処にある」

再び口を閉ざした姜は困ったように首を傾げる。 
今頃桐が東側邸内を捜索しているだろうが、未だ戻らないのは見つからないのだろうか。 頑なに自分の意志を通そうとする姜の意図も見えないまま、沈黙が落ちる。 






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 10:20:09 | トラックバック(0) | コメント(8)
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2014-01-08 水 11:56:58 | | [編集]
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2014-01-08 水 14:22:06 | | [編集]
Re: ベルサイユのばら
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。ベルバラ好きです!アランが出て来て、ああっと思い出し、急ぎ本を取り出して読み耽ってしまいました。あの作品は秀逸ですよね。最高です。壊れっぷりが上手く書けるか判りませんがお付き合い頂けたら嬉しいです。 あ、娘は夏コミの前に別のコスプレをするかどうかで迷っております。成績が下がらないことだけを願います。(難しいか)
2014-01-08 水 23:17:44 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、あっちもこっちもコメントをありがとう御座います! ちらリズムの桐も引き続き登場予定。隠密として方淵に姿を見せないように頑張っております。いい迷惑?(笑) 迷惑掛けられている陛下もそろそろキレそうです。まあ、どうしましょうか。今後夕鈴がどう動くかのいろいろなコメントも来てまして、ひとりニヨニヨしております。引き続きお付き合いをお願い致します。
2014-01-08 水 23:24:00 | URL | あお [編集]
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2014-01-09 木 03:24:41 | | [編集]
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2014-01-09 木 08:54:29 | | [編集]
Re: タイトルなし
rita様、明けましてオメデトウ御座います。コメントをありがとう御座います。今年も宜しくお願い致します。コメント内容、ビンゴです。ばれてしまいましたが、そのままで突き進んで参ります。(笑) 夕鈴はもう少ししたら出て来ますので、引き続き宜しくお願い致します。
2014-01-09 木 20:49:23 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。桐の活躍(主に殺し)に胸躍りましたか。いや~、そう言って貰えて本当に本当に本当にうれしいです! そして方淵邪魔扱いに咽喉が痛いほど笑いました。娘に怒られたけど。まあ、そう言わずに方淵も応援して下さいませ。
2014-01-09 木 20:53:18 | URL | あお [編集]
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