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錆びた逃避思考  10
旦那が出張なので、久し振りに昨日はピザの出前!冬場限定の味に大満足してデザートを堪能し、その後体重計に乗り、がっくりと肩を落とす。今日は娘が変わり種焼売を作ってくれた。・・・・明日は職場まで自転車を押して歩こうかな。
今回は流れ的に御気分が悪くなる可能性のある場面がありますことを御了承下さい。 

では、どうぞ












このままでは埒が明かないと立ち上がる陛下に、姜が慌てて口を開いた。

「陛下の『道具』が邸内でお妃様をお探しになられておりますが、無理をなさいますと怪我をされてしまいます。 出来ましたら御止め戴けないでしょうか」
「・・・・その怪我とは、私の道具がか? それとも・・・・」
「双方で御座います。 お妃様に傷が付きますのは望んでおりません。 御願い致します」

椅子に腰掛けたまま拱手低頭する姜を見つめ、陛下は立ち上がり扉を開けると指笛を響かせる。 程無くして姿を見せた桐が険しい表情で 「まだ見つかりません」 と口を引き締めるのを見て、姜から言われた言葉を伝えた。 一度床に視線を落とした桐が無言のまま場を立ち去る姿に湧き上がる不安を振り払おうとするが、不安と共に持って行きようのない苛立ちは増すばかりだ。 
姜の言葉からすると、何か仕掛けがあるのか。 無理に探すと夕鈴が傷付く可能性があると。
居場所を教えろと大刀を向けても、奴は動じることがないだろう。 
自分の考えを通すことのみを考えており、妃はそのための餌だ。 
唯一の妃を餌に狼を飼い慣らそうとしている。 従順な態度を見せなければ、餌は腐るだけだと暗に伝えて来る奴の目は深淵に堕ちた者のようだ。 奴は以前からそのような性格だったのだろうか。 
あれは他者に脅されている人間の態度ではない。 己の欲を貫こうとする覚悟も見える。

室内に戻り椅子に腰掛けると姜が口角を持ち上げ、目を細めた。

「残念ながら、まだお探しになるようで御座いますね」
「私がお前の推挙する者と会うだけで、我が妃が無事助け出される確証がないからな」
「陛下の御心が新たな華に向けられるのであれば、お妃様はお返し致します。 新たな華を陛下はきっと御気に召しましょう。 あの娘もそれを長く望んでおりましたので、喜びに満ち溢れた笑みを零すはずです」

深く安堵の表情を浮かべる姜が椅子の背に身体を預けて、息を吐いた。 白い息が香を纏わせ部屋に霧散する様に陛下が眉を顰めると、姜は確認するように顔を突き出す。

「陛下の御心を今の妃から次の華へと御向け下さいますね?」
「・・・・邸周囲は王宮禁軍が取り囲み、どのような画策をしようとも逃げ場はない」
「逃げ場など必要御座いません。 陛下が私の意を御理解下さるなら逃げる必要もないことです。 早速お会いになって戴けますか? それとも酒宴の席でも御用意致しましょうか」
「その前に問いたいことがある。 何故王宮に忍び込んだ時点で妃の命を狙わなかったのだ。 柳方淵を共に連れ出したのは意味があるのか。 妃推挙だけが目的なのか」

僅かに浮かんでいた笑みが薄れ、姜はそのまま遠くを見るような視線で陛下を見つめた。 

「妃推挙を申し出る者は私だけでは御座いません。 どのような思惑を持つ者が多いか、それは私も存じ上げております。 家名や富や欲を満たそうと後宮を利用する者が多いことも、先代の王が妃に溺れ国を傾けたことも重々承知で御座います。 しかし我が王のお考えは如何様にあっても、出自不詳の妃が独りだけの後宮も、その一人だけに寵愛が注がれるのも賛成しかねます。 その寵愛が深ければ深いほど、陛下はお妃様だけで良いと、他を見ることすらなさらないでしょう」

卓上の笙を握り締め、穏やかな表情から一転して悲痛な面持ちで姜は語り始めた。

「もし妃を弑いたなら、私を斬り刻みながら陛下はその御心に妃を深く刻まれることになります。 それでは次の妃が嘆かれましょう。 ですが王宮に従事する者と妃が駆け落ちしたとなれば、寵愛されていた分だけ憎しみや怒りに囚われ、御心を変えることも容易いと策を講じたのですが・・・・、上手くは行きませんでした」
「では柳大臣子息、柳方淵を選んだ訳ではないと?」
「・・・・ええ、どなた様でも構いませんでした。 陛下の『道具』でも良いと思ったのですが、どちらにも逃げられ、結果は御覧の通りです。 しかし、お妃様が質となり陛下がこうして私の話に耳を傾けて下さっているという僥倖を授けて下さいました」

臆することなく語り続けた姜は微笑みを浮かべて陛下を眩しそうに見上げた。 
大きな嘆息を吐いた陛下が髪を掻き上げると、どうされますかと目で訴えて来る。 呆れた話の羅列に眉が寄るが、彼の意図は掴めた。 しかし身の破滅と引き換えにするほどのことだろうか。 妻と娘が亡くなったことで精神に歪みでも生じたとしか思えない。 
夕鈴を質に、他の女を宛がおうとするなど、私がそれを承服すると思っているのだろうか。
しかし桐からの報告はなく、方淵が戻る気配もない。 
目の前の姜は笑みを浮かべながら笙を撫でているだけで、全くというほど話が通じない。 
その話が通じない相手に、夕鈴を質にしていると笑顔で告げられる状態だ。 一気に斬り刻みたいところだが、夕鈴の行方が判らないのが気に掛かる。 余裕なのか終始笑みを浮かべている姜の精神状態も不安要因だ。 下手なことを口にして、夕鈴に危険が迫る可能性は避けたい。

「・・・・お前が勧める華は何処にいる?」
「おお、我が王! お会いになり、お気に召しましたら後宮への入内を御約束下さいますか? ああ、お気に召しますことは決まっております。 永くお傍で慈しみ下さいませ!」
「その前に妃の行方を、教える気にはならないか」

その問いに大きく目を見開いた姜が、優雅に笑い声を上げた。 白い部屋に響き渡る笑い声を陛下が制すると、姜は笑みを浮かべたまま椅子に凭れ掛かり、首を横に振る。

「お教えになりましたら陛下はお妃様を御連れになり王宮へ戻られるでしょう。 私がお勧めする華を見ることもなく。 それでは困ります。 まずは貴方様だけの華の許へと足を御運び下さいませ」

穏やかな所作で立ち上がる姜に促され、苛立ちも露わに続き部屋へと足を向けることになった。 
帳を手で払い、瑠璃で花を模した衝立を回ると更に冷気は増す。 
氷柱は床一面に敷き詰められ、部屋全体が暗い。 
姜が手に持つ蝋燭がジジッと微かな音を立てる中、流石に甘い香でも隠しきれない臭気が鼻を付く。

「お前が勧める華は、この冷気から外に出る気があるのだろうか」
「ええ、陛下にお仕えするのが娘の夢でしたので。 自国で最も高貴な方の住まう後宮で寵愛を賜ることこそ、貴族息女の最高の夢で御座いましょう。 我が娘、湊麗もその一人です。 その夢を叶えるために日々努めておりましたので、陛下にお会い出来て、娘もこのように大変喜んでおります」

姜は背凭れの長い椅子を愛おしそうに撫でながら、陛下に振り向いた。 娘の夢だという後宮入りを願う親は多い。 また親の願いを叶えたいと自らを磨き上げる娘も然りだ。 そこを統べる主が望んでいないとしても、蜜に集る蟻の如く己の欲と望みを叶える場所だと信じ込み、愚かな画策を続ける。 過去を鑑みれば致し方ないと理解出来るが、奴は別だ。 彼がどれほど壊れているのか理解出来ても、賛同は出来ない。

「一年以上も前に流行病で妻と共に亡くなった娘を、どうやって後宮に入内させる気だ」
「陛下、何を仰るのですか? 湊麗はここにこうして・・・・ああ、今日も可愛いよ。 陛下はきっとお前をお気に召して下さるだろう。 これからは心から陛下にお仕えし、出来れば国母として永に幸せを」
「・・・姜。 お前の願いが叶うことはないと先に伝えよう」

思ってもいない言葉だったのか、きょとんとした顔で姜が振り返る。 
完璧に壊れた笑顔が冷気漂う部屋に白い息を零しながら広がり、静かに霧散していく。 僅かに開いた唇で何かを紡ぎ始めたが、その時遠くから砂利を踏む足音と共に方淵の声が聞こえて来た。 騎馬隊が到着して邸内に戻って来たのだろう。 
同時に背後の衝立より桐からの報告が上がる。

「お妃がいる部屋を特定しました。 異臭があり扉の内側に油樽が置かれている可能性があります。 お妃からの返答がないため中の様子が判らず、万が一を考えると無理に開けることが出来ない状態。 窓はなく扉はそこだけですが、隠し扉でもなければ仕掛けた後に部屋から出ることは出来ないはず」
「どうやってもいい、一刻も早く救助しろ。 ・・・・妃に怪我など負わすなよ」
「御意」

椅子に座るモノへ向け柔らかな笑みを向ける姜は聞こえていただろう声を無視して、陛下へ懇願を繰り返す。 変わらない柔和な態度で、説くように柔らかな声で。  

「陛下・・・娘を、どうぞ湊麗を妃にすると御約束下さいませ。 陛下が湊麗へと御心を移され、妃として後宮に入内させる御約束を下さいましたなら、その時にはお妃様を解放致しましょう」
「娘の幸せを願うなら早急に埋葬すべきだな。 匂い消しの香さえも腐臭を消すことが出来ぬ骸となり、いつまでもお前の妄執に捕らわれていては哀れであろう。 現状を把握し、納得すべきだ」
「・・・・妄執・・・・」

言っている意味が理解出来ないような表情を浮かべた姜が、白い息を吐きながら椅子に座るモノの髪を何度も忙しなく撫で始めた。 その手の平に絡みつくのは抜け落ちた髪の毛だろう。 根元から束になり抜け落ちる髪の毛を、目を瞬かせて丁寧に手から剥がすと元の位置へ戻そうとする。 
その椅子の脚を刀の鞘で強く払うと、姜が短い悲鳴を上げて椅子上のモノを押さえ込んだ。

「陛下っ! 何故にそのような無体な真似を!?」
「多少揺れたくらいで無体とは笑止。 これから王宮までは山道を馬車での移動となる。 多少の揺れにも耐えられるか試したまでだ。 ああ、我が妃を政務室で見たことがあるなら知っていようが、私はあれを幾度も抱き上げ揺らすぞ? これくらいで文句はあるまい」
「し、しかし・・・・優しく慈しんで頂きたいと願う親心を無碍になさらないで戴きとう願います」

そっと手を離し、襟元を直しながら困惑の表情を浮かべる姜は明らかに動揺を呈していた。

「馬車までは私が引き摺って行こうか?」
「いえっ! わ、私が用意する馬車にて後程・・・・。 嫁ぐに当たり、娘もいろいろと用意がありますでしょうから日を改めて入内させて頂きとう御座います。 本日はお目通りとお約束だけで」
「後宮に妃がいないまま戻ることなぞ出来ぬな。 新たな妃は本日王宮に御連れしよう。 直ぐに後宮に入り、その身を清める必要がある。 後宮に一度入ると親といえど容易に会えぬことは、お前も知っておろう」
「・・・・そ、それでは娘のための馬車の用意だけでも」
「時間が惜しい。 共に騎乗して町へ向かい、そこで馬車を用意させる」

虚ろな表情に変わりゆく姜が唇を戦慄かせる。 椅子に座るモノの頭を撫でるたびに抜け落ちる髪へ視線を落とし、何かを呟きながら小さく首を横に振った。 刀の鞘を椅子の背に叩き付けると、目を見開き憤りを露わにした表情を向ける姜へ、陛下が顎を持ち上げ問い掛ける。

「一度後宮入りした妃を、王である私がどのように扱おうとも何も口出しは出来ぬぞ」
「わ・・・・わたし、は湊麗の幸せを・・・・」
「先ほども告げたが、その娘の幸せは埋葬されることであり、お前はそれを納得すべきだ」
「埋葬など! 何故に私の娘が埋葬されねばなりません! まだ年若い、これから後宮で陛下からの寵愛を受けて大輪の花を咲かすべき娘が・・・・何故にそのような謗りを受けねばなりませぬ!」

跪き、叫びながら両手を伸ばして椅子のモノを抱き締めた姜の背に、振動でグラリと揺れたモノの一部が転がり落ちた。 大きく目を見開いた姜が自分の背後で哀しい音を立てながら転がりゆくモノへと視線を向ける。 
それは骸と化した娘の頭だ。 
窪んだ眼窩が空虚を映し、下顎が外れたのか干からびた舌が覗いていた。
姜は椅子ごとソレを抱え込んだまま微笑みを浮かべる。 長く冷保存していたにも関わらず枯骸化して床へ転がったモノへ向ける姜の視線は、懐古を愛でる狂人そのものだった。

「ああ、湊麗・・・・。 お前も嬉しいのか、そのように笑みを浮かべて」
「私には怨嗟を吐いているようにしか見えぬがな。 お前が抱き締めているモノも緩やかに腐敗を続け、やがて腕も足も抜け落ちるだろう。 その骸を後宮に召し上げ、お前は娘の願いを叶えたと満足するのか?」
「骸など・・・・湊麗は・・・・」

ゆっくり、ゆっくりと椅子から手を離した姜が床に転がる頭に手を伸ばし、落ちた衝撃で剥がれた皮を元の位置へと戻そうとする。 額を撫でると髪が抜け落ち、口を閉ざそうとして唇の皮がずるりと捲れた。 
陛下は窓のある部分に近付き、天井から垂れ下がる白い布を引き摺り落とし、そして外から頑丈に戸板を填め込まれた部分を勢いよく蹴り出した。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:40:10 | トラックバック(0) | コメント(9)
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2014-01-10 金 09:19:33 | | [編集]
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2014-01-10 金 09:30:40 | | [編集]
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2014-01-10 金 10:43:38 | | [編集]
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2014-01-10 金 20:57:12 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。自分で書いていても、重なり過ぎかと心配していたので、ちょっと修正を入れたいと思います。桐にはもう少し活躍して貰う予定です。浩大も出したいし、手の内を全部晒したので、あとはまとめ作業となります。さて、鼻水夕鈴救出に向かいましょうか。
2014-01-10 金 21:22:50 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。うちの娘も腹黒いので、旦那は上手く転がされるでしょう。そして方淵ですが、少しは活躍の場を設けようかと考えてます。その前に桐と陛下が動きそうですが。陛下のイライラも最高潮。この八つ当たりが夕鈴に向けられないよう、願いましょう。ほほほほほ。明日は新年会で旦那がいないので、夕飯はまた楽が出来ます!ぬほほほ。
2014-01-10 金 21:41:25 | URL | あお [編集]
Re: 壊れました
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。ノートパソコン、壊れましたか・・・・。私も昨年12月に新しいノートパソコンに変えたばかりです。新しいのはやっぱりいいです。調子が悪くて娘のパソコンを使っていたこともありましたが、やっぱり自分のが一番。息子のパソコンと同機種なのが難点ですが(爆) 静かに壊れた姜さんに静かに怒っている陛下の絡みももう少し続きます。「向ヒ兎堂日記」今度読んでみます。
2014-01-10 金 22:02:59 | URL | あお [編集]
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2014-01-12 日 01:36:24 | | [編集]
Re: タイトルなし
らぁ様、コメントをありがとう御座います。そして今年も宜しくお願い致します。連休で遊んでいたので、お返事遅くなりすいません! 久し振りに痛い夕鈴が書けて私も楽しんでいます。そして、長期出張中とは、辛いですね。やっぱり『おうちが一番』ですから。でも、やっぱり社員食堂は羨ましいです。(笑)
2014-01-12 日 23:25:01 | URL | あお [編集]
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