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錆びた逃避思考  11
寒いですねー。灯油の値上がりも家計に響きますし、でも寒いのは厭だし。布団から出るのが辛いですよね。でも温かくなると今度は花粉が飛ぶのよね。くすん。今年は飛散量が出来るだけ少ないように祈ってます。

では、どうぞ











陛下の蹴りで戸板が軋み外側へと倒れ行くと、部屋へと光が差し込み、床一面の氷を輝かせた。
差し込んだ光と突然の陛下の行動に動揺した姜が手を戦慄かせると、膝上に置いた頭が転げ落ち床で艶のない髪を広げる。 昼の日差しが床に転がるモノへ注がれ、靄のような蒸気を揺らめかせる様に、姜が慌てて手を伸ばそうとすると背後で、再び次の窓が蹴り壊される音がした。 
陛下が次々に蹴りを入れ戸板が外されていく光景に、姜は悲鳴にも似た叫び声を上げる。

「何をなさいますか! お止め・・・、お止め下さいませ、陛下!」
「我が王宮に連れて行くための用意だ。 お前が勧める妃を邸から連れ出すための出口を作っているだけのこと。 さて、新たな我が妃にはまず立って貰おうか。 我が御世を共に歩くためにな」
「あ、あ・・・・あ、湊麗! あー・・・・っ!」

冬季とはいえ、降り注ぐ日差しが床の氷を舐め始めると僅かに靄が立ち上がり、椅子に腰掛けた首なしの身体からも静かに上気が昇り始めた。 髪を掴み叫び声を上げる姜は目を見開き、半狂乱の態で天井から下がる布を引き日の光を遮ろうとして足を滑らせる。 床上で敷き詰められた氷に映る歪んだ自分の顔を見て、背を震わせる姜は意味のない呟きを落としながら手にした布を握り締めた。
その時、吐気がするほど甘い匂いに悩む邸内を進むより庭を横切った方が早いと考えたのだろう、方淵が禁軍騎馬隊数名を引き連れ、陛下が蹴り壊した窓の向こうに姿を見せると勢いよく跪く。

「陛下! 遅くなりました」
「方淵は姜を捕らえ、王宮に引き立てろ。 騎馬兵数名は邸裏手の死体をまとめて置くように」
「御意。 陛下、お妃様はっ!」
「直ぐに向かう。 ・・・・ああ、椅子の彼女は丁重に布に包み寝台に寝かせて差し上げろ。 親である姜の身勝手な思惑に死しても踊らされ、安らかな眠りにも就けずにいる・・・・哀れな娘だ」
「・・・・御意。 そのように」

そのまま陛下が部屋を出て行くと、幾人かを残して騎馬隊が邸の裏手へと向かう。
深く眉間に皺を寄せていた陛下の表情を見送った方淵は、床に腰を落とした姜と腐敗した首無しの遺体を見て、無人の邸と妃が連れ去られた意図をおおよそ理解した。 そこに自分が巻き込まれた意図は未だ判らないままだが、それは追々明らかになるだろう。 
それより親の思惑通りにはいかない子の成長と、崩壊した現実を前に彼は今何を考えているのか。 
ただ遺体に着せられた雅やかな衣装や宝飾、床から見上げている姜の視線から、ただの妃推挙だけではない何かも伝わって来る。 それは果てしなく間違っていると思うが、彼自身は理解しているのだろうか。

方淵が床に転がる頭へと視線を落とし、跪くと白い布を覆い被せて静かに手を合わせる。 丁寧に布で頭を包み、椅子に腰掛ける本体の膝上に置き、背後に立つ騎馬兵と共に卓に掛けられていた布を床に広げて彼女を寝かせて包み込み、寝台へと移動した。 
それを滂沱の如く涙を流しながら、姜が見つめている。 彼の手は床に敷かれた氷柱を掻くように戦慄き続け、まだ何かを呟いている。 振り返った方淵はしばらく見下ろした後、彼に縄を打つよう指示した。

「姜瑛玖。 大量に焚かれた香は匂い消しのためか。 腐敗臭を誤魔化すために使用していたとすると、お前は娘の死が解かっていたということだろう。 理解して尚、娘の死を晒し者にするつもりだったのか?」
「違・・・っ! 私は娘を後宮に・・・・陛下の妃として」
「それは本当にこの娘の願いだったのか。 安らかな眠りにも就けず、腐りゆく躯を後宮に連れて行けと、娘が願っていたと言うのか? それを親として叶えようとしたというのか?」
「湊麗は・・・・骸じゃ・・・・」
「どう見ても骸だろう。 幾ら氷を用意しても腐り果て、既に胴から頭も離れた。 あとはお前の手から娘を離すべきだろう。 ・・・・猿轡をして自害を防ぐようにしろ。 そのまま連れて行け」

放心状態となった姜が部屋から連れ出されて行く。 騎馬兵が蹴り壊された窓の戸板の上を歩くと乾いた音を立てて割れ、舞い込む風に白い布地が何か言いたげに舞う。 
部屋に残る甘い香が方淵の肌を粟立たせ、思わず断ち切るように大きく首を振った。 舞い込んだ風で幾分薄まった甘い香が袖を引くような、そんな感覚に捉われそうだと壊れた窓へと足を掛け、そして寝台に視線が向かないよう硬く口を結び、方淵は騎馬兵の後を追い駆ける。





***





「夕鈴っ!」

西側邸の最奥の部屋前で転がるように横たわる夕鈴に駆け寄り、陛下は眉を顰めた。
部屋というより小さな倉庫のようで、最奥のため日も差さず冷気漂う場所だ。 薄い肌着のような衣装はひどく汚れ、腕を怪我したのか袖には血が着いている。 薄目を開けた夕鈴が笑みを浮かべながら、「へいか」と唇を動かした。 抱き上げると驚くほど身体が冷えているのが判り、外套を羽織らせて巻き付けると夕鈴が息を吐きながら掠れた声を出す。

「・・・汚れちゃいます、から・・・・」
「夕鈴、ずい分と無茶をしたようだな。 諸々は後で聞くとして直ぐに治療しよう」
「へいか・・・、浩大は、ぶじ?」
「無事だ。 奴も君を心配していた。 後で会わせてやるから、今は自分の心配をしろ」

ガタガタと震え続ける夕鈴を擦っていると、桐が部屋から出て来た。 倉庫の中には油を詰めた樽が扉を閉ざすように置かれ、あると思われた隠し扉が見つからなかったため天井から無理やり侵入したと桐は肩に付いた埃を叩き落とす。 無理やり扉を押し開くと、近くに置かれた蝋燭に引火し炎上するよう仕掛けられており、姜に雇われた者が仕掛けた後に天井から抜け出たのではないかと考察を述べる。

「樽を退かしてから扉を開こうとして、今度は頑丈に打ち付けられているのが判り手間取りました。 怪我の手当てにまで手が回らず、そのままでしたので急ぎ酒でも探して来ます」
「清潔な布地と掛布も急ぎ探せ」

頷いた桐が姿を消すと、夕鈴が口を開いた。

「・・・・姜さんは・・・・娘を陛下の妃にしたかっただけ、なの。 だから」
「夕鈴の言いたいことは判る。 もう黙って眠っていろ」
「方淵、は? わたし、馬車から落とした・・・・・。 後ですごく怒られるね」
「方淵も無事だ。 君の衣装で怪我もないようだから安心しろ」
「桐さん・・・・天井から降りた時、床上に撒かれた油で何処かをぶつけていた・・・」
「夕鈴っ! もう喋るな!」

眠ってしまう前にどうしても気になることを話していると、頭上から鋭い声と共に強く抱き締められた。 腕に痛みが走り顔が歪むが、それでも声が出せない。 陛下の胸に押し付けられると外套から甘い匂いが香って来て、夕鈴は途端に苦しくなった。 衣装に移るほどの香に動悸が激しくなる。 
姜の勧める娘に会ったのだろうか。 バイト妃を質にされ、美しいと姜が褒め称える娘に会い、陛下はどう思ったのだろう。 今は助け出されたことに感謝すべきだが、一度跳ね上がった動悸は治まらない。 どうにか抑えようととするほどに身体が震えてしまい、夕鈴は必死に身体を押さえ込んだ。

「寒いのか? せめて日の当たる場所に移動しよう」

陛下が動くたびに甘い香りが纏わり付き、顔を背けたくなる。 抱き上げられたまま廊下をしばらく行くと、驚くほど甘い香りが漂って来て、思わず鼻を覆った。 外套から香る匂いと同じだと気付き、邸全体に焚かれているのかと眉を顰めると陛下が舌打ちを落とす。

「・・・ただの匂い消しだ。 匂いが辛いなら、少し寒いが外に面した場所へ行こう」
「? でも、これは頭が痛くなるくらいで・・・・」
「夕鈴、ゆっくり深呼吸して。 ・・・・首にも傷があるな。 手首も、足もか。 足は細かい切り傷が多いな。 他に痛む場所は何処だ。 袖を捲って傷を見せてみろ。 ・・・・これは誰に付けられた傷だ?」
「それは・・・その自傷というか、馬車から飛び降りた時に何かにぶつかって裂けたようで」

狼陛下の声に、跳ねていた動悸が一瞬で凍りつく。 陛下の膝上で外套を外されると手首や足首を確認され、縄で縛り上げられていた場所に鋭い視線が突き刺さるから、動くことも出来なくなる。 膝下の細かい切り傷は林の中を走っていた時に草や枝で切った傷だろう。 腕や肩の傷は馬車から落ちた時のもの。 
だけど手足の擦り傷は縄を解こうと暴れたからだ。 
浩大がひどい拷問を受けている様を見ているしか出来ず、私は泣き叫ぶだけだった。 バイトとして囮になることは怖いけど、陛下の敵を減らすために囮として役に立つなら私は厭うことなく身を捧げるだろう。 だけど囮の私を守るために浩大が傷付くのはいけないことだ。 浩大は陛下の隠密であって、陛下のために動くべき人だ。 あんなにひどく傷付けられ、それでも逃げ出したのは陛下のためだ。 陛下に事態を伝えるため、傷付いた身体を無理やり動かした。 それなのに私の心配までしてくれている。

「傷は・・・・痛いけど、痛くない。 それより浩大の方が心配・・・・」
「君の傷もひどい。 浩大は大丈夫だから、まずは自分の傷を治せ」
「ううん、浩大の方がもっと酷い・・・。 浩大はちゃんと治療した? 拷問みたいなの、されてた。 あの人たちの注意が自分に向くようにして、私・・・・見てるしか出来なかった。 血がいっぱい出ていたのに」
「大丈夫だ。 治療も済み、話も出来るくらいだから安心していい」
「方淵が怪我してないのは本当? 早く謝りたい・・・・」
「方淵も怪我はないと言っただろう。 ああ、桐が酒を持って来たから消毒するが、沁みるだろうから我慢しろよ。 後宮に戻ったら風呂に入って薬湯を飲んで、しっかりと治療しよう」

一度外套が全て取り払われると、日の当たる場所だと言うのにとても寒く感じた。 その上、手足の擦った場所に酒が掛けられ、酷く沁みて暴れたくなる。 肩と腕は衣装が切り裂かれて、直接酒を振り掛けるから我慢出来ずに身を捩ると、何故か陛下が抱き締めて来るから叫んでしまった。

「ぬぁああ!? 汚れ、汚れますって、陛下! 濡れちゃうし」
「夕鈴、動くな。 血は止まっているが、打撲が酷いな。 ・・・闇夜の中、馬車から飛び降りるなど、君は私の心臓を止める気か? 檻にでも入れておかねば危なくて仕方がないな」

きつく布が巻かれるが、痛みより陛下の言葉と寒さが辛いと桐が持って来た掛布に隠れるように包まった途端、また甘い香りがして気持ちが悪くなる。 匂い消しと言っていたが、いったい何の匂いを消すためにこんな大量に焚いたのだろう。 痛みも寒さも辛いが、この匂いはもっと辛い。 
甘すぎて頭が痛くなり、折角持って来てくれたが包まるのは無理だった。
桐に睨め付けられても無理なものは無理。 そっと遠ざけると大仰な嘆息が頭に突き刺さる。 

「陛下、急ぎ町でお妃の衣装を用意して来ますか」
「そうだな、では直ぐに用意しろ。 用意が出来次第、ここから出立する。 ・・・・夕鈴、騎馬兵に少し指示を出して来るから、ここで待っていてね。 あ、外套の中に着ていた服なら匂いが少ないかな?」

そう言いながら陛下が上着を脱ぎ、私に被せてくれる。 外套を羽織った陛下が私を見て困った顔をするから、「楽になりました」 と言うとやっと笑みを見せてくれた。 
桐と陛下が場を離れると、急に疲労と眠気に項垂れそうになる。 
建物の向こうから大勢の人の声が聞こえ、どれだけ沢山の人が夜通し馬を駆けて来たのだろうと眉が寄ってしまう。 姜だけではなく、娘を陛下の妃にしたいと望む貴族は多い。 いろいろな思惑を持ち推挙するが、しかし陛下がそれを受けることはないのだ。 
・・・・・・今は。 まだ 今は。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 19:55:11 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2014-01-13 月 20:39:31 | | [編集]
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2014-01-13 月 22:06:45 | | [編集]
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2014-01-13 月 23:59:21 | | [編集]
Re: 夕鈴お疲れさま!!
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。高校バレーは燃えました。ただ決勝までは夜中なんですよ、放送が。見ましたけど(笑) あ、夕鈴頑張りましたか。褒めて貰えて嬉しい。によによ。そしてゴメンなさい。まだ続きます。もう少しだけ、夕鈴頑張って貰います。そしてメガネ!私も眼鏡なので、曇ること多々っす。李順さんの眼鏡が時々白くなるのは・・・・・寒暖の差ではないですよね。怖っ!
2014-01-14 火 20:37:04 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。夕鈴救出成功。そしてまだ続かせます。ごめんなさい。もう少しだけ掻き回してみたいっす。モヤモヤ夕鈴をもう少し翻弄・・・・・鬼です(笑)それが楽しいと思う私はストレス溜まっているのかしら。ほほほ。 あ、私は犬と寝ていますが、この犬が夜中に旦那の部屋や娘の部屋に彷徨い、部屋の扉をカリカリと掻くそうです。基本8割は私ところで寝てますが、何を確認しに行くのか不明。夏場は旦那の部屋に早朝出向き、手足を舐めまくりです。汚いです(爆)
2014-01-14 火 20:51:14 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。桐への愛が感じられ、毎回のことながら頬が緩んでしまいます。桐には浩大の分も、もう少し頑張って貰いたいと思います。もう少し続きますので、お付き合いお願い致します。
2014-01-14 火 22:38:16 | URL | あお [編集]
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