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錆びた逃避思考  おまけ
「おまけ」大好き・・・・これはもう病気です。
皆様、節分はどのように過ごされましたか。「鬼は外、福は内。 鬼の金〇マ、ぶっつぶせー!」 
・・・・実家の父がよく言っていたので、中学一年生までそれが正式な文句なのだと信じていました。同じように、大人になってから 「え? これは世間の常識ではないのか!?」と驚くことって多々ありますよね。


では、どうぞ












浩大の傷が癒えて来た頃、夕鈴が御祝いだと後宮から菓子と高級茶葉を持ち、立ち入り禁止区域に顔を出した。 寒い時期でもあり、いっぱい食べて元気になって欲しいと甲斐甲斐しく動く夕鈴に浩大は乾いた笑いを返す。 その笑いに夕鈴が眉を寄せて見返すと肩を竦められ、何だと問うと浩大が困った顔で口を開いた。

「実は明日からオレ、ちょっと忙しくなるんだ。 毎日毎日見舞いと菓子の差し入れして貰って、お妃ちゃんには世話になったね。 もう大丈夫だから、ありがとうな」
「そんなっ! だって私が馬車から勝手に飛び降りなきゃ浩大は・・・・そんな怪我を」
「ああ、泣かなくていいよ。 あれも仕事だからさ、気にするな。 それよりもお妃ちゃん警護から外してまで地方の面倒な仕事を押し付けるって、手も出せない癖に妙な方向で妬くだけ妬いて・・・・。 ほんとーに全く面倒な御仁だよな。 こういう報復に出たかと笑っちゃうね」
「・・・・言っている意味が解らない」
「それはこっちの話だから、右から左へ流しておいてね~」

自分が勝手に馬車から降りて捕まり、そのために拷問を受けている場面を思い出して目を潤ませていた夕鈴が、浩大の呟き出した内容に首を傾げると、笑って誤魔化された。 なにやら報復と聞こえたが、隠密である浩大の新たな仕事の話だと言うなら、バイトが立ち入る訳にはいかない。 だが傷が癒えたばかりの浩大が危ない任務に就くと言うなら、心配はどうしてもしてしまう。

「しなきゃならない仕事なら仕方がないけど、傷が治ったばかりなんだから、痛みがある時は無理をせずに休んでね。 夜は寒いから暖かい格好で、食後には必ず痛み止めを飲んで、早めに寝て」
「お妃ちゃん、それじゃあ仕事にならないよん」
「・・・・そういえば、最近桐の姿が見えないね。 浩大が休んでいる分、忙しいのかな」

夕鈴がそう言いながら周囲を見回すと、老師が乾いた咳払いをした。 乾燥時期だし高齢だしなと、気遣いながら茶を淹れると老師はちろりと窺うような視線を投げ掛けて来る。

「小娘は陛下と変わりなく過ごしているのか?」
「・・・老師の望むようならぶらぶ~ではありませんが、ちゃんとプロ妃として過ごしていますよ」
「陛下は変わりないか? 機嫌が悪いとか、夜に翻弄するとか」
「・・・・? いつも通りですけど。 この間、厨房をお借りして夕飯を一緒に召し上がってからは忙しい日が続いているようで、夜に部屋に来ることもないですし、政務室でも余り見かけませんね」

もう六日ほど夜のお渡りはないが、中央殿で忙しくされているのは官吏たちの話から伝わって来ている。 政務が忙しい時はたまにあることので気にしていなかったが、含みのある言い方をされると気になってしまう。 老師をじっと見つめていると視線を逸らされ、問おうとした時に浩大が溜め息を吐いた。

「・・・・浩大?」
「やっぱさ、お妃ちゃんが可愛いんだろうねぇ、陛下は」

突然何を言い出すのだと、言われた内容に真っ赤になると、途端に楽しそうな表情を浮かべる。

「桐はね、東にある州でお仕事中。 面倒な裏調査をしててね、明日から交代でオレが向かうことになっているんだよ。 んで、交代で桐が夜には戻って来る予定。 引き継ぎもあるしね」
「東で何か・・・ううん、頑張ってね、浩大。 無理をしないで無茶はしないで暖かい格好で」
「だからそれじゃ仕事にならないって。 それよりもお妃ちゃんも頑張ってね」
「 ? うん、頑張るね」

ただの激励かと夕鈴は頷き、美味しそうに菓子を食べる浩大が無理をしないよう祈った。 
仕事で向かうならバイトである夕鈴にそれ以上の口出しは出来ない。 出来るのは心配だけだ。



翌日、政務室に向かい、いつもの椅子に座っていると水月さんが恭しく御辞儀をしてきた。 
手には書簡をたくさん持ち、少し疲れているようにも見える。 
先日、水月さんが言っていた通りに紅珠が遊びに来てくれたが、目を瞠るほどのたくさんの巻物を持参し、その書物を紐解き語り始めたから顔から火を噴きそうになった。 
紅珠は目を潤ませながら、『当時の詳細を伺っても宜しいでしょうか。 ああっ! お二人だけの内密で御座いますわね! いいのですわ、仰らなくても結構ですわ。 お二人だけの秘め事ですものね!』 と勢いよく喋り、一人納得し、目を通して頂けたら幸いですわと頬を染めて巻物を置き帰って行った。

「先日は紅珠が大変お世話になったようで、ありがとう御座います」
「いえ、御心配頂き嬉しく思っていますわ。 紅珠の気持ちは重々伝わって来ましたし」

巻物の内容を思い出し羞恥に俯くと、水月さんが頭上から虚ろな笑いを零し、「では、私はこれで」 と帰ろうとする。 慌てて引き留めると、水月が蒼褪めた顔で振り向いた。

「お妃様がお戻り後、暫くは穏やかだった陛下が、ここ最近は何かに苛立っておられる様子が見受けられます。 お妃様はその理由を、何か詳細を御存じでしょうか」
「・・・・いいえ。 お忙しいのは存じておりますが」
「柳方淵など、あのように・・・。 他の官吏も皆同じような表情で、麗しさの欠片も見られません」
「政務室で麗しさを求めるのはどうかと思いますが、確かにひどい・・・・ですね」

幽鬼の如く書簡を持ち移動中の柳方淵がちらりとこちらを見るが、険しい視線を投げ寄越すだけで無言で立ち去ってしまう。 珍しいことだと思ったが政務に関してバイト妃が口出すすべきではないし、何があったかなど知る由もない。

「でも、み、皆さまが忙しいのに水月さんが帰るのは駄目です! 頑張って下さい!」
「そのような励ましを陛下の前ではなさらないで下さいね・・・・・」

虚ろな笑みを浮かべたまま一礼して水月が仕事に戻ったのを見送り、夕鈴は方淵に振り返る。 
やつれた感が満載の姿を見て、そんなに忙しいのかと立ち上がり、自分もこうしてはいられないと掃除に向かうことにした。 陛下も官吏もみんな忙しいのに、のほほんとした妃が政務室にいるから方淵に睨まれるのだと思い、侍女に後宮へ戻るよう伝え、立ち入り禁止区域へ急ぐ。 
掃除婦衣装に着替え終えて水桶を持ち回廊を急いでいると、遠くに陛下の姿を発見し、久し振りだと驚きながら慌てて跪いた。 顔を伏せて拱手しながら、今日も妃の部屋には来れないんだろうなと秘かに息を吐いていると、目の前で立ち止まるから目を瞠ってしまう。

「政務室に居たはずじゃなかったのか?」
「・・・・み、皆さまが忙しくされているのに座って眺めているだけでは申し訳ないと、掃除をすることにしました。 お、お久し振りで御座います、陛下。 だけど今の私は掃除婦なので・・・・・」
「では、可愛らしい掃除婦を拉致するとしよう。 本当に久し振りだな、夕鈴」

少しだけ何時もの狼より怒気が強いような気がして夕鈴は戸惑った。 掃除婦を前に跪き、拱手した手を引こうとするから何をする気だと顔を上げると、口角を持ち上げた狼陛下がいて声が出なくなる。 何に怒っているのだろうと、私は何かしたのだろうかと困惑の眼差しを向けると、陛下は途端に困ったような小犬の顔になった。

「・・・・ここ最近、面倒な仕事が多くてね。 夕鈴に会う暇もない」
「お忙しいのは存じております。 しかし今は掃除婦の仕事中ですから・・・きゃ!」

何度言っても掃除婦を抱き上げる陛下に困ってしまう。 それでも久し振りの陛下に胸は大きく跳ね上がり、困りながらも嬉しくて首に腕を回して、真っ赤な顔を隠した。

「こ、浩大が明日から遠くに仕事に行くって、桐が代わりに警護に就くって聞きました。 陛下も大変な仕事が続いているようで、あの、お身体だけは気を付けてちゃんとご飯を食べて、ちゃんと休んで下さいね! 私も一生懸命仕事をしますから、だから・・・・降ろしてぇ!」
「夕鈴が心配してくれるから休憩にしよう。 寒いから掴まっていてね。 夕鈴に抱き着かれると温かくて嬉しくて、疲れも吹き飛んじゃうよ。 だから、ね?」

私が抱き着いているのではなく、陛下が抱き上げているから・・・・・・・ああ、もう、いいです。
掃除婦が陛下に抱き上げられているところが見つからないかしらと怖くて、だけど嬉しくて言われた通りに回した腕に力を入れる。 そのまま立ち入り禁止区域に戻ると、老師が嬉しそうな顔で出迎え、大きく何度も頷き顎を擦りながら退室して行った。 それが非常に恥ずかしいと夕鈴は真っ赤な顔で陛下に尋ねる。 

「あの、お茶でも淹れましょうか?」
「もう少し離れないでいて。 夕鈴のご飯を食べてから面倒な案件に追われ続けててね。 もう少しだけこうして癒して欲しいな。 ・・・・夕刻に桐が戻ったらまた面倒な報告が来るだろうし」

卓に腰掛けたまま包み込むように抱き締められ、夕鈴は首に回した手で陛下の背中を擦るしか出来ない。 政務に関しては何の手助けも出来ない自分だ。 線を引いた向こう側に踏み入ることも出来ず、ましてやそれを望まれていないことを承知している。
気落ちする立場でもないが、寂しいと思ってしまうのは否めない。 
それが出来るのは正式に娶られる妃、それも正妃だけだと解かっている。 今自分が出来るのは陛下の背を擦り、余計な妃推挙を退ける臨時花嫁としての仕事だけ。 それだって借金返済が終われば終了となる、限りのある仕事だ。

「早くお仕事が落ち着けばいいですね。 陛下が望むような安定した御世が来て、みんなが幸せになれたら陛下も幸せになれますよ。 その為に頑張りましょうね、陛下」

その時が来たら自分はここからお別れになる。 下町に戻り他の仕事を始め、もう二度と会うこともない陛下を時々思い出すだけとなる。 それでも今を一生懸命に過ごすしかない。 自分で決めた仕事だ。 狼陛下のふりをして頑張っている陛下を助けたいと、助けになれるならと選んだ仕事を、最後までしっかりと勤めたい。

背に回る大きな腕からじんわりと熱が伝わって来るようで、夕鈴は静かに目を閉じた。 
陛下がどんなに頑張っているかを自分は知っている。 時々逃げ出したり、下町にまで顔を出すけど、確実に安定した世の中になっていて、それは街の賑わいからも知れること。 狼陛下を惑わす後宮の悪女の話だって、正妃が来たら払拭されるだろうし、陛下の敵が少しでも減っていけば噂自体も消えて行くだろう。

「夕鈴がそう励ましてくれるのが嬉しいんだ。 また美味しいご飯作ってね」
「庶民料理しか出来ませんのに。 ああ、温かいのがいいのかな。 毒見で冷めたものしか口に出来ませんものね。 冬場に冷たい料理は身体が冷えちゃうから、どうにかならないのかな?」
「夕鈴が作ってくれる料理がいいんだ。 ・・・・・このままこっちも食べたくなる」
 
掃除婦の姿なので髪をまとめて頭巾をしている。 更に抱き上げられ、陛下の肩口に額を押し当て目を閉じていた夕鈴の項に、何か柔らかなモノが押し付けられた感覚がした。 幾度か瞬きをして顔を上げると、同じように瞬きをしている陛下の顔がとても近くて、互いに動けなくなる。 

「・・・・何、いまの」
「あ・・・・ゆーりんが可愛いことを言ってくれたから・・・・つい」
「つい、ですか・・・・。 ほぉ・・・・」

今まで柔らかな口調で僕に話し掛けてくれていた夕鈴が、僕が漏らした言葉に反応し、静かに、それでいて力強く胸を押し、胡乱な視線を投げ掛けて来る。 何を考えているのか判るような理解したくないような気分になり、慌てて誤解を解こうした瞬間、夕鈴がするりと僕の膝から離れてしまう。 

「今、私は陛下を癒す妃ではなく掃除婦です。 妃を愛でる演技は妃の時になさって下さい」
「ち、違うよ、ゆうりん! え、演技じゃ」
「陛下ーっ! 何処に行ったかと思ったら何故こんなところに! 謁見の間にて大臣が待っていますよ。 掃除婦と遊んでいる暇などありません! 早く移動して下さい、ほら、早く!」

最悪のタイミングで鬼より煩い側近が飛び込んで来た上に、夕鈴が目を瞠って僕を睨み付けてくる。 
仕事を放り出して来たのかと、その目は語っており、偶々見かけた夕鈴に嬉しくなって近寄った僕の気持ちを知りもせずに険しい顔で睨ね付けている様子に項垂れそうになった。
じりじりと距離を離していく夕鈴とは逆に、目を吊り上げた李順が迫って来る。
そんな状況の中、陛下が出来ることは静かに溜め息を零すことだけ。

「・・・・今日こそは夕鈴の部屋に行けるように頑張るからね」
「それは周宰相部屋での政務次第となるでしょう。 兎に角、早く謁見の間に急いで下さい。 いつまでも姿を見せない陛下を探す私の苦労をどう思っているのですか! 政務は山と積まれていますよ!」
「絶対、絶対、今日こそは夕鈴の部屋に行くからね!」
「山を少しでも崩してからその台詞を吐いて下さい! 仲良し夫婦演技よりも政務が先です!」

引き摺られて行く陛下を見送りながら、そろりと項に手を伸ばすが、それ以上触れることが出来ない。
今夜絶対に部屋に来ると言った陛下だが、李順の言葉では無理そうな気がする。 
もし部屋に来ても、その頃には 『つい』 のことを忘れていることだろう。 ここ最近、陛下に妙な方向で翻弄されている気がするが、臨時花嫁としては・・・・・いや、妃演技を必要とされていない場所で翻弄されていた自分を思い出し、夕鈴は眉を顰める。
方淵、浩大、桐も陛下に翻弄されているとは知らず、ましてや自分が原因で彼らが翻弄されているなど思いもせずに、夕鈴は掃除を始めることにした。

「・・・・李順さんが陛下の妃になれば国は安泰な気がする・・・・・」

その呟きに、肩を揺らしのは隠れて警護をしていた浩大だけ。  






FIN

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:05:05 | トラックバック(0) | コメント(10)
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2014-02-05 水 00:25:30 | | [編集]
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2014-02-05 水 06:04:16 | | [編集]
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2014-02-05 水 06:19:41 | | [編集]
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2014-02-05 水 18:35:26 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。ニブチン夕鈴だけど、そこが可愛いと愛でる陛下に周囲は大迷惑。宰相と李順をプレゼントされたら、流石に焦るでしょうかね(爆)
2014-02-05 水 19:12:24 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。焼きもち陛下を書きたくて溜まらんかったのです。琉鴇皇子を出してみようかと思ったのですが、おまけが長くなりそうで今回は断念。あの皇子を出すと超楽しいのですが、長くなるので。浩大は爆笑間違いないけど、文字通り『クビ』が掛かっているので必死に堪えています。
2014-02-05 水 19:26:28 | URL | あお [編集]
Re: おまけ大好き( ´∀`)
あきもも様、コメントをありがとう御座います。おまけ好きって言って貰えると、ほっとします。そして野球応援団のようなコメントににやけちゃいます。ありがとうです!
2014-02-05 水 19:36:49 | URL | あお [編集]
Re: 吹雪いてます…
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。昨日の夕方から降った雪は早々に解け、日陰に少し残る程度です。でもしっかりと雪の中、犬と遊びました。夜は疲れ果てた犬はイビキを掻いて寝てました(笑)そしていつもの吉本・・・もとい王宮劇場で落ちが着き、早く兎を食ってしまえと陰から突っ込みを入れたいです。
2014-02-05 水 20:11:48 | URL | あお [編集]
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2014-02-07 金 00:46:21 | | [編集]
Re: タイトルなし
Norah様、コメントをありがとう御座います。うちの父は昔は短気で今は母大好き人間です。面白いほど子煩悩だとも判り、そして何よりマメです。掃除大好きで棚とか小屋とか畑とか、動かずにはいられない性格。だから大掃除の必要なしってくらいの綺麗好きです。だけど強面で友達にはビビられる(笑) 李順さんが陛下の嫁になったらスパルタでしょうね。逆らえない、姑が宰相になるのか?それとも柳大臣?(爆)
2014-02-07 金 11:03:09 | URL | あお [編集]
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