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訪れた颶風  2
「パラレル」シリーズから、ユーリの話しです。 「泡沫人の羽衣」後半の主人公、オリジナルキャラ・ユーリが主人公の話です。お好みの方がいらして、嬉しいです。 昼ドラ風?と思ったけど、そう言えば昼ドラって見たこと無いな~(笑)


では、どうぞ











着替え終えて桂香さんが用意してくれたお茶を飲んでいると、ルーベンさんが部屋を訪れる。 
いつものように穏やかな表情を浮かべているけど、黎翔の両親が来たばかりだ。 
きっと私の顔は強張っていたのだろう。 背筋を伸ばして近付いて来たルーベンさんが、気遣うように私の肩を柔らかく何度も何度も擦ってくれる。 物腰が柔らかいルーベンさんの顔を見上げ、私はようやく詰まっていたものを吐き出すことが出来た。 ウォルターの父とは違う、穏やかな表情に深呼吸を繰り返していると桂香さんが一礼して出て行き、ルーベンさんは私の対面の席に浅く腰掛けて話し始める。

「私は大旦那様の御邸で仕えていたことがありますので、旦那様の生い立ちも承知しております。 許可を頂いておりますので、お話ししようと思いますが、御聞きになりますか?」
「私は・・・・黎翔の家族のことを何も知りません。 彼が家族のことを話さなかったのと、彼から訊かないで欲しいという雰囲気を・・・・いえ、言い訳ですね。 ただ私が知りたくなかったのかも知れない。 ・・・・許可を貰っているということは黎翔がそれを伝えたいということですよね。 自分からではなく、第三者を介して伝えたいと」

私の問いにルーベンさんが困った笑みを返してくれた。 親子の会話にしては素っ気無いというより、冷淡ともいえる態度を思い出し視線を落とす。 自分の口から言いたくないが、私が聞きたがっていることを判って黎翔はルーベンさんを寄越してくれたんだと思うと、聞くべきだろうと顔を上げる。

「お話し下さい」
「・・・・旦那様には兄がおりますが、旦那様とは母親違いです。 旦那様は最初、愛人の子として育ちました。 その後、大旦那様が最初の奥様と離婚され正式な妻となられましたが、大旦那様の兄弟、親類から執拗に誹りを受け続け、心身ともに御疲れになり旦那様を連れて家を出てしまわれました。 その後体調を崩されてお亡くなりになり、大旦那様は親類の勧めで今の奥様と御結婚されましたが、それが旦那様には・・・・黎翔様には裏切りのように思えたのでしょうね。 ああ・・・・これは私個人の感想ですが」
「・・・・でも、黎翔は正式に認知されているのでしょう。 珀コーポレーションの会長をされているし、それは跡取りとして認められている・・・・。 あれ、兄がいるって」

温かな紅茶が入ったカップを私に差し出すから受け取るしかない。 
一口飲みながら窺うように見つめていると、ルーベンが小さく息を吐いた。

「旦那様の兄様に関しましては、どう説明していいのか悩みますが端的に言いますと、まあ・・・・女と薬に溺れてドロップアウトといった感じでしょうかね」
「・・・・は、あ・・・・」

柔らかな笑みと共に辛辣な物言いをされると、返答のしようがない。 きっと言葉通りなんだろうなと思いながら、黎翔のお兄さんならやっぱりモテる要素はばっちりあるのだろうと想像する。 先ほどあったお父さんも威厳があり、壮年過ぎた魅力ある容貌をしていた。 

「専務として会社に入った長兄に将来は全てを任せようとお考えがあったとは思いますが、その後は頻繁に女性問題で揉めていたと聞いております。 貿易関係の会社を任されてからは豪遊され、女性絡みで刃傷沙汰に及んだこともあり、怪しげな薬に手を伸ばされ経営は大きく傾きました。 当時会長をされていた大旦那様が揉み消しに奔走されたそうですが、結局は経営から退くという形にされたそうです」
「・・・・・今、黎翔のお兄さんは」
「ドラッグの遣り過ぎで、今は国外の病院に入院されており、社会復帰はないと聞いております」

思った以上に悲壮な展開となり、私は黙り込みそうになった。 
その後に黎翔が珀コーポレーションを立て直したのだろうが、一度は離れた父親の会社を任されることになった時はどんな心境だったのだろう。 ぐっと唇を噛みしめていると、ルーベンさんが持っていたカップをテーブルに置き、新しく紅茶を注ぎ足す。 柔らかな湯気を見つめながら私は口を開いた。

「傾いた経営を立て直すのは大変だったでしょうね。 でも黎翔はそれを遣り遂げて会長になったんだ。 それで黎翔と親との確執は・・・・・ルーベンさんから見て、続いていると思いますか?」
「旦那様は本当に御尽力されていましたよ。 冷酷非情と揶揄されようと、昼夜を問わず励まれておりました。 厳しいほど仕事に打ち込んでおられた旦那様が今は奥様を娶られ、この邸で幸せそうに過ごされているのを目に出来て、私はとても嬉しいです」
「ありがとう御座います。 そう言って貰えて嬉しいです」

どうにか微笑むことは出来たが胸には重い石が積み重なり、カップから立ち上る湯気を見つめながら、私は黎翔の両親から向けられた視線を思い出していた。 あの視線は値踏みしていたものだ。 自分の息子に相応しい人物なのかを観に来たのだろう。 いや、黎翔に相応しいかではなく、珀家に相応しいかを見に来たのかも知れない。 きっと私のことは調べ上げているだろう。 両親のことも、学歴も、仕事も、交友関係も全て。

「ユーリ様は何も御気になさらず、お過ごし下さい。 旦那様が望んだのはユーリ様です。 ただ知って頂きたいと私を介して話をされたのですから。 あと、大旦那様の現在の奥様にはお子様が二人いらっしゃいますが、旦那様とお会いしたことはありません」
「そうか、黎翔には弟妹がいるんだ。 ・・・・いろいろ話してくれてありがとう御座います」
「滅多に来ることの無い方たちですから、御安心下さい」

御安心下さいって、夫の家族に対して言う台詞じゃないよねと笑いそうになるけど、事実そうなのだろう。 逆に頻繁に来るなら気を付けろということにもなる。 歓迎されていないのは解かったけど、私が黎翔の妻だと慣れて貰うか諦めて貰うしかない。 
レーベンさんが退室した後、静まり返った部屋で私は目を閉じて長く息を吐いた。


仕事を終えた黎翔がいつも以上に纏わり付き、ルーベンさんから聞いた話しに関して会話する間もなく、まるで大型犬にじゃれ付かれているような気分で食事を終えると一緒に入浴しようと抱き上げられ、それは絶対に厭だと悲鳴を上げるも・・・・・。
そのまま翌日の仕事に支障がきたすほど翻弄されてしまった。 






数日後の仕事中、ウォルターに声を掛けられ、連れて行かれたのは小会議室。 
鍵まで掛けてドアから離れるウォルに訝しい顔を向けると、いつもの柔らかい顔で頭を撫でられる。

「ユーリ、珀会長のところで何かあった?」
「・・・・何があったの? またイヤガラセでもされた?」

テーブルに腰掛けたウォルが私に椅子を勧めて来る。 首を横に振ると困った顔を見せるから、背筋がザワリと粟立った。 私が黎翔の妻であることは会社の殆どが知っている。 
付き合っている頃はただの気紛れかと笑い話だったが、結婚となると話は別だ。 
シンデレラガールと言われ、マスコミ取材が執拗で出社出来ないことも多々あり、辞めざるを得ないかと覚悟もしたが皆の協力で普通の生活が続けられている。 それと、黎翔が用意した弁護士やガードマンのお蔭だろう。 ひと月くらいで執拗な取材は消え、ガードマンも撤退した。 異世界に消えた私を心配して再び警護が就いたが、それは仕方がないと了承している。 黎翔を始めとして皆の協力で、私は私らしい生活を続けることが出来ていて、皆が協力するよと笑ってくれるから、私はその優しさに甘えて過ごすことを選んだ。
だけど周りを巻き込むのは別のこと。 
特に義兄であり会社では上司であるウォルには、今までもたくさん迷惑を掛けて来た。 

「しばらく休んでいたからって、また取材が来た? それとも他に何か?」
「ユーリ、落ち着いて。 ・・・たぶん、君にその気はないと思うけど辞表を出したと聞いてね」
「へ? 私が・・・・辞表を出したと?」
「でも私はユーリから辞めたいなんて話を聞いていないし、きっと相談してくれるだろうと思ってね。 上からはもしや懐妊したのかと聞かれたよ。 そうだとしても家族には教えてくれるだろう?」

目をぱちくり瞬いていると、頭を優しく何度も撫でられる。 誰かが自分の辞表を勝手に出したのだと直ぐに思い至るけど、その相手が見当つかない。 

「その辞表は受理されたの?」
「いや、大丈夫。 私のところで止めているよ」
「ありがとう。 それとオメデタイ話はまだ。 もう少ししたら伯父さんにしてあげるね」

柔らかく微笑みを浮かべたウォルに楽しみにしていると言われ、部屋から出た。 悪戯にしては悪質だと思いながら黎翔側で何かあったのかと心配になる。 だけど今は互いに仕事中だ。 帰ったら話をしようと、不愉快な気持ちを一旦忘れて仕事に戻ることにした。 




その日の仕事終わり近くに携帯電話が鳴る。 見知らぬ番号に眉を寄せたが、勝手に自分の辞表が出されていたことを知ったばかりのユーリは、何か関連があるのかと出てみることにした。

「はい、どちら様でしょうか」
『この間お邪魔した、珀黎翔の義母です。 この後、少しお話がしたいと思いますので、会社前に用意した車にお乗りになって下さい。 行先は運転手に伝えてありますので』
「あ、あの、どのような用件か、電話で仰って頂くことは出来ませんか?」
『義母といえ、私は黎翔の親ですよ。 貴女は黙って従う気がないのかしら?』
「いえ、申し訳御座いません! あと三十分ほどで下に参ります!」

直ぐに黎翔に電話をしようと思ったけど、この時間では向こうも仕事中だ。 メールだけでも送ろうかと思ったが、両親と会った時の態度を思い出し躊躇してしまう。 黎翔の義母の上からの物言いに、既に気持ちが重くなっているが会う約束をしてしまった自分だ。 これ以上揉めるより、話を聞いてさっさと退散するに限る。 
それに相手は黎翔の義理とはいえ両親だ。 仲良くなるに越したことはない。 
応接室での視線を思い出し、ぞくりと身震いしてしまうが、ユーリは強く頭を振った。
最初から苦手意識を持つのが間違っている。 好きな人の身内なのだ。 旦那の家族とは仲良くしたいし、これからも交流を持っていきたい。 そのためには会いたいと言われた相手には快く会うべきだろう。 

会社の出入り口で個人警護を任されているパウローが怪訝な顔を見せる。 そう言えば彼はどうしたらいいのだろうと首を傾げると、手を引かれてエレベーターホールに連れて行かれた。 

「リムジンの前に黒服が四人揃ってお前の写真を持ち、待ち構えている。 あれは何だ」
「・・・・珀黎翔のお母様が嫁の私と話がしたいと、お迎えを寄越して下さったの」
「会長は知っているのか」
「いいえ。 少しお話をしたいと仰っていたから、直ぐに終わると思うわ」
「その喋り方を止めろ。 直ぐに終わらないようなら連絡するし、もちろん着いて行くからな」
「その方が・・・・心強いかも。 連絡は・・・・任せますわ」

気まずい雰囲気の中、乗り込んだ私はしんっと静まり返った車が何処に向かうのかの説明もないまま、隣に座るパウローを見上げた。 険しい顔で見下ろされ、膝上の手の内が緊張でじわりと汗ばむ。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 21:52:02 | トラックバック(0) | コメント(6)
コメント
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2014-02-07 金 00:22:59 | | [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。アメリカ桐は基本性格同じ・・・・・まあ、ちょい違うこともしますけど、SP上がりのボディガード設定です。ユーリと乱闘・・・それ美味しいかも! ああ、妄想が!!
2014-02-07 金 11:05:21 | URL | あお [編集]
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2014-02-07 金 23:15:50 | | [編集]
Re: また雪
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。大雪の予定日にお休みなので、のんびりです(笑)正直、良かったと万歳です。十数年ぶりの大雪になるそうで、雪掻きの用意をしました。近所中が一斉にシャベルを持って動くので、楽しいですよ。それに私は北海道育ちなのでね、実は嫌いじゃない。ただ出勤に響くのが辛い。お仕事、頑張って下さいませ!!
2014-02-08 土 00:39:23 | URL | あお [編集]
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2014-02-08 土 13:45:07 | | [編集]
Re: タイトルなし
彩華様コメントをありがとう御座います。昼ドラって見ないけど、ドロドロ~でしょ? 今はそんなこともないのかな? それっぽいイメージがあります。義母は古いけど『ずっと〇なたが好きだった』の野際さんを想像して頂くと宜しいかと。でも、それも見てないんだよ、私。(笑)
2014-02-08 土 14:41:24 | URL | あお [編集]
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