スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
融けた泉の扉  17
6時台の散歩が楽になってきました。花粉は飛んでいるけど、朝は少しだけ楽になって来たかも。薬を飲んでいるからかも知れないけど、鼻水ずるずる・くしゃみ連発は減ったかな? 皆様の体調は如何でしょうか。
のんびりunder更新中。本当にのんびりです(笑) 匿名希望様、催促ありがとう御座います。


では、どうぞ












緻密な彫がされた銀の簪はとても綺麗だ。 普段夕鈴が使用している品より格段上の宝飾であることは間違いない。 時の陛下に贈られた品なのか、自身を飾るために自ら購入した品なのかまでは解からないが、とても綺麗だと夕鈴は見つめ続けた。 
窓からの日差しを反射してキラキラと輝く簪を前に、眩しさのため目を細めて眺めていると軽い眩暈を感じる。 くらりとした気持ち悪さに額を押さえると、手から簪が滑り落ちそうになった。 
慌てて掴み直すと、唐突に目の前に見知らぬ光景が広がる。


穏やかな日差しが降り注ぐ王宮大門を潜り抜けて、数台の馬車が入って来る。 
その馬車から初老の男性が女性を伴い降りて来るのが見えた。 豪奢な衣装に身を包んだ女性は僅かに頬を染め、艶やかな唇は弧を描き柔らかな笑みを浮かべている。 背後の馬車から侍女らしき女性たちが降り、幾つもの行李が運ばれて行く。 
初老の男性はずっと笑みを浮かべており、女性も嬉しそうな表情だ。 向かった先は王宮側にある殿の一室で、拱手一礼をした男性と女性が高座に腰掛ける男性に恭しく挨拶をする。 ゆるりと顔を上げた女性を見下ろした高座の男性は頷き、宦官らしき人物が何処かへ女性を連れて行った。 初老の男性が懐から何か書簡らしきものを出し、手に掲げると侍従らしき人物が高座の男性へ手渡す。 
衣装からして時の国王陛下だと思うが、顔が天井から下がる垂れ幕に隠れて見えない。
 
夕鈴が目を細めると場面が変わる。
頬を染めた女性が向かった先は後宮で、胸を張り綽々と足を進めて通された部屋へと到着した。
新たに後宮に入ったのだろう。 自信に満ちた振る舞いと笑みが彼女の美しさを際立たせ一層輝いて見える。 案内された部屋で直ぐに広げられるのは煌びやかな衣装や沢山の宝飾。 行李から次々に出される品々を嬉しそうに見つめる女性はわが世の春を謳歌しているように見えた。 彼女の侍女たちも早速着替えの準備を始めたり、忙しそうに湯浴みの用意を始めたり、先輩妃たちの部屋へ挨拶に回りながら嬉しそうな笑みを浮かべている。
他の部屋では新たに加わった妃に鷹揚な態度で笑みを見せる女性たちの姿があり、しかし目だけが暗い光りを呈していた。 陛下は暫くの間、新たにやって来た女性を愛でるために後宮に足を運ぶだろう。
それを理解して尚、女性は華のような笑みを浮かべて自分たちの部屋を整えさせる。 
後宮に足を運ばれる唯一の御方が、いつ訪れてもいいように早くから湯浴みをし、気を惹くために雅な香を焚き、美しい衣装に身を包み好むような化粧をする。 そして優雅な笑みを浮かべるのだ。

______寵愛は途絶えていないと誇示するために。


「・・・・っ!」

足元から這い上がる寒気に夕鈴は手にした簪を放り投げそうになった。 
どうにか放り出さなかったのは、簪がとても高価な品だと身体が理解しているからで、貧乏性ゆえの無意識の行動に安堵する。 見つけた簪が後宮の床下にあったというなら、それは王宮の財産であり、バイトが放り投げて破損したら新たに借金が加算されてしまう。
だけど、もう手にしていたくないと夕鈴は急ぎ卓上に置いた。

「どうした、夕鈴。 また頭痛がするのか?」 
「いえ、ちょっとだけ・・・・・寒気がして。 寒気というか、気持ちが悪い・・・」
「熱がまた上がったのかも知れないな。 直ぐに横なった方が」
「陛下。 これは、この簪は少しの間預かっていても良いでしょうか。 それと老師に話があるので、後で話しを聞きに行かせて頂きます。 それから・・・・今は整理がつかないけど、何かしなきゃならないような気がするんです。 それが何か上手く言葉に出来ないけど・・・・ですから」

正直、簪を目にすると気持ちの悪い悪寒がして触れたくないと思うが、何かしなきゃと突き動かされる。 その何かを明確に言葉に出来ない漠然とした気持ちが気持ち悪くて、早く解決したいと陛下を見上げた。 陛下の兄か父親の代の後宮だと何故か確信が持てるのも不思議だが、そんなに昔の後宮ではないような気がする。 簪の汚れ具合を見ても、きっとそうだろうと夕鈴は考えている。 詳しい話を聞けるのは老師だろう。 気が急き早く立ち入り禁止区域に向かいたいと思うのに、陛下が手を掴むから動けない。

「寒気や気分不快が治ったら行っていいよ。 だけど今日は駄目だ」
「でも、早く老師と話をしたいのですが・・・・」

離して欲しいと腕を引くが、もちろん解放されることは無い。 それどころか抱き上げられ、そのまま寝所に向かうから夕鈴は陛下の腕の中で必死に暴れた。 文句を言おうとして陛下を見ると、いつの間にか狼陛下になっていて、醸し出す雰囲気が冷たく感じて息を飲む。

「あ、あの・・・・・陛下?」
「我が妃は言うことを聞く気が無いらしい。 添い寝をすれば大人しくなるだろうか」
「そっ、それは駄目ですよ! 添い寝なんかバイト仕事の範疇外です! 断固反対っ! それに陛下は仕事がいっぱいでしょう? 李順さんが怒鳴り込んで来ますよ!? 李順さんの叱責で、もしかしたら命の危機に陥るかも知れないじゃないの! 私はまだ死にたくありませんっ!」 
「ならば大人しく寝るか? 返答によっては添い寝する。 即答しなければ添い寝する」
「寝ますっ!!!」

ころりと転がされた寝台の上、夕鈴が安堵の息を吐く間もなく覆い被さる狼の陰に悲鳴を上げそうになり慌てて腕を突っ張った。 ジリジリと間を詰めて来る狼を避けようと足まで出そうになるが、そこは妃衣装が裂けてしまうと留めたが、近付く気配に目を瞠って必死に懇願する。

「寝ますって! ちゃんと寝ます! 即答したのに近付く意味が解りません!」
「熱を計ろうと思って。 額をくっつけたら判るでしょ? あとで薬湯を持って来るね」
「熱はないですし、薬湯はもう結構ですっ! これ以上飲むと借金に加算されてしまうのではないかと心痛が増します! 風邪で寝込んでいた分、臨時花嫁のバイトは出来なかったし、その上記憶がなかったとあれば迷惑料だと勝手に増える可能性を考えちゃいますよ!」
「そんなことは・・・・・・・・流石に李順もしないだろう」 

夕鈴から離れて寝台に腰掛けた陛下が乾いた笑いを零す。 
妙に間が空いた返答にクラリと眩暈がして、現実になったらどうしようと違う寒気に襲われてしまう。 考えても仕方がないことだと溜め息を吐き、夕鈴はモソモソと掛布を被り、陛下を見上げた。
 
「・・・・明日、体調に問題が無ければ老師と話をしてもいいですか」
「体調に問題が無ければね。 僕に相談は出来ないことなの?」
「まだ漠然としているので上手く話せませんが、ちゃんと報告はさせて貰います。 面倒事にはならないと思うのですが、あとで何か御願いするかも知れません。 ごめんなさい、自分でもよく解からないのですが、こう・・・・何というか・・・・まだ、もやもやっとしていて」

自分でも意味の分からないことを言っていると思うが、あの簪を早くどうにかしたい思いに突き動かされているようで、だけど上手く言い表せない。 老師にもどのように伝えたらいいのだろうと眉を寄せると、頭を撫でられた。 少し困った顔で見下ろす陛下の表情に全身から力が抜け、苦笑してしまう。

「今はしっかりと寝て、体調を戻すことにします」
「うん、ゆっくり休んでね。 僕で役に立つことがあれば何でも言ってくれていいから」

幾度か頭を撫でた後、陛下は寝所から出て行った。 手元に簪が無いことに安堵して、夕鈴は深く息を吐く。 しかし簪を思い出すと放り投げた女性の表情が脳裏に浮かび、胸苦しさがジワリと広がる。 
でも陛下は優しい人だから、その内たくさんの妃を娶ろうとも、あんな哀しい表情をさせることはないだろう。 御自身の過去や母親のことを考えて、誰も泣かないよう慈しまれるだろうと思う。
陛下の後宮に入る人たちはきっと幸せになれる。 
 

夕鈴は身体を丸めて、胸を押さえた。









→ 次へ

スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:45:01 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2014-04-19 土 10:53:42 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。あっちの黎翔もお読み頂き、ありがとうです。あっちはね~、パラレルさんなので好き勝手にやっております(笑)宜しければのんびりお付き合い下さいませ。
2014-04-19 土 20:08:15 | URL | あお [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2014-04-19 土 20:17:47 | | [編集]
Re: 今晩は冷えます
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。そうです、お化け嫌いの夕鈴ですが、今回は怖いより陛下の行動がびっくり過ぎているのか慄いているシーンが書けません(笑)李順さんの扱いは正解だと自負しておりますが、もう少し優しくしてもいいのではないかと反省します。(爆) 仕事場で漫画にはまっている人はいますが、ジャンルが違うので少し残念。昔のリボンや少コミが好きなので違う漫画で盛り上がってます。どちらかと言えば男性社員とジャンプやサンデー、マガジンなどで盛り上がります。あとは同人誌好きで・・・・。えへ。
2014-04-19 土 22:34:31 | URL | あお [編集]
いつも楽しみに読んでいます。ちなみにunderも。本誌が切ない分こちらの陛下の甘々に癒されています。これからも更新よろしくお願いします。
2014-04-22 火 12:22:40 | URL | まるねこ [編集]
Re: タイトルなし
まるねこ様、コメントをありがとう御座います。underもお読み頂き、ありがとうです! あっちはもう、好きに書かせて頂いております。手が遅くてすいません。更新頑張ります。
2014-04-22 火 21:10:45 | URL | あお [編集]
初めまして^^ いつきと申します^^
LaLaは大分前から購入していましたが、狼陛下の花嫁のファンになったのはつい最近です^^;

何気なく「狼陛下の花嫁」で小説か何かないかなー?と探していましたら、貴方様のサイトへ辿り着きました^^
1週間かかってunder以外の話は読破しました^^
続きを楽しみにしていますので、頑張って書いてくださいね^^
2014-04-25 金 20:37:41 | URL | いつき [編集]
Re: タイトルなし
いつき様、コメントをありがとう御座います。LaLa仲間に読んでいただき嬉しいです。ありがとう御座います。のんびり更新ですので、本当にすいません。どうにかこうにか進めていきます(笑)underはお好みがあると思いますので、パスして貰っても問題なしです。はははーってくらいに変な品ばかりですので。引き続きお読み頂けたら嬉しいです。
2014-04-25 金 22:51:42 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。