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融けた泉の扉  25
梅雨本番、それも雨量が多いと訊けばカッパの新調です。大雨の時は上下カッパですが、小雨の時はポンチョを使用してますが、そのポンチョを乾かしていたら・・・・どこかに飛んで行かれました。今頃は何処かの晴天の下、バカンスを楽しんでいらっしゃるでしょう。

では、どうぞ










翌日、目を覚ました妃は侍女に身を任せて衣装を整えると、鏡の前で怪訝な顔を浮かべた。
侍女が何か御気に召さないのかと問うと、妃は暫く侍女を見つめた後に首を横に振る。 まだ具合が悪いのだろうかと思い、急ぎ薬湯の用意を始めると珍しく朝から陛下が訪れた。

「我が妃の具合はどうだ」
「少し、お加減が宜しくない御様子が見受けられますので、薬湯の用意を致します」
「どう加減が良くないんだ。 寝ているのか?」
「い、いいえ。 ただ、いつものお妃様と感じが違うように見受けられまして」

その言葉に侍女を部屋から下がらせ、寝所にいるという夕鈴の許へ向かう。 
鏡台に向かい黙したままの夕鈴に声を掛けるが返答は無く、肩を揺するとひどく驚いた顔で振り返った。 少し蒼褪めた顔色の夕鈴が眉を寄せたまま凝視してくる。 確かにいつもの夕鈴とは違うと感じ、ふと四阿での突然人が変わったような夕鈴を思い出した。 また何処かに走り出さないよう気を付けながら、声を掛けてみる。

「夕鈴、どうしたの? 頭痛がするのかな」
「・・・・・・・」

じっと見上げたままの夕鈴がゆっくりと椅子から立ち上がる。 周囲の様子と声を掛けてきた人物に警戒しているようにも見えたが、やがて目を瞬き、きょとんとした顔で小首を傾げた。

「陛下? ・・・・・お早う御座います」
「お早う、夕鈴。 今、ぼうっとしてた? 声を掛けたら・・・・変な顔してたよ」
「変な顔って・・・。 陛下、それは私に失礼ですよね。 あら、侍女さんは何処に? それに朝からここに来ていて大丈夫ですか? 昨夜はお仕事いっぱいだったんですよね。 ちゃんと寝ましたか?」
「ちゃんと寝たから大丈夫だよ。 眠くなったら李順から逃げて何処かの書庫で寝るし」

それは駄目だと怒り出した夕鈴を見て、いつも通りの彼女だと安心して苦笑した。 額を触っても熱があるようには見えず、ただ寝惚けていたのかと、取り敢えずはこのまま様子を見てみようと考える。 隣室に移動して早速お茶の用意を始めた夕鈴に安堵し、だけど余り時間が取れないと溜め息を吐く。 
このまま昨夜の話の続きを訊きたいが、長居すると李順が負の空気を漂わせてやって来るだろう。

「お茶を飲んだら政務に向かうよ。 夜に来れるようにするから、話の続きを訊いてもいいかな?」
「はい、御待ちしております。 でも・・・・楽しい話ではありませんからね」
「いつまでも夕鈴が悩んでいるのを見たくないだけだ。 話すことで楽になる事もあるしね。 体調に問題が無いならいいけど、侍女が心配していたよ。 夢見が悪かったのか、さっきまでは無言だったし」
「・・・・え? そ、そう・・・・ですか? そう言えば、いつの間に着替えを」

自分を見下ろし驚いた顔をする夕鈴に眉が寄った。 
手を引き寄せると途端に真っ赤になるが、記憶がないという彼女が心配になる。 侍女が用意するだろう薬湯より、このまま執務室に連れて行き、片時も離さずにいた方がいいのではないだろうか。 
しかし李順がいる執務室に彼女を連れて行くと、針の筵に座らせるようなものだ。 
すべきことを早々に終わらせてから、ゆっくりと二人きりの時間を取った方がいいかも知れない。
考えが決まった陛下は、夕鈴の手を強く握り締めた。

「夕鈴、今日は老師のところに行って、大人しく掃除をしていてくれないか?」
「元よりそのつもりでしたが、そんなにさっきまでの私は変・・・・だったの?」
「記憶がない時の夕鈴を思い出して心配なんだ。 後で顔を出すから、立ち入り禁止区域だけにいてくれないか? あと、手摺には近付いちゃ駄目だよ。 水汲みは浩大に任せること。 少しでもおかしいと思ったら老師に伝えて薬湯を飲み、立ち入り禁止区域で休んでいて欲しい。 それが今日の仕事だ」

眉根を寄せた夕鈴が目を瞬き、渋々といった態で頷く。

「・・・・バイト妃として陛下の役に立てずに申し訳御座いません」
「僕が心配なだけだ。 掃除もバイトの仕事の内だろう? 無理せずに頑張ってね」

神妙な顔をした夕鈴が頷くのを確認して、陛下はすべきことを早々に終わらせるために執務室へと向かった。 その後、夕鈴が老師の許に行かず姿を消すなど思いもせずに。



***



「今日は確認作業が早くて仕事が進みますね。 ここ数日溜まった書類が片付くのは、大変気持ちが良いですよ、陛下。 普段から常にこの調子でしたら私も楽なのですが」
「差し戻しの書類が多いぞ。 しっかりと見直しをしてから提出するよう官吏に伝えろ」
「午後は宰相の許で話し合いがありますからね。 逃げずに真摯に対応して下さいませ」
「余り長くは困るぞ」
「陛下次第でしょう。 では一度離れます」

李順が署名の済んだ書類を抱えて執務室から出て行くと、窓から浩大が顔を出した。

「・・・あれ、お妃ちゃんは此処じゃないのか?」
「どういうことだ。 夕鈴は立ち入り禁止区域で掃除のはずじゃないのか?」
「ちょっ、ちょっと待ってよ、陛下!」

陛下が殺気を漲らせて立ち上がると、浩大は慌てて手を前に出す。 
王宮側の見回りを終え、老師の許に顔を出したが夕鈴はまだ来ていないと言う。 
朝食はすでに終わった時刻で妃の部屋に姿は見えず、立ち入り禁止区域に戻るがやはり姿が無い。 掃除婦衣装へと着替えをする部屋を覗くことも出来ずに暫く待っていたが現れず、中を確認すると掃除婦衣装はそのまま置かれていた。 何処かで頭痛でも起こして蹲っているのかと探したが見つからず、朝に陛下が部屋を訪れたことを知り、政務室か書庫に居るのかと思ったが_____________。
 
そこで陛下に直接尋ねようと顔を出したと話した。

「じぃちゃんのところに来たら連絡入れるように頼んで来たけど」
「朝は少し様子がおかしかった。 もう一度王宮側も視野に入れて探せ」
「了解。 桐も使うから、鼠が入ったら警護兵に捕らえるよう指示してねぇ」

慌てた様子で浩大が出て行くと同時に李順が戻って来て、眼鏡を持ち上げ怪訝な顔を見せた。 立ち上がったままの陛下に咳払いをして振り向かせ、大量の書簡が入った長函を提示しながら卓上の山積した書類に嘆息を零す。

「その書類の山を崩さなければ休憩など永遠に来ないと御考え下さいませ」
「夕鈴の姿が見えないそうだ」
「老師の許で掃除でしょう。 陛下がそう指示なさったと伺っておりますが」
「そこに居ないと浩大が知らせに来た。 記憶が戻ったのはいいが、どうやら今度は簪の持ち主に振り回されているようだ。 頭痛の次は後宮の亡霊が相手らしい。 彼女が相手するのは私だけのはずだが、妙にモテて困るな。 急ぎ浩大と桐に探索を任せたが、何か問題が生じるようなら私も出るぞ」
「その書類の山を崩されてから、私にも解かる言語で仰って下さい。 兎に角、政務優先です」
「我が妃の方が優先されるに決まっておろう」
「夕鈴殿はバイトです。 臨時花嫁で、バイト妃。 何度同じことを言わせるつもりですか! 理解出来るよう、書面に書いて顔にでも貼り付けましょうか? まずは卓上の山を崩すことです!」

何を言っても無駄な相手に記憶が戻ったばかりで不安定な夕鈴の心配をしろと言う方が間違っていると認識した陛下は、何時でも動けるよう急ぎの書類を手に筆を走らせ始めた。 苛立ちが眉間に浮かぶが、側近に通用するはずもない。 逆に側近から大仰な嘆息が零れ部屋に響き、陛下の眉間の皺をなぎ倒す。 黙々と書類の山を築き始める李順を睨むが、鋭く睨み返された。
不用意に動くと逆に夕鈴に取り憑いているらしきモノがどう動くか判らない。
今は浩大らに任せるしかないと判っているが、苛立ちは手の内の筆を撓らせる。




***



陛下が部屋を出た後、妙に納得出来ない夕鈴だったが、これ以上無用な心配をかけて政務に支障が出るのは困ると、取り敢えず納得することにした。 朝食を終えて茶を淹れていると侍女たちが部屋に戻って来て、心配げな表情で見つめてくる。 どうしたんだと驚くが、陛下に言われた言葉を思い出した。
陛下が訪れた時、私はぼうっとして変な顔をしていたと。 
それを侍女が心配しているなら、そのままにはしておけない。 夕鈴は妃らしく優雅に微笑み、今朝は寝不足だったようで心配をお掛けしましたと楚々として伝えた。 すると侍女たちが安堵の笑みを浮かべ、そして頬を染め始める。

「昨日は陛下がお妃様をお抱えになり戻られましたので、何かあったとのではと心配しておりましたが、安堵致しましたわ。 陛下は一度戻られて御着換えされて参られたのですね」
「え、ええ。 陛下のお蔭ですっかり元気になりましたわ」
「寝不足と存ぜず失礼致しました。 今更で御座いましょうが、寝所の整えは問題ありませんでしたか? 昨夜は何の御用意も出来ずに申し訳御座いません。 湯浴みはされますか?」
「いいえ、湯浴みは結構です。 皆さんの気遣い嬉しく思いますわ」
「朝早くからお妃様の許へ足を運ばれる陛下の御寵愛に、私どもも嬉しく思います」
「・・・・ええ、私も嬉しいです・・・・わ」
「では薬湯はどう致しましょう。 寝不足でしたら滋養のある薬湯の方が宜しいですわね」
「い、いえ・・・・結構ですわ。 御心配をお掛けして・・・・」

皆が揃って頬を染めて微笑む姿に、夕鈴はやっと理解出来た。 
そうか、皆が頬を染めて言う寝不足って・・・・・っ! 
妃として後宮にいる立場の自分だ。 陛下唯一の妃として後宮に住まい、その陛下が夕刻に妃を抱いて部屋に訪れ人払いをした。 そして朝から足を運ばれる。 今更ながら寝不足と言い訳をしたのは不味かったかと真っ赤な顔を俯けるが、侍女たちの生暖かい視線を痛いほどに感じてしまう。
老師の許に向かうと告げると、無理はされませんようにと気遣いをされた。 恥ずかしさに潤みそうな目を瞬かせて急ぎ場を離れるが、侍女さんたちの視線が背に突き刺さる。

兎も角、今日一日は掃除に集中しようと夕鈴が気合を入れ直していると、いつも水汲みのために使う回廊に人影が見えた。 目にした瞬間、知らず足が止まり凝視する自分に驚きながらも視線を動かせない。 朝議に出席していたのだろう大臣らの姿に、バクバクと激しくなる動悸。

ある大臣の横顔に痛いほど跳ねる動悸。
あれは・・・・・彼だ。 水月さんに尋ねた、彼女に薬湯と偽り毒を飲ませた大臣。
足元から這い上がる寒気に震えたのは夕鈴なのか、彼女の心なのか。 
気付けば足が勝手に進み出し、立ち入り禁止区域とは別の場所へと向かい始めた。 彼女が過去実在した妃だというなら、後宮しか知らないはず。 それなのに私の身体を勝手に使う彼女の足取りは、迷うことなく王宮へと向かっている。
政務室と少しの書庫しか知らない夕鈴は一気に蒼褪め必死に足を止めようとするが、自分の身体が思うようにならない焦燥感に泣きそうになった。 だけど表情でさえ自由にならない。 真っ直ぐに前を見据えて歩き出す私は、まるで人形のように強張った顔をしている。

「おや、お妃様。 こちらまで足を御運びになるとはお珍しい」
「・・・・・ええ」
「もしや、陛下に呼ばれていらっしゃるのですか?」
「・・・・・ええ」
「御寵愛のほどが知れますね。 斯様な場所に後宮の華を御呼びになるとは」
「・・・・・ええ」

端的に返事をする『私』に、あからさまな侮蔑の視線を向けて来る大臣や媚び諂おうとする高官。 しかし誰ひとりとして妃の足を止めようとはしない事実に、夕鈴だけが慌てふためく。 回廊を曲がり、姿が見えなくなった大臣を追い掛けるように早足になるが、身体を動かすのは本物の貴族息女である『彼女』だ。 早足なのに舞うように優雅で、これなら李順さんも太鼓判を押すだろうと感心してしまう。 
いや、感心している場合じゃないと叱咤するが足は勝手に進んで行くばかりだ。
誰か『私』を止めて下さい! 
出来たら事情を知っている浩大が望みですと、胸の中で拝んでみるが足は止まらない。 
見知らぬ場所、それも大臣や宰相しか足を踏み入れないだろう古めかしくも荘厳な格調高い空間が広がり始め、夕鈴は気を失いたくなる。 きっと下っ端妃が勝手に足を踏み入れていい場所ではない。 
いくら陛下唯一の妃でも、本来なら後宮だけに住まう立場だ。 王宮側に足を踏み入れるのは規約違反だろう。 このままではきっと斬首になる。 そうなると・・・・・・青慎はどうなる。 姉が罪人として処刑されたら、あの子の将来はどうなるのだ。 何も出来ずに蒼褪めて戦慄いている場合じゃない!!





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:05:01 | トラックバック(0) | コメント(8)
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2014-06-17 火 00:37:35 | | [編集]
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2014-06-17 火 01:09:45 | | [編集]
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2014-06-17 火 14:52:06 | | [編集]
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2014-06-17 火 20:59:50 | | [編集]
Re: タイトルなし
ぽんちゃん様、コメントをありがとう御座います。この時間に、もう疲れ果てて眠いです。(決して齢のせいではありません) 今回は取り憑く女性が動き出してます。夕鈴、意識があるからめちゃ焦ってますが、そこを掻くのが楽しい。陛下を早く出したいけど、浩大と桐も動かしたいから政務と李順で押さえてます(爆) そして夕鈴の中に父の存在は殆ど無い。あったとしても小指の爪先の垢ていどか? あ、ごめんね。岩圭さん。
2014-06-18 水 20:04:00 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。やっとunderもこちらも動きました。この頃眠くて眠くて、そして朝が早い。休みの日に頑張るしかないのか。齢には敵わないのか(自爆) まあ、それを言ったら自分が哀しくなっちゃうけどね~。 漫画の中の永遠の若い人物になりたいっすわ~。
2014-06-18 水 20:06:26 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。日本緒戦は残念でしたが、本田のゴールに興奮です。そしてメキシコGKオチョアが超カッコいいっすね! スーパーセーブ連続で、魅入ってしまいました。鉄壁のGKですが、プレッシャーもすごいでしょうね。点を入れられたら終わりですもの。ガンバレと何度も手を握り締めました。 こちらの方はのんびり動き出した簪の持ち主。やっと・・・・浩大と桐を動かせる(笑) 新しく買ったポンチョ、今日少し使ってみましたが・・・・失敗です。ゴム長靴を被っているようで通気性は0で、蒸れる蒸れる。サウナスーツのようで、気持ち悪くなりそう。冬場ならいいだろうけど、今回は失敗。買い直しです。くすん。
2014-06-18 水 20:25:38 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
いつき様、コメントをありがとう御座います。今日、仕事が終わってから知人宅に行き、故人を偲んで来ました。一旦家に戻り、愛犬を連れてお邪魔したのですが、久し振りということもあり長々と話し続けてしまった。路上駐車の車を気にしながら喋る喋る。互いに涙ぐみながら笑い続けて話せるのは嬉しいことです。今度は共通の知人を連れて再訪問すると約束してきました。その知人と土曜日に飲み会です。もう、今から楽しみで楽しみで。 さて、こちらは8割進み、あとは浩大&桐次第。そして陛下を動かすのが楽しみです。毎日、忙しい割に楽しいことが多いなぁ。あと問題は・・・・雨か。
2014-06-18 水 20:30:54 | URL | あお [編集]
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