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融けた泉の扉  27
雷の影響かネット接続が切れて、家中のネットが使えなくなり困りました。ホームルータを新たに購入し、やっと接続。(旦那が) 季節の変わり目の雷は嫌いではありませんが、ネットが使えなったのはメチャ困った。そして愛犬がめちゃ怯えて、試験前の勉強をしている娘の肩に上り、ガタガタと震えてました。


では、どうぞ











後宮から王宮へと移動しながら、バイト妃捜索をしていた浩大はあるモノを目に舌打ちを零して足を止めた。 背後から追い駆けてきた桐も視線を向けると肩を竦め、呆れたように大仰に溜め息を吐く。 振り向いた浩大が桐の溜め息に苦笑いを零し、僅かに眉を顰める。

浩大と桐の視線の先には、王宮の一室から何かを運び出そうとする二人の高官の姿。
運び出しているのは、王宮に従事する高官が持つには違和感があり過ぎる白い袋で、高官らは周囲を確かめながら慎重に運び出そうとしている。 しかし屋根の上から見られているとは思いもしないだろう。 
二人は業者が出入りする門へと白い袋を持ち移動して行った。 回廊の角ごとに周囲に目を配っているようだが、朝議が終わり大半は退出しており王宮を闊歩する者は少ない。 もちろん二人の高官が運んでいる品を目にした者は、何をしているのだと問い質すだろうが、二人の進む先に人影はない。

「しっかし、こんな時刻に大きな荷物を王宮から移動って、解かり易いっ」
「二人掛かりで随分と重そうに持っているな。 ・・・・袋の中身は気を失っているのか」
「動きが無いからそうだろうね。 桐はそのまま奴らの動向を調べてくれ。 オレは陛下に報告に行って来る。 ちょっと李順さんが怖いけど、まあ・・・・仕方がないよね」
「判った。 どの大臣邸に向かうか、楽しみだな」

口角を上げる桐に、楽しみにされても困るけどねと笑って浩大は姿を消した。 
大元の敵を把握し、証拠を集めて逃げられないよう周囲を囲む。 それが敵を減らすために必要だ。 
そのためにはしばらくの間、バイト妃には囮として我慢して貰うしかない。 
もちろん、その間に怪我などないよう警護するのも浩大らの役目だ。
もし小さな怪我ひとつでも彼女が負ったら、狼陛下がどのような態度に出るか想像に易い。 狼陛下があれだけ大切にしている妃を攫おうなど、その妃を餌に狼を飼い慣らそうなど莫迦げた考えを良く思いつくものだと、浩大は乾いた笑を零す。
執務室を覗くと直ぐに李順と目が合った。 眉間に皺を寄せて、今は駄目だと眼鏡を輝かせる。
今は無理かと移動しようとすると椅子から立ち上がった陛下が口角を上げ、手招きをした。 李順が舌打ちをするが、陛下の道具である浩大が優先すべきは陛下の指示だ。

「おっ邪魔でーす。 早速、報告いいっすか?」
「我が妃の行方が判ったか」
「今、王宮から連れ出されたよ。 桐が追い駆けてるから、直ぐに連絡が来るはずっす」
「・・・・・李順」

声を掛けられた李順が大仰な嘆息を吐き、そして眼鏡を持ち上げる。 バイト妃は囮でもあるが、陛下が山と積まれた政務を放置するのは困ると浩大を睨ね付けた。 肩を竦めた浩大が視線を逸らすと、眉間に深い皺を寄せ、しばらく沈黙した李順が口を開く。

「陛下、桐からの報告が来るまでの間、急ぎの書類に目を通して下さい。 いいですか、いつも単独行動を取られますが、今回は城外でのこと。 禁軍に連絡して参りますので、兵が整うまでは政務を優先させて下さい。 政務が、優先、事項ですからね!」
「桐からの報告が来たら、直ぐに動くぞ」

是非もなく書類に筆を走らせ始めた陛下を横目に、李順は執務室から姿を消した。

「浩大、夕鈴はどのように連れ出された?」
「袋に入れられて運ばれて行ったけど、暴れている様子は無いから、何か嗅がされたか飲まされたかだろうね。 前にも毒入りのお茶を用意されたのに、間が抜けて・・・・あわわ」

鋭い視線を感じて慌てて口を閉じるが、小刀まで飛んで来た。 難なく避けるが、陛下の怒りが伝わって来るだけに桐の報告が待たれる。

「夕鈴は素直なだけだ。 もちろん、後で叱責はする」
「確かに素直だよね、お妃ちゃんは。 へーかの演技にも気付かずに日々頑張ってるもんな」
「・・・・桐からの報告が来たら、直ぐに報せよ」

意識を書類に向けた陛下の背に頷き、浩大は屋根へと移動した。 あとは桐からの報告だが、余り遅くなると各関所の門が閉まる時刻となる。 そうなると隠密行動が多少面倒になるなと、浩大は遠くに視線を投じた。 残る問題は、また何処かぶつけて記憶が抜け落ちませんようにと祈るだけだ。

「そういえば何か見えるって言っていたけど、その後はどうだ?」

もちろん、屋根上の浩大の呟きに答える者はいない。



***



目を覚ました夕鈴は後ろ手に縄を打たれ、膝と足首もしっかりと括られていることに気付いた。 周囲に目を向けると薄笑いを浮かべる高官らしき衣装を着た人物がいて、妃が目覚めたことを知るとゆっくりと立ち上がり近付いて来る。

「狼陛下唯一の妃にしては、出された品に不用意に口を付けるなど、間抜けなことだ」
「ぐっ・・・、うぅ」

目が覚めた途端いきなり頭上から馬鹿にされたが、反論出来ない自分に悔しさが込み上げる。 確かにその通りだと、見知らぬ人に出された茶を疑いもしないで飲むなど、確かに自分は間抜けだと呻くしか出来ない。 だけど国のために日々王宮に従事する人間すべてを疑うのは本意ではない。 疑ったり、嘘を言ったり、人を騙すのは好きじゃない自分だ。 だけどバイト妃として雇われている身分としては、やはり疑うべきだったのかと項垂れる。 取り憑かれて王宮側に足を運んでしまった事実に、それだけでいっぱいいっぱいになっていたとはいえ、自分の粗忽な行動が今更ながらに悔やまれた。
そんな夕鈴に、男から呆れたような言葉が降り懸かる。

「何度見ても信じられぬ。 これが陛下唯一の妃とは・・・・」

言われ慣れた言葉を耳にした夕鈴は、腹が立つと思いながらも気持ちが落ち着くのを感じた。 呻くのを止めて、そうだと思い出す。 自分は陛下唯一の妃であり、囮でもあると。
囮として頑張れば陛下の敵が誰だが知ることが出来、減らす手伝いが出来るのだと意識を周囲に向けた。 もちろん、その時の夕鈴の脳裏に李順の顔と共に危険手当も浮かんだのは言うまでもない。 項垂れて、ただ自分の行動を悔やむばかりでは先が無い。 危険手当のために、いや陛下のためにも知りうる情報は漏らさず目に焼き付けてやると目を輝かせると目隠しをされた。

「ちょ! 目隠しなんて・・・、このっ卑怯者ーっ!」
「これからはいくら狼陛下唯一の妃と言えど、目にしない方がいいぞ」
「・・・・・どういうことよ」

男の嘲笑が耳障りで、夕鈴はムッとしながら反論した。 折角、情報を得ようと思ったのに目隠しなどされたら何一つ陛下に伝えることが出来ないじゃないかと、声のする方を見上げる。

「狼の牙で慣れていようとも、刃が自身に向かい振り下ろされるところなどは見たくないだろう」
「そ・・・それは、・・・・見たいと思わないわ」
「まだ薬が抜けていないだろうから、痛みを感じることも少ないがな」

そう言われて縛られた腕を動かすと、確かに痛みは感じなかった。 ぞくりと這い上がる恐怖に言葉を失うと、男が鼻で嗤う音が聞こえて来る。 部屋に入って来た男は帯刀していただろうかと考えるが、何も思い浮かばない。 思い浮かんだのは青慎の顔と下町で御世話になっている人たちで、そして陛下が小犬の顔で近寄って来て、いつもの優しげな笑みを浮かべた。 
心臓がバクバクと音を立てて身体を震わせる。 どうしたって怖いものは、怖い。 
恐怖が全身を包み込み寒気を感じているのに身体の感覚は鈍いままだ。 
これではいざという時、動けない。 いや、目隠しされていては逃げる前に・・・・・。

「狙い、は・・・・新たな妃推挙? それを陛下が望まないとしても?」

渇いた咽喉に無理やり唾を飲み込み、聞いても仕方がないことを尋ねる。 
椅子を引いたのか床に厭な音が響き、男が座ったようだ。 
今判ることは、自分は縛られ動けず、囮としても役に立たないということだけ。 バイト妃として雇われ、最初に囮として攫われた時は王宮側の一室だった。 ここは何処だろうか。 あの時のように王宮だとしたら、同じように陛下が来てくれるだろうか。 
期待しては駄目だと思いながら期待してしまう愚かな自分を叱咤し、夕鈴は必死に口を開く。

「内政が整うまで、陛下は正妃を娶らないわ、よ」
「いるのは妃妾ひとりだけ! その一人で充分だと陛下は仰るが、それを誰が認める!?」
「・・・・決めるのは陛下だわ」

決めるのは国王である陛下だ。 それは夕鈴だって判っている。 だけど陛下の二面性を知られる訳にはいかないから、内政が整うまでは小犬で寛げる場所を私が守りたい。 周りがそれを認めなくても赦さなくても、烏滸がましいと言われようとも守りたいと思うのだ。
刀が自分に振り下ろされるという想像は、既に夕鈴の頭の中にはない。

「私が殺されても貴方達の思惑なんか、陛下はお見通しよっ!!」
「吠え立てるのも今の内だ。 ・・・・この部屋が汚れるのは困るな。 何処か見繕って来よう」
「ちょっと、首謀者は誰なのよ! 冥土の土産に教えなさいよっ!」
「妃妾などが目通り出来る訳もない、高貴な御方だ。 ああ、陛下唯一の妃は氾や柳と懇意だとか? 歴が長く王宮での権力がある貴族だが、それも今だけのこと。 新たな妃に溺れた狼を御するのは容易いことだろう。 色も後ろ盾も強力だ。 今の妃と違ってな」

そんなの陛下は望んでいない。 大臣らは陛下を御して、自由に王宮を牛耳ろうとしているのだろうが、そんなことになるはずがない。 そんなこと、陛下が絶対に許さない。 そのために小犬を隠して怖い王様を演じているというのに、その苦労を、努力を無下にするつもりなのか。 夕鈴が怒りに身体を震わせると、恐怖で震えていると見えたのか、男が口調を変えて話し掛けて来た。

「お前も惨い死に方はしたくないだろう? 狼の弱みの一つでも口にするなら、・・・・そうだな。 遠方に投げ捨てるだけで済むかも知れぬぞ」
「そんなの知らないわ。 もしあったとしても喋るはずがない」

強く言い放ちたいのに声が震えてしまう。 睨みたいのに目隠しで相手を見ることさえ出来ない。 もっと喋って時間稼ぎくらいはしたいと思うのに、次に何を言うべきか頭に浮かばないのが悔しいと夕鈴は唇を噛んだ。 

その時、部屋の扉が開く音がした。 
入り込むヒヤリとした空気に肌がざわめくのを感じ、夕鈴は蒼褪める。 
覚悟なんかしたくない。 したくないけど、・・・・・・しなきゃ駄目だろうか。

「・・・・陛下」

解かってる、出されたお茶に口をつけた私が全面的に悪い。 
取り憑かれたとはいえ、王宮に足を運んだ私が悪い。 
陛下みたいな強靭な意志があれば、取り憑かれるなどなかったはず。 
ああ、今いろいろ考えても仕方がない。 バイト妃としても囮としても、そして私個人としても覚悟なんてしたくないし出来ないから、最後まで精一杯抗ってみよう。

腹を据えた夕鈴は部屋に入って来た人物を目隠し越しに睨み付けた。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 23:30:30 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2014-06-30 月 00:08:55 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。夕鈴の動きをもにょもにょ書いていたら桐の出番がなかった。(汗汗汗)すいません、次は出ます。たぶん出ます。きっと・・・・うん、頑張ります(爆)前は雷ガードを付けていたのですが、新しく付け替えるつもりで外してそのままだったみたい。ルータだけで良かったです。
2014-06-30 月 20:46:27 | URL | あお [編集]
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2014-06-30 月 23:17:03 | | [編集]
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2014-07-01 火 22:58:24 | | [編集]
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2014-07-01 火 23:20:00 | | [編集]
Re: タイトルなし
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。返信遅くなりすいません。7月に入り、忙しさが増した上に更年期なのか、妙に汗掻きになって通勤時に身体を冷やしてしまいました。そして月の物が。もうダブルパンチですよん。娘も先月は二回も月のお出ましがあり、イライラしてだるくて、兄に当たり散らしてた(笑)今の世の男は、こうして女性を怖がるようになるのでしょうね(爆)フェアは今回パスです。だるくてネット注文してる最近ですので。本屋には行きたいけど、時間がないっす。・・・くすん。浩大、桐は次に頑張って貰います。このだるさが抜けたら頑張ります。
2014-07-04 金 21:24:04 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。肩までよじ登る犬の画像をラインで友達に送ったら、爆笑されたと娘も満足。まあ、犬は満足なんてしないでしょうが、若い方を選んで奔ったのを私は忘れません!(怒・・・笑)そしてやっと出せた桐です。なかなか辛辣な台詞が吐けません。すいませんが、もう少しお待ち下さいませ。どうも冷えて風邪をひいたみたいで、薬と睡眠で頑張って治します。
2014-07-04 金 21:40:12 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
いつき様、コメントをありがとう御座います。いろいろ大変な毎日ですが、体調だけは御自愛下さいませ。非日常が過ぎる頃には、季節も変わって落ち着いているといいのですが、台風が近付いて来ると訊き、雷嫌いの犬がちょっと心配です。桐が好きな人は、Mに爆笑です。虐げられるのが好きな、言葉攻めが好きな方ですね!! うん、納得っす。結構むっつりかも知れませんね、桐は。・・・ニヤリ
2014-07-04 金 21:46:14 | URL | あお [編集]
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