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融けた泉の扉  31
暑くて水分を一生懸命摂っていたら、まあ汗が出る出る出る。プールに行きたいけど、スライダーで並ぶ長蛇の列映像を見て直ぐに断念(笑) ミストや氷配りで熱中症予防をしている映像を見ても、もう無理。子供が小さい時なら、子供のためだと行くだろうけど、今なら温泉行ってビールだね!

では、どうぞ











刑吏が開く扉の向こうには、憔悴した顔の姚が椅子に腰掛けていた。 
その姿を目にした彼女は肩を揺らして降ろせと訴えるが、もちろん降ろしては貰えない。 
憤怒を顕わに拘束し続ける陛下を睨んだ瞬間、足元から背に這い上がる急激な寒気に震えた。 
姚を前にして拘束されていることへの怒りのあまり寒気を覚えたのかと思ったが、震えは止まらずに頭からは血の気が下がり、首が上手く動かないことに気付く。 もしかして髪を掴まれた時、または噛み付かれた時に筋でも痛めたかと考えたいが、そうじゃないと総毛立つ肌が知らせて来る。 動かせない首の原因は別だと、振り向いては駄目だと本能が知らせて来るから、訳が解らない震えが止まらない。 

「・・・・な、に? 何故、この身体は・・・・震える・・・・・?」
「これは正直妬けるな。 我が妃が、我が側近の存在にこれほど敏感な反応を示すとは想像以上だ。 こうなるだろうとは思っていたが、目の当たりにすると流石に驚くな。 それだけ真面目ということか」
「・・・・その存在に、何故こんなにも身体が震え、・・・・寒気を覚える・・・・・」
「我が妃が心底逆らえぬ人物に御越し願ったからだ。 なあ、李順?」
「急ぎだと呼び出されましたが、何用で御座いましょうか。 陛下」

桐という人物と共に闇から姿を見せたのは、眼鏡姿の文官らしき衣装を身に纏った細身の男。 
何故だか解からないが、その人物を前に血の気が引くように寒気が奔り、彼が眼鏡を持ち上げながら零す嘆息を耳にして、じわりと背に厭な汗が噴き出す。 
頭に浮かんだのは決して逆らえない、近寄らないで欲しい、それ以上口を開かないで、だ。 
どうしてこんなにも恐怖を覚えなければならないのか、考えることさえ出来ない。

「・・・・姚大臣だけに、特別な尋問があると部屋を用意致しましたが、そこへお妃様が御越しになるとは伺っておりませんでした。 この説明をお願い致します、陛下」
「・・・・か、彼は何者・・・・・なのじゃ・・・・っ!?」
「我が妃をよく知る人物だ。 妃が彼をどのように思っているかは、体感しているだろう?」
「・・・っ!? あ・・・・は、放して・・・・っ」

何を言われても理解出来ない。 ただ、この身体の持ち主が、目の前に現れた人物には逆らえない、逆らっては危険だと本能で知らせて来る。 いま判るのは恐怖だ。 眉を寄せて訝しげに見つめて来る人物がどのような立場の者か判らないが、今にも悲鳴を上げたくなるほど怖いと震えてしまう。

「李順、もう少しこちらへ。 説明をしよう」
「・・・ひ、ひぃ・・・っ!」
「陛下、一体何事でしょうか」

彼女が腕の中で蒼褪め悲鳴を上げながら、少しでも李順から離れたいと身を強張らせる。 
李順からすると、不可解な行動を取っているバイト妃に叱責を落としたいが、今は姚と刑吏の前だと堪えているのが判り、陛下は一人笑いを飲み込む。 あからさまに口角を持ち上げているのは桐で、肩を竦めているのが浩大。 視線を移すと、二人は闇の中へ吸い込まれるように消えて行った。

「李順、我が妃は姚に話があるそうだ。 だが私は、妃が他の男に視線を向けるを赦したくはない」
「・・・・・お妃様が姚大臣にお話し、ですか? しかし接点など皆無のはずでは?」
「ああ、違うな。 我が妃の身体を勝手に使用している過去の亡霊だ」
「はぁ・・・・。 私にも解かるよう説明を求めます、陛下」

椅子に腰掛けたままの姚に近付くと、腕の中の彼女が鋭く反応し身を乗り出そうとするが、李順が寄って来ると身を強張らせて顔を背ける。 思うようにならない感情にガクガクと震え、括られたままの腕を肩ごと揺さ振り、悔しそうに呻き声を上げた。

「お妃様は具合が悪いようですね。 遅い時刻です、部屋に御戻りになられては?」
「それはっ! くぅ・・・・」

額に汗を浮かべて姚を見つめた彼女は、李順の声に戦慄く唇を噛みながら顔を伏せた。 
荒く短い息を吐きながら苦しげに何かを呟き、諦めるつもりはないと主張するように腕を揺すり続ける。 出来ることなら姚の咽喉を掴み爪を立て、息の根を自らの手で止めたいところだろう。 
しかし夕鈴の身体で、手で、彼女の本懐を遂げさせるつもりなどない。

怪訝な表情を浮かべる姚を見下ろすと、彼は視線を外し静かに頭を垂れた。 
先々代国王が存命時より王宮に従事していた老獪な人物は、一見穏やかそうな佇まいだ。 氾に近しいものを持ち、腹に何を隠しているか知れない。 それでも上手く使えるならと従事させていたが、愚かな行動が自身の進退と親族をも滅ぼすとは考えもしなかったのか。 後宮に推し進めた妃の寵愛で身分を高めた貴族の欲は、齢を経ても衰えないらしい。

「姚、国と私のためを思っての行動と言ったが、それは己の欲があってのことだろう」
「そのようなことは決して」
「私の耳と目が、お前たちの会話と行動をつぶさに見聞きしている。 次に宛がう予定の娘の話も、高貴だという首謀者の話もな。 ああ、新たな妃に溺れる狼を御するのは容易いことだと嗤っていたのは誰だ? 簡単に御せると思われていたとは心外だ」
「私は・・・、そのようなことは口にした覚えはありません。 それはお妃様自身が御存じのはずで」

ギリッと鈍い音が陛下の耳に届く。 そんなに強く歯を噛み締めると、あとで夕鈴が困ることになるだろう。 勝手な行動を取るなとばかりに夕鈴の身体を李順へ近付けると、彼女は声無き悲鳴を上げながら顔を伏せる。 悔しそうに俯く妃に顔を近付けた陛下は無機質な声色で告げた。

「我が妃を傷付けるなよ。 お前が無理だと言っていた成仏をさせてやるぞ」
「~~~~っ!」

その声に、言われた内容に彼女は戦慄く唇から何も発せずにいた。 
今、この身体を支配しているのは間違いなく自分のはずだ。 妃だという夕鈴の意識は今や自分の意のままで、痛みだけを押し付けることも手足を動かすことも自由に出来るはずなのに、陛下の側に立つ男の存在が酷く恐ろしい。 
側近だと言っていたが、もしや名のある呪術師なのだろうか。
成仏させるだけの力を持つ祓い屋なのだろうか。

顔を伏せたまま震え続ける妃を見つめていた陛下がゆっくりと顔を上げる。 
姚は蒼褪めた面持ちで、刑吏と李順を見つめていた。

「姚、お前が望む高き場所に連れて行ってやろう。 ・・・・ああ、違うな。 お前が行くべきは地の底か」
「陛下っ! わ、私どもは国を思い、陛下の御為にと後宮の在り方を是正すべく・・・っ!」
「それはこれから会うであろう獄卒共にでも説けばいい。 お前がやったことは、王宮を混乱に貶める愚かな行為だ。 我が妃を攫った結果を、お前らに相応しい場所で存分に知らしめてやろう」
「待て! せめて一太刀でもっ!」
「李順、我が妃の椅子を用意しろ。 眠くなったそうだ」
「・・・っ! わたくしは・・・・あ、駄目っ! ち、近寄るな!」
「お妃様、近寄るななど異なことを。 さあ、椅子の御用意が出来ましたので、どうぞ」 
「ひぅ・・・、ぐぅ・・・っ!」

蒼褪め恐れ戦く妃が肩を竦め李順から身を遠ざけようとするが、括られた袖を掴まれ逃げることが叶わない。 薄笑いを浮かべながら睨ね付ける李順に椅子を押し出され、厭だと抗いながら足は椅子へと向かい、勧められた椅子へと腰掛ける。 
足を動かし腰掛けたのは夕鈴の本能だろう。 
バイト上司の怒気が判るだけに、彼女を押し退け身体を動かしていると解かる。 夕鈴らしいなと笑ってしまいそうになるが、それだけ彼女の中で李順が占める割合が大きいということかと笑みが固まった。 思わず夕鈴の頬を摘み上げると目を瞠って見上げて来る。 その顔は夕鈴そのもので、眉を寄せた困り顔に口元が緩みそうになり、今はそんな場合ではないかと溜め息を吐いた。

「・・・・刑吏、姚を連れて行け。 じっくりと時間を掛け、丁重にもてなせ」
「御意」
「李順、我が妃の側に居ろ。 寝言を言うかも知れないが、付き合ってやれ」
「陛下は何処へ行かれます?」
「咽喉が乾いたからな、少し潤して来る」
「・・・・っ!」

驚愕の表情を呈した夕鈴を見下ろす陛下の表情を目にして李順は眉を寄せたが、嘆息を零して一礼する。 刑吏が姚を引き立てて退室しようとすると、彼は振り向きながら声を張り上げた。

「陛下っ! わ、私どもは国の未来を見据えての行動を取ったまでのこと!」
「・・・・・姚、それは国王である私を無みするということか?」
「そ、そうでは御座いません! 陛下の御世のためにも新しき妃をと」
「我が妃は一人でいいと伝えているはずだ。 刑吏、用をなさない耳は直ぐに斬り捨てよ」
「御意」
「へ・・・・陛下っ!」

刑吏が姚の背を押し部屋から出て行って直ぐに悲痛な叫声が響き、やがて聞こえなくなる。 

姚の叫声に呼応したかのように灯りが揺れ、室内に奇妙な影を描いている間に陛下の姿は消え、部屋に残ったのは李順と夕鈴だけとなった。 しんっと静まり返った部屋で、李順から苛立ち漂う深い溜め息が広がり、夕鈴の身体が椅子から飛び上がらんばかりに震える。 
続いて聞こえて来たのは咳払いだ。 身体の深い場所から湧き上がる理解出来ない恐怖に床だけを見つめていたが、その床に自分以外の足が見え、心臓が止まりそうだと息を飲む。

「・・・・っ!」
「夕鈴殿。 姚にどのような用件があったのでしょうか」
「わ、わたくしは・・・・、よ、姚を・・・・姚を屠りたい・・・・・と」
「何ですか、それは。 はぁ・・・、貴女は自身の立場を鑑みて申されているのでしょうか。 勝手な行動を取り王宮より勝手に攫われる。 妃衣装を汚す。 隠密や禁軍を動かす。 これだけのことをしておいて危険手当が支給されるなど、そんなに図太い神経を御持ちではないですよねぇ?」
「危険・・・・手当? そ、そんなもの・・・・・・」

隣に立つ男の言っている意味が理解出来ずに眉を寄せた顔を上げると、眼鏡を持ち上げた側近だという人物に冷たく睨ね付けられた。 陛下の側近だという男に、陛下の唯一の妃である自分が何故このように睨み付けられるのか全く理解出来ない。 しかし、足元から一気に這い上がるのは間違いなく恐怖だ。 全身の震えが激しくなり、口渇が咽喉を絞め付ける。 貧血のような眩暈がするが、気を失うことが出来ない。 怖い、恐ろしいと身の裡からガタガタと震え、余りの震えに奥歯が鳴り出した。

「夕鈴殿、正直にお答え下さい。 姚大臣とはどこで会いましたか? 何故、勝手に王宮へと足を運ばれたのですか? 私が納得するような答えをお願いします」
「よ、姚とは・・・・薬湯を、いや毒を運ばれ、その恨みで・・・・」
「大臣から薬湯ですか? それはいつのことでしょう。 そのような報告は伺っておりませんが」
「わ、たくしが懐妊した折に、滋養だと偽り・・・・・・」
「はっ! 夕鈴殿、今この状況、私の目の前で、本当に寝言を言っているのですか? これでは危険手当の支払いを中止し、さらに減給に値すると言っても過言では」
「げっ、減給ーっ!? 李順さんっ、そ・・・それは困ります!」

椅子を蹴倒して立ち上がった夕鈴は直ぐに跪き、李順に頭を下げて懇願した。 
同時に扉から飛び込んで来た桐が背後から夕鈴の顎を持ち上げ、浩大が手にした大きな茶杯に入った薬湯を咥内へと注ぎ込む。 突然のことに叫ぶ暇もなく、咥内に広がる有り得ない苦さに首を振ろうとするが、顎は痛いほど掴まれ口を閉じることが出来ず、注ぎ込まれる薬湯は大量で飲み込めない分が口端から溢れて零れ落ちる。 
涙で歪む視界の端に驚き顔の李順が見えたが、助けを求めても叶うことは無いだろう。 
浩大と桐の動きを止めたいが、括られた腕はそのままで、跪いていたため蹴り上げることも出来ない。 

「お妃ちゃん、頑張って~」
「・・・・あ゛ぁっ!? ・・・・ぐ、がっ!!」
「浩大、次はこれを口中に入れ、水を飲ませるように言われている」
「すっげぇ、苦そうな粉だなぁ。 超可哀想~」
「・・・・・っ!!?」

これ以上苦いのは勘弁だと、後でどれだけ叱られてもいいから暴れてやると膝に力を入れた瞬間、桐に顎と肩を押え込まれ、そして浩大が口角を上げながら粉を口中に放り込んだ。




 
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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 21:52:01 | トラックバック(0) | コメント(10)
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2014-08-06 水 22:18:59 | | [編集]
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2014-08-06 水 22:30:09 | | [編集]
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2014-08-07 木 01:43:53 | | [編集]
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2014-08-07 木 22:10:10 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。暑いです。外回り仕事が多いので、マジに帰宅したら寝落ちです。定休日には昼まで寝てしまい、マジに夏バテ近し!です。だけど夏痩せってしたことがないんだよね~。バテるのは厭だけど、夏痩せは憧れますv-32 李順さんをやっと出せてほっとしてます。めちゃ時間が掛かって自分でも呆れてしまいます。それと、優しい桐がお望みですか?(笑)
2014-08-10 日 22:49:41 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。南の島からの御戻り、お疲れ様でした。台風シーズン、問題なくお過ごしでしょうか。日曜日に直撃で、めちゃ犬がビビってます。バイト娘の送迎に駆り出された旦那も、すげぇ風だと驚いてましたが、まあ、うちの旦那は飛ばされることは100%ないので安心(爆)李順に本能で怯えるシーンが書けてやっとここまで来たと安堵する自分です。コミック発売にドキドキしながら、陛下の怖さはやっぱり本家には敵わないなと項垂れ~で御座います。のんびりですが、引き続きお付き合い頂けたら嬉しいです。
2014-08-10 日 22:56:16 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ぶんた様、コメントをありがとう御座います。お盆時期は別の意味で忙しいでしょうね。夏休みに入ってから、友人は万引きがひどいと泣いてました。マジにバイトを増やしても無理で、巡回を増やしているけど頭が痛いと愚痴ってました。どの商売も同じでしょうが、もうこれ以上本屋が減るのは厭です。ネット注文もするけど、店舗で一目惚れって多いから本当に困る。夕鈴も困り果ててますが、まあ仕方がない(爆)李順さんの怖さが書きたかったので諦めて貰いましょう。夏コミ近くなり、娘が遅くまでミシンを使ってます。互いに寝不足にならないよう声を掛け合ってますが、寝るのは私の方が先。更新を気にしながら目が・・・・シバシバで・・・・。頑張ります。
2014-08-10 日 23:09:23 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
彩華様、コメントをありがとう御座います。更新滞ってまことにすいません。寝落ちの毎日、休みの日は掃除と買い物で潰れ、パソコンを前に目がショボショボ。近々視力検査を予約してます。眼鏡の度数が合わなくなっているのだろうと思いながら、面倒で・・・つい。眼精疲労が進んで眠いのか、外回りでばてているのか、両方か(笑)頑張りますので、のんびりお付き合い下さいませ。
2014-08-10 日 23:11:48 | URL | あお [編集]
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2014-08-16 土 11:27:26 | | [編集]
Re: タイトルなし
いつき様、コメントをありがとう御座います。お疲れ様ですね、お互いに。暑い中、出社するだけでシャワーを浴びたくなる気分の毎日。帰宅後ぐったりで西日の台所に立つ私です。洗濯が乾くのはいいけど、畳むのがもう面倒で面倒で(笑)風呂に入ると至福のひと時じゃ~っと思うのですが、浴後なかなか引かない汗にエアコンの前で仁王立ちです(爆)それが悪かったのか風邪をひき、コメント返信遅くなってすいませんでした!!コミックのような甘いちゅ、ちゅシーンを書きたいのに、横道ソレソレ病で困っています(汗)
2014-08-20 水 00:03:01 | URL | あお [編集]
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