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玩味

『腹黒シリーズ』短編です。 陛下が妙な具合に飛び跳ねていますので、御了承の上ご覧下さいませ。 なお、このシリーズは過去作品を修正したものです。 夕鈴はバイト花嫁です。 本来の作品より、とても辛辣な言動が多いことを御了承下さい。

では、どうぞ







「痛い。 痛いよ、ゆーりん!」
「うるさいっ! よ、よ、よくも先刻は・・・・!」

夕鈴は侍女らが去ったのを確認すると、即座に隣りの男の前に立ち、そして長椅子で優雅にお茶を飲む陛下の手から茶杯を奪い取り、頬を思い切り引っ張った。  



昼前、政務室に顔を出した夕鈴は、方淵らと話しをしている内に熱が籠り、いつものバトルとなった。 
後宮の妃がすべき本来の務めとは何たるかと、耳にタコが出来るくらい繰り返し聞かされた話を再び持ち出され、いい加減にしてくれと叫びそうになる。  
『臨時花嫁』として雇われた夕鈴は、いくら邪魔だ、迷惑だ、後宮に籠もっていろと方淵に睨まれても、政務室に陛下唯一の妃として顔を出す。 頑として場を離れない妃に苛立った方淵が何を喚こうが、唯一の妃として微笑む。 上司と、その上の立場である陛下からの厳命に、一庶民が逆らえる訳が無い。 おまけに借金もあり、可愛い弟のための学資金を貯めたいという理由もある。
しかし、その日の方淵はしつこかった。 
時間の経過と共に妃の微笑みが強張り、「でも・・・」 と反論してしまう。 
そして始まったいつものバトルだったのに!! 
もう少しであの方淵を言い負かせることが出来そうだったのに!!

背後から突然現れた陛下はバトル中の妃の頬を突付き、驚いて振り向いた妃の頬を、たくさんの官吏がいる政務室で・・・・・・、べろりと舐めたのだ。 
驚き過ぎて目を瞠っていると、仕事モードの狼陛下は妖艶な笑みを零した。 

「我が妃は甘いな。 もっと君を堪能するとしよう」

政務室に現れたばかりの陛下は、ふざけたことを抜かしながら妃を抱き上げ、集まった官吏たちに何の指示も出さずに場を移動した。 陛下の腕の中、どうにか妃演技を続ける私の視界には、眉を寄せて嫌悪を駄々漏れにする方淵と、生温い視線を送ってきた水月さんが見える。 そして目を点にして固まる官吏の皆さん方。
あああああああっ! 恥ずかしいっ!!
移送先の執務室まではどうにか笑みを浮かべ続けることが出来た。 あの場では寵愛されている妃として、どうにか上手く演技出来たと思う。 
それなのに、執務室で陛下を待ち構えていた李順さんは、急に姿を消した陛下を叱責するついでのように、いつまで経っても落ち着きがないと、私にまで小言を言い始めた。 おまけに 「陛下が政務をされている間、あなたは反省文でも書いて下さい」 と睨み付けてくる。



「人の、・・・人の頬を~! 乙女の頬を何だと思っているのっ!」
「痛いっ! 痛いよ~、ゆーりーん」

夜、妃の自室にやって来た陛下を捕まえて、夕鈴はようやく反撃することが出来たのだ。 腹が立って、煮えくり返って、夕鈴は陛下の頬を抓ったまま力を加減することなく上下に揺さぶる。

「バイトの頬を舐めるなんて、それが国王のすることですかっ!」 
「だって、夕鈴が方淵と見詰め合っているのが嫌だったんだよ。 夕鈴は僕のお嫁さんなのに、ひどいよ~。 それに夕鈴のほっぺって饅頭みたいで美味しそうだなって思ったら・・・・、つい」

その言葉は前にも言われた。 もう一度 『家出』 してやろうかと思った台詞だ。
夕鈴が冷たく睨むと、陛下はしゅんと項垂れ、潤んだ瞳でそろりと見上げてきた。 深く反省していますと言わんばかりだが、騙されるものかと鼻先に皺を作る。 

「バイトの頬を舐めるのは禁止です。 ましてや食べ物と一緒にされたくはありません!」

頬を押えながらシュンと肩を落とす陛下は、それでも小声でブツブツと文句を言っている。 それも小声ながら はっきりと夕鈴の耳には届く声量で。

「食べ物と一緒にはしてないよ。 夕鈴のほっぺは饅頭みたいで美味しそうだと思っただけで」
「一緒じゃないですか! 第一、ほっぺなんか舐めたって美味しくありません! まったく!」

苛立ちは治まらず、ツンっと顔を逸らすと同時に身体が浮き上がり、ぐるりと反転した。 
何? と思う間もなく陛下の膝の上に乗せられ、捕らわれてしまったことに気付く。 腰と膝裏に陛下の手が回っていて、がっちりと固定されている。

「なっ!? 何すんのよっ!!」
「夕鈴は美味しいよ。 ほっぺも、手も、耳朶も、首筋も・・・。 僕は大好きだな。 お仕事頑張るから、もう少し味わってもいい? ね、ゆーりん?」
「い!? い、いい訳ないでしょ! バイト規約にそれは入ってないっ!」
「じゃあ、規約に追加しよう。 夫婦演技の向上のため、ほっぺ舐めは必要事項だと明記しておくから。 円満夫婦を維持するためにも、ね? では、夕鈴。 いただきます!」
「・・・っ!!」

小犬が突然変異して、狼に変貌する。 舌舐めずりする動きに目を奪われ、反撃の狼煙を叫ぼうにも咽喉が強張り、赤い舌先を凝視するだけしか出来ない。 思い切り突き出した腕も簡単に外され、寝台に縫い付けられた夕鈴はハクハクと口を開け閉めしながら、どうにか首を横に振った。 

「そんな風にほっぺを美味しそうにぷるぷるさせて・・・・。 もしかして、煽ってるの?」

そんな訳あるか! ぷるぷるって、私の頬はそんなに揺れないわよ! 
そう言ってやりたいのに、だけど声が出ない。 必死に大きく首を振るのに、小犬の声色で近付く狼の気配に怯えてしまう。 これはいけないと眉を寄せるも、どうやって脱せばいいのか判らない。 暴れても兎の力じゃ敵わない。 何で急にこんな展開になっているの?
さっきまで耳も尻尾も垂れた小犬だったじゃないか!
や、や、やめっ! な、舐め・・・・・、 きゃああああっ!!


どのくらい舐めたら狼は満足するのかしら。 いや、狼が満足する前に、私の頬が削られて無くなってしまう! 仲良し夫婦演技に文句を言わなきゃ良かったのかしら。 陛下の頬を抓ったのは遣りすぎだったかしら。
だけど、あれは唯一の妃演技の範疇を超えていた。 だから私の反撃は間違って・・・・な、なんで耳を齧るの? ああっ、頬に歯を当てられた。 誰か、李順さんっ! この食欲旺盛な狼を捕縛しに来てください! 本当に食べられちゃう!



夕鈴の悲痛な願いが叶うのは、いつになるのか、誰も知らない。
.


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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 01:03:28 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
このシリーズ好きなんです!久しぶりに一気読み!満足です~。
この満足感に浸っていたい(仕事したくない)。
2015-10-13 火 13:44:19 | URL | ますたぬ [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。そしてお久し振りです!めちゃ嬉しい。のんびり主婦を満喫して、し過ぎてネット離れ気味ですが、掘り起こした遺物を御読み頂き、感激です。本当にありがとうです。
2015-10-14 水 12:13:46 | URL | あお [編集]
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