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動物愛護

『腹黒シリーズ』短編です。 陛下が妙な具合に飛び跳ねていますので、御了承の上ご覧下さいませ。 なお、このシリーズは過去作品を修正したものです。 夕鈴はバイト花嫁です。 本来の作品より、とても辛辣な言動が多いことを御了承下さい。
こちらは数年前の動物愛護週間に作った作品です。

では、どうぞ




 


「台風の影響なのか知らないけど、けっこう蒸し暑いわね」
「そうだね。 それなのに僕のおやつを作ってくれるなんて、夕鈴は優しいお嫁さんだよね」

愛しい妻が作ってくれた出来たての饅頭を手に、僕は顔を緩ませながら息を吹き掛ける。 
先日の台風は蒸し暑さを残して去り、しかし新たな台風が近付いていると万年幽鬼のような顔色の宰相が零していた。 日中は妙な暑さがあるが、朝晩は冷え込むことも多くなった。 体調不良者の増加に伴い薬草などの高騰が起きないか懸念が生じる。 民が困らぬよう煩慮するのも国王として当然のことだ。
・・・・・万が一にも夕鈴の実家がある下町で流感が出たら、弟大好き夕鈴は文字通り、脱兎の如く看病に行ってしまうだろう。 
そんな最悪の事態が起こらないよう下町の医家事情まで目を光らせている僕に、天女のように優しい夕鈴が饅頭を作ってくた。 作り手の夕鈴の方が熱いだろうに、僕を団扇で扇ぎながら手元の饅頭をじっと見る。

「美味しいよ、夕鈴」
「・・・・最近、忙しそうだったから」
「うん、ありがとう!」
「・・・・蒸し暑いからって、冷たいものばかり飲み食いすると・・・お腹、冷えちゃうし」
「うん、嬉しいよ!」
「・・・・老師がぎっくり腰で掃除も出来なかったから暇で」
「うん、夕鈴の優しさがいっぱい詰まってて、すごく美味しいよ」

ツンと顔を逸らした夕鈴の頬はほんのり淡く染まり始めた。 きっと耳まで赤く染まっているのだろう。 可愛い可愛い可愛い夕鈴が作ってくれた饅頭をゆっくり味わいながら、僕は髪に隠れた耳朶をじっと見つめ続ける。

「ご馳走様でした」
「はい、お粗末さまでした。 ではさっさと執務室に御戻り下さい」

卓を片付けながら、僕の前に冷めたお茶をそっと出す夕鈴。 
言葉と裏腹な仕草に、僕は酩酊した気分でお茶を口にした。 
こんなに可愛いことをして、僕の心を奪っておいて、執務室に行けだなんて、何てつれないことを言うんだろう。 だけど冷たいことを言う口は壮絶に可愛らしい。 僕が直ぐに夕鈴から離れられないのは、この可愛い仕種が原因だ。 この可愛い花嫁に、どんなイジワルを・・・・じゃなくて、どんなお礼をしようか。
濡れた唇を舌でなぞりながら、僕は目を細めた。

今日は『動物愛護の日』 だから、僕は兎を愛で、夕鈴は小犬を愛でる。
兎からの饅頭を堪能したから、今度は僕の番。

飲み終えた茶杯を置いて僕は立ち上がる。 大きく目を見開いた夕鈴から団扇を奪い、頬を淡く染めている可愛い妻を優しく扇ぐ。 しばらくは驚きにぽかんと口を開けていたが、涼しい風に落ち着いたのか、夕鈴は背を正して 「早く政務にお戻り下さい」 と僕を睨みつけてきた。 だが、どんな仕草も可愛いだけだ。  

「まだ熱いでしょ? 顔が赤いよ。 僕のために熱い思いをして厨房に立って、美味しい饅頭を作ってくれたんだから、これくらいはさせて欲しいな。 ね、夕鈴。 僕のこと、好き?」
「あー、はいはい。 好きですよ。 国王陛下万歳」

つれない言葉が帰ってくるけど、扇がれて気持ちいいのか夕鈴は目を閉じて風に身を任せている。 褒められて気分がいいのか、上気した顔から力が抜けて瞳を閉じているから、まるでキスをせがんでいるようにも見えちゃう。 冷たい言葉とは裏腹の甘い態度に、僕は小犬を前面に出しながら夕鈴を扇ぐ。

「・・・・そんな言い方はちょっと寂しい・・・・」
「白陽国の国王様でしょ。 庶民に好かれて嬉しいでしょ?」

ふふんっと笑う夕鈴は力を抜いて気持ちの良い風に身を任せている。 心地良い風と爽やかな花茶に癒された夕鈴を、もっと癒して愛でてあげたい。 
狼が兎を愛でるのだ。 多少の甘噛みは許されるだろう。  

「・・・っ! な、何!?」

もちろん甘噛みをする前に、癒すのを忘れてはならない。 
僕は夕鈴の両手を重ねて持ち、上に持ち上げた。 そのまま右側へ倒すと、夕鈴の身体は長椅子に仰向けになる。 夕鈴の手はそのまま頭の上に片手で縫い止め、倒れて持ち上がった膝裏に自身の足を滑らせた。 長椅子に押し込まれた形で横たわる夕鈴は驚愕に目を瞠り、そして一気に顔色を変える。 起き上がろうと持ち上がる膝を片手で制すると、夕鈴は押さえ込まれた手を解こうともがき始めた。

「そんなに暴れないでいいよ。 身体を休ませて、扇がれていて。 ね?」
「なっ! 何でこの体勢? これじゃ・・・休めない! 起きる、起きるわよ!」

膝から離した手で夕鈴の腕に纏わり付く袖を下げ、そのまま襟元を緩める。 兎が涙目で悲鳴を上げるけど、僕は全く気にならない。 寛がせようとしているのに、本当に夕鈴はシャイだなと目を細めるだけだ。 そのまま団扇で淡く染まる肌に心地よい風を送る。

「肌がほんのり染まっているよ、すごっく暑かったんだね。 涼しくなるまで充分身体を休ませた方がいいよ。 僕がこうして扇いであげるから、ゆっくり休んでね」
「こ、こ、こ・・・んな状況で扇がれて、涼しくなると思ってんの!? いいから、陛下は」
「もう少し強く扇ぐ?」
「結構です! それより陛下は仕事に」
「ゆーりん、饅頭すごく美味しかったよ。 奥さんからの愛情詰まった饅頭はとっても甘くて、僕は幸せだな。 みんなに教えてあげたくなる。 ・・・でも他の人には作っちゃ駄目だよ?」
「人の話しを・・・・聞けっ!」
 
僕の膝上で兎が暴れる。 人払いした妃の部屋で、それでも恥ずかしがる夕鈴が可愛くて堪らない。 
自由になる足がバタバタと揺れ、見ると裾が捲れていた。 

「ああ、足も扇ぐ?」
「捲るなっ! さ、触るな! もう起きるから、腕を離してっ! 扇がないでって!」
「・・・・ゆーりんの足、白くて・・・・柔らかそう・・・」
「見るな、触るな、解放して! ほ、本当に・・・・それ以上捲らな・・・」



熱々の饅頭を、二人きりの時間が楽しくてゆっくり食べていたのが悪かったのか。
頭の回転が悪い臣下が多いのが悪いのか。
碌に兎を愛でることが出来ない内に、有能で頑固で融通の利かない側近が後宮に現れてしまった。

「バイトを翻弄するのもいい加減にして、溜まった仕事に取り掛かれ!」
「愛でていただけだよぉ。 ・・・まだ夕鈴も扇がれ足りないだろうに。 ほら、真っ赤な顔で、まだ熱いんだよ。 今夜は徹夜するから、もう少し妻を扇ぐ時間を」
「徹夜するほどの体力がおありなら、宰相の部屋へお連れ致しましょう。 溜まった政務がすっきり片付き、私も宰相も万々歳です。 夕鈴殿は休憩が終わりましたら、掃除へ向かって下さい」

首根っこを掴まれ、嫌々ながら連れ出される。 長椅子で未だ荒い呼吸を繰り返す夕鈴が可哀想でならない。 もう少し扇いであげたい。 襟元や裾、捲った袖口から風を送り、程よく弛緩した兎肉を喰む予定だったのに・・・・。 

部屋から出る寸前に振り返ると、可愛い兎が涙目で 『行かないで』 と煽っていた。 
僕は宰相部屋から抜け出し、もう一度兎を愛でるための作戦を練り始める。



しかし、その後何度も抜け出そうと画策しても、有能すぎる側近が側から離れず、『動物愛護週間』 が終わってしまった。



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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 16:10:51 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
やっぱりこのシリーズは楽しいですね!
夕鈴、ツンツンしててもいつもあっという間に逆転されちゃう(笑) 噛み合わない会話がどんどんずれていくのが楽しくてたまりません!
2015-10-14 水 21:33:16 | URL | ハニー [編集]
Re: タイトルなし
ハニー様、コメントをありがとう御座います。狼に翻弄されるバイト娘を書くのはやっぱり楽しい。ところで、このシリーズに桐を出してもいいのか、思案中です。手直しして再出とはいえ、大きく違ってしまうかなとお悩み中。出しても・・・いいかな?
2015-10-19 月 00:46:04 | URL | あお [編集]
もちろん!大歓迎ですッ!!

またあのちょっと皮肉っぽい、笑いのツボが可笑しい桐との絡みが読めるんですね♪
どんな風に絡んでいくのか、楽しみです!
2015-10-20 火 06:19:48 | URL | ハニー [編集]
Re: タイトルなし
ハニー様、コメントをありがとう御座います。大歓迎のお言葉、めちゃ嬉しいです。次の話に突っ込むのは長さ的に無理があるので、その内、のんびり桐を出したいなと思います。 辛辣な言葉を吐かせるのが、今から楽しみです。ありがとう御座います。
2015-10-22 木 00:01:15 | URL | あお [編集]
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