スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
感謝

『腹黒シリーズ』短編です。 陛下が妙な具合に飛び跳ねていますので御了承の上ご覧下さいませ。 なお、このシリーズは過去作品を修正したものです。 夕鈴はバイト花嫁です。 本来の作品より、とても辛辣な言動が多いことを御了承下さい。 
これは数年前の 『勤労感謝の日』に作った作品です。


では、どうぞ




 


「ねえ、夕鈴。 あそこの子供、可愛いね」
「そうですね。 ・・・・それより克右さんは何処でしょうか」
「ねえ、夕鈴。 あそこの店は何を売っているんだろう?」
「さあ、わかりません。 ・・・・ここで待ち合わせのはずですが」

待ち合わせ場所は間違っていないはずだと周りを見回すと、腕を掴まれ後ろに引き寄せられる。 あまりにも強引に引き寄せられ、何をするんだと背後の人物を睨み上げると、そこには口を尖らせ、明らかに拗ねた表情の陛下がいた。 

「何ですか? 何か問題でもありましたか?」
「ゆーりんの相槌がそっけない。 僕、つまらないよ」

いい歳した大人が、そんなことで人を引き摺り倒そうとしたのかと、夕鈴は冷笑を浮かべた。 

「・・・・・陛下は、いえ、李翔さんは何故下町に来ているんですか? 克右さんと待ち合わせている間にあちこち見るのはいいですが、私の相槌にまで文句を言う必要ありません」
「だってぇ~~~~」

だってじゃないだろうと突っ込みたくなるが、丁度そこへ克右が姿を見せた。 
互いに軽く御辞儀をすると、さっそく案内を始めてくれる。 今日はいつも陛下に翻弄されながらも政務に勤しむ李順さんのために、贈り物をしようと休みをもらって町に来た。 だけど貴族である李順さんに贈るにも、庶民である夕鈴には何を贈ればいいのか見当もつかない。 下町の雑貨や八百屋などは熟知しているが、王宮に勤める貴人に相応しいものなど思い付かないのが現実だ。 そこで武官ではあるが、高級な店も熟知している頼れる人物、克右に頼んで注文をお願いした。

だけど陛下が同行するのは想定外で、どうして毎回ばれるかなと溜め息しか出て来ない。 克右さんの先導で町を歩く夕鈴の、その背後から呪詛のような声が聞こえてくる。

「いつも頑張っているのは夕鈴なのに・・・・。 李順に贈り物をするために貴重な休みを使うより、僕といっしょに出掛けた方が絶対に楽しいのに・・・・。 大事な給金を李順のために使うなんて、あんまりだ。 そんなことに使うより、僕のために美味しい料理を作ってくれたらいいのに・・・・」

背後でブツブツ言い続ける陛下に辟易しながらも、夕鈴は無視が出来ない。 無視をしたら、それこそ駄々を捏ねて地面に座り込むこと間違いなしだ。 すると克右さんも動かなくなる。 時間は限られているのだ。 出来れば実家に顔を出して、青慎の様子を見たい。

「李翔さん、静かにしてくれますか? 克右さん、頼んでいた物はどの店に?」
「あそこの店です。 良い品ばかりを取り扱っている店なのですが、贈り物の筆への名入れに少々時間が掛かったようで、当初の予定日より遅くなり、すいません」
「いえいえ、そんな。 本当に何から何まで、お手数を掛けてすいません。 でも渡した時の李順さんの顔が楽しみです。 克右さん、本当にありがとう御座います」

店に到着し、名入れした上質の筆を包んでもらい、店を出るともう一度克右に御礼を伝えた。 夕鈴は受け取った品を大切に胸に抱えて歩き始めるが、陛下は面白くないと文句を再開する。 それを無視して歩を早めると、袖を引かれて蹈鞴を踏んでしまった。

「ねえ、夕鈴。 僕もお仕事頑張っているのに、どーして李順だけなの?」

舌打ちをして陛下を睨むと、きょとんとした顔が夕鈴を見つめ返していた。
・・・・・本当に面倒だ。 
夕鈴は一瞥しただけで前に向き直るが、袖がぐいぐい引かれ進むことが出来ない。

「もっとゆっくり歩いてよぉ。 あ、あそこに揚げ餃子が!」
「~~~っ! 食べたきゃ一人で食べて来て下さい。 私はちゃんと李順さんに出掛ける許可をもらってますが、へ・・・李翔さんは黙って抜け出して来てるでしょ! 早く帰らないと叱られますよ?」

最初から一人で買い物に行く筈だったのに、王宮から離れて直ぐに陛下が隣に立っていた。 それからはずっと手を繋ぎ、何かと絡んで来ていたのだ。 うざいったらない!

「だぁて、僕に内緒で王宮を出たと思ったら、克右と待ち合わせだなんて・・・」
「こんな高級な店、知らないんだから仕方がないでしょう。 李順さんに私が選んだ品では申し訳がないし、さっきも言いましたが、私はちゃんと許可をもらって来ているんです!」
「僕は夕鈴が選んだものなら、どんなものでも嬉しいよ」
「陛下にはお仕事を差し上げます。 さっさと一人でお戻り下さい」

踵を返して足を早めると、追いすがるように陛下が夕鈴の腕を引く。 これ以上愚図られると、実家に顔を出す時間が無くなる。 陛下を連れて実家に行くと、何だかんだと陛下が居座ろうとするから腹が立つ。 夕鈴が早く戻れと繰り返すと、陛下は人目も憚らずキュンキュンと鳴き出した。 
勝手に王宮を抜け出し、勝手にバイトの買い物に付き添い、終わったから帰れと言われて泣き出すなど、碌でもない国王だ。 この国王が統べる国の民であることが情けなくなる。 
頭痛がすると額を押さえると、とたんに陛下が心配そうな顔で覗き込む。
 
「ゆーりん、具合悪そう。 少し休んでいく?」

夕鈴の返答を待たず、陛下は腕を掴んで近くの宿へと連れ込もうとする。

「どこも悪くない! いいから陛・・・李翔さんは直ぐに戻ってっ!」
「無理はしない方がいいよ、ゆーりん。 折角のお休みに具合が悪くなるなんて可哀想。 宿では僕の膝枕でゆっくり癒してあげるからね。 どうせなら一泊してもいいよ」
「何を言って! 私は戻れって言っ」
「あ、これ美味しいよ」

宿の入り口で、並びの店で売られていた何かを素早く買った陛下は、それを夕鈴の口に押し込んだ。 押し込まれた物が食べ物と知った夕鈴は吐き出すことも文句も言えず、とにかく急いで噛んで飲み込む。 飲み込んだと同時に妙な匂いが口いっぱいに広がり、何を食べたのだと愕然とする。 

「あ、これ酒饅頭だ。 ごめんね、ゆーりん」

反省の欠片もない謝罪言葉を聞きながら、夕鈴は陛下の背後で揺れるノボリを見詰めた。 
『大人の味 酒饅頭!』 
ノボリに書かれた文字を理解した途端、足元がぐらりと揺れ、胸が一気に熱くなる。 蒸して酒の成分は飛んでいるはずだと思うのだが、動悸までしてくる。 文句を言おうとしたら抱き上げられた。 抗おうとするのだが、どうしたことか力が抜けて文句のひとつも出て来ない。 宿の主人が恭しく中へと誘い込むのが視界の端に映った。 瞼が重くなり、それでも李順への贈り物をしっかりと胸に抱え込む。

勤労感謝・・・・・・・・・。
絶対この陛下には感謝なんかしないぞと、意識が途切れる寸前に夕鈴は心から誓った。 



スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 00:12:15 | トラックバック(0) | コメント(0)
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。