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温かな痕

『腹黒シリーズ』短編です。 陛下が妙な具合に飛び跳ねていますので御了承の上ご覧下さいませ。 過去修正作品ではありません。 夕鈴はバイト花嫁ですが、本来の作品より、とても辛辣な言動が多いことを御了承下さい。 

では、どうぞ







今日は朝から温かいなぁ。 陽の光って、こんなにも幸せにしてくれるんだぁ。  
布団の中までぬくぬくで、その温さに包まれながら、夕鈴は侍女が声を掛けてくるまでのひと時を微睡んでいた。 朝晩の冷え込みが日に日に深まる時期、こうして惰眠をむさぼるのが怖いくらいに気持ちいい。 
臨時花嫁バイトの利点は居住まいの豪華さだけではなく、衣装や食事や菓子にもあり、実家に戻ってから何度も夢に見そうだと笑ってしまう。 それにしても今日は本当に温かい。 掛布団を変えたのかしらと思うほど温かく、このままでは本気で二度寝しそうだと伸びをした。

「ゆーりん、もう起きるの?」
「そろそろ侍女さんが声を掛けてくれると・・・・ え?」
「もう少し横になっていようよ。 ・・・まだ眠い」

聞こえてはならぬ声が耳に届き、夕鈴は一瞬で覚醒した。 そのまま硬直し、呼吸さえも止まったようで、耳奥から心臓の鼓動が大きく響いてくる。 
・・・・まさか。 嘘よね? 冗談だよね? 
誰に尋ねているのか、頭の中で何度も繰り返し、今の状態を把握しようと無理やり瞼を抉じ開けた。 厚地の天蓋が下ろされた寝台は薄暗く、合わせ目から射し込む温かそうな朝日が細い光の線を模っている。 目の前の光景はいつもと何ら変わりなく、だけど背後から、いつもとは違う熱を感じた。 
祈るように視線を動かすと、あきらかに枕とは異なるモノがにょっきり生えており、そこに夕鈴の頭が乗っている。 背後に感じていた熱が一気に上昇したように感じた瞬間、その熱がごそりと動いた。  

「そ・・・こに、います?」
「うん。 朝方にやっと政務が片付いて、寒いから来ちゃった」

暖を求めて人の布団に潜り込む。 青慎も夜中に厠に行った帰りに同じことをしたと思い出す。 
だけどここは実家じゃないし、潜り込んだ人物は青慎じゃない!
しかし 「お前は青慎じゃないっ!」 と大きな声は出せない。 
バイトとはいえ陛下唯一の妃が寝所で大声を出し、夫である陛下を詰るなど、してはならない。
だけど・・・、だけど、だけど、この現状は受け入れがたいっ!
ここを何処だと思ってるんだ。 何をしているんだ、早く出て行け。 入って来たと同じように静かに出て行ってくれ。 李順さんに怒られるぞ。 バイト規約にないことをするな。 こんなことしていいと思ってるのか。
整理し切れない罵倒がグルグル回り、意を決して口を開こうとした時、柔らかな声が掛けられる。

「お妃様、お目覚めの刻限で御座います」
「・・・え、・・・あ」
「もう少し休む。 朝餉は二人分用意するように」

天蓋の向こうから息を飲む声が聞こえ、慌ただしい了承の返事と共にパタパタと去っていく音が聞こえた。 頭を抱えようとすると背後から引き寄せられ、後頭部に幾度も柔らかなものを押し当てられる。 
軽やかな濡れた音の正体は何だろう。 
いや、駄目だ。 追及してはいけない。 今日は何の厄日だと呻くしか出来ない。

「もう書簡の山が崩れなくって、周の表情は変わらなくって、すごい疲れちゃった。 仮眠しようと思ったら寒くて、思わず夕鈴のところに来ちゃった。 ああ・・・あったかい・・・」

疲労感滲む声が耳を擽るが、同時に引き寄せる腕の先がモゾモゾと動き出すから、少しも可哀想なんて思えない。 それは陛下が政務を溜めたせいだろうと突っ込んでやりたいのに、耳朶に擦り寄る唇の感触に、腰を撫で回す手の動きに叫びそうになる。 息を整えようとすると腕が動く。 背を正そうとすると引き寄せられる。

「ちょ・・・、もう起きます!」
「ええー、もう少しだけ寝かせてよぉ」
「陛下はこのまま寝ていても結構です! だ、だけど、この件はしっかり、全て、李順さんに報告させて頂きますからね! バ、バイト規約に違反してます! 腕を離してぇ!」
「大きな声を出しては駄目だろう? 仲良し夫婦のいちゃいちゃに当てられて、侍女が食器を落したらどうする? 夕鈴の借金に加算されちゃうよ? そんなの、困るでしょう?」

それは勘弁と慌てて口を閉じるが、大人しく拘束されるつもりはないと静かに暴れる。 しかし陛下は解放してくれない。 楽しげに苦笑を漏らしながら人の頭に唇を押し付け、脇腹を撫で回す。 
くすぐったいと身を捩るが、寝台上では逃げ場が限られる。 大きな声は出せないし、暴れる音を訝しく思われても困る。 陛下が寝るまで耐えようと身を丸めると、もう少し寝たいと言った本人の手が怪しい動きを始めやがった。 首から回った手が肩を撫で、耳朶を擽り出し、腰に回った手が太腿を擦り始める。 
必死に手の動きを止めようとするが、力では敵いっこない。 抓って引っ掻いて、それでも暴挙は止まらない。 くすぐったさに耐えられず、妙な声が漏れてしまう。

「く・・・ぅ、んんっ」
「気持ちいい? 夕鈴が身を寄せて来るから、すごっく温かいよ」
「へ、いかが引き寄せている、だけ、でしょ・・・ぁんっ! やっ」
「可愛い、夕鈴。 もっと声を聞かせて・・・」

手を動かすな。 寝たいなら、私を解放して勝手に寝てくれ。 
そ、そこから手を動かすなっ。 それ以上は、あ、あ・・・っ、駄目だったらっ!
誰か、侍女さんっ、助けて下さーい! 陛下に無体なことをされています! 陛下の側近を呼んで来てぇっ! この場がどんな惨状になってもいい。 この狼を仕留められるのは李順さんだけなんです! 

「夕鈴の白い肌に、私の痕をつけていいか?」
「ぐぅ! ・・・っ、ふぅ、・・・ぐっ」

いい訳ないだろう! 口を塞ぐなっ! 襟を広げるなっ! 首を舐めるな! 
ここ最近は大人しく仲良し夫婦を演じていたじゃないか。 とても忙しいと執務室に籠ることが多かったじゃないか。 何があってこんな暴挙に出るんだ。 ストレスか? ストレス発散にバイト妃を貶めるのか? こんなの、絶対に許せない。 実家に帰らせてもらいます! その前にどうにかしなきゃ、エロ狼に喰われてしまう! 
いや、頑張るんだ自分っ! 喰われる前に、喰い付いてやれ!

「っ・・・! ゆ、夕鈴?」

渾身の力で陛下の腕を引き剥がした夕鈴は、その腕に勢いよく噛み付いた。 
ギリギリと歯と爪を喰い込ませ、軋む顎を叱咤して噛み続けた。 
国王陛下に噛み付いて、その後どうなるかなど考えていられない。 
それより自分の貞操の方が大事だ。 不埒な真似をする狼に思い知らせてやる! 

腕の持ち主が起き上がる動きに、夕鈴は瞬きして我に返った。 
いつの間にか腰や太股を擦っていた手は離れ、天蓋から差し込む眩しさに目を細める。 やっと陛下が離れたと安堵すると同時に、いま自分が何をしたかを思い出し、夕鈴は一気に蒼褪めた。 蒼褪めた顔を寝台横に立つ人物へ向けると、窓から射し込む朝日の下で自分の腕をじっと見つめていた。
腕にはくっきりと歯形が見え、その歯形を浮き上がらせるように赤いものが滲んでいる。 滲んでいる赤いのは間違いなく血だろう。 痛みに似た軋みを顎に感じ、夕鈴は大きな眩暈に襲われた。 

「夕鈴・・・」
「わっ、・・・わたし、あ、あの・・・ごっ、ご、ごめ」

頭が真っ白になり、うまく言葉が出て来ない。 陽光を背に立つ陛下の表情が見えず、ガクガク震えながら空っぽの手に視線を落とした。 今の今までそこには陛下の腕があり、自分はそこに思い切り噛み付いた。 
未婚女性の身体を弄ぼうとした陛下が悪い。 噛まれて当然。 謝るのは陛下の方であり、私が謝罪する必要はない。 そう思うのに、静かに佇む陛下がとても怖い。
このまま部屋を立ち去ってくれないかなと思うけど、侍女に朝餉を頼んでいたのを思い出す。 陛下が一人で朝餉を食べるのは変だろう。 共に朝を迎えた夫婦が別々に食事するなど、仲違いしたのかと噂が流れる可能性もある。 ましてや機嫌の悪い狼陛下が寝所から姿を見せたら、床下手妃の噂まで流れてしまう。
何のための臨時花嫁だ。 目指したのはプロ妃だったはずだ。 
でも、私は・・・・私は悪くない。
そろりと顔を上げて陛下の表情が読める位置に移動すると、頬を赤らめた陛下が見えた。
ああ・・・やっぱりすごく怒っている。 
ただの庶民が国王陛下に害を為したと、最悪死刑になる可能性もある? 
いやいや、そんな・・・。 でも後宮ではいつの間にか姿を消す妃もいたと老師が言っていた。 秘密裏に処理されるのはいやだ。 せめて青慎の顔を見てから死にたい。 いや、死にたくない! だって、私は悪くないっ! 国家権力最高峰に何を言われても、私は・・・っ

「夕鈴が・・・ゆーりんが、僕を噛んだ・・・」

夕鈴は短い悲鳴を上げて寝台の奥へと逃げ出した。 これ以上逃げ場はないのかと周囲を見回すが、無論あるはずもない。 けして長いとはいえない人生の中で、これほどの恐怖を味わったことがあろうかと壁に爪を立てる。 何処かに隠し扉でもないかと探る手が、寝台に乗り込んで来た陛下に捕らわれた瞬間、夕鈴は命が終わったと目の前が真っ白になった。 
容赦なく噛んだ腕を恍惚の表情で舐めながら近付く狼を前にして、全身に鳥肌が立つ。 
嬉しそうな笑みが怖い。 チロチロと動く舌先が怖い。 近付く陛下、そのものが怖い。 
瘧のような震えが止まらず、抱き締められて息が止まる。 絶体絶命だと昇天しかかった時、小犬の声が頭上から聞こえて来た。 ちょっと照れを滲ませる小犬の声色に、夕鈴は失いかけた意識を取り戻す。

「夕鈴が痕を刻むために腕を噛むなんて・・・それもこんなに強く。 僕、袖を捲って政務に励むよ。 夕鈴がずっと側にいるようで・・・・目にするたびに頑張ろうって気になれる」
「・・・っ! そ、袖は、お、降ろしてっ・・・み、見せないでっ!」

そんなものが李順さんの目に入ったら、確実に借金増額間違いなしだ! その前に、その場で斬首か?
夜中にバイトが寝ている寝台に勝手に忍び込み、バイトの身体を勝手に弄った陛下が悪いと訴えたところで、惨たらしい噛み痕を目にした李順さんが私の訴えを受け入れてくれるはずもない。 だから隠して欲しい、見せないで欲しいと涙ながらに繰り返すと、陛下はさらに頬を赤らめた。

「そうか・・・・うん、わかった。 誰にも見せないでおくね」
「ありがとう御座いますっ! そして、ごめんなさ・・・そ、そこまで強く噛むつもりじゃ・・・」
「大丈夫だから、泣かなくていいよ」
「本当に・・・、ごめんなさい」

いや、渾身の力を込めて噛んだのだが、ここはそう言うべきだろう。 庶民をどうとでも出来る存在が赦しをくれたのだ。 これ以上何か言うべきではない。 ・・・・それに、噛み痕をうっとりと舐め回す陛下に逆らってはいけないと、本能が言っている。

「・・・・夕鈴からもらえるものは何でも嬉しいけど、印を付けられるなんて思ってもみなかった。 皆に自慢して回りたいけど、二人だけの秘密っていうのもゾクゾクするね」
「・・・・」
「夕鈴が僕の腕を、血が出るほど噛んでくれた。 僕の血が夕鈴の中に、夕鈴の唾液は僕の中に・・・。 興奮しちゃって、逆に仕事にならないかなぁ・・・。 あ、反対側も噛む?」
「・・・・」

吐気と悪寒が止まらない夕鈴は侍女が用意した朝餉を断り、急ぎ侍医の元へと走り出した。 そして催吐薬を処方して欲しいと懇願した。 こんな恐怖体験は二度とごめんだと涙目で震え、しばらくは陛下の来襲に怯え、不眠に苦しめられることになる。 
妃の体調不良を心配して、陛下が足蹴く通うようになるとも知らず・・・・・。





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 00:00:11 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
寒い朝にぴったりの温かいお話をありがとうございました(笑)

明け方まで真摯に政務に取り組む陛下、眠っている夕鈴を起こさぬようそっと添い寝をしてくれる陛下、血が滲むほど噛み付かれても呻き声一つ上げない男らしい陛下。
どれも素晴らしい陛下でした(笑)

噛み痕を愛しむのは予想出来ましたが、血が、唾液がと言う喜び方は想定以上の変態っぷり!
夕鈴、いっそのこと陥落しちゃえば楽になれるのにね‼
2015-11-23 月 07:54:20 | URL | ハニー [編集]
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2015-11-23 月 12:30:40 | | [編集]
Re: タイトルなし
ハニー様、コメントをありがとう御座います。温かい話・・・・と言っていいのか、夕鈴にとって。(笑)このコーナーの夕鈴は淡々とバイトをこなす、陛下に恋心の欠片も持ち合わせていない人物ですので、朝から現れた陛下は、災難以外の何物でもありません。御愁傷様と両手を合わせてあげましょう。そして、陛下の変態ぶりを「素晴らしい」と称するハニー様こそ、「素晴らしい」と目を瞠りました。あまりに驚き、犬の尻尾を思い切り引っ張って、久し振りに噛まれました。・・・・愛犬とはいえ、噛み痕に舌を伸ばす勇気はありませんでした。
2015-11-23 月 20:12:45 | URL | あお [編集]
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2015-11-24 火 19:42:19 | | [編集]
Re: タイトルなし
れん様、コメントをありがとう御座います。変態陛下を愛でて頂き、ありがとう御座います。(爆)こんな話でも笑って頂けるなら、もっと変態に・・・いえ、頑張って楽しい話を書けるよう、精進します。本当にありがとうです! 本誌の陛下を見たいけど、我慢してコミック発売を待ってます!(際限なく買ってしまうので)
2015-11-24 火 20:28:44 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
えみみみみ様、コメントをありがとう御座います。こんな話が好きだと言ってくれる人が増えて、めちゃめちゃ嬉しい。完全に病んでいますので、怒られるかしらとドキドキしながら書いてます。のんびり更新してますので、のんびりお付き合い頂けたら嬉しいです。
2015-11-24 火 20:31:18 | URL | あお [編集]
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2015-11-25 水 13:32:58 | | [編集]
Re: タイトルなし
れん様、連絡ありがとう御座います。リンク貼りをし忘れていました。助かりました!
2015-11-25 水 14:05:14 | URL | あお [編集]
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