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返礼

『腹黒シリーズ』短編です。 陛下が妙な具合に飛び跳ねていますので、御了承の上ご覧下さいませ。 なお、このシリーズは過去作品を修正したものです。 夕鈴はバイト花嫁です。 本来の作品より、とても辛辣な言動が多いことを御了承下さい。 
アナログ人間なのに、またどこかに触ってしまったようで、どうしようもなくなり、テンプレを変更しました。 以前と違って見難い点もあるかと思いますが、御付き合い頂けたら嬉しいです。

では、どうぞ







夕刻に王宮へと戻って来た夕鈴は荷物を置くと、さっそく侍女さんたち用の土産を卓に並べる。 
ささやかな土産として、下町で売られている人気の菓子を買って来た。 卓に並べながら、ほんの少しでもいいから喜んでもらえるといいなと緊張する。

後宮に従事する女官や侍女は貴族の息女がほとんどで、後宮には淑女教育の一貫で来ている息女もいれば、陛下のお手つきになる可能性に掛けて親に送り出された息女もいるのだ。 
そこへ臨時花嫁として庶民娘がバイトに現れ、皆を騙しながら妃として敬われている。  
少しでも気を抜くと、今でも恐縮しそうになるが、それでも少しは慣れてきたと思う。 狼陛下に寵愛されているように見える、敬愛しているように見える演技も、少しは上達したはずだ。 
ただ侍女が下がった後の変貌ぶりと執拗な甘えには辟易するが・・・。 
おまけに最近はやたらに接触が多くなった。 演技に必要のない場所でのバイト弄りが増し、政務のストレス解消なのか、性欲が有り余っているのか、色恋に鈍い私では判断出来ない。 バイト上司に相談して一時は激減したが、復活するのも時間の問題かもしれない。 

早く借金を返済して、身綺麗になりたい。 そのためにもバイトに励まなければならない。 
また明日から妃の演技再開かと溜め息を吐いていると、足音が近付いてきた。 

「ゆーりんっ! お帰り!」
「どうして・・・どうして、こんな時刻に陛下が来るの? 侍女さんたちは今日いっぱいお休みですから、今は演技の必要がないでしょう? 私も今日までは休みですので、どうぞお帰り下さい」

冷たく言い放ちながら湯を沸かし始める夕鈴を見つめ、陛下はドキドキしていた。 
懐には夕鈴からもらった(正確には李順経由だが)手紙が入っている。 
政務を終えてから嬉しくて50回以上読んだ。 読んで読んで夜が明けて、実は眠っていない。  
ちょこんと椅子に腰掛けて夕鈴を見つめていると、思った通りに熱いお茶が差し出される。

「あのね、あのね夕鈴。 僕ね、山積みだったたくさんの政務を片付けたよ。 たくさん頑張ったよ。 李順が驚くほど早く終えることが出来たんだ。 夕鈴からの手紙を読みたくて・・・」
「・・・・読んだんですか?」
「うん! すごっく嬉しかった。 頑張って仕事して良かったって思った」

僕と少しも目を合わせてくれずに、茶杯を置くと夕鈴は背を向けてしまう。  

「・・・それは国王陛下として当たり前です。 手紙は関係なく、仕事は頑張って行なうものです」

そして寝所入り口近くの卓に近付くと、夕鈴は荷物を解き出した。 
だけど髪から覗く耳朶が真っ赤になっているのがわかるから、僕はとても嬉しくなる。 
何度も読んでくしゃくしゃになった手紙を懐から取り出して、茶杯の横に広げてみる。
夕鈴からの手紙には 『下町には絶対に来るな。 ちゃんと真面目に仕事をしろ。 もし下町に来たら、バイトは中止する。 もし来たら隣国に引越ししてやる』 そんな悲しくなることが書いてあった。

だけど。

最後の最後に 『ちゃんと仕事をされるなら、土産を持って戻ります』 と短い一文があった。 
夕鈴が僕だけのために、僕だけのことを考えて、僕だけの買い物をする。 
じんわりと胸が温かくなり、嬉しくて嬉しくて何度も読み返した。  夕鈴の後姿を眺めていると、チラリと肩越しに僕を窺っているのが見える。

「お土産、楽しみにしていたんだー」
「・・・っ! たっ、たいした物ではないですよ!? 庶民からの土産なんて、豪華絢爛な献上品ばかり見ている陛下からすると 『なんじゃこりゃ?』 って驚いちゃうような物でして」
「あのね。 夕鈴からもらえるっていうのがいいんだ」
「ぐ・・・。 いや、渡すのは憚られるというか、渡しては駄目なんじゃないかと思えてきた・・・」

荷物に覆いかぶさるように背を丸めて一気に喋り出した夕鈴が可愛くて仕方が無い。 僕は静かに近寄り、夕鈴が握り締める品を素早く奪い取った。

「ああっ! やっぱり駄目っ! 返して!」
「駄目は駄目。 お土産って何かな~・・・・。 え? ・・・これ」

土産の入った袋を広げると夕鈴が踵を返して逃げようとするから、直ぐに腰を攫って抱き上げた。 夕鈴は声なき悲鳴を上げて僕の背中を叩くけど、痛くもなんとも無い。 それよりも、目の前の品に僕の全身が湯に浸かったかのように温かくなる。
夕鈴が持っていた袋から出てきたのは温かい手袋だった。 
しかしどう見ても売っている品物ではない。 
赤い毛糸で編まれた手袋はきっと・・・・。

「これ、手作り・・・? いつの間に・・・ゆーりん編んでいたの?」
「い、いつって! あの、・・・て、天気が悪い日が多くて、掃除にも行けず暇だった時があって、その、青慎に作るついでに・・・。 そ、そう、青慎のついでに編んだだけで・・・」

背中を叩いていた手が僕の肩に移動し、そして口篭りながら必死に 『言い訳』 を繰り返す。 そんな夕鈴が可愛くて、愛おしくて、僕は思わず苦笑してしまう。

「ほらっ、庶民からの土産なんて笑っちゃうでしょ? も、返して!」

今度は強く肩を叩かれ、僕は腕から力を抜き夕鈴を床に降ろした。 
真赤な顔で僕を睨み付ける君は、手袋を取り返そうと手を伸ばす。 もちろん返すつもりなどないから、僕は手袋を高く持ち上げた。 夕鈴は必死に取り返そうと飛び跳ねるが、背の高さが違うのだから届くはずも無い。 

「手紙に書いてあった約束通り、僕はたくさん仕事を頑張った。 その分の土産だから、これは僕が受け取って然るべきだよね? うわ、嬉しいな。 ゆーりん手作り、あったか手袋!」
「違・・・っ! あとで饅頭でも夕餉でも作るから、それは返してっ!」
「う~ん、それも魅力的だけど。 ・・・・でも、もうこれは僕のだ」

そのまま身を屈めて君を抱き締めると耳元で盛大な悲鳴が聞こえる。 
ああ、なんて可愛い僕の奥さん! 本当に可愛くて可愛くて・・・涎が出そうだよ。 
さあ、どんなお礼を贈ろうか。 
幸いにも侍女は明日まで帰ってこない。 
政務をしっかり終えたから李順も来ない(・・・はずだ)。
 
下町では異国の祭りに乗じて男性が意中の女性を誘い、ご馳走したり、宝飾を送ったりするらしいが、仕事に追われていた僕はそれをすっかり忘れていた。 そもそも夕鈴には温泉のある離宮への小旅行を贈るつもりだったのだ。 
それなのに急に里帰りして、僕の計画を無駄にして、・・・こんなに素敵な贈り物をくれた。

「僕、夕鈴にあげる贈り物を用意していないんだ。 でも・・・・これ、欲しいな」

思い切り寂し気な表情で、捨てられた小犬感を演じる。 
すると君は急に戸惑い、視線を彷徨わせ始めた。 
夕鈴は寂しそうで悲しそうな小犬の演技に弱い。 肩を落として手元の手袋をじっと眺めていると、視界の端で君がおろおろし始めたのが見える。 そっと視線を上げて眉尻を下げると、夕鈴はハクハクと唇を開閉し、やがて口惜しそうに顔をそむけた。

「し、仕方ないわね。 お仕事・・・頑張ったから・・・。 約束だし・・・」
「いいの? 本当にいいの? 僕にくれるの?」

駄目押しとばかりに尋ねると、耳朶と頬を桃色に染めた夕鈴が、僕の手元に視線を落とす。 

「・・・馬に乗る時にでも、その・・・使ったら、温かいんじゃないかと・・・」

本当に夕鈴は可愛い。 
本人は自立した一人前の常識人だと自負しているようだが、僕から見ると危ういくらいに純粋で無垢な可愛い兎だ。 これではあっという間に騙されるだろう。 やっぱり僕が守ってあげないと駄目だと再認識する。

「ありがとう! すごく嬉しいよ、夕鈴。 僕は贈り物がないから・・・、この身体で精いっぱいお礼をするよ。 今日はみんな休みで誰も来ないから、ゆっくり時間をかけて君に御奉仕出来るね」
「・・・・え?」

訝し気に僕を見上げる夕鈴に、心情を少しも隠さずに微笑んで見せると、途端に顔色を変える。 頬から赤みが消え、じわじわと顔全体が青白く変わっていく。 竦めた肩を引き寄せると大きく震え、今度は青から白へと変わり始めた。
この白い肌を赤く染め上げるのが楽しいんだよね。

「・・・い、い、いらない。 お仕事頑張ったご褒美がそれだから・・・。 お返しなんていらないっ!」
「夕鈴がこんなにも私を想ってくれていることに心が震えた。 その感謝の気持ちを受け取ってもらいたい。 どうか私が満足するまで受け取って欲しい・・・・」
「いらないっ! だっ、抱き上げないでっ! どこに・・・寝所に用はないっ!」
「まずは疲れた身体をほぐしてあげよう。 ほら、帯を解いて楽にして」
「や・・・っ! ひ・・・・っ」

夕鈴の叫び声は誰も居ない後宮に響いていく。
狼を諫めることが出来る、メガネの神様の名を叫びながら・・・・・・。





Merry Christmas!


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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 19:20:20 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
あぁぁ...
夕鈴はどうして自分から災厄の種を蒔いてしまうのか。きっと無理矢理、たっぷりと時間をかけて返礼を受けさせられてしまうのでしょうね。今回は助けが間に合うのでしょうか⁉
2015-12-26 土 21:36:30 | URL | ハニー [編集]
Re: タイトルなし
ハニー様、コメントをありがとう御座います。夕鈴が陛下に対して「ツン」のままだったら逃げる道があったかも知れませんが、妙に仏心を出すところが甘い! これでは狼をただ喜ばせるだけです。残念です。そして陛下は些細な隙も見逃すことなく、攻めて攻めて攻めまくるでしょう。この場合、諦めた方がいいのか、果敢に戦う方を選んだ方がいいのか・・・。(笑)
2015-12-27 日 00:39:51 | URL | あお [編集]
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