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覚悟

SNSよりの転載に多少修正した作品です。 ふつーのバイト夕鈴と、小犬陛下です。 でも、それとなく黒い匂いが漂うのはどうしてでしょう(*^_^*) 久しぶりにふつーの小作品を見直し、ああ、これが通常なんだと笑ってしまいました。


では、どうぞ




 


「夕鈴、実家でお正月過ごすって本当?」
「はい。 父と弟に正月用の料理は無理ですし、年末の掃除を全て任せるのは心配ですし、やらなきゃならない片付けもありますし・・・あの、もしかして王宮で何か特別な行事がありますか? 李順さんには、ちゃんと休みの許可を頂いてますけど」
「・・・・・寂しいなと思って」

少し伏目がちな小犬の表情を前に、夕鈴は倒れそうになる。 
しかし、ここは踏ん張らねばならない。 青慎のためにも美味しい料理を作って新年を迎えさせ、学業に専念出来るよう努めなければ。 それが普段家にいられない姉がしてあげられる、せめてもの弟孝行だから。

「あの・・・、すぐに戻りますから。 それに陛下はこちらで美味しい宮廷料理が食べられるじゃないですか。 浩大もいるし、老師もいらっしゃるし、寂しいなんて言ってられませんよ。 皆とのんびり過ごして下さい」
「・・・老師と何をして過ごせと言うのか、夕鈴の考えが判らない」
「えっ・・・と、す、すごろくとか? 碁とか?」
「・・・・・・」

今度は眇めた視線が夕鈴を責める。 戸惑った夕鈴はそれでも頑張った。 
陛下が間違っても下町に来ないように必死に続ける。

「浩大とお酒を飲み交わすとかは? あ、たまには周宰相と御飲みになるのも楽しいのではないですか? ・・・李順さんは飲めるのかしら? 入浴しながら一杯、なんていうのも風流ですよね! 王宮で雪見酒なんて、陛下しか出来ませんよ。 贅沢ですよねー!」

あまりにも自分が必死すぎて涙が浮かんでくる。 
だけど必死にならざるを得ないのだ。 
勝手気ままな陛下の行動に、バイト休み中の夕鈴は何の関係もないはずだ。 しかし、陛下が下町に脱走するせいで政務が滞り、書簡が山を築く。 姿の消えた陛下の行方を追うと、バイト娘の実家だと知り、側近の怒りの矛先は陛下だけでなくバイト娘にも向けられることになるのだ。 休暇中まで翻弄されるのは勘弁して欲しい。

「料理を作って、掃除をして、片付けをして、そして年が明けたら何をするの?」
「年が明けたらちゃんと挨拶をして、今年も元気に過ごせますようにって近くの廟に行ってお参りしてきます。 青慎は学問所に寄って、そこの廟にお参りするから、それに付き合って・・・。 あとは帰り道に廟周囲の露店を見て来るくらいかな。 大抵は露店で昼ご飯を済ませて、家に戻ったらみんなでのんびり過ごす・・・・くらいですよ」
「ふぅん・・・」

知り合いに会えば新年の挨拶をし、そのまま父親が雲隠れすることもある。 
真面目な青慎は新年から予習しようと教書を広げ、その横で夕鈴は繕い物をする。 
新年といっても普段とそんなに変わりはないです、と苦笑を零す。

王宮では特別なことをすると聞いている。 
豪奢な礼装を纏った大臣たちが謁見の間に揃い、荘厳な雰囲気の中、国の安寧を祈願し新年の祈祷をすると老師が言っていた。 陛下もいつも以上に豪華な衣装をその身に纏い、狼陛下全開で大臣らを睥睨するのだろう。 
冷酷非情な王様を演じなくてはならないのだから、精神的苦労も大きいだろう。 
政務室では狼陛下で官吏を叱咤し、会議では老獪な大臣らと論じ合い、後宮に戻ればバイト妃と仲良し夫婦を演じる。 自室には陛下付きの女官がいて、一人になれるのは寝所に入ってから。 
そこでようやく本来の小犬に戻り、演技と政務の疲れを寝台に投げ出すことが出来るのだ。

想像するだけで夕鈴の胸がきゅっと痛む。
だけど陛下が実家に来ると、いつも何かしらの騒動があって、いつの間にか巻き込まれることになるのが常だ。 そうなると折角の休みが休みじゃなくなり、更にその騒動が何故か李順さんに知られて、結果、何故か私まで叱られることになる。 
だからここは陛下を諫めなきゃならない。 
申し訳ないとは思うが、下町に来るのは諦めてもらって・・・・・。

「下町の正月って楽しそう・・・」

ああ、駄目だ。 きっと陛下はやって来る。 
嬉々として、目を輝かせて、あの衣装で下町に来るだろう。 
もう、いっその事、今から覚悟すべきなのか? 
陛下は来るはずだと、絶対に来るぞと、腹を括って覚悟して待った方がいいのか?
部屋を誂え、食事を少し多めに用意し、お酒なんかも用意して?
そうなると父親はどうする? 王宮から貴族が来たら、一目散に逃げだすかしら。 その方が余計な説明をしなくても済むが、そうなると青慎にだけ負担が掛かることになるのではないか? 
いやいやいや、陛下にだって仕事はあるはずだ。 年末も年明けも、国王としての仕事がきっとあるはず。 それを蔑ろにして下町にまで足を延ばすなんて・・・・・・・。

・・・・・有り得るだろうなぁ。


李順さんに 『事前に、出来うる限りの抵抗はしてみました』 と報告をしようと夕鈴は思った。





FIN

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 00:28:28 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
腹黒シリーズは毎回大笑いしてますが、普通の夕鈴もいいですねぇ。何れにせよ、陛下に振り回されているのはおなじですものね。
2015-12-28 月 05:57:31 | URL | ますたぬ [編集]
陛下、言葉は少なくても色んなものが滲んで漏れちゃってますね(笑)
うん。待てが出来ないことを前提にするのは正しいです‼
2015-12-28 月 08:31:17 | URL | ハニー [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。通常運転の話へのコメント、めちゃ嬉しいです。ありがとう御座います。来年もどうぞ、よろしくお願い致します。
2015-12-31 木 20:03:33 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ハニー様、コメントをありがとう御座います。通常運転の陛下は言葉少なに、夕鈴を翻弄してます。上に立つ者はこうでなきゃ駄目ですね! 翻弄し、そして上手く動かす。もう夕鈴、すっかり洗脳されてます。(笑) 来年もどうぞよろしくお願い致します。
2015-12-31 木 20:21:45 | URL | あお [編集]
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