スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
条件

『腹黒シリーズ』短編です。 陛下が妙な具合に飛び跳ねていますので御了承の上ご覧下さいませ。 過去修正作品ではありません。 夕鈴はバイト花嫁ですが、本来の作品より、とても辛辣な言動が多いことを御了承下さい。 
話は変わって、うちのわんこ、前足にコブが出来てしまい、良性か悪性かの検査に明日行きます。 齢も齢なので、あんまり無理するなと言っても犬には通じない。 元気に駆け回って、飛び跳ねてます。 また財布が軽くなります・・・。

では、どうぞ







「ゆーりんが求める理想の夫って、どんな人?」

陛下からの問いに、バイト妃をしている夕鈴は目を瞬いた。 
人払いしている四阿とはいえ、官吏が行き交う回廊が近くにある庭園で、一体突然、この陛下は何を言い出すのか。 訝しげに陛下を見上げると、早く答えてと催促された。

「・・・借金のない、安定した職業に就いている、酒と博打に縁のない人です」
「借金、本当に嫌いなんだね。 相手の齢とか、家族構成は気にならないの?」
「借金が好きな人がいますか!? 借金は駄目です! 人からお金を借りたら利子が付くんですよ? お金が必要なら、借りるより自分でちゃんと貯めるべきです。 ・・・それなのに、あの父親は! 闘鶏場でいくら散財すれば気が済むの? おまけに闘鶏に行くたびに几鍔のところで借りやがって・・・! 父さんが借りるたびに几鍔が来て、偉そうに人のことを嫁遅れだとか」
「夕鈴、静かにっ。 ここは四阿だよっ」

肩を揺さぶられて顔を上げると、そこには国王陛下の顔があり、今はバイト中だと我に返る。 

「あまり大きな声を出すと、みんなが集まっちゃうよ」
「あ・・・、ごめんなさい・・・」

素直に謝罪した夕鈴は、どうしてそんなことを言い出したのか尋ねてみた。 
すると陛下は、「夕鈴好みの夫像をリサーチだよ」 とあっさり答えてくる。

「夕鈴が恥ずかしがり屋なのは知っているけど、二人の仲をもっと進展させるために、僕も歩み寄ろうと思ってね。 先ずは夕鈴の好みを知り、理想の夫に少しでも近付こうと思って」
「・・・進展させる必要はないでしょう。 期間限定の、借金完済と共に消える妃のあれこれを探る暇があるなら、政務に戻ったらいかがですか? そろそろ有能な側近殿がお迎えに来られますわよ。 ・・・ほら」

夕鈴の視線の先には、回廊階から駆け下りてくる李順の姿があった。 遠くからでも見て取れる眉間の皺の深さは、陛下が政務を放り出してサボっている証拠であり、多くの書簡が山をなしている証でもある。 怒鳴りたいのを懸命に堪えながら四阿まで足を運んだ李順は、恭しくも凶暴な笑みを浮かべていた。

「御休憩とは存じますが、急ぎの書簡がありますので、執務室まで御足労願えますでしょうか」
「・・・わかった。 我が妃も部屋に戻り、休むように。 夜にはまた愛らしい笑みを見せてくれ」
「はい、陛下。 夜のお渡りを心よりお待ち申し上げております」

妃らしい笑みで陛下を見送った夕鈴は、また夜に来るのかと溜息を零す。
その後、立ち入り禁止区域で掃除を始めた夕鈴は、窓から登場した隠密に肩を竦めた。 
王宮警備を兼ねて妃警護をしている隠密は、何度文句を言っても突然現れては人を驚かせ、そして菓子を食べ始める。 今日も掃いたばかりの床上に菓子屑を零し、夕鈴が睨みながら床を指さすも無視をする。 毎度のことなので慣れたとはいえ、掃除中に余計な手間を増やされるのは腹が立つ。 
夕鈴の憤りを無視した浩大は菓子屑を零しながら尋ねてきた。 

「なあ、お妃ちゃん。 さっきの話だけどぁ、相手の年とか家族構成とか気にならないの?」
「・・・全く気にならないと言えば嘘になるけど、普通の暮らしが出来るなら、ある程度は目を瞑るわよ。 その前に私の借金返済がいつになるかよね。 今のままじゃ嫁遅れになるのは確実だし、几鍔に弄られるのは癪に障るし、だけど青慎の進学も気になるし・・・」
「志が低すぎるぞ、お妃」
「普通でいいのよ。 その普通の日常を送るためにも、頑張って働かなきゃ!」

夕鈴は 「そう、普通でいいの。 そのためには借金返済を・・・」 と呟きながら箒を動かす。 そんな夕鈴を菓子を食べ終えた浩大が痛ましそうに眺め、桐は眇めた視線を送る。  

「お妃が求める夫の条件は、借金がなくて酒と博打に溺れない安定した職業の妙齢の男性、ということだな。 それなら陛下でも良いのではないか? 永久就職してはどうだ」
「・・・・・はぁ?」
「そうだよねぇ、このまま後宮に居座っちゃえばいいじゃん! オレもその方が面白いし」
「・・・・・はぁ?」

夕鈴が眉間に深い皺を作り隠密を凝視していると、勢いよく後宮管理人の老師が現れ、どこから聞いていたのか目を輝かせて話に割り込んできた。

「小娘っ! 国母になる決心がついたのか? 早く生んで見せてくれ!」
「生みませんし、そんな決心つきません! それは李順さんに言って下さいよ。 李順さんが陛下の正妃を決めるんでしょう? 内政が整って面倒ごとが消えたらって、以前言っていましたよ?」
「あんな眼鏡小僧の言うことより、お前さんは陛下に身を任せて子を産むことだけを考えたらいいのじゃ! 早くしないと子が抱けなくなるっ! ・・・老い先短い老人の願いを叶える気はないのか?」

後半、急に弱々しい口調になった老師を一瞥し、夕鈴は背を向ける。 浩大が零した菓子屑や、老師が撒き散らした埃を掻き集めていると、掃除に邪魔な三人が頭を寄せ合い何やら話し始めた。
どれだけ暇なのよと突っ込む気にもなれず、夕鈴は黙々と箒を動かし続けた。


夜になり夕餉も湯浴みも済んだ時刻、予告通りに陛下が訪れる。 
茶器の用意を済ませた侍女が退室して夕鈴が茶を淹れ始めると、長椅子に腰掛ける陛下が小犬に変わり、グネグネと身を捩りだした。 もじもじと恥じらう陛下の姿に夕鈴は目を瞠り、何か悪いものでも食べたのかと眉を寄せる。 チラチラと夕鈴を窺い見る陛下に苛立ち、言いたいことがあるならどうぞと促すと、陛下は意を決したように口を開いた。

「ゆーりんの理想の旦那さまって、ぼく?」
「・・・・・はぁ?」
「さっき、浩大と桐から報告が来たよ。 夕鈴は普通の生活をしたいって。 それって質素倹約のことでしょう? それに僕、酒に溺れないし博打もしないよ。 仕事も頑張ってるし、国の借金もずい分減ったよ。 夕鈴の描く、理想の夫像、そのものでしょう?」

夕鈴が眩暈を覚えて頭を押さえると、覚えのある浮遊感に襲われる。 目を開けると、そこには満面の笑みを浮かべた陛下がいて、夕鈴を抱き上げてクルクル回り始めた。 高身長の陛下に高く抱き上げられて高速回転され、悲鳴があがる。 目の前の黒髪をわっしと掴み、振り落とされないようにするのが精いっぱい。

「嬉しい、夕鈴っ! 真面目に仕事してきた甲斐があったよ。 あとは既成事実だね」
「き・・・気持ち、悪・・・・」
「夕鈴に旦那様って呼ばれるの、とっても嬉しい! 僕の子供、たくさん産んでね!」

回転が止まると同時に抱き締められ、口から内臓が出そうだと押さえる。 何やら不吉な言葉が降り注ぐが、それを理解する前に気分不快と足のふらつきに身体が傾ぐ。 
卓に手を伸ばすと陛下の手が重なり、振り解こうとすると持ち上げられた。 
手の行き先は陛下の唇。 
目を輝かせた陛下が腰を引き寄せ、「幸せになろうね!」 と手の甲や指先を舐め回す。

「ちょ! やっ、やめ・・・っ」
「あれ、これくらいで気持ち良くなったの? ゆーりんって、感じやすいね」
「違・・・っ。 み、水を」
「口移しで飲ませてあげる。 そのまま僕の愛に溺れて」

全身に鳥肌が立ち、胃の不快感が増す。 ぶんぶんと尻尾を振り回す陛下の胸を押し出すも、引き寄せられた腰は離れず、そのまま抱き上げられてしまった。 

「違うっ! それは激しく間違っているっ! 私の願いは普通の・・・普通の人、です! 国王陛下じゃなくて、下町で、庶民として暮らしたいのっ! 妃は演技で、期間限定のバイトなの!」
「間違いなどない。 我が妃の理想が私なら、その願いを叶えるだけだ」
「なんで狼陛下!? なんで寝台に転がす?」
「私の願いは夕鈴を正妃にして、私の子を生してもらうことだ。 互いの条件が合い、幸せだな。 質素倹約を信条に、これからも普通の後宮生活を楽しもう」
「やぁ! や、め・・・っ」

寝台に転がされた夕鈴は必死に抵抗する。 だが目を輝かせて迫り来る獰猛な狼の舌舐めずりに恐怖が増し、掠れた声しか出ない。 蹴りを入れようと持ち上げた足を掴まれ、枕を投げる前に引き寄せられる。 これは普通じゃないと文句を言いたいのに咽喉が詰まり、腰紐に手を伸ばす陛下を死に物狂いで押さえ込む。

もう駄目なの? ここで狼の餌食にされちゃうの? 
理想の夫を聞かれただけで、どうしてこんな目に遭わなきゃならないの? 
私の理想は・・・・理想は・・・・理想・・・・
夕鈴が涙目を天蓋に向けた時、天から救いの手が差し伸べられた。

「・・・・・陛下、懲りていない御様子ですね。 再び、宰相と夜を明かすことを御望みですか」
「りっ! 理想の上司っ!」

天蓋から現れた救いの主に、夕鈴は狂喜のあまり陛下を張り倒した。 
眉間に皺を寄せた李順の姿が神々しく見える。 寝台に正座した夕鈴が拝むように両手を合わせて見上げると、李順は思いきり厭そうな顔をしながらも、即座に状況を把握してくれた。

「陛下、朝議に必要な重要案件が放置されたまま逃走とは困ったものですねぇ。 隠密からどのような報告を受けたのかは存じませんが、バイト妃の部屋に来る必要はありませんよねぇ? 明日の、朝議に、必要な、緊急を要する案件を、至急片付けて下さいっ!」
「・・・ゆーりん。 さっき、李順のことを理想の上司って言った? 僕のことも理想の旦那様って言って」
「陛下っ! 戯言は政務を終えてから言って下さいっ! ほら、さっさと立つ!」
「ゆーりん、理想の旦那様は急いで仕事を終えて、すぐに妻の許へ戻るからね!」
「戻る暇などありませんっ! ほら、さっさと歩く!」
「ゆーりんのために頑張って働いて来るからねー」
「バイトじゃなく、国のために働けっ!」

李順と掛け合い漫才しながら陛下が去った後、夕鈴は乱れた寝台の上で鼻を啜った。
こんなことになったのは、間違いなく隠密のせいだ。 三人頭を突き合わせていた時に、碌でもない相談をしていたのだろう。 こんなに真面目に頑張っているバイトを甚振って、そんなに楽しいのか! 絶対に報復してやる。 激辛の肉饅頭を作って、馬鹿な報告ばかりする口に押し込めてやるっ!

だけど夕鈴はわかっていた。 そんなことをしたら、どんなことになるか。 倍返しどころじゃない。 
わかっているだけに悔しくて、腹が立って、苛立って・・・・涙を呑んで横になる。 明日は今日よりいい日になりますように、普通の生活を送れますようにと、眼鏡をかけた神様に祈りながら。

  
 
スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 16:22:22 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2015-12-18 金 07:24:29 | | [編集]
Re: タイトルなし
れん様、コメントをありがとう御座います。『腹黒シリーズ』での夕鈴は、陛下の暴走に眉を顰め、面倒だ、困った奴だ、演技以外で触るな、近寄るな!・・・と思っております。でも無下に放置することも出来ず、金のためと全てを割り切ることも出来ず、小犬と狼の間で彷徨っております。捨て切れない困ったちゃんを持て余す、といったところでしょうか。ツンとデレを上手く書けないので、ジレンマを抱えながら楽しく書いています。
2015-12-18 金 21:28:52 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。