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バーゲンセール

SNSよりの転載に多少修正した作品です。 ふつーのバイト夕鈴と、小犬陛下です。 それなのにどうしてなのか、黒いものがちらほら見えるのは何故でしょうか(笑) 私の書く陛下は腹黒ばかりか? そうなのか? 翻弄ドS様か? でも、そんな陛下が好き。

では、どうぞ







「ねえ、夕鈴。 また下町に行くの? 王宮に帰って来たばかりなのに?」

人払いした四阿で口を尖らせる陛下を前に、夕鈴は額を押さえて困り果てる。
まず、何故陛下が明日の予定を知っているのか不可解であり、おまけに 『帰って来た』 と言われるのも困る。 王宮にはバイトとして泊まり込んでいるのであり、この場合は 『戻って来た』 と言うべきだろう。 しかしそれに関して今は突っ込む気にもなれず、まずは浮かんだ疑惑を問い質す。

「・・・なぜ、それを知っているんですか?」
「李順がね、今日は徹夜で宰相部屋に籠って執務を行なうって言っていたから、もしかして・・・と思って。 そうか、やっぱり夕鈴は下町に行くんだ・・・。 それも僕に内緒で、僕に黙って行くつもりだったんだ・・・」

四阿に設けられた卓に茶杯を置き、陛下は寂しそうな表情で夕鈴を見つめてくる。 
お茶を注ごうとしていた夕鈴は、その表情にたじろいだ。 

「あのですね、陛下。 私は遊びで実家に戻る訳じゃないんです。 年明け後、いつもこの時期に大きな市が立つんですよ。 寒い時期に漬けておきたい野菜もありますし、乾き物を買い置きしたいし、雑貨購入もしたいんです。 この市への参加は絶対必要なんです。 本当に大きな市で、いろんな品がとっても安いんです。 家計を預かる主婦として、この市を見逃すことなど出来ないんです。 陛下に内緒にしたのは申し訳ありませんが、この買い物には生活が掛かっているんです。 絶対に行かせて下さいっ、お願いしますっ」

一気に言い切った夕鈴は、李順から許可が出ているのに何故陛下にまでお願いしなきゃならないのだろうかと瞬時悩む。 そして、ぎょっとした。
目の前の陛下の瞳が輝いていたのだ。 珍しい菓子をもらった、または親戚から小遣いをもらった子供のように頬を染め、キラキラと目を輝かす陛下を見て、夕鈴は蒼褪める。 
陛下は・・・今の説明を納得していない。 
それどころか市に興味を持ってしまったようだ。
これは不味いと、夕鈴は必死になる。

「あ、あのですねっ! これは主婦として命がけの買い物なんです。 陛下は国王として宰相とお仕事に命を掛けて下さいねっ! それぞれの立場に合った、それぞれが担う仕事があるはずです! 私は生活に必要な買い物が、陛下は国のために必要な御政務が!」

柔らかな日差しが届く、だけど年が明けたばかりの冬の庭園。
その四阿で夕鈴は異様な汗を掻く自分を自覚した。 ここで上手く説得出来なければ、明日の里帰りが消えてしまうかも知れない。 そうなると家計に大打撃だ。 
来てもらっては困る。 陛下は政務に励め。
そうはっきり言っているのに、陛下は目を輝かせて夕鈴の手を取る。

「そうかぁ、色々な品が安いんだぁ。 それじゃあ、夕鈴はたくさん買い物するんだね。 そうなると荷物がいっぱいになって、とっても重くなるよね? 荷物持ちに僕が」
「青慎もいますし、予算も限られてます。 重くなるほど買い物は出来ません」
「でも弟君は勉強で忙しいでしょ? その点、僕なら」
「陛下は政務で忙しいでしょ!」
「大丈夫だよ、新年のやるべきことは大方片付いたから。 だから一緒に」
「行きませんっ! ・・・・陛下がお気にすることはありませんから」

陛下に荷物を持たせる訳にはいかないし、その前に下町に来させる訳にはいかない。
そのために李順が宰相の下での政務執行を告げたのだろうから、バイト妃としては、陛下が間違っても下町に足を運ばないよう、説得をしなくてはならない。

陛下の勘繰りに、思わず下町に行くことを吐露してしまった。
それを知れば、李順さんは怒る。 
きっと怒る。 絶対に怒る。 とんでもなく怒る。
涙ぐもうが、震えようが、謝罪を繰り返そうが、貴女自身が下町行きをばらしたんですねと、陛下の脱走は貴女が原因なのですねと、ネチネチと時間を掛けて恐ろしいほどたっぷり怒る!
夕鈴は寒気を覚えて、陛下に懇願した。

「陛下、お願いです! 絶対に来ないで下さい。 怒られますからっ!」
「でも夕鈴、いっぱい買い物するでしょう? そうすると荷物がとっても重いし、だから」
「大丈夫です! もし荷物がいっぱいになって重くなったら、そこらに絶対いる几鍔やその子分に頼んじゃいますから、ご安心下さいっ!」

夕鈴が強く言い放つと、陛下はきょとんとして見上げてくる。 

「几鍔君、・・・そこらに、絶対・・・いるの?」
「ええ、そうです。 町を歩いていると、必ずと言っていいほど姿を見せるんです、あの金貸しは! 見つけたら荷物持ちにしてやりますから、陛下はここでゆっくりお過ごし下さい」
「・・・・・・・」

陛下の何かに火を点けたのを 夕鈴は気付かない。
最後に漏らしたその一言で陛下が下町に行くことが決定したとは露知らず、黙り込んだ陛下に自分の説得が届いたと安堵した夕鈴は、冷めたお茶を口に運ぶ。 
何故か突然、身体に震えが奔り、夕鈴は冷たいお茶を飲んだせいかしらと杯を置いた。 空を見上げると雲が多く流れているのが見え、明日の天気が少し心配になる。 

「夕方近いせいか、寒くなりましたね」 

夕鈴は羽織を引き寄せ、せめて明日は雨が降らないように祈っておこうと呟きながら茶杯を片付ける。 直ぐに冷たくなる茶杯を手に、野菜が高騰してないようにも祈っておこうと苦笑を零す。

その横で狼が静かに舌舐めずりしているなど、夢にも思わずに。



FIN

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 18:02:22 | トラックバック(0) | コメント(0)
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