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乙女の悩み
短編です。
夕鈴の悩みです。陛下は全く気にしないと思うのですが。
でも悩むのが乙女なのです。



では、どうぞ













花恵宴で目にしたひとコマが脳裏から離れない。 普段はすっかり忘れているのだけど、時々刺さった棘のように脳裏に浮かび上がってくる。 忘れたいのに、忘れられない。

例えば、朝着付けを手伝って貰っている時。
例えば、後宮女官を見つけた時。
例えば、湯殿でのんびりと手足を伸ばしている時。
例えば、寝台で寝返りを打った時。

仕方がないじゃないと思うのだけど・・・やっぱり女だから気になる。
相談する事じゃないし、相談してもどうしようもない事。

でも、どうにか為らないかしら?
為せば為る??





最近、急に変な顔で (それも可愛いが)、何か考え事をしている夕鈴。
政務室の指定席で団扇を顔に翳しながら深く考えている内に面白い顔になり、僕もつい見つめちゃう時がある。 李順の咳払いで意識を戻すが、夕鈴の思考はどこかに彷徨った後、深い溜息となる。
政務の邪魔をしている訳ではないので、李順の注意は僕の方だけ。

官吏が忙しく書簡を携えて行ったり来たりする中で、夕鈴だけが物憂げな顔で寂しげな雰囲気を醸し出し、時折足を止め夕鈴をぽぉっと見ている官吏がいる。

 ・・・・・全く持って面白くない。

李順の咳払いが耳障りになり出した頃、夕鈴が静かに政務室より退室した。
その姿を眼で追っていると、今日一番の盛大な咳払いが耳元で聞こえた。






夕鈴は自分の部屋に戻り、鏡台の前で自分の姿を見る。
少し屈んでみる。 背を反らしてみる。 ・・・・・そして、溜息。
下町で明玉が 『良い方法があるんだけど、夕鈴には勧められないわ~』 と言っていたのを思い出すが、明玉の怪しい笑顔が浮かび、その方法は却下することにした。

あの花恵宴での陛下は嬉しそうだった。 (夕鈴視線、及び見解)
いや、私に其れを要求していないのは重々解かっている。 要求される訳がないし、もし万が一にでも要求されても・・・・。 鏡の中の私は真っ赤に染まり始めた。
--------------言葉に置き換えて整理すると恥ずかしくなる。

それでも・・・・。

侍女は部屋に居ない。
廊下に顔を出して、誰の姿もない事を確認する。
廊下の曲がり角まで小走りで移動し、その先も確認する。
急ぎ部屋に戻り、窓の日差し避け布を垂らす。
そして長めの手布を用意、襟元を緩めて・・・・・・・・・・・







今日の夕鈴はおかしかった。
李順に言わせると 「夕鈴殿はいつもあんなものですよ」 と冷笑された。
そうとも言えるし、そうじゃないとも・・・いや、あんなものか?
でも気になる!!と、陛下は李順の隙を突いて夕鈴の自室に足を向ける。

「浩大・・・ 変わりないか?」
「お妃ちゃんは変わりないように見えるけど、今は部屋に閉じ篭っているよ。 窓も布を垂らしてシャットアウト状態っす。 周囲に問題はないけど何か?」
「・・・・ふぅん・・」

浩大にそのまま後宮周辺を警護するよう指示して、夕鈴の自室へ近付く。
部屋に入るが侍女の姿もなく、夕鈴の姿もない。 もしかして老師の処に行ったのかとも思ったが、浩大が 『閉じ篭っている』 と言っていたし・・・・。 奥の寝所か?と、静かに足を運ぶ。

この時、何故忍ぶような足取りになっていたのかを後で後悔する事になるのだが。


声も掛けずに寝所に顔を出すと、夕鈴は鏡台前で上体を屈ませていた。
何をしているんだろうと思っていると、勢い良く夕鈴が上体を起こして鏡で何かを確認し始めた。 その姿を見て、慌てて一歩下がる。 鏡に映った夕鈴の姿態に黎翔の心臓が大きく跳ねる。

『え?? アレって何してる?』

忍び足で近寄ったから夕鈴は僕が来ているとは知らない。 知らないから、部屋に一人だと思っているから、しているだろう行為。 僕に見られたと知ったら・・・・泣くか、怒鳴るか、・・・・最悪、家出か・・・。
それは駄目だ。
そっとこの場を離れよう。 見ていない、知らない事にして・・・・だけど。

知らず陛下の足は一歩前へ出る。
鏡台の前で夕鈴は屈んだり、ちょっと斜めに立ったり、手を組んで胸を持ち上げたりといろいろなポーズをとっている。 その度に鏡台に映る自分に満足な笑みを映したり、眉根を下げたりと百面相をしている。

胸に手布を巻きつけて・・・・・・。

春とはいえ窓に日除け布を垂らしているので薄寒いだろうに、上半身だけ肌蹴た状態で胸に手布を巻き付けている。 その胸の谷間が僕の眼に突き刺さるようだ。
おもむろに夕鈴が自分の胸を持ち上げて呟いた。

「舞姫は・・・・ すごかったな・・・」

持ち上げたまま、夕鈴は鏡台の前でちょっと体のポーズを変える。
鏡台に映る自分の姿に溜息を付き、そして自分以外の姿が映っている事に気付く。
こくんっと唾を飲み込み、ゆっくりと振り返る。
寝所入り口で動けずに居る僕と目が逢う。

黎翔はゆっくりと振り返った夕鈴の大きな瞳が、自分を見ていることに気付く。
自分の胸を持ち上げたまま、大きな瞳と大きく開けられた口。

「え・・・と。 ゆーりん、さむくない?」

精一杯可愛らしく小首をかしげて聞いてみる。 が、見る見る真っ赤になる夕鈴の口元がワナワナと震え始めた。 あ、やばいと瞬時に思い、急ぎ夕鈴に近付きその口を覆った。

「きぃっ・・・!!」
「夕鈴、叫ばないで!! 謝る、謝るから!!」

鏡台前で夕鈴を押さえつけながら、寝台に引き摺るように移動する。
僕の腕の中で暴れる兎を寝台に乗せると急いで掛け布を被せる。 口は押さえたまま。

「夕鈴、夕鈴、聞いて! 悪かった、僕が本当に悪かった。 謝るから、お願い。 いい? 君の口から手を離すから叫ばないで欲しいんだ。 お願いだから・・・・」

夕鈴は目の前に覆い被さる陛下の近すぎる顔と、今の姿態を見られた事に盛大なパニックを起こす一歩手前に居た。 頭の中が真っ白になりショートした状態。 口には陛下の手が覆われ、叫びたくても叫べない。
自由になる手で掛け布を寄せ集め、胸元を覆いながら陛下の言葉にどうにか頷く。

眼がぐるぐるした状態で真っ赤な顔の夕鈴から、僕は静かに手を離す。
すぐに夕鈴は蓑虫みたいに掛け布を巻きつけて丸くなった。 夕鈴が作る小山は見て解かるほどに震えていた。

陛下は 『今、ここで解決しないと二度と顔を見せてくれなくなっちゃうかも!』 と慌てて言葉を紡ぎ出す。 寝台に腰掛けて小山にそっと手を置き。

「・・・・本当にごめんね、夕鈴。 えっと・・・・あの・・・・・」

掛け布に包まった夕鈴は背中に感じる陛下の手に大きく震えた。

「み、み、み、・・・・・陛下、見ちゃいましたよね! ねぇ!!」

掛け布越しにくぐもった震える声が聞こえ、黎翔は 『ここは正直が一番、拗れると後が大変になるのは承知している』 と過去を鑑みて思った。

「・・・・鏡越しですが、はい、見ちゃいました。 ごめんね・・・」

掛け布の中に閉じ篭っている夕鈴に小犬陛下は通用しない。
それでも小犬の声色で震える小山の夕鈴に尋ねてみる。

「あの、訪ねても良いかな? 何を・・・・してたのかな?」

小山が大きく跳ねたあと、震え始めた。 もしかして聞いちゃ駄目だったかな?

「・・・・夕鈴?」
「・・・・宴で・・・陛下の傍にいた・・・・舞姫たちの・・・・」
「あ、あれは! 僕が頼んだ訳ではなくて・・・・!!」
「やっ! そうではなくって! あのっ・・・・」

小山から夕鈴が頭だけ出して大きな声で否定した。 ドキドキしながらも 「ほっ」 と安堵して、身を乗り出して続きを聞いてみる。 頭だけ出しているので、その表情も顔色も解からないけど真っ赤なのは確かだろうな。

「素敵な・・・・ お衣装と容姿で・・・・ む、胸も・・・・」
「・・・・・・ああ」

それでそんな事をしていたのかと合点がいく。 手布で胸を覆って寄せて、上げて、ポーズして・・・。
正直、舞姫たちの顔や衣装なんて覚えていない。 咽返るようなキツイ香油の匂いが記憶の片隅に残るだけ。 それなのに女性は見ている箇所が違うんだなと感心する。
僕の 「・・・・ああ」 に何かショックを受けたのか小山が大きく震えている。

「・・・ぱり、そうよね・・・。 でも・・・」

小山から小声で聞える夕鈴の声色がちょっと恐い。 慌てて陛下が問い掛ける。

「夕鈴?? 僕は夕鈴の下っ端侍官の方が可愛いって言ったよね! 言ったよね!」

小山の中で衣装を整えていたのだろう、漸く夕鈴が顔を出して僕に指先を向けた。
その指をくるりと回され、素直に夕鈴に背を向ける為にくるりと廻る。
寝台から這い出た夕鈴が、僕の背後でごそごそと衣装をしっかりと直している音がする。
その音にドキドキしちゃうけど、その後の夕鈴への対応にも別の意味でドキドキする。

「・・・・陛下、ここで見た事は直ぐに記憶から削除して下さい・・・・。 人間、如何にも為らない事があるのだと解かってはいたんです。 ただ、ちょっと挑戦してみようと、駄目もとで・・。 いえ、何でもないです・・・・」

怒っているような夕鈴が急に項垂れてがっくりと椅子に腰掛ける。
両手を握り膝に置き、大きな溜息を付く。

「あとは明玉に尋ねてみます。 今度下町に行った時にでも・・・・」

その呟きに 「??」 しか出てこない。 一体夕鈴は何を悩んでいるのだろうか。
几鍔君に尋ねないだけ少し安心したけど、女友達に尋ねることって?

「ゆーりん、僕はそのままの夕鈴がいいよ。 前にも言ったよね。 何時いかなる時も君が僕の妃だって。 舞姫の衣装が欲しいなら用意させるよ?」

紅い顔で僕を睨み付けるように顔を上げた夕鈴は涙ぐんでいた。

「そのままでは嫌です。 もっと成長したいんです! ええ、陛下には関係ありませんけど! ~~~~もっいいですから! 兎に角 先程のことは忘れて下さい!」

 
怒り心頭の夕鈴から押し出されるように部屋を追い出された陛下は、先程の光景を 『忘れることは絶対に出来ないよ』 と頷きながら自室に戻ることになる。


舞姫たちにデレデレの陛下に未だにモヤモヤしている夕鈴は新たな課題に悩む。
『胸の成長促進』 の為には何をすれば良いのか、明玉に聞くしかないと!!
恥を忍んで手紙を書こうか悩むのだった。






FIN





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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

短編 | 23:55:58 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
全部の作品拝見ました。
楽しかったです。
夕鈴可愛いです。黎翔・・・まぁ、頑張れ。
きっちりはっきりプロポーズしないと
伝わらないと思います。
今後も頑張って下さい♪
2012-03-10 土 21:08:52 | URL | 通りすがり [編集]
うれしいです♪
通りすがり様、はじめまして。
楽しんで頂けてすごく嬉しいです。黎翔さんはこれからどの様に頑張るのか楽しみですよね。うちの黎翔さんはそれなりに頑張ってくれると思いますが(笑)また遊びに来てくださいませ。有難う御座います。
2012-03-11 日 01:38:25 | URL | あお [編集]
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