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青嵐  2
やっぱりのんびり更新となりました。(;´・ω・) 時間がある時に夏物衣を出し、冬物をクリーニングに、こたつを片付け、真夏が来る前にと断捨離を再び・・・・。休みのたびに動いていたら背中や腰に鈍い痛みが出現し、齢を実感して半泣きです。母の日に、ちょっとお高めのシップを買ってもらいました。 ・・・トホホ。 


では、どうぞ









「お妃様。 陛下より、こちらを届けるよう指示を承って来ました。 御人払いをお願い致します」

翌日、無表情の宦官が侍女と共に訪室し、拱手一礼すると横柄な態度で言い放った。
夕鈴は出来るだけ表情を変えずに頷き、侍女に人払いを命じる。 宦官を案内した侍女が目元をほんのり染めながら下がると、宦官はあからさまな嘆息を零し、舌打ちまで零す。
宦官衣装を身に纏って舌を打ったのは、桐だった。

「・・・面倒事引き寄せ体質は変わりなしか。 全く以って面倒な体質だな」
「窓の外には警護兵がいるし、侍女が聞き耳を立てているかもよ」
「元暗殺者を舐めるなよ。 そんな気配はどこにもない。 それよりこれに目を通せ」
「・・・・場所を移動しなくていいの? 宦官とはいえ、妃の部屋に男が一人って」
「これに、目を、通せ」
「・・・・はい」

敬うということを知らぬ桐が、唯一の妃に侮蔑にも似た視線を落とす。もちろん抗うことなどせず、夕鈴は差し出された書簡箱を開けて中から紙片を取り出した。
 
夕鈴はバイト妃から昇格したはずなのに、浩大も桐も態度が一向に変わらない。 
変わったのは陛下の甘々態度が濃密になったくらいか? 
いや、李順さんからの呼称も変化した。 
前は夕鈴殿、とか、小娘がっ! だったのに、今の呼称は 『お妃さま』 だ。 
あとは老師の態度が、・・・あからさま・・・に、なった。 
本当にあの本を読まなくてはならないのだろうか。 数枚捲るだけで心臓が破裂しそうになるのだが、それくらいの知識は唯一の妃として必須じゃと押し付けられ、さらには 『応用編』 なるものまで置いて行かれてしまった。 応用って・・・・基本にも狼狽するというのに。 どこまでが基本なのか応用なのか理解するのは難しい。 陛下に任せっ放しは妃として、駄目・・・なのだろうか。

「・・・・、顔を赤らめるような内容か?」
「あっ、いえ、その・・・。 それよりも、これって・・・李順さんに怒られないの?」
「陛下側近殿より相手側の目的が把握出来ないことには、こちら側も動きが取れないと言われている。 もちろん陛下は反対されていた。 実行は十日後を予定している」
「李順さんがいいって言っているなら、私は大丈夫、です」
「ならば陛下を上手く説得しろ」
「・・・・・へ?」

とんでもないことを言い捨てた桐はさっさと踵を返す。 夕鈴が慌てて立ち上がると同時に振り向いた桐に眇めた視線を浴びせられ、反射的に逃げ腰になったところに止めを刺される。

「元は囮としても陛下のために動かれておられた、そのお妃のために、常日頃忙しい我ら隠密も出来うる限り努力しよう」
「あ・・・、う、ぐ・・・」
「お妃も陛下のための努力を厭うことなく、励め」

それが何よりも難しいことを熟知している隠密は、無表情のまま退室していった。
ひとり部屋に残された夕鈴は手にした紙に目を落とし、深く項垂れる。 


***



「御政務、お疲れ様・・・・でした」
「疲れなど、愛しい妃の顔を見ただけで消えていく。 さあ、いつものように、おいで」

夜闇が庭園の篝火を美しく浮かび上がらせる時刻、庭園の四阿に設えた宴の場へと姿を現した陛下が両手を広げる。 その笑みはバイト妃時代に何度か目にした意地の悪い笑みで、夕鈴は黙したまま、自ら罠に飛び込む兎の気分で腕の中に囚われた。 大きく長い腕に捕獲され、耳元に落とされる嗤い声に背筋が震える。
その嗤い声は、まだ納得してないぞという意味合いと、上手く出来るのかなという揶揄が込められているのを夕鈴は知っている。
説得に説得を重ね、最後は半泣き状態で承諾させた、この『作戦』。 
内容については夕鈴だって首を傾げるような内容だ。 だが周りを警護する人たちの協力と、早く事態を収めたい気持ちで、ともかく頑張ろうと決めた。

李順が提案した 『作戦』。

出自不明の妃は一度王宮を退き、だがいつの間にか後宮に戻り、かつてないほどに寵愛を受けている。 唯一の妃として真綿に包まれるが如く、狼陛下に愛しまれている。
その妃が巷で噂されていたように悪女であり、妖女だと判明したら、女はどう動くか。
厳戒態勢を敷いたのち、後宮に忍び込む者は皆無だった。 下手に動けば掴まることを懸念したのだろうか。 しかしそれでは何の目的で姿を見せたのか解からない。 女が望むように、悪女らしい妃を目にしたら、何らかの動きがあるだろうか。 では、そうしてやろう。 そして捕らえ、その目的を吐かせよう。

・・・と、いうことで、陛下の寵愛を一身に受けて後宮を牛耳っている妖のような女を演じることが、夕鈴に課せられた。 悪女らしい妖のような女を演じろと言われても頭の痛いことだが、やってみろと指示された。 他にも案がいくつかあり、これは手始めだという。

政務で疲れた陛下を呼び出し、夜の庭園を散策する。 それだけのために篝火を焚かせ、多くの警護兵を配した。 四阿に酒肴を用意させ、楽団を用意させる。 それも日によって気まぐれに場所を決めるため、篝火の用意をする警護兵も大変だ。
それを・・・・・もう、三日続けている。
天気が良い夜が続いているとはいえ、準備と後片付けを考えるだけで居た堪れなくなる。  
優雅に音曲を楽しみ、陛下と共に酒肴に舌鼓を打つ。 警護兵と煌々とした篝火に囲まれたまま、これくらいは唯一の妃として当然だと誰憚ることなく寵愛を貪る。 哄笑し、陛下にしな垂れかかる。
時折、意識が飛びそうになる・・・・・・。
バイト妃の時にも、こんな馬鹿げた芝居はしたことがない。 侍女や警護兵の視線を感じるたびに、頓首して謝罪したいくらいだ。 いつもと表情が変わらないのは侍女長くらいで、他は 「何があったんだ?」 と窺うような視線を向けてくる。 

「今日の妃も美しく、その美しさで私を惑わせるばかりだな」
「ええ。 陛下のために、咲き誇る花よりも美しくいたいと、そう願っておりますもの」
「そうか。 では今宵もその肌を愛で、慈しむことにしよう」

妖艶な笑みを駄々漏れにした陛下が立ち上がろうとする寸前、夕鈴は音曲を奏でる奏者に手を打った。 今日の奏者は五人。 月琴や竹蘭、板胡などの弦楽器を用いて明るい曲を奏で始める。 
寝所に戻って休もうと持ち掛けた陛下を押し留め、夕鈴はもうしばらく四阿にいましょうと酒肴を引き寄せた。 僅かに眉を寄せた陛下の肩に凭れ掛かり、上目遣いに諾を取る。 

「・・・寒くはないか?」
「寒くありませんわ。 陛下、もっと酒杯を御重ねなさいませ」

心の中では悲鳴の嵐を撒き散らしながら、夕鈴は楽しそうに杯を差し出す。 
こんな稚拙な演技で、あの美女がまた現れるのだろうかという懸念はある。 
彼女は妃に挨拶に来ただけだと言っていた。 妃の命を狙っているとか、後宮から出て行けと言った訳ではない。 後宮に忍び込んだ時点で充分問題なのだが、夕鈴の心身に何かあった訳ではない。 あってからでは遅すぎると陛下は言うが、相手の目的がわからない以上、今後陛下に何かある方が困る。
そのためなら、何でもやる。 何でもできる!

ただ、連日連夜、忙しい陛下を誘い我が儘な妃を演じるのは正直辛い。 この『作戦』は夕鈴の心身に深い深いダメージを与えていた。 
困ったな、早く休みたいな・・・そんな表情を浮かべながら、陛下は差し出された杯を重ねる。 妃に隠れて、そっと吐き出される溜息を、侍女と警護兵が横目で窺っている。
ズキズキと痛む胸を押し隠しながら、妖妃は楽しそうに目を細めた。



「・・・・。 つ、疲れた・・・」
「お疲れ様、夕鈴。 まだこの時期は夜になると寒いから、すっかり冷えちゃったね」
「はい・・・、陛下の方こそ、お疲れ様で御座います・・・」

人払いが済んだ寝所の長椅子で、夕鈴は温かい茶を啜る。 薄綿の入った上着を羽織った夕鈴が眉を下げて隣りに座る人物を見ると、彼は今日も満足げに微笑んでいた。

「あと五日くらいは続けてみようね。 それで現れなかったら、離宮に遊びに行こうか」
「いっ、五日!? そ、そんなには・・・」
「可愛い妃に振り回される国王を罵倒しに来るか、可愛い妃を狙いに来るか。 ・・・まあ、同じ轍は踏ませないけどね。 相手が動くまで、連日頑張ってイチャイチャしようねー!」
「・・・・・」

李順の立案に反対していた陛下は不機嫌な表情で四阿に現れると、たくさんの篝火、酒肴と楽団員、着飾った妃を前に相好を崩した。 

―そうかぁ、こういう作戦なのか。 うん、大変だろうけど頑張ろうね。
―もう少し警護兵と篝火を増やそう。 軽業師を呼ぶのも楽しいね。
―可愛い妃と過ごせるなら、本意じゃないけど疲れた演技も頑張るよ。

やる気スイッチの入った陛下の演技は、本当に素晴らしかった。 
激務を終えて足を運んだ陛下は、愛しい妃のために疲れた身体を押して夜のひと時を楽しむ。 楽しそうに酒杯を重ね、疲労感を僅かに漂わせながら妃の求めに応じる。 そっと顔を逸らし、嘆息を吐く演技も忘れない。 
そして後宮に戻るとケロリとして 「今日の僕の演技、どうだった?」 と目を輝かせるのだ。 

「もう三日も経過しました。 でも彼女は現れません。 ですから次の作戦に」
「ええー、もう少し頑張ろうよぉ。 夕鈴ともっとイチャイチャしたいよー」

何を頑張ろうと言うのか、答えを漏らしながら陛下は夕鈴の肩を揺する。 
頑是ない子供の様に 「もう少し~、あと五日だけ~」 とぐずり続ける。 

次の作戦は、妃がたったひとりで庭園を散策するというものだ。 
もちろん浩大らが影から妃をしっかりと見張っている状態で。 
その方が現れやすいのではないかと、それを先にやってみようと夕鈴は言ったのだが、陛下が許可を出さなかった。 万が一にも億が一にも、夕鈴に何かあっては大変だと。
だが、後宮に忍び込んだ彼女の目的が判らないままでは困るのだ。
だったら先に悪女妖妃を演じたらどうかという李順の提案に渋々ながら頷いたのは陛下の方だというのに、今ではすっかり楽しんでいる。 かたや夕鈴は、陛下を翻弄する妖艶な妃など上手く演技出来るはずもなく、周囲の視線に強張りそうになる表情筋を叱咤するのが精いっぱいだ。 杯を差し出す手も震え、卓上のたくさんの酒肴や篝火に 「勿体無い」 と呟きそうになる。

「三日も酒盛りして、我が儘妃を演じました。 そろそろ私一人で庭園をうろついた方が現れる可能性が高いです。 もう・・・・、申し訳なくて・・・、勿体無くて・・・」
 
正直な胸の内を零すと、陛下の態度が柔らかくなるのを感じた。 質素倹約に励む妃を誰よりも知る陛下は、連夜の酒盛りで夕鈴がどんな思いでいたかを熟知している。 
そっと肩を撫でる手の動きに安堵の息を吐こうとした夕鈴だが、次の瞬間、耳を疑った。

「愛しい妃が私以外の者と密会するために庭園を散策するなど、そんな愚かな案には賛成出来ない。 却下だな」

低い声色に、目を瞠った夕鈴はこくりと息を飲む。 陛下の口端は持ち上がり笑みを浮かべているのに、その双眸は冷ややかだ。 何度も話し合ったはずなのに、一度は納得してくれたはずなのに、一番手っ取り早くて確率が高い作戦なのに。 
どうして狼陛下が出現するの!?





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:47:05 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2016-05-18 水 09:32:27 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。
桐が出せてほっとします。態度があまりにもアレなので、台詞が難しいオリキャラですが、喜んで頂けてめちゃ嬉しい。妄想が先走りしそうで、まとめるのに時間が掛かり、何度も見直ししてやり直して全部消してを繰り返し、今回も本当にのんびり更新となりました。のんびりお付き合い頂けたら嬉しいです。
2016-05-18 水 20:31:15 | URL | あお [編集]
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2016-05-19 木 00:41:30 | | [編集]
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2016-05-19 木 17:52:23 | | [編集]
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2016-05-20 金 09:53:00 | | [編集]
Re: 祝更新
マダムやん様、コメントをありがとう御座います。そして遅くなりましてすいません。しばらくパソコン離れをしていたので、気付いたらこんなにも遅くなりました。『待て』の出来ない陛下との濃密な夜・・・・。いいっすね! 夜は絶対に強いだろう陛下との睦合いは、夕鈴の下半身と精神に大ダメージを落とすでしょう。まあ、新婚さんですから(笑)引き続き、のんびり更新ですが、御付き合い頂けると嬉しいです。
2016-06-19 日 23:53:13 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
れん様、コメントをありがとう御座います。返事が遅くなりまして申し訳ありません。パソコン離れて実家でのんびり・・・とはいきませんでしたが、暑い北海道を満喫してきました。クーラーなしの実家は夜は涼しいのですが、昼間は地獄。盆地になっているので、連日汗まみれでトホホでした。桐好き、嬉しいです。引き続き、のんびり更新予定ですが足を運んでいただけると嬉しいです。
2016-06-19 日 23:55:56 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
>novello様、コメントをありがとう御座います。そして返事が遅くなり、誠に申し訳ありません。宦官ですが、父王の時代は後宮がぎっしりみっちりだったので(爆笑)、侍女だけで後宮の雑事を回すのは無理があるだろうと、勝手に宦官を投入しています。他の記事や小説には多く登場しているので、痛いだろうけど居るだろうと思ってます。あと、桐に女装は・・・・難しい! きれいとか綺麗じゃないとかより前に、彼は絶対にやらないだろう! 浩大はノリでやってくれそうな気がするけど、桐は断固無視をすると思う(笑)水月さんは似合いそう♪
2016-06-20 月 00:00:17 | URL | あお [編集]
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