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青嵐  6

今年は北海道に台風が立て続けにやって来て、実家にも少なからず被害が・・・(涙)。いや、ほんとうに少しでしたけどね。一度は避難勧告を受けたそうですが、無事に回避できたのでほっとしてます。子供の頃は滅多に台風にも雷にも遭遇したことがなかったのに、温暖化のせいとはいえ、これが毎年になると困ります。四季も、そのうち無くなるのかなぁ。花粉症の辛い時期は要らないけど、四季はあって欲しいなぁ。

では、どうぞ







老師の許へ菓子を届け終えた侍女の報告を受け、あとは待つだけとなる。 
その後浩大からの連絡や動きはなく、夕鈴は急いた気持ちのままで過ごすことになった。 侍女たちはしばらく訪れのない陛下を想っているのだろうと、溜め息ばかり吐く妃を案じていろいろ話し掛けて来るが、夕鈴は曖昧な返事しか出来ずに過ごし続ける。
日が暮れても何の音沙汰もなく、焦れたままで過ごすことが辛くなった。
しかし下手に動くことは躊躇われ、これも精神修練の一環だと覚悟を決める。 
陛下のそばに寄り添い、同じ方向を見つめて歩むことを望んだのは自分であり、それを手に入れることが出来たばかりだ。 ふたり、手に手を取り合い、堂々と見つめ合うことが出来る。 みなに認められ、祝福してもらえる。 いまの幸せを手放したくない。 
そのためには愚かな過ちを犯さないことだ。 
卓に置かれたままの手紙を視界に入れず、黙々と教育本に目を落とす。 少しも内容が頭に入らないが、それでも夕鈴は読み続けた。

夜も更けて就寝時刻となり、今夜も陛下のお渡りがないと報告が届けられる。
侍女が静かに退室すると、夕鈴は脱力して椅子に寝転んだ。 
窓から忍び込む風は夏の熱を含んでいたが、昼間の暑さは落ち着いている。 比較的涼しい部屋にいても、妃衣装で過ごす昼間は黙っていても暑かった。 その暑さの中を隠密は駆け回り、警護兵は重い刀を携えて要所を護っている。 
ただ陛下を待つだけの妃の存在を、命を賭して護ってくれている。
護られている自分が、みんなの気持ちを無下にする訳にもいかず、それでも手紙の内容が気になって仕方がない。 だからこそ早く見て欲しい。 何が書かれているか、訴えは何かを、どうか教えて欲しい。

「お妃ちゃん」
「・・・っ!」

待ち侘びた人物の声に、夕鈴は飛び上がるように長椅子から起き上がった。 
開けられた窓から顔を出したのは待ち望んでいた浩大で、しかし部屋に入ると同時に盛大に顔を顰める。 首を傾げる夕鈴を無視した浩大は、行李から大判の布を取り出すと覆うようにそれを頭に被せた。

「一応さぁ、オレも命が惜しい訳。 こんな時間に来たのは悪いけど、薄着のお妃ちゃんのところに来たって知られたら殺されちゃうよぉ。 ・・・で、何があったの?」
「夏の夜に厚着なんか出来ないわよ。 ・・・って、そうそう」

大判の布を身体に巻き付けた夕鈴が卓上を指すと、浩大は目を細めた。
浩大が 「ふぅん」 と呟き、手紙を用心深く手に取ったと当時に、窓から新たな人物が登場する。 驚いたのは夕鈴だけで、浩大は振り向きもせずに窓枠に腰掛ける桐に、「どうだ?」 と尋ねた。

「日中から夕刻にかけての侵入者はなし。 ・・・・陳情書か?」
「恋文かもよ? お妃ちゃんに会いたいって」
「・・・まだ、中身は見てないの。 余計なことをしない方がいいと思って」
「お妃にしては賢明だな」

桐は浩大から手紙を受け取ると、またも窓から姿を消した。 
いつも思うが、隠密というのはどうして窓を出入り口にするのかと見送っていると、浩大が懐から菓子を取り出そうとする。 菓子屑を零されては困ると睨むも、浩大はバリバリと固焼きの菓子を齧り始めてしまう。 何を考えているのか、菓子を頬張りつつ、浩大は無言のままだ。 居心地の悪い沈黙に、夕鈴は急いたように口を開いた。

「さっきのアレって・・・・きっと、あの女性からの手紙だと思うの。 紅珠の名前はあったけど氾家の押韻はないし、いつもなら一緒に届けられる巻物もなかったし・・・。 私が庭園に行かないから、手紙を届けたのかな。 紅珠の名前を使ったのは、妃の交友関係を調べたから・・・・かな」
「うん、だろうね。 何が書かれてるのか、それでどういう判断が下されるのかは陛下次第。 オレたちはその指示に従うだけだ。 だけど、よく開かずに我慢したな、お妃ちゃん」

それはそうだと唇を噛む。 
何か訴えたくて書簡を届けたのか、その真意も内容も知りたいが、侵入者である彼女に唯々諾々と従う訳にはいかない。 同時に、紅珠の名を持ち出した彼女への憤りもある。 それで万が一紅珠に迷惑が掛かるようなことがあれば、彼女にどんな理由があろうと許せない。 それが原因で、氾家当主であり国王陛下直属の大臣でもある氾史晴を敵に回すことに繋がる可能性もある。 それらを含め、周囲に迷惑と心配を掛けない方が先決だ。
国政に携わる多くの大臣、貴族を敵に回す・・・・・。 
それは、それだけは絶対に避けなければならない。

「あとは陛下に任せて、風邪ひかないように早めに寝てね~」

のんびりした浩大の台詞に、夕鈴は強張ったままの顔で頷き、素直に寝台に移動した。
あとは運を天と陛下に任せるしかない。 
そう思い目を閉じるが、どうしてこうなったのかと眉が寄る。 
陛下の妃がたった一人だということで生じる周囲からの様々な思惑に翻弄されるのは、もう仕方がないと諦めるしかないのだろうか。 陛下がそれらを一切無視することに、何か問題は生じないのだろうか。 唯一の妃が出自不明なままでいることで、後々面倒事になりはしないだろうか。 広い後宮に、たった一人だけの妃が住まう今の現状は、問題ないのだろうか。

「・・・だけど他の女性が陛下に近付くのは」

絶対に嫌だもの・・・・

言葉に出さずに唇だけ動かして溜め息を落とした時、「僕もだよー!」 と寝台内に驚くほど響き渡る声が夕鈴を飛び上がらせた。 目を瞠って振り向くと、脳裏に浮かんだ人物が寝台に膝を乗せるところで、さらには夕鈴が羞恥に身悶えしそうなほどの満面の笑みを浮かべている。

「夕鈴からはっきりと悋気の言葉を聞かせてもらえるなんて、とっても嬉しい! だけど安心して! 僕だって夕鈴以外なんて考えられないよ。 誰よりも近くにいて欲しいのは、夕鈴だけだから」
「・・・・・き、き、聞いて・・・っ?」

悋気ではないと言おうとしたが、満面の笑みを浮かべる陛下に毒気を抜かれる。
今日は来ないはずではなかったか? 夫婦とはいえ、足音を忍ばせて寝所に顔を出すのはアリなのか? ましてや妻の独り言を聞くなんて・・・・!
夕鈴は気力を振り絞って睨み付けるが、小犬陛下の輝く笑みには敵わない。 
悋気が嬉しいなんて言われては、いつまでも睨み続けることなんて出来やしない。

「うん、聞かせてもらった。 焼きもち妬く必要なんかないのに、夕鈴は可愛いなぁ」

自覚出来るほど真っ赤な顔を隠したいのに、陛下は両頬を掴んで上へと持ち上げる。 ちょんっと重なる唇の感触に悲鳴が上がりそうになり、慣れることないスキンシップに夕鈴はアワアワと身悶えた。 それが陛下のツボを刺激しているなど知りもせず、夕鈴が羞恥に目を潤ませていると、寝台に腰掛けた陛下の膝上に降ろされる。 

「怪しい手紙の件だけど、やっぱり夕鈴を誘い出す内容だったよ」
「そ・・・、そうですか」

小犬陛下の穏やかな口調で告げられた内容に、一瞬戸惑ったが、夕鈴は眉を寄せて頷きを返した。 紅珠の名を騙ったことには憤りを感じるが、そこまでして妃に会いたい、その真意は何だろうと考えてしまう。 
窺うように陛下を見上げると、目を細めて夕鈴を見つめている陛下と目が合い、慌てて顔を背けた。 何を考えているか、全てお見通しだと言わんばかりの表情に、妙な震えが奔りそうになる。 
 



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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 19:46:05 | トラックバック(0) | コメント(2)
コメント
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2016-10-12 水 22:07:18 | | [編集]
Re: タイトルなし
ぽんちゃん様、コメントをありがとう御座います。返信遅くなり、すいません。ネット離れが着実に進んでいる今日この頃です。齢のせいか、あっという間に夕刻になり、休みには歯科だ、マッサージだ、演劇だと駆け回り、痩せもしないのに汗ばかり掻く毎日。代謝がいいのかと思っていたら、娘に「更年期なんじゃないの」と恐ろしいことを宣われ、日々恐々としております(笑)
桐のデコピン、または辛辣な態度・・・・と思っていたのですが、一応妃に昇格(爆)した夕鈴に下手なことをしたら、あとで大変かと・・・・思う訳ないか、桐が。では、次の出番には・・・によによ。
2016-10-19 水 23:50:25 | URL | あお [編集]
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