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青嵐  8

のんびり更新の弊害は季節があっという間に変化することです。春に始めて、もう冬です。(爆笑)
片付けたストーブが再び登場し、その前でセキセイインコと犬がのんびり、ヌクヌクしています。お鍋が美味し時期ですが自転車移動が辛い時期になり、手袋とマフラーが必需品。今年はどんなカラーが流行るのでしょうか。

では、どうぞ






夕鈴は突然の眩しさに目がくらみ、一瞬遅れて顔を逸らす。 
もっと奥へ行けと身体を押され、余りの勢いにバランスを崩して床に転がる。 転がった先にあった卓にぶつかるが、痛みに呻く間もなく回廊から再びの閃光が奔った。
身を竦めながら開いたままの扉の向こうを窺う。 
こんな夜更けに侵入者が? 
ここは誰もいない場所だと、見れば直ぐに分かるはず。 甘い囁き声ひとつ、白粉の仄かな香り、蝋燭の灯ひとつない静謐な暗闇が占める宮なのだ。 ここに忍び込んだのは、次の行動のための隠れ家にするためか、それとも己が主の未来の住処を調べに来たのか。

高い音が響き、夕鈴が驚きに顔を上げると、幾つもの足音が聞こえた。  

「忍び込んだ輩は三人と思われる。 屋根を伝って逃げたようだ」
「即時、裏手に回れ! 半数は場に残り、痕跡を調べよ!」
「詳細が判明次第、陛下へ報告せよ。 念のため、女官や侍女が住まう宮も警護しろ」

回廊の下にいるのが警護兵と判り、夕鈴の身体から一気に力が抜ける。 高い音は今だ鳴り響き、怪しい奴を探せと兵を駆り立てている。 あの光りは何だったのか、何があったのかと唖然とする夕鈴の顔に影が掛かり、その正体を知り声なき悲鳴が上がった。

「・・・こういう事態を招く可能性があると、その頭に叩き込め」

妃警護の桐が、警護対象者である夕鈴に怒りを滲ませた冷たい声を落とす。 
閃光をまともに目にしたためか白と黒の明暗が大きく小さく閃き、前が良く見えない。 忍び込んだ者の目的が分からない以上、自分の安否より陛下の安否が心配だ。 昼も夜も、様々な目的で忍び込む者がいるため、隠密が日々警戒しているのは知っている。 屋根上にいることが多い浩大は、陛下のそばで警護をしているのか。
夕鈴はどうにか立ち上がり、壁伝いに回廊に出た。
走り回る警護兵の鎧音が聞こえ、冷たい夜気と妃を警護する隠密からの冷たい視線に肩を竦めつつ足を進める。 二部屋分進んだところで、夕鈴の頭に覚えのある女性の姿が浮かんできた。

「桐さん。 ・・・・もしかして、侵入者の目的は・・・私、なのかしら」
「その可能性が高い。 手紙の内容通りに妃が動かないことに焦れ、目的を遂行しようとしたところに間抜けな妃が現れて、祝いの花火でもあげたのかも知れないな」
「花火って・・・」

鮮やかな手口で幾度も忍び込んだ彼女は、手紙に何を書いたのだろう。 
気にしては駄目だと思うのに、妃を誘い出そうとした手紙の、その内容がやはり気になる。 殺傷能力がないとはいえ後宮で閃光弾を投げる無謀さに、ただ妃を誘い出すだけが目的なのか、首を傾げてしまう。 
後宮立ち入り禁止区域に妃が現れたのを知り、それで閃光弾を投げた? 
前は煙幕だったから、やはり妃を傷付けるつもりはないのだろう。 
では妃警護をしている桐の目を塞ごうとした? そして妃を攫おうと?
だが、後宮から一人の人間を連れ出すのは難しい。 
もしや目が見えないと狼狽えている隙に暗殺を・・・・!? 
いやいや、彼女はそこまではしないと思う。 
だけど、・・・・彼女以外だとしたら、それも有り得るか?

「壁に貼りついてヤモリになっている暇があったら、さっさと足を動かせ」
「ねえ、桐さん! この騒ぎは、本当にあの彼女なのかな? そうじゃなくて他の人かも知れないよね? そもそも手紙だって彼女が寄越したとは限らないし、それに、こんな真っ暗な場所だもの。 後宮の一部だって知らずに入り込んで、人の声が聞こえてビックリして閃光弾をっ」
「ビックリして閃光弾を放り投げる輩がどこにいる。 侵入者には間違いないだろう。 お妃がそれらを考える必要はない。 今すべきことは、速やかに巣に戻ることだ」
「・・・・・・」

王宮に忍び込む。 それだけでも恐ろしい罪であり、手紙を寄越した者が捕まった場合どうなるのか、いやでも想像出来る。 間違いなく、その者に明るい未来などない。 
四肢の感覚が朧気になり、夕鈴は壁に縋りながら床にへたり込んだ。
呆れたような嘆息が頭上を行き過ぎるが、いまの夕鈴の耳には届かない。 
ああ、知らなければ良かった。 侵入者である彼女と言葉を交わし、苦痛に歪む表情を目にしてしまったことを、心底悔やんでも今更な話だ。 彼女に会わなければ、今こんなにも感情を揺さぶられることはなかっただろう。 
兵が動くたびに聞こえてくる、鎧や武器の音が胸に響いて痛い。 自分には何も関係ないと、全く知らないことだと、ただ目を瞑って震えていることが出来そうにない。 陛下の想いを受け止め、しっかり反省しようと思っていたのに、結局は更なる面倒事を招いただけかと唇を噛み締めた。

「身体が冷えるぞ」

低く掠れた声に、夕鈴の頭は操られたように持ち上がり、その流れが当然のように両手を伸ばしていた。 表情を消した彼の心情を図ることも出来ず、それでも両腕を掴み上げてくれる手に安堵の息が漏れる。 
ここまで足を運んでくれた、その気持ちだけで夕鈴の心が温かくなる。

「反省は終えたのか?」

自分は護られ、どこまでも甘やかされている。 反省も・・・・出来てはいない。 
いや、自分は何を反省しようとしていたのだろうか。 
少し前、陛下に泣くのは卑怯だと言われたのを思い出して顔を背けた。 結局は妃を心配し、ここまで来てくれたことに安堵している自分に悄然としながら。 

「反省は、・・・終えていません。 というか、私は自分を変えることが難しい。 そのままでいいとは思っていませんが、誰しもが望む妃に近付く努力もしていくつもりですが、それでも・・・・やっぱり、どうしても・・・・」
「ああ、困ったものだ」
「こ、これは独り言ですからっ」
「私も独り言だ。 私は妃にどれだけ翻弄されようとも、結局は愛しい妃に頭を垂れ、跪くしかない。 結局は惚れた方が負けということなのだろう。 困ったものだ」
「・・・・・は?」

独り言だと陛下は言うが、その内容には激しく異議申し立てたい。 
困らせている事実はそれとして、陛下に頭を垂れ跪かせるようなことまではしていないつもりだ。 それに、惚れた方が負けって、恋愛は勝負ことなのか? 

「本当に我が妃の顔・・・・表情は私を惑わせる」
「顔って、いま、顔って言いましたよね? 私の顔の、どこが陛下を惑わせるのでしょうか」
「全てだ」
「・・・・・」

間近で真摯に言い放たれた夕鈴は途轍もない疲労感に襲われ、夕鈴こそが項垂れる。 大きくひとつ息を吐き、それでも、騒動に妃を心配して迎えに来てくれた愛しい陛下に礼を伝えた。 つむじに柔らかな感触を覚え、そのまま身を委ねる。 結局は少しも反省出来なかったけど、これからも日々努力し続けよう。 努力することで成長すると信じて、夕鈴は静かに闘志を燃やした。

「・・・そのままで充分なんだけどね、夕鈴は」
「いま、何か言いました?」

陛下からの返答はないが笑っているのだろう。 抱き上げる腕から震えが伝わって来て、憮然としつつも何だか安心してしまう。 そんな場合じゃないのは重々承知しているが、いまは警護兵や桐たちに任せようと思う。 叶うならば、閃光弾を投げ込んだのが彼女じゃないようにと願いながら。





その夜の内に有能な警護兵と隠密は、捜索範囲を速やかに広げ、逃亡寸前の侵入者を見事捕獲することに成功する。
捕まった侵入者は三人。 それも男ひとり、女がふたりと報告が舞い込んだ。 
目を瞠る夕鈴に浩大は、「お妃ちゃんの想像通りの人物だよ」 と朗らかに笑った。

「後宮立ち入り禁止区域に侵入して閃光弾を投じたのは、姉弟が一組と、見覚えのある女性がひとり。 お妃ちゃんに手紙を出したことは認めたよ」
「・・・・え?」

長椅子に座る陛下の膝の上で、夕鈴は目を瞠ったまま固まった。 
まさか姉弟混じりの三人組が、後宮の奥にまで忍び込んだというのか。 
やはり手紙を持ち込んだ彼女が忍び込んだのか。
夜間とはいえ、先の煙幕事件があった後だ。 常より警護兵が多い王宮の、さらに奥深くに位置する後宮まで、よくぞ忍び込んだものだ。 彼女たちが命を賭してまで忍び込んだその理由を、絶対に知りたいと夕鈴は拳を握り締めた。

「陛下、・・・・反省は、後回しです!!」





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:22:22 | トラックバック(0) | コメント(3)
コメント
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2016-12-05 月 07:41:50 | | [編集]
二度目です(^▽^)/
りと様、コメントをありがとう御座います。青嵐3でコメント頂いており、二度目となります。めちゃくちゃ嬉しいです。のんびりのんびり更新で、のんびりというか、はっきり言って「さぼってる」状態のサイトに足を運んで頂き、感謝しかありません! これからもお気を遣うことなく、暇なときにぶらりと足を運んで下さいませ。
2016-12-05 月 22:53:20 | URL | あお [編集]
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2017-02-24 金 23:37:15 | | [編集]
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