スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
辛い痛みと甘い誘惑  1

久々の普通の話。 もしもシリーズが最近多かったので、元に戻った気持ちです。 やきもきするのも、じれったくって好きなんです 久し振りに夕鈴狙われてます。


では、どうぞ









陽春の候、四阿でお茶を楽しむには良い気候。
氾紅珠が巻物を持参し、例の壮大な恋愛物語を頬を染めて夕鈴に語り続けていた。
夕鈴が這い上がる羞恥に引き攣った顔を団扇で顔を隠して聞いていた時 突然、卓上の茶器が割れ、侍女たちが悲鳴を上げる。 一体どうして急に茶器が割れたのでしょうかと驚く侍女に、夕鈴も不思議がるしかない。
「虫でも勢いよく飛んで来たのかしら」  夕鈴がそう呟くと、紅珠が立ち上がり震え出した。

「わ、私、虫は苦手ですの! お妃様、四阿を変えましょう!」

蒼い顔で夕鈴に願い出て来たので、即座に了承して池に迫り出した四阿へ移動する。
紅珠の表情も和らぎ、微風がよく通る四阿で爽やかな昼下がりを過ごせた。



後宮へ茶器を片付ける侍女と共に部屋へ向かう途中。
微風にも係わらず、回廊の天井にぶら下がる灯篭が音も無く落ちた。
ドンッ!ガッシャーンッ!!

「きゃああっ!」

驚いた侍女が大きな叫び声を上げ、その声に慌てた警備兵が集まった。
灯篭は回廊側ではなく回廊外側へ落ちたため、その場に居た夕鈴たちに怪我はなく、ほっとする。 灯篭を支えていた鎖が錆びていたのか?、と警備兵が全ての灯篭の点検を行なうようにしますと、拱手しながら詫びてきた。 長い歴史がある場所だけに、そういう事も有るんだろうなと夕鈴は疑問も持たずに納得した。
誰も怪我をしなくて良かったと安堵して。



政務室へ足を運ぶ夕鈴の後ろには、侍女が二人付き添って歩いている。
ほぼ毎日政務室へ顔を出す夕鈴に、途中の回廊で頭を下げて拱手する官吏が多い。 夕鈴も足を止めて頭を下げる。 その時、何故か足元が滑りバランスを崩して前のめりに倒れそうになった。

「あ、きゃっ!!」

倒れる寸前、周りに居た官吏達が一斉に妃を支え助けようと駆け寄ってくれた。 その内の一人は滑って盛大に尻餅をつく。 「こ、これは油か??」 と床の滑りに違和感を持った官吏が調べ始めた。 掃除夫が呼ばれ、きつく叱られていた。
『妃衣装が汚れなくて良かった! 李順さんに借金追加って言われたらっ! 危なかった・・・』
額の汗をそっと拭いながら、夕鈴は難を逃れたことにほっとしていた。



書庫へ入り、棚違いに入れられている書簡を見つけて、入れ直し作業をする。
たまに急いで仕舞ったり、方淵や陛下の冷やかな視線に耐え切れず、近場の棚に突っ込み逃げるように書庫を出る官吏がいるため、見つけた時は、そっと指定位置に入れ直し作業をしていた。 片付け始まると、書簡を手に方淵が水月と口論しながら書庫へ現れた。 『ちっとも仲が深まらないわね、この二人は・・・』 と思いつつ笑顔で二人に振り返り挨拶をしようとした、その時。

「お妃様、危ない!!」
「・・・え?」

視界に覆うように方淵が被さって来た。
ダダッダンッ!! バサッ!バサッバサッ!!
ぎゅっと目を瞑った夕鈴の耳元に、大きな物が倒れる轟音と大量の書簡が落ちる盛大な音が聞こえた。 耳元に  「・・・大丈夫か? 痛むところはあるか?」 とくぐもった声が聞こえる。 突然のことに、頭が真っ白になった。 繰り返される声に、意識を取り戻すと、頭と背中に方淵の腕が巻き付き、共に床に倒れ込んでいた。

「・・・・あえ? 一体、何が・・・・?」
「大丈夫ですか? ・・・・頑丈な棚が倒れたようです。 急ぎ方淵殿がお妃様の御身体を護り、私が棚から二人を御守りさせて頂きました。 ・・・・出られますか?」

現状を説明してくれる水月さんの声がいつもより緊張しているように聞こえる。
棚が?  あの大きな棚が倒れた? もし棚の下敷きになっていたら・・・。 
最悪の事態を想像すると、吐気を伴う悪寒に襲われた。

「いいかい? そのままでね・・・・。 引っ張るよ」

方淵に囚われたまま夕鈴は引き摺り出されて、その場から離れる。 振り返り現状を見ると傾いた棚に、書庫に設置してある長椅子が嵌まり隙間を作っていた。 その隙間に方淵と自分が倒れ込んでいたのだと知る。 もう大丈夫だと安堵したが、目の前の光景に震えが止まらない。

方淵が妃ごと身体を起こすが、襟元を強く掴んだまま震える彼女の蒼褪めた顔色にどうして良いのか悩んでしまう。 震える妃から髪飾りの花の匂いが強く薫る。 方淵が水月を思わず見上げると、水月も困った顔で視線を棚に向ける。

「お妃様に休んで頂ける長椅子は棚の下敷きだし・・・。 床に座らせるなど出来ないから、少しの間だけ、そのまま君の膝座らせていて欲しいんだけど」
「・・・・なっ!! そんな訳にい・・・・っ」

断固拒否をしようとしたが、ぎゅっと襟を掴む手に力が入った事に気が付き、方淵は先の言葉を失ってしまう。 胸に縋りつく妃が涙ぐんでいると知ってしまったからだ。 ガタガタと震える普段とは違う妃の様子に、方淵は諦めたように水月を見上げた。
少し肩を竦ませた水月は 「お妃様のためにお茶を淹れて来るよ。 陛下も直に来るだろう」 と書庫より出て行った。 水月の残していった言葉に方淵は心底焦るが、胸元で震える妃を床に放り出す訳にもいかない。

「全く貴女はいつもいつも・・・。 くっ、もう心配はないから安心しろ! すぐに陛下がいらっしゃるから、それまでは・・・・このままお妃様の座椅子になってやる!」
「は、はい・・・方淵殿。 ・・・すいませ・・・」

結局、方淵は陛下らが書庫へ来るまで、両手を背後に着き、胡坐をかいたまま、妃に寄り掛かれた状態で妃以上に震えながら耐え続けた。
棚が倒れた原因を調べ上げるよう陛下が指示し、書庫は騒然となる。
脱力した方淵も一時休むと、すぐに捜査に携わった。




一旦陛下の執務室に連れて来られた夕鈴は、熱いお茶を飲みながら気を落ち着かせようと努めていた。 細かな震えが熱いお茶でどうにか収まりだした頃、浩大が姿を見せる。

「棚の件は何か作為がある様子か?」

陛下が苛立ちを隠さずに浩大に問い詰めると 「ちっちっ! 実はそれだけじゃないんだよね~」 と指を顔の前で左右に振りながら話し出した。
朝から細かく夕鈴の周囲で起きた 『異変』 を話し出すと、夕鈴の顔色が変わっていく。 茶器の件も、灯篭の件も、廊下の件も、棚の件も、今日一日のこと。 ずっと狙われていたの?  わたし! 偶然だと思っていた全てのことが、刺客がらみの必然と知り驚くしかない。 あんぐり開けた口を見て、浩大が指を指して笑う。

「お妃ちゃん、全く気付かなかったよね! オレ可笑しくって!」
「だっ! 気付いていたなら教えてよ! 棚は本当に驚いたんだから~!」

卓に強く両手を置き盛大に怒り出す夕鈴に、悪びれた様子も無い浩大。
陛下が浩大を睨むと、てへっと哂う。

「なんかもう、目も当てられないほど 『下手くそ』 な作戦ばかりで、裏があるかと調査してたんだよ。 失敗に次ぐ、失敗。 『ヤル気』 があるのかと調べていたら棚の件だろ? 驚いたんだぜ、オレも」

本当に驚いた顔を見せる浩大に、夕鈴は視線を落とした。 
四阿で茶器が割れたのも蟲ではなかったのか。 もし続けて襲われていたら・・・・。 振り返ると、氾家息女である紅珠に何もなくて良かったと、今頃になって全身から力が抜けそうになる。 
灯篭が落ちたのは錆びていたためではなく・・・・? 良かった、回廊外側で。 あんなのが当たったら、いや、当たらなくても大事になったことだろう。 私だけじゃなく、侍女さんも居たのに。
廊下の油・・・・、あれも刺客の作戦だっていうの? 私を転ばせてどうしようっていうのかしら。 もしかして打ち所が悪くて・・・を狙ったのかしら?
だけど・・・、書庫の棚は・・・・・。
そこまで思い返して、ぞっとした。 方淵殿と水月さんが書庫に来なかったら私、潰されていた!
思わず両手を胸に当て、いま生きていることを感謝する。 大きく上下する胸を見下ろした時、二人に礼を言っていないことを思い出した。 命の恩人に、私はただ茫然と縋っていただけだ。 
蒼褪めた夕鈴の顔を見て、陛下が立ち上がり夕鈴を抱き締める。

「夕鈴、悪いがしばらくは後宮の自室より出ないように。 今回のことがすべて明らかになるまでは、用心のために掃除も中止だ。 わかった?」
「は・・・・はい。 解かりました」

陛下の心配そうな声色と言われた内容に、夕鈴は項垂れ頷くしかなかった。 
浩大が 「大丈夫だよ、お妃ちゃん。 悪い奴らはすぐに捕まえるからね~」 と言ってくれるが、何を考えているのか不明の刺客に落ち着かない。




自室に戻った夕鈴は侍女さんに何かあったら大変と、早めに部屋から下がらせた。 
侍女さんは 「お妃様に何かあったらと思うと心配で・・・・」 と言ってくれたが、その気持ちだけを貰い、強く下がるようにお願いした。
一人でいる時なら、余計な心配は要らない。 浩大もいると思うと、怖いものなしの気分になり、刺客に対して怒りが沸きあがって来た。 陰湿な攻撃を仕掛けやがって。 文句なら直接言いに来なさいよ! ネチネチこそこそと、関係ない人まで巻き込んでの攻撃に苛立ちが治まらない。

「来るなら来てみろ!! 負けないから!」
そう叫んだ瞬間。
ガシャーン!! ドンッ!!
「え・・・?」

夕鈴が慌てて隣の寝所へ足を向けると、火の手が見えた。 窓から投げ込まれたモノが火を纏い、転がりながら他の物へと引火しようとしている。 急いで茶用の水や、花瓶をひっくり返して火に掛けた。 さらに掛布を火元に覆い被せてどうにか延焼を抑え、無事に鎮火する。

「・・・・・・!!」
力が抜けて、その場に腰を降ろした時に警備兵が数人後宮に遣って来た。

「お妃様、一体何が!!」
「周囲を探せ、火元を徹底的に消せ! 水を持て!」
「お妃様は、一旦こちらへ・・・・」

警備兵に支えられながら立ち上がり、 『運勢最悪の女、継続?』 と頭を押さえると背中に鋭い何かが押し当てられた。 振り返ろうとすると、「そのままで歩くように」 と低い声で囁かれる。
『直接・・・・ 来た』 と自分の言った台詞を撤回したい気持ちになった。
ふら付く妃を 「陛下の元へ御連れします」 と言いながら、支えるように連れ出す。 警備兵らが寝所の火元と投げ込まれたモノの検分を行い、周囲を捜索しはじめ、後宮夕鈴の自室は騒然となっていた。
部屋の主は陛下のもとへ連れ出されたと、他の警備兵は疑いもしないで。





→ 次へ

スポンサーサイト

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:24:00 | トラックバック(0) | コメント(0)
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。