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想い添うそう  3

暗いのを書くのって、辛い。肩こりが酷かったです。 やっとまとまり一番安堵しているのは私ですね。最近、思うように話が流れてくれずに・・・・・母は辛いわ。
ヨヨヨ・・・



では、どうぞ








暖かい部屋に着くと、陛下が湯気の立つ白湯を夕鈴に差し出してくれた。 少しずつ口にするとようやくほっとする。 背筋や膝がまだ震えているが、それの震えは寒さゆえなのか。
俯いたまま顔を上げられずに困惑していると、陛下が溜息混じりに問い詰めてくる。

「夕鈴、最近君が何か悩んでいる様子なのは解かっている。 一体何に憂いている?」
「・・・私だって、いろいろ悩むことはありますから・・・」

心配そうな声色に胸が痛むが、夕鈴は俯いたまま毛布を握り、素知らぬ顔でそう応えるしかない。 陛下から 『御見合い』 の件を聞いていないのだから、問い詰めるわけにはいかないし、そんな権利もない。 
だって・・・バイトだし、私。
素っ気ない返事の私に冷たい狼陛下の視線が降り注ぐ。 冷めた茶碗を握り締めその視線に耐えていると、また深い溜息が聞こえた。

溜息って・・・たかがバイトの悩みに陛下が溜息をつくのはどうしてよ!
心配も優しさも、狼陛下からのドキドキも、今の私にはただ辛いだけなんです。
夕鈴はこくんっと唾を飲み込み、どうにか微笑みながら陛下に話し出した。

「悩みは・・・自分でどうにかします。 ご心配お掛けしたようで、申し訳ありませんでした。 政務室に行けるようでしたら声を掛けて下さい。 プロ妃として頑張りますので。 あ、肩揉みは・・・時間がある時にじっくりと」
「夕鈴・・・」

頬を掴まれ、陛下と目を合わせるように仰向かされる。 陛下の、その顔は・・・。

「君の憂いに私は何の力になれないのか・・・」
「だっ・・・」
「君の涙を拭うこともさせてくれないのか・・・」
「・・・陛下」

そんな・・・心配そうな顔で見ないで。 私の許量の狭さを、知ろうとしないで!
勝手に焦がれて、勝手に泣いているバイトに、優しい声を掛けないで!

言えない言葉を飲み込んでいたら、目が熱く感じる。 陛下を見つめることが出来る残り時間を思い瞬きしたら、涙が流れてしまった。 こんなの違うと、夕鈴は唇を噛んだ。 最初から解っていた事実に、勝手に思い悩んで迷走して、それで泣くだなんて勝手にもほどがあるだろう。 
自分で頑張ると決めたのに、自分でプロ妃を目指すと決めたのに、陛下の味方になると伝えたのに、違う方向に走り出す自分の気持ちを抑えることが難しい。 だけど、困ったと眉を寄せながら、解決しようと本気を出さない自分がいる。 本当なら周囲から聞こえてくる、どんな声にも反応すべきではないのだ。 自分は期間限定のバイトなのだから。
悩む必要も、陛下に心配させる立場でもない。 解っているのに陛下の前で泣くのは、甘えているからだ。 なんて利己的で、浅ましいのだろう。 だけど、だけど・・・・。
噛んだ唇が細かく震え、目の前の陛下がぼやけて来た。 耳鳴りがして、そんなに泣いたかしらと思い返した時大きく眩暈が襲う。 あれっと思う間も無く世界が歪み、傾き出した。

「夕鈴っ!!!」




・・・ 





「・・・すいません、本当に・・・」

二日後、夕鈴は寝台で横になりながら真っ赤な顔で陛下に謝罪を繰り返す。

「熱は下がった? 食欲が出てきたようで良かったね、夕鈴」
「・・・はい・・・すいませんでした・・・」

ただの風邪とはいえ、高熱で丸一日は寝台から離れることも出来ない私の元へ陛下は日参してくれていた。 雨があがり地方での工事が開始され、他の政務も一段落したと話してくれたが、申し訳なさで夕鈴は頭が上がらない。
体力が低下したところに、雨に冷えた身体。 ・・・なんて解かりやすい風邪のひき方。
自己管理をしっかりしなきゃ!
忙しい仕事の合間や終わりにバイト娘の見舞いなんて、陛下にさせることじゃない!

「忙しい陛下に風邪が移ってしまっては大変なので、休める時はどうぞ自室でゆっくり休んで下さい。 ・・・李順さんに怒られちゃいます・・・」
「大丈夫、仕事も一段落したって言ったでしょ? あ、そうだ!」

寝台で横になる夕鈴の目の前に、長細い箱が置かれる。

「?? 陛下、これは?」
「開けて見て。 それは夕鈴に贈られた品だよ」
「・・・わたしに?」

行儀は悪いが横になったまま、その箱をそっと開けて見た。 金で出来た豪華な簪が入っていた。 その簪は細かな装飾が為されており、一目で高価な物だと解かる。 思わず瞳を大きく見開き、陛下を見ると微笑んでいた。

「昨日、金鉱山を管理する将軍が見合いをしたんだけど、その場で意気投合したんだ。 なんて大臣だったかな? ・・・ま、いいか。 その大臣の息女とね。 峰将軍って、夕鈴も会ったことがあるんだけど覚えてる? 右頬に大きな傷がある・・」
「・・・覚えています。 とても大きな将軍様ですよね。 ・・・で、何故私に簪を?」
「うん、見合いで互いに一目で気に入って、僕達みたいな仲良し夫婦になりたいって言っていたんだって。 目標が僕たちって、なんか照れちゃうよね~! で、 夕鈴にはこれ、僕にはこれを贈ってくれたんだ」

そう言って陛下は夕鈴に金の指輪を見せる。 幅のある金の指輪は大きな陛下の手に良く合っていた。
 「すごく素敵です、陛下」  夕鈴は笑みを浮かべて陛下を見上げた。

「婚姻が調ったら、此方に顔を出すと言っていたから、元気になって簪をつけた夕鈴を二人に見せてあげようね。 新婚には負けない、仲良しいちゃいちゃ夫婦をね!」
「そうですか・・・峰将軍が・・・・・・・・・・・・。 ・・・・お見合い?」

思わず夕鈴は寝台で起き上がる。 軽い眩暈で体が揺らぐが、腕で踏ん張った。

「見合い・・・大臣の、娘と?」
「うん・・・? ど、どうしたの、夕鈴?」
「あの、李順さんが・・・周宰相と・・・」

傾いた夕鈴の身体を抱きかかえて、寝台に腰掛けると陛下は驚いた顔で夕鈴を見る。

「あれ? 知っていたの? 李順が・・・ああ、思い出した呉大臣だ。 李順が呉大臣に 『うちの娘に良い相手はいないか』 と打診されていたんだよ。 まあ、本当は李順を狙っていたらしいが李順本人がそれを解かっていなくてね。 ・・・で、独身の峰将軍を薦めたらしいんだ。 見合い自体は上手くいって大臣も将軍も李順も、みんな喜んでいるよ。 ・・・あれ?」

真っ赤な顔を夕鈴は押さえながら、自分の勝手な思い込みに愕然としてしまう。
勝手に落ち込んで、泣いて・・・風邪までひいて・・・!!。
恥ずかしさに笑っていいのか、泣いていいのかさえ判らない。
もう、なんて・・・なんて馬鹿な思い込みをしていたの!!
ぐるぐると、ここ数日の自分の行動を思い返して、大きな穴を掘りたくなった!
陛下の腕の中でわたわたと踠いていると、耳元に狼陛下の声が響いてきた。

「・・・もしかして、最近君がおかしな態度を取っていたのは、私の見合いだと思っていたせいなのかな? ・・・夕鈴」
「だっ・・・だって、李順さんが・・・李順さんが周宰相に話す御見合いなんて、陛下のものだって。 ・・・勝手に思っちゃって。 それで・・・」

改めて声に出して言うと、余計に恥ずかしい。 
将軍ともなると婚姻に宰相も係わるものなの? ああ、でも報告くらいはあるのかしら。 国の重鎮だし・・・。 李順さんは今回御見合いコンサルタントみたいな立場だったの? そんな 『らしく』 ない事をしないでよ! ああ、もう、誰かっ、穴を掘る道具を私に貸して!

恥ずかしさに身悶えしながら俯いていると、陛下に顎を取られ持ち上げられた。
驚いて目を開くと、間近に紅い瞳の狼陛下!

「夕鈴・・・君が居るのに私が見合いなんて、する訳がないだろう。 どうして解からないのかな? 君が唯一の妃だと・・・繰り返し伝えているというのに」

逃げようにも身体は陛下の膝の上。 顎は陛下の手のひらの上。
心は・・囚われて・・・・

「悩むほど考えてくれた事は嬉しいよ。 でも・・・」

顔が近付き思わずぎゅっと目を瞑ると、耳元に唇が触れたような気がした。
そして。

「夕鈴・・・君が、君だけが私の唯一の妃だ・・・」

耳に甘く低く響く声を聞いた夕鈴は体を大きく震わせると、数日間悩み続けた精神疲労と体力の限界を感じた。 悩む必要など何ひとつないという事実に、羞恥と悔しさと居た堪れなさが爆発し、襲って来た眩暈に身を委ねた。


「・・・・ずるいよ、ゆーりん。 僕の言葉に答えてないのに・・・あれ、ゆーりん? いやに真っ赤だね? 赤というより・・・紫・・・?」

焦った陛下が慌てて侍医を呼び出した。
夕鈴はその後、さらに熱が上がり、一週間寝台生活を送ることになった。
将軍から頂いた簪は、鏡台に仕舞われたまま、未だお披露目する機会がない。







FIN



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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:12:07 | トラックバック(0) | コメント(0)
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