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惑わせの香

~もしもシリーズですが、すいません、短編です(汗)

ま、短編といったら明るくなくっちゃね!久し振りの方淵&水月です。(BLではありません
夕鈴も陛下も出てきます。




では、どうぞ














「・・・失礼しますっ!!」

突然、書庫に乱入して来たのは正妃になった女性の姿。

その慌てた様子に、思わず眉間に皺を寄せたが 『下っ端妃』 から、今や 『正妃』 だ。
それも狼陛下の唯一の后。 本来ならば文句を言うのも憚られる・・・。
しかし、正妃ならそれなりの立場を考えた毅然とした行動というものが有るべき。

瞬時に上記の事を考えている方淵の背中に廻った夕鈴が、其の侭方淵の背を掴みぴったりとくっ付いた。

「・・・っ! な、何を!?」
「・・・お願い! ・・・このままで!」

背中に全身を付けて、小さく震える正妃に思わず固まる方淵。
それを、共に書庫に居た水月がじっと見つめる。 正妃となった夕鈴の変わらない様子と正直に固まった柳方淵の姿から目が離せないというのが正直なところか。


廊下を静かに歩く音がする。 音の主が 「お后様・・・お后様?」 と方々へ声を掛けながら歩いている。 その声を耳にすると、夕鈴はびくっと震えて方淵の背にしがみ付くように衣を握り締める。 頬を寄せて出来るだけ廊下からは見えない様に。


声は徐々に小さくなり、他を探しに行ったように思えた。
詰めていた息を吐き、夕鈴は方淵に謝ろうと声を掛けると。

「・・・すいませんでした。 突然このような・・・」
「~~~~~っ! ま、全くだ! 貴女は今の御立場を御理解されて・・・」

急に勢いよく怒り出した方淵の口に夕鈴の手が被さる。
夕鈴は慌てて方淵の口を閉ざしながら、聞き耳を立てて周囲の音を聞いた。 し・・・っんと静まり返った様子を確認すると 「・・・ほぅ」 と小さく息を吐き、方淵の口から手を離した。

「侍女さんらに大声を聞かれたら戻って来ちゃうじゃないですか! お願いですから、もう少しの間だけ私を匿って下さい。 お願いします」

自分の口の前で指を立てて 『静かに!』 のゼスチャーをする。
その様子を見下ろしたまま、突然口を覆われた方淵は驚いた顔のまま固まっていた。
夕鈴の手の柔らかさに、その香りに、近付いた后の顔に・・・・・ その全てに。


「・・・・方淵殿?」

夕鈴が戸惑いながら、方淵の名を呼ぶと驚いたような表情を見せて横を向く。
怒ったような顔に夕鈴が急いで頭を下げる。

「す、すいません! お仕事中に!!」
「お妃様・・・いえ、お后様。 大丈夫ですよ、方淵殿は」
「水月っ!! いいから貴様はその書簡を早く片付けろ!」

水月の台詞に被さるように方淵は仕事をしろと文句を言い出した。 夕鈴の顔を見ずに。
方淵の台詞を無視して、水月は優雅に夕鈴へ長椅子を勧める。

「お后様はこちらに・・・。 今お茶を淹れますから、ごゆるりと・・・」
「本当にお構いなく。 突然お邪魔したのは私なんですから」

それでも書庫の小さな水場を利用してお茶の用意を始める水月。
ふと気付いたような顔で夕鈴に振り返り質問をする。

「侍女はお后様に何用だったのでしょうか? 良いのですか、お隠れになっていても。 お急ぎの用ではないのでしょうか?」
「あ・・・大・・・ 丈夫です。 たいしたことでは・・・・」

その質問に真っ赤になった夕鈴。 いつもと同じようだが、いつもより・・・?
「ああ・・」 と気付いた水月は、長椅子の夕鈴へお茶を差し出しながら腰を降ろす。

「いつもと違い、化粧を施されておりますね。 普段は・・・殆どされていないように思いましたが・・・。 香油も強く香るように思いますが」
「・・・! そ、そうなんです。 侍女が 『正妃になられたのですから!』 と張り切って特に用事も無いのに化粧を始めてしまい・・・ 途中で逃げて来ちゃいました」

笑いながらお茶を飲む夕鈴に、水月も微笑む。

「お后様は化粧せずとも、陛下よりの愛を賜り内から輝くような美しさを放っておりますからそのような必要はありませんよね。 そのままでも充分愛らしいです」
「・・・ぶふーっ!!」

水月の台詞に夕鈴は思わず横を向き、盛大に口中のお茶を吹き出した。
その様子に苦笑する水月と、思わず振り向き眉間に皺を寄せる方淵。
その二人を見比べ、真っ赤になった夕鈴。

「な、なにを! 水月さん、そんな事を・・・!!」

水月はくすくすっと哂いながら立つと、夕鈴から空になった器を受け取り新たなお茶を用意する。 夕鈴は真っ赤な顔のままで器を水月に渡して、ちらっと方淵を見る。

方淵は忙しそうに書簡を広げては閉じてを繰り返している。
見ているのか、いないのか・・・ その動きが解からない。
視線を感じたのか、方淵は 「ふんっ!」 と息巻いて書簡を漸く書架に終いだした。



方淵は書架に書簡を片付けながら、落ち着いて茶を飲み出し、水月と侍女から上手く逃げる方法を話し始めた彼女を見てみる。

姿は以前と変わらない。 行動も落ち着きがなく、話し方も粗暴なまま。
正妃になって、一体彼女の何が変わったのだろうか?
陛下と共に居られる時も、このように書庫に飛び込んで来る時も、以前と全く変わり無く思うのに・・・・。 なのに、 『何かが違う』 のだ。 
それが解からないと、訳が解からず苛立った自分を持て余す。






「・・・楽しそうだな」

書庫入り口に身体を預けた陛下からの冷たい声色と凍った視線。
急ぎ拱手する二人と、長椅子より立ち上がる夕鈴。 陛下は大股で夕鈴に近付くと直ぐに抱き上げた。 紅い顔のまま陛下に囚われた彼女は困惑しながら、それでも和らげに微笑んでいる。

「夕鈴、侍女が四阿まで探しに行っている。 何処までも探しに行かせるのは可哀想に思うのだがな。 化粧くらいいいではないか。 ・・・ん?」
「化粧くらいって、用も無いのに意味がありません! ただ・・・侍女が其処まで探しているとは思いませんでした。 あとでちゃんと謝ります・・・」

腕の中に捕らえた妃の言葉を笑顔で聞いていた陛下は、つぃっと傍に控える二人に視線を落とす。 狼陛下の冷酷な視線を。

「騒がせて悪かったな、政務中だというのに。」 (いや、陛下も仕事中のはずでは?)
「いえ・・・ 問題ありません。 お后様のお役に立てて望外の喜びで御座います」

静かに頭を下げる水月。
対照的に眉間に皺を寄せたまま睨むように口を半開きにさせている方淵。
しかし、陛下の視線を感じて静かに頭を下げた。









陛下と后が書庫より姿を消すと、水月が方淵に向き直りにっこりと微笑む。

「危なかったな、君の首が庭園に転がるところを思わず想像してしまったよ」

いきなり水月から言われた台詞の意味が解からない方淵は思わず睨み付ける。

「貴様の言うことはいつも回りくどい! どういう意味だ?」
「ああ、自分では解かっていないようだね・・・。 これを見られていたら今頃君の首は庭の片隅に咲く花を見つめる路傍の石となっていただろうと思ってね」

水月はそう言いながら、方淵の背中に付いた白粉をぱたぱたと叩いて落とす。
ギョッとしながら方淵が急ぎ官衣を脱ぐと・・・・ 確かに后が頬を寄せていた印が。

背にしっかりとくっ付いてた后を思い出し、官衣をじっと見つめていると生温かい水月の視線を感じた。 背を正して官衣を窓の外へ持ち出して白粉を叩き落とす。 風に煽られて香油の匂いが方淵の鼻を擽った・・・ような気がした。


水月は黙って官衣を叩いている方淵の背を見ていた。
暫らくすると白粉が取れたようで、官衣を元のように羽織る方淵に鋭く睨まれてしまう。

「おや、お礼は? 君が知らずに政務室に行ってその白粉を問い質される事の無いように進言してあげたのに、睨むだけかい?」
「・・・・いいから、貴様は黙って仕事をしろ!! 其処の書簡を確認して署名をして、それから・・・」
「・・・・はい、はい・・・素直じゃないね、全く」

肩を落として、水月は仕事に戻った。



台風のような正妃にこれからも困惑される予感を覚えた方淵だった。








FIN




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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 00:10:22 | トラックバック(0) | コメント(0)
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